ツキノワにとって憧れの女性はポロムだった。黒魔道士のパロムと白魔道士のポロムの双子は、二人でミシディアを支える存在であった。ポロムは白魔道士として人の傷を癒やす白魔法の使い手であり、日頃から人を救うことに興味があった。苦しんでいる人を見ると放っておけないのである。やんちゃなパロムをたしなめながら、しっかり者として皆に頼られ、優しい心を持つポロムがツキノワは好きだった。エブラーナ忍軍としてミシディアに偵察に行った際には必ずポロムの様子を見に行く。

ツキノワ「ポロムさんは素敵な女性だなあ。しっかり者で、とても優しくて、そして………とっても美人だ!」





ある日、ツキノワがミシディアに偵察に行くと、ポロムが何やら深刻な表情で塞ぎ込んでいた。ツキノワは一体、何があったのかと、いても立ってもいられなくなり、ポロムに話しかけた。

ツキノワ「ポロムさん!どうしたんですか?何かあったんですか!?」
ポロム「ツキノワ…今、ある地域で流行病が蔓延しているのは知っている?」
ツキノワ「はい。薬に詳しいギルバートさんがハルさんを連れて大勢の病人の治療に当たっているそうですね」
ポロム「そう。…でも、今度の流行病は一度発病してから死んでしまうまで、あっという間なの。だから死者がたくさん出ているわ」

ポロムの表情は暗かった。人が大勢苦しんで死んでいることを考えるだけで心が痛む。

ツキノワ「ポロムさんもお手伝いに行きたいと思っているんですか?」
ポロム「もちろん。私にできることがあれば何でもするわ。そして一人でも多くの命を救いたいの。でも、今度の流行病は厄介なのよ。一度発病したら死んでしまうまであっという間だし、薬で治療をしても体力がほとんど奪われて衰弱した状態になってしまうの。なかなか健康な状態に回復する人は少ないわ。それより手遅れで死んでしまう人の方が圧倒的に多い…考えるだけで悲しくなるわ…」

ポロムは涙ぐんでいた。

その後、ツキノワはポロムから今回の流行病について詳しく話を聞いた。

ツキノワ「つまり、治療薬だけじゃ大勢の人を救うには足りないんですね。エクスポーションと万能薬をたっぷり用意して、みんなで手分けして病人の手当をしないと」
ポロム「人手が足りないわ。それと発病してから死んでしまうまであっという間だから、あまり時間が無いのよ」
ツキノワ「薬ならエクスポーションと万能薬、魔法でいうとケアルガとエスナですね」
ポロム「治療薬で治った直後の人達はとても衰弱しているの。ケアルガ2回分くらい必要ね」
ツキノワ「それではポロムさん、僕とポロムさんのバンド技『癒しの風』を使いましょう!

ポロムとツキノワのバンド技「癒しの風」。それはケアルガ2回とエスナを味方全体にかけるものだった。

ツキノワ「ポロムさんの癒しの白魔法を僕の風の術で流行病の地域全体に行き渡らせるんです!これなら一気に大勢の人の治療と体力回復ができます!」

ポロムは目を瞠った。

ポロム「まあ!それは名案ね!」

ポロムは早速ツキノワと流行病の地域に向かった。そしてバンド技「癒しの風」を使った。今まで流行病で苦しんでいた人々はエスナの効果であっという間に回復し、今まで治療後は著しく体力衰弱していたのが、ケアルガ2回ですっかり回復したのだ。
ポロムとツキノワの「癒しの風」は多くの命を救った。本来であれば死んでしまうはずだった人達もかなりの人数が救われた。それは流行病が起きた地域の人々に生きる希望を与えた。今では人々はほとんど回復し、再発防止対策が取られ、地域復興にいそしんでいる。

ポロム「ツキノワ、協力してくれてありがとう!おかげでたくさんの命が救われたわ!」

ポロムは今度は嬉し涙で涙ぐんでいた。本当に心の底から嬉しそうな表情である。

ツキノワ「ポロムさんのお力になれて、僕も嬉しいです!」

憧れの女性のポロムに感謝されて、ツキノワは天にも昇る気持ちだった。





その後、ポロムはツキノワに何かお礼をしたいと思った。ツキノワはエブラーナの美味しいお菓子を食べたいと言った。ポロムはエブラーナに向かい、ツキノワが大好きなエブラーナの美味しいまんじゅうを買い、一緒に食べた。

ツキノワ「ポロムさん!ありがとうございます!このまんじゅう、僕の大好物なんですよ!」
ポロム「お礼を言うのは私の方よ!流行病の件であなたに助けられたんだから」
ツキノワ「…僕は忍びの者ですが、人の命を救うって、とてもいい気分ですね。こんなにいい気持ちになったのは初めてです」
ポロム「ツキノワ…白魔法を学びたくなったらいつでもミシディアに来てね。歓迎するわ!」

それに対し、ツキノワは黙ったまま笑顔で応えた。





その後、ツキノワがミシディアに偵察に行くと、パロムが絡んできた。

パロム「よう!ツキノワ!おまえ、いつもポロムのことをうっとりした目で見てるな!」
ツキノワ「それはそうですよ。ポロムさんはとっても美人で優しいですから!」
パロム「お?隠す気もないのか」
ツキノワ「僕にとって憧れの女性はポロムさんです!大人になったらきっとローザさんに匹敵するほどの美女になりますよ!」
パロム「そうかねえ?ところでおまえ、ポロムには憧れの男性がいるんだぜ。知ってるか?」
ツキノワ「いいえ。パロムさんは知ってるんですか?」

パロムは意地悪そうに言った。

パロム「いいか、ポロムはな、カインに憧れてるんだよ!」
ツキノワ「カインさんですか!確かにとってもカッコいいですよね!」
パロム「おまえとは比べものにならないくらいな!」
ツキノワ「そうですね。僕はまだ子供ですから。成長期もまだですし」
パロム「おっ?何だよ、悔しがると思ったのに」
ツキノワ「僕は年齢はまだ子供ですけど、精神的にはそんなに子供じゃないですよ。僕が大人になったら僕とカインさん、どっちがポロムさんに相応しい男になるかわかりませんよ?」
パロム「ほーう?カインは今やバロンの女性みんなの憧れなんだぜ!聖竜騎士でジャンプだってすごいからな!
ツキノワ「僕は忍者です。ジャンプだったら負けませんよ!」
パロム「おっ!言うなあ、こいつ!」

そう言いながらパロムは、もしかしてツキノワが自分の弟になるのだろうかと考えてしまったのであった。





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