第2話  『サルの軍団と遭遇』



 軽井沢の別荘地帯は、浅間山の東側を取り囲むように北軽井沢、中軽井沢、旧軽井沢、新軽井沢、南軽井沢と半月形に別荘地が並んでいて、これを縦断する2本の幹線ルートがあります。

「白糸の滝」 熊に注意の立て看板があった。

一本は、万座から浅間白根火山ルート万座ハイウエー、日本ロマンチック街道、鬼押ハイウエー、白糸ハイランドウエイと有料道路でつながり、旧軽井沢の三笠通り、新軽井沢駅前通りを経て軽井沢駅に達するルートで、もう一本は、長野原から北軽井沢を通り、途中峰の茶屋で有料道路を横切るように交差して中軽井沢へつながる国道146号線です。
 購入すべき別荘も決まり下見に来た時のことでした、兎にも角にも別荘地帯を大まかに一周してみようと思い、2本の幹線道路を一周してみたことがありました。その中で、白糸の滝から旧三笠ホテルに向かう途上、ラッキーと言うか、私達は予想もしていなかった光景に出会うことができたのです。
 白糸の滝の見物を終え、深い森に囲まれた綴れ折の急な山道を下っている時、家内が突然
「あっ、サルだ。」と叫んだのです。
 私は、てっきりその辺の木の枝にとまっているサルでも見付けたのだろうと、両脇の木の枝に目を向けましたが、それらしい姿は目に入りませんでした。

整然と一列に並んで右側通行。「車は左、サルは右」

 「そこそこ」と家内が指差す方を見て驚きましたました。
 車の直ぐ脇を整然と並び、黙々と歩いているサル達が目に入ったのです。
 ひっきりなしに通り過ぎる車を全く気にする様子も無く、道の右側の縁を一列になってただ黙々と歩いているのです。赤ちゃんを背負ったり抱いたりしているサルも沢山居ました。

軽井沢の鹿鳴館とよばれた旧三笠ホテル。

 不思議なのは、このサル達は物差しで計ったように一定の間隔をおいて歩いているのです。後ろのサルが前のサルを追い越したり前のサルが後ろのサルと順序を入れ替わったりする様子も無く同じ間隔で一列になり黙々と歩いていました。そう言えば、以前テレビで、サル(他の動物だったかも知れません)の群れが移動する時には隊列を組む順序が決まっているのだと言う話を聞いたことがあります。
 恐らく、秋に向けて木の実の豊富な森への移動が始まったのでしょう。
 兎に角沢山のサルでした。何頭いたのかわかりませんが、数10頭は居たのではないでしょうか。100メートル近い長い列を作って歩いていました。
 本当に珍しい光景でした。人と動物が極自然に溶け合って生活する。これが本当の共生の姿ではないかとつくづく思いました。今まで野猿は何度も見てきました。しかし、野猿とは言っても殆んどが餌場に集団で群がり、人を見ると強引に餌をねだりに来る餌付けされたサル達でした。
 後日、弟に話したところ、そのような光景は滅多に見ることができる物ではなく、本当に運が良かったととのことでした。
 白糸の滝には、熊が出るので気を付ける様にとの看板が立てられていましたし、弟の山荘の庭には毎朝リスが餌を食べに来ます。自然一杯の広大な浅間高原、いろいろな動物との出会いが楽しみです。


2006/10/04

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