第18話 ヘアードライヤー大活躍



 私が北軽へ通い始めて二度目の冬。昨年は、雪が無くて恒例の浅間高原雪合戦が中止になるほどの暖冬でしたが、今年は、平年並みに戻ったと言うか、私にとっては、初めて経験する厳しい冬になりました。昨年の冬には寒さによるトラブルも殆んど起きず、北軽の冬もこんな物かと思っていましたが、今年は状況が全く違っていました。寒いということはこう言うことなんだと私を納得させるのに十分な体験の数々でした。
 今までも旅人として厳寒の中を通り過ぎてきたことは何度もありましたが、生活者として過ごすのは初めてのこと。予想もしなかった出来事に度々出会うことになってしまいました。とは言っても、ここに住んでいる人たちや同じような環境で生活している人たちにとっては、当たり前の極自然な日常の出来事にしか過ぎないのかも知れません。
 特に、水と言う液体が気温が下がるに従って固体化する現象がこれほど厄介な物だとは、温暖な地方に住む私達の想像を超えるものがありました。
 北軽への途上、岡谷から佐久への山間部で、フロントガラスの汚れが凍りついてしまい、ワイパーは、汚れの上を空滑りするばかり。外気温−9度。ここまで気温が下がると走行中には、デフロスターも効きません。ウオシャー液もノズルが凍ってしまい全く出ません。こう言うこともあろうかと、私は、原液に近いウオッシャー液を入れていましたが、前の週、点検に出した折、親切に補充してくれたウオッシャー液(勿論、代金は請求書に加算されていた)がいけなかったような気がします。恐らく、水に近いようなウオッシャー液(私の地方では、水を入れておいても凍るようなことはありません)だったのではないでしょうか。
 勿論道路は固まった雪で真っ白に覆われていましたが、スタッドレスタイヤは有効に働いてくれ無事峠越えをすることができました。佐久平のジャスコで買物。この時、虫の知らせとでも言うのでしょうか、何故か必要になるような気がして近くのホームセンターで雪かき用のスコップを買いました。昼頃別荘着。事前に管理事務所へ連絡しておいたので道路の除雪はしてありましたが、除雪は、駐車場の前まで。虫の知らせは的中し、すぽっすぽっと膝の上まで埋る雪を、先ほど買ったばかりのスコップで切り開き道作り。これがなかなかの大仕事。兎に角玄関までルートを作らなければ荷物も下ろせません。

雪に埋った山荘、道作りに大奮闘

北軽井沢の気温変化グラフ(「北軽井沢ネットワーク」サイトより)

お隣のAさん宅の軒先に下がっている氷柱、兎に角水はどんどん氷ってしまう。

 一ヶ月以上留守にしてあった建物の中は冷えきって、部屋の中は零下の世界。兎にも角にもストーブに火を入れ、凍結防止のため抜いてある水を通さなければトイレも使えません。ところが、水道の蛇口は勿論のこと、水栓も全て凍りついてがちがち、びくともしません。外してあった水抜きの螺子も螺子の溝に付いていた湿気や水が凍っているため螺子山が合わずはまりません。兎に角、元栓から上の水の出口は全て水抜きの時開放してありますので、これを閉めなければ水は全く利用出来ません。
 昨年の冬、水道屋さんがヘアードライヤーを持って現れたあの出来事が無かったら、恐らく私は、途方にくれたことでしょう。私の大脳は、ヘアードライヤーを確り記憶していました。私は、迷うことなく、ヘアードライヤーで凍った水の出口を温め栓を締めてゆきました。水出しは至極順調に完了。
 ヘアードライヤー活躍の真髄は、これからでした。夕方、洗濯を始めた家内が、洗濯機の水が出ないと言う。恐らく水の通り道が凍っているのだろうと蛇口に繋がっているホースをドライヤーで温めると案の定簡単に問題は解決。洗濯機は順調に動き始めました。ところが、10分ほど経った頃、また動かなくなってしまったと言う。全自動洗濯機は、濯ぎ作業に入ったところで排水が出来ませんと作業を中止してしまいました。排水ホースは、給水ホースと違って太いので凍って詰まる様な事もありませんし、取扱説明書を読んでいろいろやってみましたが全く動く気配はありません。部屋の中は、もう大分暖かくなっていましたが、どう考えても、どこかが凍って排水が出来なくなって居ることが原因としか考えようがありません。物は試し、とにかくやってみようと、ヘアードライヤーで温風を洗濯機の下の隙間に吹き込み温めることにしました。待つこと5分、洗濯機は順調に動き始めました。やっぱり何処かが凍っていたんだ。
 時を同じくして、台所から家内の呼ぶ声。行って見るとお湯を沸かしてあった湯沸しポットの回りが水浸し。噴出したのか漏れたのか。家内は、古くなったので壊れたのではと言う。ポットの中に水は殆んど残って居ません。つぶさにいろいろ観察してみましたがポットが壊れている様子はありませんし、漏れるような傷みも見付かりません。また、何処かが凍っているに違いないと思い、早速、ポットをヘアードライヤーで温めてみました。水を入れ試運転。ポットは、正常にお湯を沸かし始めました。どこがどうなっていたのか分かりませんが、やっぱり凍りの所為でした。
 到着早々、ヘアードライヤーは大活躍、トラブルを全て解決してくれました。少しでも水に関係のある冬のトラブルは、兎に角ヘアードライヤーで温めて見ることをお薦めします。  標高1,100メートルの奥軽井沢は、寒いところでした。驚いたのは、先ほどの出来事でポットから床にこぼれた水が既に凍っていたことです。部屋の中でもこの有様。荷物を下ろし、車を少し移動させようとしたところ駆動輪は空回り、つるつるに凍った轍が出来、どうすることも出来なくなってしまいました。結局、管理事務所に応援を求め牽引ワイヤーで引っ張ってもらいやっと脱出。雪に埋まる事のないよう大通り近くに駐車しやっと一服。今は、戸惑うことの連続ですが、新しい経験連続、結構楽しい物です。冬の過ごし方も少しずつ上手になってきました。


2008/02/21