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2003年6月21日(土)の「研究発表会」での各発表要旨を掲載します。

1.「ベリリウム銅について」
    柴田技術士事務所 柴田素伸氏   〔金属部門、総合技術監理部門〕

 ベリリウム銅は1929年、ドイツで析出硬化現象が報告され、米国で工業化が進められ、第二次大戦では多量のベリリウム銅が軍事物質として、航空機や通信分野で活躍した。日本では1955年に国の補助金が設けられ、3社が国産化を目指してスタートした。ベリリウム銅は高強度と高伝導性を兼備した最高の銅合金として、電子工業、通信機器、プラスチック成形用金型、非発火性安全工具、ゴルフのパターやアイアンなどに広く用いられている。 しかし、一方では、ベリリウムは有毒物質と短絡的に知られ、盲目的の回避される場合も少なくない。各種の電子機器に使われ、身近なところで活躍している姿を紹介し、正しい理解を深めていただきたいと願うものである。


2.「浄水ケーキのリサイクル − 植物育成培地への利用」
     小堀技術士事務所 小堀英和氏   〔農業部門〕

 上水道や工業用水道の浄水場の浄水ケーキは、従来「汚泥」として産業廃棄物に指定され、その多くが埋め立て処分されてきたが、これを農業用、家庭園芸用、緑化客土等の植物育成培地としてリサイクル利用する技術を開発し実用化している。浄水ケーキには、@易分解性有機物の急速分解、A窒素過剰、Bマンガン過剰、C植物病原菌、雑草種子の混易分解性有機物の急速分解、A窒素過剰、Bマンガン過剰、C植物病原菌、雑草種子の混入、D透水性の不良、E品質の変動等の問題点があるが、これを克服する方法として、@浄水ケーキの堆積発酵(コンポスト化)、Aリン酸肥料の選択と大量添加、Bバーク堆肥等の副資材の混合等の方法を組み合わせた処理方法を開発した。これらの方法は、大がかりな装置を必要とせず、化石エネルギーを使用しないなど低コストで環境に優しい方法である。


3.「航空機の主翼設計について」
     中菱エンジニアリング株式会社 中尾 捷氏   〔航空・宇宙部門〕

 航空機の主翼設計は、「平面形設計」及び「翼型設計」から成る「空力設計」と「構造設計」から成り立つ。この主翼設計の流れに沿って、その手法や変遷と、その中で活用される航空機技術について説明する。「平面形設計」では、飛行機の主翼の形を決定していく過程とそれに影響を与える要素技術について、「翼型設計」では、飛行機の空力特性の推定方法、特に近年進歩の著しい計算空力について、「構造設計」では、「空力設計」の成果が、どの様に構造へ反映されるかをお話する。航空機の特徴である主翼の設計の流れを理解して頂き、航空機の性能を向上させている航空機技術やその進歩の一端をご理解頂ければ幸いである。


4.「急速ろ過のメカニズムとその応用について」
     名古屋市上下水道局 山下和雄氏  〔水道部門、総合技術監理部門〕

 浄水場の水処理は急速ろ過方式が一般的である。最近クリプトスポリジウムによる集団下痢が問題となり、浄水場で濁度0.1度以下を常に維持するよう求められるようになった。そのためには急速ろ過のメカニズムを理解し、適切な運転管理が必要である。砂ろ過は単に狭い場所を通過するので細かい濁りが除去できるのではない。前段で添加される凝集剤と水中のアルカリ分とが反応し水酸化アルミニウムが生成され、さらに濁質と結びついて形成されたフロックのもつ付着力により砂粒に付着することにより濁りが除去される。フロックの付着力は凝集剤の注入率と濁度の比により変わるので、常に最適な注入率を維持する必要がある。