「ツインラッシュ!」

セオドアとアーシュラの猛攻が炸裂する。モンスターは倒れた。

アーシュラ「やったわね!連携もバッチリで。ありがとう、セオドア!」
セオドア「う、うん!」

セオドアとアーシュラは時々2人でモンスター退治をすることがあった。セオドアはセシルを、アーシュラはヤンを目標に修行の日々を送っている。セシルもヤンもまだまだ手加減している。親なのだから仕方ないのかもしれない。だからこそセオドアとアーシュラは親に内緒で猛特訓をしているのであった。

アーシュラ「じゃあ、またね!セオドア!」

アーシュラは別れを告げるとファブールへと帰る。

セオドア「アーシュラ…」

アーシュラの後ろ姿を見送りながらセオドアは物思いに耽るのであった。

アーシュラ。父の友人でありファブール王でもあるヤンの1人娘。セシルとヤンの親交は深く、セオドアとアーシュラは幼馴染みとして昔からよく知っていた。
しかしセオドアは最近になってアーシュラを特別な目で見るようになってきた。それは思春期を迎えた少年としては当然のことだったかもしれない。アーシュラは強く、そして美しく成長した。活発だが、お転婆というには礼儀正しい性格である。セオドアから見たアーシュラは大人っぽく、色っぽく、ふと気がつけばいつもアーシュラのことを考えていた。

カキーン!

カイン「集中力が鈍ってるぞ、セオドア!」
セオドア「は、はいっ!すみません!」

剣の訓練中も集中力がおろそかになってカインに注意される。セオドアは生真面目な性格なので激しく後悔した。現在剣の稽古はセシルとカイン両方から受けている。父親に負けない立派な人間になりたいと思っているセオドアはカインにも剣の相手を頼んだのだ。

セシル「カイン、いつもすまないな」
カイン「いいんだ。おまえの息子だからな。それよりセオドアの奴…」
セシル「最近うわの空の時が多いな。あの様子だと…」
カイン「気になる女でもできたかな?」
セシル「おまえもそう思うか?」
カイン「俺達にもそんな時期があっただろう?」

セシルとカインの間に少し気まずい空気が流れたが、その後はセオドアの話題に戻った。

セシル「セオドアの好きな女の子って誰だろう?気になるけど父親である僕にそう簡単に話してくれるとは思えないな」
カイン「まあ見守ってやるしかないな」



セオドアは頭がおかしくなりそうだった。夜寝るたびにアーシュラのことが頭の中をぐるぐるぐるぐると回ってどうしようもなくなる。

セオドア(い、一体どうしてしまったんだ!僕は…!!)

目を閉じると思い浮かぶのはアーシュラの花のような笑顔だった。



そのうちにアーシュラがヤンと共にバロンを訪ねてきた。今回は公式の訪問である。セシルとヤンは相変わらず穏やかに談笑している。そしてアーシュラはセオドアに会いに来る。小さい頃から同じようなことの繰り返し。いつものことだった。昔は無邪気に一緒に遊んでいた。今でも2人は仲良くおしゃべりをする。しかし今のセオドアにとってアーシュラとの会話はある意味拷問だった。平静を装うことができないのである。どうしても態度がぎこちなくなってしまう。アーシュラの方は特に気にしていないようだがセオドアは内心焦っていた。アーシュラからはふんわりといい香りが漂ってくる。それを意識するだけで鼓動が一気に高まってしまうのだ。

アーシュラ「セオドア、また内緒でモンスター退治に行きましょうね!」
セオドア「も、もちろんだよ」
アーシュラ「頼りにしてるわよ」
セオドア「ほ、本当!?」
アーシュラ「ええ、もちろんよ」
セオドア「あ、ああああのさ、アーシュラ」
アーシュラ「何?」
セオドア「ぼ、僕、アーシュラのこと好きだよ」
アーシュラ「私もセオドアのこと好きよ」
セオドア「え、ええっ!?

セオドアは心臓が飛び出しそうになった。頬が紅潮し、なんだか全身が熱い。そんなセオドアにアーシュラはにっこりと答えた。

アーシュラ「セオドアって可愛いから好きよ。まるで弟みたい」


ガーン!!!!!


ガーン

ガーン

ガーン


セオドア(か、可愛い!?弟!?)





その後――

セオドア「父さんっ!」
セシル「どうした、セオドア」
セオドア「今日から剣の稽古を倍にして下さいっ!一切手加減なしで!カインさんも!」
セシル「急にどうしたんだ」
セオドア「アーシュラに相応しい男になる為に――あ、いえ、そうじゃなくて、バロンの王子として相応しくなりたいんですっ!」

セオドアのこの発言によってセシルは息子の恋の相手を知ることができたのであった。



カイン「セオドアの恋の相手はアーシュラか」
セシル「そのようだね。2人共まだ子供だし、おまえの言う通り温かく見守ってやることにするさ」

あれから今まで以上に気合いを入れて剣の稽古をするセオドアであった。

セオドア(見てろよ。今に父さんよりもカインさんよりも、誰よりも強くなって、いつか君に相応しい男になってみせるからね!アーシュラ!)





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