カエルの呪い



カエルと魔王は仲が悪い。元々彼等は勇者と魔王で相対する存在であり、サイラスのことやカエルの姿にされたことなど因縁が深い。お互い仲間として素直に受け入れられるはずもないのだが、それでも些細なことで言い争ったり険悪な雰囲気になることは珍しくなかった。

クロノ「なあ魔王、どうして俺達の仲間になったんだ?」
魔王「フン、私はただ力が欲しかっただけだ。奴さえ倒せればそれでいい」
クロノ「ラヴォスか」
魔王「海底神殿での戦いで私は奴に魔力を吸い取られてしまった。今のままでは到底奴に敵わない」

魔王「いいか、私はカエルなどに期待はしていない。私が戦力として恃みにしているのはお前とルッカ、エイラだけだ。カエルの使える技を考えてみろ。最強の技カエル落としはHPが少ない時でなければ大ダメージを与えられない。敵にやられる可能性が高く使い勝手が悪い。勇者の癖に使える剣技はベロロン斬りとジャンプ斬りだけだ。エイラの三段キックの方が余程ダメージが大きい。しかも一番強い攻撃魔法はウォータガだ。お前のシャイニングや私のダークマター、ルッカのフレアの威力に明らかに劣る。回復役としては、はっきり言ってロボの方が優れているし、正直ベロロンなんかで回復されたくはない。戦力としては中途半端で全く当てにならないな」

魔王がこのようなことをべらべらとしゃべっていると、なにやら殺気が漂ってくる。
背後を振り返るとカエルがわなわなと怒りに身を震わせていた。

カエル「魔王!テメエ、さっきから聞いてりゃボロクソに言いやがって!!!だいたいお前がこんな姿にしたんだろうがーー!!!!!」
魔王に殴りかかるカエルを慌ててクロノがなだめる。
クロノ「まあまあ、落ち着けよカエル。魔王、カエルの姿って元に戻してやれないのか?」
魔王「それは無理だな。術者である私が命ある限り呪いが解けることはない」
クロノ「お前が死ぬまで戻れないのか!?」
魔王「そうだ」
クロノ「何でそんな厄介な呪いかけたんだよ。普通に姿を変えたり戻したりできる魔法もあるんじゃないのか?」
魔王「それはだな…つまり…その…」

魔王は口ごもった。

魔王「あの時はそれしか思いつかなかったのだ」




………………………………………




暫し沈黙が流れた。その後ドタンバタンと激しい音を立ててカエルは魔王に飛び掛ったのだった。無言のままさらに殺気を込めて
クロノ「――!!ま、待て、カエル。やめろって!」
カエル「コイツ、殺す!!」



(完)








ちんどん屋



久しぶりに現代ガルディア城に帰ったマールは父親のガルディア王と口喧嘩をする。

ガルディア王「何だその目は!お前が勝手に城を飛び出すからだぞ!かと思えばそんな奇天烈な輩を城に入れるなど、ちんどん屋でも始めるつもりか!」
魔王「ちんどん屋だと…?この私に向って無礼な!!」

魔王は鎌を振り上げる。

クロノ「よせ、魔王!」

クロノが慌てて止めに入る。二人が揉み合っているとマールが叫んだ。

マール「何てこと言うの!私の友達に!」

魔王はぴたっと動きを止めた。

魔王「…友達…?」
クロノ「何だ魔王、嬉しいのか?」
魔王「バ、バカなことを言うな!そんなわけがないだろうが!」
クロノ「顔 赤いぞ」



(完)








お友達!?



ヤクラ13世を倒し、無事ガルディア王の無実を証明することができたマール達。本物の大臣の姿が見当たらないので探す。裁判所で鍵を見つけ、階段の途中にある宝箱を開けるとまたしても中から本物の大臣が!どうやらヤクラは人を箱の中に閉じ込めるのが好きらしい。大臣もよく窒息しなかったものだ。

本物の大臣「ふーっ助かったわい!あの化け物め、こんなところに押し込めおってからに。おや、マールディア様お友達ですかな?」


カエル「なあ」
ロボ「何デスカ?カエルサン」
カエル「俺達って王女の友達に見えるか?蛙とロボットだぜ?」
ロボ「……」



(完)












リーネ広場にあるノルシュテイン・ベッケラーの実験小屋では様々なミニゲームが行われる。その中で最も難しいものは景品がなんと猫である。しかし、その為にはまず人質を取られ、制限時間内にクリアできないと人質は黒こげにされてしまうのだ。クロノはそのゲームにどうしても挑戦してみたかった。景品の猫が欲しいのだ。しかし、失敗すれば連れが黒こげにされてしまう。当初の連れはマールであった。マールが黒こげにされるなんて、そんなことできない!そう思ったクロノはずっと我慢していたのだった。

「…で、何故私なのだ」
魔王はいたくご機嫌斜めであった。ミニゲームの人質にされようとしているのだから無理もない。
クロノ「お前たまに宙に浮いてる時あるじゃん」
ベッケラー「やあ、クロノ君いらっしゃい。今日はどのゲームをやるのかな?」
クロノ「シルバーポイント80Pのやつだ」
魔王「こ、こら待て!勝手に話を進めるな!」
ベッケラー「それじゃあそちらのお連れさんを人質にもらうよ」
魔王「うわあー」
ベッケラー「それではレッツ・ゴー!」

一回目:失敗→魔王黒こげ
二回目:失敗→魔王黒こげ
三回目:失敗→魔王黒こげ


……

…………

………………


魔王「ク・ロ・ノ、貴様〜何度私を黒こげにすれば気が済むのだっ!!」
クロノ「いや、悪い悪い。どうもコツがつかめなくって」
魔王「別の奴を人質にしろ!もっと従順な奴がいるだろうが!」


ロボ「クロノ、何か御用デショウカ?」
クロノ「ちょっとミニゲームにつきあってくれないか?」
ロボ「了解シマシタ」

ロボは丁寧にお辞儀をする。


ロボを人質にして再びミニゲームにチャレンジ。

→一発で成功

クロノ「やったー!猫Getだー!!」
ロボ「オメデトウゴザイマス、クロノ」
魔王「クロノ…貴様、わざとかあーっ!」
クロノ「えっ?違うって。たまたま成功したんだよ!」
魔王「黙れ〜!よくも私を黒こげにしたなあ〜!」

魔王はファイガを唱えた。

クロノ「わあー魔王やめろー!!」



(完)







これは上の話とは違って、クロノは既に猫を11匹まで増やしています。クロノの家はゲーム中よりも広い設定です。



猫ねこ



無事クロノを生き返らせることに成功し、マール達は喜びに溢れていた。

クロノ「みんな、心配かけてごめん」
マール「ううん、いいのよ。無事戻ってきてくれただけで嬉しいの。そうだわ、せっかくだからクロノの復活を祝って、みんなでパーティーをしましょうよ」
ルッカ「そうね。クロノ、あんたの家でやりましょ。ずっと帰ってないでしょ。ジナおばさんも心配してるわよ」
マール「決まりね!さっそくクロノのお家へ行きましょう。ほら、みんな行こう!」
エイラ「魔王、お前も来い。みんなで飲む、食べる、歌う、踊る、楽しい」
魔王「フン、私は馴れ合うのは嫌いだ。お前達で勝手にやるがいい」
クロノ「そういえば猫達の世話もしてないな」
ルッカ「もう11匹になっちゃったのよね、確か」

魔王の耳がぴくりと動いた。

カエル「それじゃあ行こうぜ」
魔王「待て」

クロノ達は立ち止まって振り返る。

魔王「私も行く」



ジナ「あら、みんないらっしゃい」

クロノの母は一行を快く迎え入れた。そして中に一人見慣れない男がいることに気づく。マールやロボ達はこれまでにクロノの家へ行き、ジナに挨拶をしたことがあった。たいていはクロノの猫の餌をやる為に寄ったついでである。しかし魔王は今回が初対面であった。

ジナ「あなたもクロノのお友達?」
魔王「……」
クロノ「母さん、こちらは魔お――ジャキだ」
ジナ「ジャキ君。無口な人ね。恥ずかしがり屋さんなのかしら」

マール達はクロノが一旦死亡して生き返らせたことは上手く省いてジナにパーティーのことを話した。ジナは喜んで晩餐の用意を始めた。マールとルッカ、ロボも手伝う。ロボは元々工場のロボットだが、料理の手伝いもなかなか上手だった。クロノは料理ができず、カエルは簡単な自炊程度、エイラは現代の料理法など全く知らないので居間で雑談をしながら待つことに。どのみちキッチンもそれほど広いわけではないのであまり大人数が入ることもできなかったのだが。魔王は最初クロノ達と一緒に居間にいたが、いつの間にかいなくなっていた。

クロノ「あれ?魔王は?」
エイラ「ん?おかしいな。アイツいつの間に消えた?」
クロノ「俺、探してくるよ」

クロノは家の中を探し回った。全ての部屋を覗き、残ったのは自分の部屋。中からは猫の鳴き声がニャーニャーと聞こえてくる。幾分騒がしい鳴き声であった。

クロノ「どうしたんだろ?ずいぶんうるさいな」

クロノが自分の部屋の戸を開けると、そこには猫達に囲まれた魔王がいた。猫達は魔王の肩や腕に乗ってじゃれついており、魔王はこの上なく幸せそうに猫達を抱いて撫でていた。普段無口でニヒルな魔王が猫と戯れている様は見ていて思わず後ずさりしてしまう。見られていることにはっと気づいた魔王は慌てて居住まいを正す。咳払いをしながらクロノに話しかける。

魔王「何か用か?」
クロノ「…俺の部屋で何してるんだよ」
魔王「う、うるさいっ!勘違いするなよ。私は付き合いでここに来たのだからな。決して猫と遊びたかったからではない!」
クロノ「そうだったのか…」

クロノは呆れた。魔王は猫達をおろすとクロノに詰め寄った。脅しをかけた表情で絶望の鎌をクロノの喉元に突きつける。

魔王「おい、貴様、今のは他の奴等には絶対に言うなよ」
クロノ「わ、わかったよ。そろそろ料理が出来上がる頃だぜ。居間へ来いよ」



居間ではパーティーが開かれ、みんなで楽しくご馳走を食べ始めた。猫達もやってきてクロノや仲間達にじゃれついている。マールやルッカは料理を少し猫にあげていたが、魔王はわざと無関心を装っていた。

エイラ「うまいうまい。食い物たくさん」
ジナ「ブジンさん、お酒はいかが?」
カエル「おお、奥方、かたじけない」
ジナ「遠慮しなくてもいいのよ。はい、どうぞ」

ジナはカエルのことをブジンと呼んでいる。初対面の会話上そうなったのだが、カエルは訂正せずそのままにしてある。

ジナ「ジャキ君もどう?」
魔王「……」

魔王は無言でグラスを受け取った。

エイラ「エイラも飲む。酒、大好き」
ジナ「はい、エイラさん」
クロノ「俺も」
ジナ「クロノはまだ未成年でしょう。お酒は20歳になってから」
エイラ「クロ、イオカ村の宴で岩石クラッシュ飲んだ。エイラより酒、強い」
ジナ「何ですって?クロノ、お母さんの知らないところでお酒を飲んだの?」

ジナの眉がぴくりと上がる。

クロノ「あ、いや、その…」
エイラ「クロ、エイラと酒の飲み比べした。クロ、勝った」
ジナ「クロノ――」
クロノ「ル、ルッカとマールだって飲んだよ!」
ルッカ「あ、あら、私達はお酒は飲んでないわよ。ねえ、マール?」
マール「え、ええ」

ルッカとマールはそらとぼけてクロノから目をそらす。どうやら二人共知らぬ存ぜぬを通すつもりだ。

ジナ「クロノ、ちょっといらっしゃい」
クロノ「ま、待ってよ、母さん、わあー!!」

クロノはおしおきの為、別室に連れて行かれた。



パーティーが終わると、皆、寝室に引き取って眠りについた。目一杯騒いで体力を使い果たしたのか、ぐっすりと寝入っている。マールとルッカはクロノの飼い猫を1匹ずつ借りて一緒に寝ている。そんな中、クロノは久しぶりに自分の部屋で漫画を読んでいた。旅に出てからずっと部屋でゆっくりと過ごすことなどなかったので、飼い猫達も大喜びでクロノにじゃれついていた。気がつくとけっこうな時間になったのでそろそろ寝ようかと思った時である。部屋の戸をノックする音が聞こえた。ドアを開けると魔王が立っていた。

クロノ「どうしたんだ、魔王?眠れないのか?」
魔王「クロノ……」

魔王はひどく思いつめた表情でクロノを凝視する。

魔王「実は…頼みがあるんだ……それは、お前にしかできないことなんだ……!」
クロノ「何だよ」

魔王は長い間ためらっていた。

魔王「…猫…」
クロノ「猫?」
魔王「…猫の話をさせてくれ…」
クロノ「…………」


それから経つこと四時間、クロノはいかに猫が可愛い動物であるかという話を延々と聞かされることになったのだった。

魔王「そんな顔をするな。11匹も猫を飼っているお前ならわかるはずだ。猫の愛くるしさ、気ままな性格、ぬいぐるみよりもやわらかい触り心地、猫の毛並み、あのなんともいえない肉球のやわらかさ。この世に猫ほど可愛らしい動物は他にいない!!」

強く力説する魔王をクロノは呆れて眺めた。猫達はもうとっくに寝てしまっている。自分はいつになったら眠れるのだろうと思いながら仕方なく魔王の話を聞いていた。



明け方になって魔王はようやく話をやめた。

魔王「クロノ。猫を4匹貸してくれないか」
クロノ「4匹もどうするんだよ」
魔王「一緒に寝るのだ」
クロノ「……猫達はもう寝てるよ」
魔王「心配ない。私の魔法で連れて行く」

そういうと魔王は寝ている猫達の中から4匹選んであてがわれた部屋に引き取っていった。ようやく解放されたクロノはしばらく魔王の振る舞いに呆れて茫然としていたが、やがてわずかな時間だけでも寝ることにした。



翌朝、マール達が発見したのは猫達に囲まれ、心底幸せそうに眠っている魔王の姿だった。

カエル「不気味だな」
マール「気持ち悪い」
ルッカ「しっ!ダメよ、そんなこと言っちゃ!」
エイラ「魔王、朝だぞ、起きろー!」

エイラは魔王のみぞおちに肘を喰らわせた。

魔王「ぐあっ!  な、何をする貴様ー!」
エイラ「朝だ、起きろ、飯、食うぞ」
魔王「……」


その頃クロノは母のジナに起こされていた。クロノは元々寝起きが悪い。特に昨夜は魔王のせいで徹夜を余儀なくされたのだから無理もない。

ジナ「クロノ、いつまで寝てるの?他のみんなはもう起きているわよ」
クロノ「…う〜ん…」


クロノは寝ぼけ眼で朝食をとった。みんな和気藹々としてご飯を食べていたが、魔王だけは不機嫌であった。エイラに肘鉄を喰らった挙句、猫達は朝になるとみんなクロノのところへ行ってしまったのである。




そしてクロノ達は再び時空を超えた旅を続ける。あらゆる時代の、全ての生命の力を借りてラヴォスを倒し、生きとし生ける全ての星の生命を、未来を救う為に。

運命の時へ……




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