第11話  楽しき哉薪作り



 神秘的な炎の揺らぎを眺めながらくつろぐ安らぎの一時もさることながら、伐採した薪材の入手から割って乾燥させストーブで焚くことのできる薪にするまで数年間を要する薪作りの楽しさにもまた格別な物があります。また、薪がぎっしりと詰まった薪小屋のある山荘の風景って結構絵になる素敵な情景だと思いませんか。私が目にした多くの著作物やウエブサイトでは薪ストーブライフがこの上も無く楽しく語られ、未だ一年生で全てが楽しくて仕方がない私の期待を際限なく膨らませてくれました。
 森に囲まれた山荘で薪を焚き、ちらちらと揺らめく炎をうっとりと眺めながら至福の時を過ごす。こんな姿を頭に浮かべながら薪材集めの策を練り薪を割る。正に山荘ライフの醍醐味ではないでしょうか。
 
【 薪作り 】

薪材の入手 : 約3トンの薪材(樅)

玉切りにする : 全部玉切にして薪棚に積込んだ。

薪割り : 4トンの破砕力を持つ電動油圧薪割機の威力はすごかった。

乾燥・保存 : これから2年ほど乾燥させなければいけません。

 薪作りは、一見単純に見える作業の繰り返しにすぎませんが、薪ストーブライフ一年生の私にとっては、全てが初めての経験。兎に角やってみなければ、経験してみなければとチャレンジ精神だけは旺盛ですがなかなか思うように事は運びません。
 先ず最初に直面したのは、どうやって薪材を手に入れるかと言う問題です。それも、薪に適した木材をできるだけ安いコストで手に入れたいとなるとなかなか難しく並みの工夫や対応策ではできません。薪材の安定した入手方法は未だ無く、常に薪材探しを心がけていなければならないのが現状です。森に囲まれた山荘で暮らしながら木を探すなんて洒落にもなりません。でも、薪材の入手方法をいろいろ考えるのも結構楽しいものです。
 もう一つの問題点は、齢70を越す私の体力の問題です。
 当初、私は、薪の使用量を非常にあまく見ており、友人がプレゼントしてくれた薪割斧(よき)でぼちぼちと割る積もりでいました。事実、最初に作った薪小屋(第10話参照)で2年分の薪が保存できる計算をしていました。
 ところが、冬に入り薪を使い始めると、私が予想していた量をはるかに超える薪が必要なことが分かり、私の薪作り計画は根底から変更せざるを得ないことになりました。
 私の体力では、大量の薪を斧で割るような芸当はとても無理。思案の末、薪割機の購入を決断しました。
 ストーブ販売店で頂いたカタログを見ると全て輸入品。電動式が20数万円、エンジンの付いたものですと30数万円から50万円以上の価格がついていました。
 でも、インターネットのオンラインショップやホームセンターの店頭では5万円以下の薪割機が幾種類も販売されています。
いろいろ耳にする話では、安い薪割機では駄目との話が多く迷いましたが、使ってみなければ分からないし、うわさ通りであったとしてもまあまあ納得できる価格であると、ホームセンターに並んでいた破砕力4tのナカトミ電動油圧式薪割機 LS-52H を \39,800 で購入しました。
 この機械太い丸太をバリバリ割って私を大喜びさせてくれました。薪割機で割るといっても素直な玉木ばかりではありません。節の多い物、太い物、曲がった物、玉木にもいろいろ癖があり、その癖に会わせた使い方が必要です。現在までに大よそ5トン近くの薪を割りましたが何の異常も無く至極順調に働いていてくれます。
 ストーブに薪を焚く日も少なくなった5月中旬のある日、私が薪を割っているところを、北軽に別荘を構えて9年とおっしゃる年配の方が通り掛かられ、しばらく見ておられましたがぽつりと
「大変ですね。定住されている方ですと、半月でこれくらいの量が無くなるようですから。」
といともあっさりおっしゃった。
「えっ ???」
私は、返す言葉が見付かりませんでした。  その時、私は3トンの薪材を略割り終えて、薪棚は右最下段の写真の状態になっていました。
 この方の言われた量は、多少オーバーであったかも知れませんが、私が頭の中で計算していた量よりはるかに沢山の薪が必要なことは間違い無さそうです。事実、今年の冬はこの写真の倍以上の薪を消費しました。私の使っている薪は、火持ちの悪い薪材が多いせいかも知れません。薪は、2年くらい乾燥させる必要があるとのことですから、乾燥期間を入れると3年分の薪が常時薪棚に積まれていることになります。私の両方の薪棚を満杯にするにはまだこの倍の薪を作らなければなりませんが、それでも未だ不足と言う勘定になります。私の薪作り計画は、またもや大幅な修正を迫られています。何か、何時も薪のことばかり考えているような昨今ですが、またそれが楽しいから不思議です。先ずは薪棚が一杯になるよう頑張らなければ。



2007/06/02

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