第34話 竈馬退治はこの一手で解決



 北軽には、カマドウマがいっぱい居る。もう半世紀以上昔、水を井戸から汲み風呂は薪でわかしていた小学生の頃、私の家の井戸端や竈の回りにもカマドウマがたくさん居て、その辺をぴょんぴょん跳ね回っていましたがさほど気にすることもありませんでした。完全に私たちの生活の中に溶け込んでいた生き物でした。そのようなカマドウマも私たちの生活環境が近代化し整備されてくるに従っていつの間にか私たちの回りから姿を消していってしまいました。
 カマドウマ(竈馬)は、バッタ目・カマドウマ科に分類される昆虫の一種で俗称「便所コオロギ、オカマコウロギ」などとも呼ばれており、私の記憶では、何の害もない愛すべき共生動物であったように思います。しかし、何十年振りかに再会した北軽井沢のカマドウマは、私の記憶とは些かことなる存在でした。

竈馬、竃馬、カマドウマ、かまどウマ etc.

 カマドウマ科の昆虫。体調15ミリメートル。コオロギやキリギリスに似るが、体は黄褐色で背がまるく曲がり、はねはなく、鳴かない。後肢は非常に長く、触角は糸状で長い。湿気の多い日陰の場所を好み、夜活動する。イイギリ、オカマコオロギ、エンノシタコオロギ、オサルコオロギ、エビコオロギ。(説明は、三省堂「スーパー大辞林」より)

 元来動物たちの生息エリアである森の中に勝手に侵入して山荘生活を始めたわけですから動物たちとの共生は当然のこと。私たちの周りにはいろいろな鳥や動物、虫などがやってきます。庭や餌場など建物の外にやって来る生き物たちはいいのですが、問題は建物の中に入ってくる生き物たちです。特に困ったのは、ネズミとカマドウマでした。ネズミとカマドウマの糞害には手を焼きました。
 北軽のネズミは、人里に住む家ネズミに比べると一回り小さく、どことなく可愛らしく愛嬌があります。時々洗面所の石鹸をかじったり程度の悪戯はしますが、困るような悪戯は殆どしません。ストーブの横に掛けてある手袋をはめようと思うと指の中に一杯ドングリが詰まっていたり、下駄箱の靴の中もドングリが一杯。あの小さなネズミが自分の頭ほどもある大きなドングリをせっせと運んでいる姿を思い浮かべるとデズニーの漫画に出て来るマウスを思い出し噴出してしまいます。日常は、寒い冬に備えての食料備蓄に余念がないのでしょう。このマウス君、家の中に糞さえ撒き散らしてくれなければ愛すべき共生者なのですが、何処から入るのか、食器棚の中、押入の中、洗面台の引き出しの中、とにかく家の中のいたる所に糞が散らばっている。こうなれば、いかに愛すべきマウス君と言えど我家の中に立ち入ることは罷りならんと言うことになりいろいろなネズミ捕獲器や駆除剤を試してみました。一番効果の有ったのは、ネズミが貼り付いて動けなくなるネズミ捕りシートでした。
 ネズミ退治作戦の過程で、このネズミ捕りシートが、カマドウマ退治にも絶大なる威力を発揮することを発見できたのは大変な成果でした。と言うのは、カマドウマによる食害や悪戯はありませんでしたが、糞害のひどさはネズミの比ではありません。兎に角、数が多い。数週間家を空けて帰ってくると、家中を何百匹と言うカマドウマが飛び回っている。大袈裟に聞えるかも知れませんが本当なんです。因みに下の写真の風呂に仕掛けたシートに張り付いているカマドウマの数を数えてみて下さい。これで優に50匹以上かかっています。その上、そこら中に糞が散らばっています。カマドウマの糞で困るのは、糞のところに染みができてしまうことです。家を空ける時、埃避けにベッドや家具等に掛ける白いカバーには点々と糞の染みが付いてしまいます。以前、ネズミの糞と思っていた物も、カマドウマの糞だった物がたくさんありました。

畳の部屋の隅2ヶ所にセットしたもの(1ヶ所に集めて撮影)
風呂の洗い場の隅にセットしたもの

 カマドウマ退治にネズミ捕りシートを使うようになってからは100パーセントと言ってもいいほどカマドウマを退治できるようになりました。上の写真は、気温も下がり始めた晩秋の頃のものでカマドウマの数も大分減っていますが、夏の最盛期には、数週間でこのシート全面が真っ黒に埋まってしまうほど捕まります。カマドウマの跳躍力は素晴らしく兎に角ぴょんぴょんと飛び回り、その行動範囲は家中なのでしょう。要所要所に捕獲シートを置いておけばシートに捕まるのは時間の問題。数週間家を空けて帰って来ても飛び回っているカマドウマは一匹も居らず実に爽やかな気分です。私は、一箱10枚入りの業務用ネズミ捕りシートを数箱ずつ買ってきます。そして、家を空ける時には、シートを要所要所に仕掛けておきます。注意しなければいけないのは、人間がかかってしまうといけません。兎に角、強力な接着力ですから、この上に乗ってしまったり、物を落としたりしたら、くっ付いた物は諦めるより仕方ないでしょう。間違って、シートの上に手でもついてしまったら正に悲劇。家に居る時はシートを片付けておきましょう。
 カマドウマでお困りの方は、是非試してみて下さい。


2010/11/06