第6話  冬の水道修理はヘアードライアーで



 水は、凍ると固体になって体積が増えるという性質を持っています。寒冷の地では、この水の性質が実に厄介な存在になってきます。特に避暑地の別荘の場合、寒い冬の間は利用する機会も少なく、人気の無い建物は芯の芯まで完全に冷え切ってしまいます。昨年の北軽井沢の最低気温はマイナス16度、地面は数十センチ下まで凍土と化し岩のようになってしまいます。この文章を書いている今日も、北軽井沢の予想最低気温はマイナス9度。
 別荘を使っている時は、暖房もしているし、屋外の水道管(温水も含めて)や蛇口にはヒーター線を取り付け温めているので、電源の入れ忘れでもしない限り先ず大丈夫です。ところが、問題は、長期間留守にする場合です。水道管に水さえ入っていなければいいわけですから「水抜き」という作業をします。冬に別荘を空ける時には必ず行います。保守のことを考えてか、配管は、殆んどが屋外の壁に取り付けられていて全て元栓に向かって傾斜がとられています。水道の元栓は、水抜きの出来る特殊な構造になっていて、元栓を閉じると元栓から先の管の水が一気に元栓の基から抜けるようになっています。少しでも残っていると凍結によるトラブルに繋がりますので完全な水切りを行うことが必要です。
 手順を追って実際に私が行った水抜き作業を説明してみましょう。

  • 元栓を閉める。
     元栓を閉めると同時にザアーッと水道管の中を水が抜けてゆく音がします。
  • 全ての蛇口を開ける。
     水を出しながら元栓を閉めてもいいのですが、私は、元栓を閉めてから蛇口を開けています。蛇口は開けたままにしておきます。
     蛇口が閉まったままのものがあると水が残りトラブルの原因になります。
  • 給湯管の水を抜く。
     給湯管には専用の水抜きバルブが付いているのでこれを開けます。バルブは、開けたままにしておきます。
  • 給湯器の水を抜く。
     給湯器本体の下に付いている水抜きネジを外し給湯器の中の水とお湯を完全に抜きます。ネジは、外したままにしておきます。
  • 混合栓の水抜き。
     流し台、洗面所、風呂等お湯との混合栓は、お湯側水側それぞれに完全に開けて水を抜きます。
     混合栓には、給水給湯コックとは別に水抜きネジが付いているので、このネジを弛めて(又は、外して)水を抜きます。
  • シャワーホースの水を抜く。
     風呂のシャワーホースは、混合栓の取り付け部から外して水を抜き、ホースに水が残らないよう吊り下げておくといいでしょう。
  • 洗濯機の給水ホースの水を抜く。
     洗濯機の給水ホースを蛇口から外し水を抜きます。排水管など洗濯機の水が残りそうな所は注意して水を抜いておきます。
  • 水洗トイレの水を抜く。
     貯水タンク、便器、ウオッシュレットのタンク等の水を抜きます。便器の水は、灯油用の手動ポンプを使うと便利です。
  • 不凍液を入れる。
     水洗トイレの貯水タンクは、底に水が残るようなら不凍液を入れておきます。
     便器、水を抜いてしまえばそれでいいのですが臭気の逆流などを避けるため不凍液を入れて満たしておきます。
     台所のシンクの配水管や洗面所の配水管のトラップ部分も便器と同じように不凍液を入れておきます。
     洗面所のS字形トラップは、水抜きが面倒なので水の入っている中へ直接不凍液の原液を流し込みました。
  • 水道管ヒーターの電源を切る。
     水を抜いてしまった水道管は、凍結の心配は無いので節電のためヒーターの電源は切っておきます。
  • 便器のヒーター。
     便器の凍結防止ヒーターやウオッシュレットのヒータースイッチは、入れたままにしておきます。何故か分かりませんが入れたままの方がいいと教えられました。
  • その他注意すること。
     花瓶の水、やかんの水、飲料など凍る可能性のあるものは、凍結にによるトラブルを避けるために処理をしておく必要があるでしょう。
 以上が私の水抜き手順です。

水道管は、全て元栓に向かって傾斜がとられていて元栓一箇所の開閉で水抜き水出しが出来るようになっている。


混合栓には別に水抜ネジがある。

元栓の構造

水道管にはヒーター線が巻き付けてある。

水を抜き不凍液を入れる

ウオッシュレットの水抜き

給湯器の水抜き(温水も)

 水出しは、水抜きと逆の手順をたどればいいわけで然程難しいことはありません。しかし、蛇口の閉め忘れや取り外したホースの付け忘れがあると元栓を開けたとたんに家の中が水浸しで大騒動することにもなりかねません。兎に角、丁寧に水抜きをした時の手順を遡ることが必要です。
 水抜きも水出しも技術的に難しいことは何もありませんが忘れ箇所があるとトラブルにつながってきます。本格的な冷え込みは、未だこれからなので何が起きる分かりませんが、11月に別荘を空ける前の水抜き、12月中旬に帰って来ての水出しをそれぞれ1回経験しました。水道管の水は、マイナス3度で氷り始めるそうで、この間凍結可能な日もありましたが凍結によるトラブルは、ありませんでした。
 ところが、水出し作業の時、接続した洗濯機のホースと蛇口の間からの水が漏れがどうしても直りません。凍結には全く関係なく、どうも外す時に接続部分を傷めてしまったようでした。いろいろ工夫して見ましたがどうしても駄目。結局水道屋さんを呼ぶことになりました。
 電話で状況を説明しておいたのに、すっ飛んできた水道屋さんは、手にヘアードライヤーを持っていました。端から凍結が故障の原因と決め込んでいる節があり、ヘアードライヤーは凍結箇所を溶かすための道具でした。
 凍結した場合の対処方法がインターネットのサイトや市町村の広報に載っていますが、殆んどが、凍結箇所に直接お湯が掛からないようにタオルを巻きその上から温めのお湯を掛けると言うものです。ヘアードライヤーを使ってと言うものは一つもありませんでした。職人の知恵で、長年の経験から一番効率のいい方法として身に付けた技なのでしょう。
 「凍ったところを溶かすのにはヘアードライヤーで。」なぁーるほど納得です。これからもいろいろ新しい技にお目にかかれることと思います。それにしても今年は暖冬。折角付けたスタッドレスタイヤの出番が未だありません。


2007/01/01
Revised 2007/01/15

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