第14話 初冬の浅間山



 年賀状に浅間山の写真を使おうと思い立ちカメラを手に北軽井沢から中軽井沢まで撮影スポットを求めて浅間山を半周しました。山荘に来ている時には、毎日何処に居ても目に入る浅間山ですが、こうして一つの目的を持ってこの山を眺めてみると、実に様々な表情や姿形をみせてくれることに今更ながら感心しました。写真を撮りながらふと、浅間山に正面があるとすればどちらからの眺めが正面になるのだろうかとどちらでもいいような疑問が湧いてきました。富士山の写真や絵をよく見ますが、写真や絵に出て来る富士山の殆んどがある特定スポットからのもののような気がします。富士山だってどの方向から見ても同じ形ってことはないでしょうから絵や写真に出て来る富士山が正面なのでしょう。浅間山にも絵や写真になる特定スポットがあるのかも知れません。先日鬼押出園で行われていた田嶋陽子さんの水彩画展を見てきましたが浅間山を画いたものが多く、山の形から先生お好みの特定スポットがあるような気がしました。
 山の形もさることながら、雪が掛かり始めたこの時期の浅間山は、見る方角によってその印象が大きく変わって見えます。ここにご紹介した三枚の写真は全て同じ日に写した物です。


雪に覆われダイナミックに迫ってくる鬼押出園駐車場(北方向)から見た浅間山。


特有な縞模様の華麗な姿を見せる浅間白根火山ルート沿いにあるレストランブルーベリー駐車場(東方向)からの浅間山。


中軽井沢のスーパーTSURUYA軽井沢店近く(南方向)から見た未だまばらに雪のかかった浅間山。

 ご承知のように、浅間山は、日本を代表する活火山の一つで現在でも絶えず噴煙を吐き続け活発に活動しています。また、火口から噴煙を吐き出しているだけではなく、山自体が熱気を帯びており雪が降ると雪の濃淡により様々な模様が描き出されてきます。現在のところ火山活動度レベルは「2」から「1」になり小康状態が続いていますが何時また再び噴火が始まるか分かりません。

今世紀に入ってからの活動状況を「日本活火山総覧」より引用してみました。
2000(平成12)年
4月17日 地震多発。9月18〜23日 地震多発。10月下旬〜12月地震回数やや多い。11月下旬〜12月 噴煙活動やや活発。
2001(平成13)年
1〜4月 地震回数やや多い。噴煙活動やや活発。
2002(平成14)年
6月20〜24日 地震多発。6〜9月 地震回数やや多い。噴煙活動活発。
2003(平成15)年 微噴火
2月6日、3月30日、4月7、18日 微噴火。2月6日は火口周辺のみ、3月30日は山頂部から山腹にかけて少量の降灰。4回の噴火のいずれかにより、火口付近(火口縁から約300m)に最大4cmの火山礫(れき)が飛散。噴煙活動活発。
2004(平成16)年9月〜12月 噴火
9月1日に21年ぶりに爆発して活動を再開。9月1日の爆発は、大きい爆発音と空振を伴い、噴石を飛散、山頂の北東6kmまで最大3cmの火山礫が降下、北東方向の群馬県・福島県(最も遠いところは相馬市)の一部で降灰。9月14〜18日 小噴火がしばしば発生、特に16日未明〜17日夕方はほぼ連続的に発生。南東の軽井沢町には多量の降灰があり、群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県・千葉県(最も遠いところは勝浦市)の一部でも降灰。この頃火口底に新しい溶岩が出現。9月23日 爆発。中程度の爆発音と空振が発生。爆発地震により軽井沢町追分・御代田町御代田で震度1。山頂の北北東4kmに最大3cmの火山礫が降下、北北東方向の群馬県・新潟県・山形県(最も遠いところは東根市)の一部で降灰。9月29日 爆発。弱い爆発音と空振が発生。爆発地震により軽井沢町追分・御代田町御代田で震度1を観測。山頂の北4kmに最大4cmの火山礫が降下、北から北北東方向の群馬県嬬恋村・長野原町・草津町等の一部で降灰。11月14日 爆発。大きい爆発音と中程度の空振を伴い、山頂の東4kmに直径4〜5cm火山礫(最大は7.5cm)が降下、長野県、群馬県、栃木県の一部で降灰。

 雲一つない抜けるような青い空を背景に真っ白な雪に覆われ山頂から煙を吐きながら覆いかぶさってくるようなダイナミックな浅間山の姿が私は大好きです。特に鬼押出園や火山博物館から眺める浅間山は迫力満点。また、ブルーベリーから見た優雅な浅間山の姿は、もっとも絵になる正面の姿かも知れません。


2007/11/27