小話






(歌合戦編)
その一
「清麿、この者は、先程別のチャンネルに出ていたような気がするのだが」
「ああ。年末はお笑いと歌手と格闘家は大忙しだからな」
「ヌ?」
「テレビ欄見てみろ」



その二
「次は演歌かのう。…ヌ!?目が、目がー!!」
「何だ、どうした!?」
「め…目をやられたのだ…っ」
「…今年の衣装も眩しいなー」



その三
「この者の着ている衣服は美しいのう」
「振袖だな。ちょっと早い気もするが…」
「清麿も着てみてはどうかの?」
「…着れるわけないだろ」
「きっと清麿に似合うとのだ」
「そういう問題じゃなくてだな、これは女の人の着る物なんだよ」
「ウヌ?しかし、この者は男ではないのか?」
「いや、そうだけどな」
「ならば、清麿が着ても全く問題ないではないか」
「そうじゃなくてなあ…。ややこしいな」



(大掃除編)
その一
「清麿、大掃除なのだ!」
「ああ。ちょっと待ってくれ」
「いや、清麿は調べ物を続けてくれて構わないのだ。大掃除は私がするのだ」
「そうか?」


「では、まず窓拭きでも…ヌア?!」
「…窓枠に立つな」
「ウヌ。ありがとうなのだ、清麿。危うく落ちるところだったのう」

「では、次に蛍光灯の汚れを…ヌ?ヌオォオオオ…」
「(届くわけがないだろうが…)」
「よし、ジャンプするのだ!ヌウ!!」
がっしゃんっ。
「…………今の物が破壊されたような音は何だ?」
「き、清麿、蛍光灯が頭に当たって壊れたのだ…」

「次こそ、名誉挽回なのだ!掃除機を掛けるのだ!」
「(まあ、これなら大丈夫だろう)」
「では、本棚の辺りから…。ヌ、壁の隙間に入らぬのう」
「ああ、それなら隙間用の細いやつに取り替え…」
「ヌウ!!」
がんっ。ばさばさばさっ。
「き、清麿、掃除機が本棚に当たって、本が全て落ちたのだが…」
「………………もういい。俺がやる」
「ヌ?清麿は調べ物を…」
「やかましい。お前は下でアニメ宝箱でも見ていやがれ」



その二
「大掃除とは、いつものお掃除とは違うことなのかの」
「そうよ。いつもよりたくさん、普段できない場所まで綺麗にするの」
「何故、今日はいつもより一杯するのだ?」
「一年間お世話になったものたちに、感謝の気持ちを込めてピカピカにしてあげるのよ」
「ぴかぴかにすると、ものは喜ぶのかの」
「そりゃあ。綺麗になったら嬉しいもの」

「清麿っ、私が背中を流すのだ!」
「ああ?」
「きれーにしてあげるのだ!」
「お前、何張り切ってんだ…?」
「ありがとうございました、なのだ」
「今、何か言ったか?」
「ウヌ、何でもないのだ」

いちばんおせわになったひとへ、かんしゃのきもちを。


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