頭上から振り下ろされる、円錐状の腕
これがなんなのかボクには理解できない
今ここで起こっていることも理解できない
ボクはただ…マナと一緒にいたかっただけなんだ……
月夜に浮かぶ三つの影
シルクハットをかぶった小太りな男と、泣きじゃくる子供
そして、人間の骨の模型のようなソレ
ソレはアクマと呼ばれるもの
人間の魂を冥界から呼び出し、エネルギー源として動く機械人形、アクマ
アクマは人を襲う
操られるままに人間を、そして呼び出した主を
アレン・ウォーカーは何が起きたのか理解できなかった
マナが死んだ、それは彼が自分の大部分を失った事を意味する
奇怪な腕を持ち生まれたアレン
マナ・ウォーカーは彼の全て、彼の中にはただそれだけしかなかったのに…
ゴーンゴーンゴーン
教会の鐘が鳴った
まるで空に還る様な鎮魂歌
黒服の喪者達は、まるで列を成す蟻の様に並び、そして彼方へと消えていく
ゴーンゴーンゴーン
鐘が鳴る
死んだ…?
―誰が
マナ?
―どこ
もう…会えない?
―なんで?
マナに…もう会えない……?
マナの埋葬が済んでも、ボクは不思議と涙が出なかった
マナがいなくなるなんてこと、考えた事もなかったし
ううん、考えたくもなかった
きっと、マナはどこからか姿を見せてくれる
いまはちょっとどこかへ出かけてるだけなんだ
そっと、息を吐き、自分の脇の黒の十字架を見やる
『 MANA WALKER 』
刻まれた石碑
何度見たかわからないその文字を一つ一つ確かめるようになぞる
「マナ…ウォーカー……」
何を考えるわけでもなく、虚空を見やる
空は、死者の霊魂の安寧を願うように白い粉雪を湛えている
不意に襲い来る、虚無感と喪失感…
マナはいない、それがただ認められなくて…
ただそこにある虚像にすがる
「マナ・ウォーカーを、蘇らせてあげましょうカ?」
幾何学的な声、地獄のそこから響くような声でも、天使のように優しい声でもなく
まるで御伽噺の機械仕掛けの人形のような声
上方からかけられた声に、反応するように見上げたアレン
「マナ・ウォーカーを、蘇らせてあげましょうカ?」
その声は、変わらず無機質
でも、アレンにとってはその声は、いやその言葉は、天使がくれた言葉よりも、神がくれた言葉よりも
とても神聖なものとして聞こえていた
頬を伝う涙、忘れていた、おし殺していた感情が、表面を伝い溢れ出る
マナが死んだ、もう二度と会えない
その想いが一気に押し寄せ、アレンの心を酷く痛ませる
「マナ・ウォーカーを、蘇らせてあげましょうカ?」
三度かけられる声
しかし今度はちゃんとした実体を持って聞こえ…
目の前にシルクハットをかぶった小太りな男が現れた
ボクはただ、マナが傍にいて欲しかっただけなんだ…
なにがおきてるのかわからない
振り下ろされた円錐状の腕
左目に走る激痛
「呪うぞ 呪うぞアレン!!」
どこか懐かしいような、物悲しく憎悪に満ちたマナの声が、耳に届く
狙いをはずさないように振り上げられた腕
ボクを壊す腕
ただ、それがボクに当たる前に…
ざわっ
ボクの左手が疼いた
奇怪なボクの左手が
大きく開かれたアレンの左腕
アレンの身の丈の倍はある大きな奇怪な神聖な左腕
ただそれが、アレンの意志と関係なく、アクマを壊す
マナを壊す
「逃げて…逃げて父さん!!」
アレンの声も空しく、その左腕はアクマと化した少年の最愛の人を襲う
「アレン…お前を…愛してるぞ… 壊してくれ」
それはマナの言葉だったのだろうか?
それともアクマが残した言葉だったのだろうか?
アレンがそのことを考える間もなく、
バリ
目の前の骨組みが砕け散る
マナ・ウォーカーの魂を関した模型が砕け散る
「わああああああああああああああああああ」
響くアレンの悲鳴
愛しい最愛の人を手にかけてしまった
自分の父親代わりの人を手にかけてしまった
その苦痛がアレンの身体を酷く蝕む
「まさか、イノセンスの所持者とハ★」
深々と雪が降る
まるで少年の心に悲しむを降り積もらせるかのように
「生かしていても厄介なので、殺しておきましょウ★」
抜け殻の少年に振り下ろされる、小太りな男の鋭利なステッキ
少年の朽ちていく心に呼応するかのように、ピクリとも動かない左腕
「さようならでス★」
ズバッ
真っ白な世界に、鮮血が飛び散った
―――
DグレDream連載開始しましたー
って、まだ主人公影も形も出てきてない…ッ
次の話からはチャント登場しますのでご勘弁をー(T-T)
また、黒い系のDream小説ですが、宜しくお願いします
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