※これはエンディング後の話です。
アルティミシアを倒した後、世界には平和が戻った。スコール達は相変わらずSeeDとして活躍している。与えられた任務をこなす日々。そんな中、アーヴァインはセルフィに対して思いを馳せていた。セルフィ・ティルミット。幼い頃から好きだった女の子。孤児院で引き離されてから長年の歳月を得て再会した彼女は相変わらずとっても元気な女の子だった。くるりとカールした茶色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ、太陽のように明るい少女。いつも無邪気に振る舞っている。アーヴァインはそんなセルフィが大好きだった。だが、なかなかアプローチできないでいる。セルフィの方は恋愛にはあまり興味がないのか、アーヴァインの気持ちには全く気付いていない。そこで頭を悩ませるアーヴァイン。
恋愛に関して鈍感なセルフィに直球でいくかそれとも変化球でいくか。直球ストレートにいかなければ簡単にスルーされそうではある。しかし玉砕するのが怖い。そこでアーヴァインはまず変化球で様子を見ることにした。リノアに声をかけたりキスティスにちょっかいを出したり。リノアに声をかけた時はスコールに射殺すような目で睨まれ、冗談だとうまく誤魔化した。アルティミシア撃破後の祝賀パーティーではキスティスにちょっかいを出してみたものの、セルフィは全くと言っていいほど無反応だった。セルフィにとってはアーヴァインが他の女子にちょっかいを出していても全く気にならないのである。Oh, my god!
セルフィはどんな男が好みのタイプなのか。やっぱりラグナなのか。ラグナなのか。『ラグナ様』と様付けで呼ぶくらいだから余程憧れの男性なのか。何せバラムガーデンのガーデンネットワークの学際実行委員からのお知らせにラグナ様ページを作ってしまう程のファンなのである。アーヴァインは頭を抱えた。残念ながらアーヴァインはラグナ程のイケメンではない。ラグナも今となってはそれなりの年齢だが、あれだけのイケメンは滅多にいないと思う。あの整ったルックスとおっちょこちょいで熱い性格。そのギャップが女性にとっては心惹かれるらしいのだ。超イケメンなのにかかわらず本人は全く自覚がなく、根はものすごくいい人な為、男からも好かれる存在である。ある時、アーヴァインはさりげなくセルフィに尋ねてみた。
アーヴァイン「ねえ、セフィ」
セルフィ「な〜に、アービン?」
アーヴァイン「もしセフィが将来お嫁さんになるとしたら相手はどんな人がいい?」
セルフィ「ん〜〜〜そうだね〜ラグナ様みたいな人かな〜」
うああああ!やっぱり!!!!!セルフィが深く考えずに口にしていることは百も承知だが。ラグナにはいろいろな意味で勝てそうにはない。
アーヴァインのセルフィに対する思いに気付いていないのは当人のみ。スコールやキスティスなどはとっくに知っていた。
キスティス「セルフィは恋愛には興味がないのよ。まだちゃんと考えたことないみたい」
アーヴァイン「だけどさ、キスティ、あれだけ『ラグナ様』『ラグナ様』って言ってるんだからよっぽどラグナさんに憧れてるんだろうなって思うよ」
キスティス「あれは芸能人に憧れるようなものよ」
アーヴァイン「芸能人ねえ…いずれにしたって好きな女の子がカッコイイ男の人について騒いでるのを見るのはキツイよ」
片思いでなくとも、恋人同士でも憧れの有名人のファンだったりすると複雑な心境になり、時に喧嘩に発展することさえある。
アーヴァイン(ふう…セフィに振り向いてもらうにはどうしたら効果的かな…)
アーヴァインはオフの時は1人で昼寝をするのが好きだった。ガーデン内で手ごろな場所を見つけるとごろりと横になった。空は真っ青な快晴。心地よいそよ風が吹く。近くにはガーデンに植えられた花々が咲き乱れ、甘い香りがする。蜜を求めて蝶が舞う。アーヴァインは蝶に向かって人差し指を近づけた。すると蝶はアーヴァインの指先にとまる。あの時もそうだったなと、セルフィやスコール達と再会した時を思い出す。指先から蝶を放つとアーヴァインは帽子を顔の上に被せて昼寝に入った。
セルフィ「アービンどこ〜?」
セルフィはアーヴァインを探していた。そして昼寝中のアーヴァインを発見したのである。それを見たセルフィにいたずら心が湧いた。ここはひとつ、驚かしてやろうと思ったのである。アーヴァインの膝の上に乗ると、アーヴァインの顔に被せてある帽子を取った。今度はセルフィが帽子をかぶるとそっとアーヴァインの顔を覗きこんだ。人の気配で目を覚ましたアーヴァインは驚いた声を上げる。目を開けたら間近にセルフィの顔があったのだから。
アーヴァイン「セフィ!!!!!」
セルフィ「へっへ〜。おっどろいた〜?」
アーヴァイン「わ、わわっ!」
アーヴァインはどきまぎしたままだった。至近距離に好きな女の子の顔があったとなればドキドキして高鳴った心臓はなかなか止まらない。セルフィの方はちょっと驚かしてやろうと思っただけでずっと大笑いをしていた。
アーヴァイン(と、とにかくセルフィが頼れるような大人の男の余裕を身につけないと)
好きな子に振り向いてもらうにはまず自分を磨かないと。いざとなると心がくじけ、告白までいかなかったアーヴァインはそうやって今までも思いを告げるのを先延ばしにしていた。そんな日々を送っていたある日、ガーデンではまたSeeD試験が行われた。そしてまた新しいSeeDが誕生する。新SeeDの就任パーティーにスコール達をはじめアーヴァインも参加することになった。こ、これはチャーンス!パーティーではダンスが行われる。それにセルフィを誘うんだ!そしてあの秘密の場所にでも誘って、この募る想いを…!!
当日、アーヴァインは身だしなみを念入りにチェックし、人一倍めかし込んでパーティーに出席した。セルフィは相変わらず明るくみんなとしゃべって楽しそうである。セルフィの明るい笑い声が耳に響く。
アーヴァイン(がんばれ、僕)
アーヴァインは若干震えながらセルフィの元へ近づいた。なるべく何気ない風を装ってダンスを申し込むのだ。
アーヴァイン「セフィ、よかったら僕と踊ってくれないかな?」
セルフィ「いいよ〜」
快くOKしてくれたセルフィを緊張しながらエスコートし、ダンスの輪の中へ。さあ、うまくやらねば。ステップを間違えないよう――
アーヴァイン「痛っ」
セルフィ「あ、アービンごめ〜ん、あたしダンス苦手なんだ〜」
アーヴァイン「そうだったのかい。いいよ。平気だよ。僕がうまくリードするから――」
セルフィ「あ、また踏んじゃった」
セルフィ「あ、また踏んじゃった。ゴメンね〜」
…くっ、この程度でへこたれるものか!アーヴァインは何度も足を踏まれながらもできる限りうまくリードした。そしてさりげなく外へ誘う。パーティー会場の外のテラスはひんやりとした夜気が漂う。夜空は満天の星が輝き、ムードはある。
アーヴァイン(さあ、決戦の時だ…がんばれ、がんばるんだ、僕)
アーヴァインは呼吸を整えるとセルフィに向かい合った。
アーヴァイン「セフィ、星が綺麗だね」
セルフィ「うん、そうだね〜」
アーヴァイン「でも君にはかなわない。君はどんな星より輝いている」
セルフィ「急にどしたん、アービン」
セルフィはトラビア弁で話し出す。
アーヴァイン「セフィ、僕の気持ちを聞いてくれないかい?僕は…僕は…君のことが――」
セルフィ「あーーーーっ!ラグナ様だーーーっ!!」
見るとパーティー会場に正装のラグナがいるではないか!大統領であるにもかかわらず普段はラフな格好ばかりしているラグナであったが、元が超イケメンなだけに正装をするとこの上なく決まっている。
セルフィ「正装のラグナ様だーっ!カッコイイ〜!メチャクチャカッコイイよ〜!あ、そうだ、写真撮らせてもらお〜っと。んでもってラグナ様ページ更新しちゃうもんね!」
正装であまりにもカッコよく決まりすぎたラグナを見てセルフィはアーヴァインのことなど頭から吹っ飛んでしまったようだ。そのままラグナの元へ駆け出す。あとに残るは寂しい風を吹かせたアーヴァイン。
アーヴァイン「…さようなら、僕の告白」
ひゅうううぅぅぅ〜
アーヴァイン「…セフィ〜」
かくしてアーヴァインの告白は失敗に終わったのであった。
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