これはクロノトリガーエンディング後の話ですが、クロスとの共通点はありません。クロノとマールも結婚していません。



猫ねこPart2



クロノ達がラヴォスを倒し、未来を救ってから1年。どの時代も平和な時が続いていた。原始、古代、中世、未来、そしてクロノ達の住む現代も――



マールとルッカはクロノの家に遊びに来ていた。クロノの家にまた新しい猫が生まれたのだ。今度は5匹。

マール「これが猫の赤ちゃんかあ。か〜わいい〜」
クロノ「う〜ん、そうなんだけど…これで俺んちの猫は16匹になっちゃったよ。いい加減他に貰い手を探さないと…」
ルッカ「悪いけど私の家は駄目よ。機械がたくさんあるんだもの。猫が部屋で遊びまわったら危ないわ」
マール「私も貰いたいけど…パパって猫アレルギーなのよね」
クロノ「困ったなあ。俺、近所の人達で誰か貰ってくれる人がいないか探してみるよ。マールとルッカも手伝ってくれないか?」
マール「いいわよ」
ルッカ「任せといて」

クロノは近所の人達を当たってみたが、皆断られてしまった。世話が大変だから、責任持って飼う自信が無い、猫アレルギーだから、など理由は様々である。クロノは頭を抱えた。11匹までなら良かった。だがそれ以上となると、家の中のスペースも、猫の世話も限界が来る。このままではクロノの家は猫だらけでほとんど足の踏み場もなくなってしまうだろう。

そうやってクロノが頭を悩ましていると、1階の玄関から母親のジナの声がした。

ジナ「クロノー!ジャキ君が遊びに来たわよー!」

そして、ジナに案内されて魔王がやってきた。魔王の目は全くクロノを見ず、その視線はひたすら生まれたばかりの猫の方へ向かっていた。だが、ジナの前だからだろうか。顔を緩ませたいのを必死に自制をしているようである。ジナがお茶を出してクロノの部屋を出ていくと魔王は猫好きの本性を現し、赤ちゃん猫を可愛がり始めた。ゆるみきった顔は普段の彼しか知らない人には到底見せられないほどとんでもなく恐ろしいものだった。クロノは顔をひきつらせながら魔王に話しかけた。

クロノ「おまえ、何で猫が生まれたことを知ってるんだ?」
魔王「ルッカに聞いた」
クロノ「それで猫を見に来たのか」
魔王「そうだ。私が貰ってやろうと思ってな」
クロノ「おまえが?」
魔王「そうだ」
クロノ「駄目だ」
魔王「何っ?何故だ!おまえは私の猫好きはよく知っているだろうが!」

魔王は非常に心外だというように驚いた。

クロノ「だってさ、おまえ、自分の家持ってないじゃん」



ガーン!!!!!



魔王は非常にショックを受け、しばらく彼の頭の中には轟音がこだましているようだった。


ガーンガーンガーンガーン……………


クロノ「おまえがベッケラーから賞品を贈られるのはみんな『北の岬』だ。自分の家も持ってないやつに猫はあげられないよ」
魔王「……家……」
クロノ「そうだよ。『家』だよ。おまえがちゃんとした自分の家を持ったらあげてもいいぜ」


魔王はおとなしくひきさがっていった。


ジナ「あら?ジャキ君はもう帰ったの?」
クロノ「ああ」


魔王が帰った後、クロノは猫達を撫でながら思った。

クロノ「まさか魔王がやってくるなんてなあ…ルッカのやつ、あんなのに教えなくてもいいのに…ロボやカエルはどうかな…う〜ん、でも猫の飼い主がロボットってのもなあ…ぶつぶつ…」





そのまま数か月が経過した。ある日、クロノはマールとルッカと共にリーネ広場へ行き、赤ちゃん猫を貰ってくれる人を探していた。

クロノ「困ったなあ。このまま貰い手がいないままだったらどうしよう…もっと遠くの町までいってみるか」

「その必要はない!!」

クロノ「!?」

その時、昔ルッカが作ったテレポッド装置から魔王が飛び出してきた。マントを翻すとクロノのところへやってくる。

魔王「クロノ、おまえの猫は私がもらう」
クロノ「魔王!?どうやってここに…ルッカのテレポッド装置から…?」
ルッカ「あ〜ごめん、クロノ、言うの忘れてたけど、あれからテレポッド装置を改造したのよ。だからシルバードが無くてもいつでも仲間達に会えるわ」
魔王「フッ…そうだ。この間もここからおまえの家へ行ったのだ」
クロノ「……で、家は手に入れたのか?」
魔王「…見て驚くなよ。おまえ達3人はシルバードでやってこい。子猫達も忘れずにつれてくるんだぞ。魔王城とはうって変わってアットホームな我が家を見せてやる!」





クロノ達3人はシルバードで古代へと向かった。そして魔王に案内されるままにある大陸へ行った。そこには、1階建てだが、広い豪邸があった。

魔王「不動産屋にあたったらここが絶好の場所と聞いてな…」
クロノ「不動産屋?」
魔王「冗談だ」
マール「ま、魔王、どうしたの?」
ルッカ「私、あれからも時々会ってたんだけど、どうやら新しい家と猫のことで頭がいっぱいで、どうかしちゃったみたいだわ」


魔王「さあ、遠慮なく入るがいい。新しい我が家を案内しよう」

中に入ると、クロノ達がつれてきた猫達が一斉に家の中を探検し始めた。

魔王「フッフフフフフ……フハハハハ、お前達、よーく見るがいい!猫と人間の共同生活を最大限に考慮したキャットインテリアを!猫ドア配置!猫階段、猫ロード配置!猫が自分で出入りできるように、全部引き戸だ!!猫が運動できるように猫階段を設置、天井の梁には猫ロードを作った。猫が1人になりたい時…いや、1匹になりたい時の為に屋根付きの猫用ベッドもある!フッ…どうだ、クロノ!おまえの家は普通の家だからこうはいかないだろう!ハハハハハ!私の家は猫が住みやすい造りになっいる。私の方が上手だ。私の方が猫好きとしてはだ!!」


………どよ〜ん………


クロノは呆れてものも言えない。3人はしばらく赤ちゃん猫をあやし始めた魔王を見つめていた。


クロノ「…前から危ないと思ってたけど…」
マール「え?何、クロノ?」
クロノ「魔王って猫のことになるとスイッチが入っておかしくなっちゃうんだよな…このままにして大丈夫かな…」
ルッカ「いいんじゃない?もう世界は平和なんだし」
クロノ「おい…」





猫に夢中になっている魔王をよそにマールはお茶を入れた。とりあえずリビングでくつろぐことにする。

ルッカ「ねえ、この家って家具が2人分ずつそろえてあるわね。あっちの部屋見てよ。ベッドと机と椅子が2つずつあるわ」
マール「きっとサラが見つかったら一緒に住むつもりなのよ」
ルッカ「ふ〜ん、そっか〜」

魔王「さあ、もういいだろう、クロノ。おとなしく猫を渡すんだ」
クロノ「わかったよ。ったく、5匹全部ちゃんと面倒みれるんだろうな?」
魔王「もちろんだ。私の猫好きはおまえを圧倒的にしのぎ――」
クロノ「あーもういい、わかったって。また今度聞いてやるから」


こうして、魔王は猫達の面倒を見ながら、サラを探しては新居に戻り、また探しては家に戻る、という生活を続けるようになったのであった。
いつか姉を見つけ、共に暮らすことを夢見続けながら――





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