私の名はセフィロス。元神羅のソルジャー・クラス1st。
私はかつて英雄と呼ばれていた。
まだ何も知らなかったあの頃。
私は他の奴等とは違う特別な存在なんだと思っていた。
自分と他人の戦闘能力の差を見るだけでもそう感じずにはいられなかった。
だが、それは私が思っていたものとは違う形で明らかとなった。

ジェノバ・プロジェクト。
空から降ってきた災厄を古代種と誤認したガスト博士らが立ち上げた計画。
私はそれによって生み出されたモンスターだったのだ。
そう、私はモンスターと同じ。
それを知って以来、私の心は憎しみで支配された。
全てが憎かった。

私の父親代わりとなってくれたガスト博士は何も教えてくれなかった。そして死んだ。
私は狂気に身を任せて数多の人々を殺めた。
そして私の狂気はとどまることなく、新たな殺戮を生んだ。
私は古代種の知識を得て星の支配者になろうとした。
私は選ばれし者。星の支配者として選ばれし存在。
私は星と1つになり、全ての精神エネルギー、全ての知識と知恵と同化しようとした。
そして新たなる生命、新たなる存在になるはずだった。

だが、私の野望はクラウドという無名の元神羅兵に阻まれた。
そして今、私はライフストリームの中を漂っている。
私が生まれてからの記憶が走馬灯のように駆け巡る。

私は何の為に生まれた?
私は何の為に存在した?
私は一体…



ある日、ライフストリームを漂っていると、他人の記憶の1つが私の中に入ってきた。
私が古代種の知識を得たように、赤の他人の記憶が入ってくることは珍しくない。
だが、その記憶は私に関するものだった。
ジェノバ・プロジェクトチームのガスト博士の助手、ルクレツィア。
その女性が私の実母だということ。
私を産んですぐに引き離されたということ。

私は驚愕に満ちた。
ジェノバ・プロジェクトの存在を知って以来、私はずっとモンスターと同じだと思っていたのだ。
だが………私にも確かに実の母親がいたのだ。ジェノバではなく。
過去の記憶。ルクレツィア博士が赤ん坊の私を抱きたいと切願している光景がライフストリームの中でおぼろげに映る。
自分の子を返してくれと必死に訴え、はねつけられる私の実の母。

私には愛情溢れる母がいたのだ。
そう考えた時、私の中で何かが変わった。
誰かに愛されていたこと。その事実を知っただけでどこか心が温まった気がした。
ああ…私のような人間でも愛情に飢えていたのか…
私は…

人体実験によるモンスターとして生み出されても、しょせん、私も人の子だったというわけか。
だが…もう遅い。
私はとうの昔に人としての道を踏み外してしまった。それどころか人間以上の存在になろうとした。
それまで持っていたなけなしの人間性すら全てかなぐり捨てて。
仮に私自身が人間性を取り戻したとしても、私は神羅のことは絶対に許せない。
私自身の生命を弄んだばかりか母にまで惨い仕打ちをした。
あんなに愛情深い母と引き離した神羅を私は許せない。

…………………………
もし、私に愛情深い母がいれば、私は狂うことはなかったのだろうか?
いや、どの道ジェノバ・プロジェクトの全貌を知った時点で私の怒り、憎しみはおさまらなかっただろう。
実の父と母すらこの手にかけたかもしれない。
そしてさらなる狂気へと身を投じて。

しかし、この気持ちは何だ?
実母ルクレツィアの存在が私の心を縛る。
温かい気持ちと母の境遇に心を痛める気持ち。
私はただ愛情に飢えていただけなのか?

どのみち、私の心はやるせなさでいっぱいだ。
私は神羅によって全てを狂わされた。
私は何の為に生まれたのだ?
私は何の為に存在したのだ?





さらなる苦悩を抱えながらも私は今日もライフストリームの中を漂う。

もし、次に生まれ変わる時が来たならば、
これまでのように全てに翻弄される生き様だけはしたくない。
人々の英雄になろうが世界の支配者になろうが、
私は私でありたい。





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