あれから1年。アーヴァインとセルフィは18歳になった。セルフィはここ最近、アーヴァインのことを見ていた。18歳になった彼は以前より雰囲気もだいぶ変わった。元より背が高く大人びた顔立ちのアーヴァインであったが、いつの間にか成長して大人の男の魅力を備えているように見えた。いつでも落ち着いて穏やかな物腰になったのである。そしてそんな彼に周囲の女性達は色めき立つ。

「ねえ、あの狙撃手の彼、最近素敵になったと思わない?」
「そうよね。以前はチャラ男風だったけど、今は随分カッコよくなったわ。ちょっといい感じ」
「自分からナンパしなくなったわよね」
「ナンパしなくても、あれじゃあ女達の方がほっとかないわよ」

そうなのだ。以前のアーヴァインは何かと女の子にちょっかいを出していたが、最近は落ち着いた雰囲気を漂わせ、女性が近づいてきたら紳士的に対応する。その大人びた雰囲気を見るとさらに女達は熱を上げる。本人はどれだけ自覚しているかわからない。アーヴァインの変化を見て、セルフィは次第に意識するようになった。冷徹な瞳で射撃訓練をするアーヴァイン。慣れた手つきで銃の手入れをするアーヴァイン。気がつくといつもアーヴァインを見てしまう。セルフィはどんどんアーヴァインのことが気になるようになってしまった。

アーヴァイン「ん?どうしたんだい、セフィ?」
セルフィ「アービン、変わったね」
アーヴァイン「そうかい?」
セルフィ「うん。自覚ないの?」
アーヴァイン「そりゃ人間っていうのは徐々に変わっていくものさ。自分では気がつかないうちにさ。セフィから見て僕はどんな風に変わったんだい?」
セルフィ「それは…」

まさか、アーヴァインを見ていてドキドキするなどとは口が裂けても言えない。

セルフィ「なんでもないっ!」
アーヴァイン「セフィ?」

セルフィはバタバタと駆け出して行ってしまった。

セルフィ(あたし、一体どしたん?アービン見てるとどっかおかしくなんねん。この気持ち、一体なんなん?)

一方、ひそかに天然女殺しのあだ名をつけられたアーヴァインはぽかんとしていた。周囲の女性からどんな目で見られているか、本人は全く自覚がなかった。意識的にカッコつけてるのではない、その自然体なカッコよさがさらに女性の気を惹きつけるのだが、心の中では常にセルフィ一筋の彼はいつの間にか他の女性に対して鈍感になってしまっていた。

アーヴァイン「セフィ、どうしたんだい?」
アーヴァイン「ほら、貸してご覧」
アーヴァイン「セフィ、大丈夫かい?」

日常のちょっとしたやり取りが頭から離れない。アーヴァインはセルフィに対しては非常に敏感であった。セルフィが無理して明るく振る舞おうとしている時は真っ先に気付く。そして何があったのか、穏やかに優しく尋ねてくる。セルフィが正直に話すと優しくフォローしてくれる。落ち込んだ時、傷ついた時、いつもアーヴァインの言葉が支えになって。

いつからこんな風になったんだろう。

アーヴァインの方はセルフィに相応しい男となるべく必死であった。常にセルフィを理解して支えになろうとし続けた彼にもとうとう努力の成果が現れてきたのか。セルフィの方もアーヴァインのことを意識し出した。1人の男性として。いつの間にかアーヴァインのことを悶々と考える日々を送るセルフィ。

セルフィ(あたし、どうしたらええねん…)
アーヴァイン「セフィ、どうかしたのかい?」

相変わらず男の色気を漂わせて穏やかに尋ねてくるアーヴァイン。本人全く自覚なしである。思わず、セルフィの中を激情が駆け抜けた。ドキドキしておかしくなりそうだ。どうすればいいのかわからない。セルフィは顔を紅潮させて逃げ出した。

アーヴァイン「セフィ!?」

駆け出していくセルフィをアーヴァインは追いかけた。一体どうしたのか。何かセルフィに嫌われることをやってしまったのだろうか。もしそうだとしたらすぐに謝らなければ。足が早いセルフィを必死に追いかけて捕まえるアーヴァイン。セルフィは真っ赤な顔で振り向いた。

セルフィ「アービン…」
アーヴァイン「どうしたんだい、セフィ?僕は何か嫌われるようなことをしちゃったかい?」

セルフィは黙って首を横に振る。頬は紅潮したままである。

セルフィ「そうじゃないねん…アービン…あたし…」

アーヴァインは黙って次の言葉を待っている。

セルフィ「あたし…アービンのことが好きや…」
アーヴァイン「えっ!?」

アーヴァインにとっては完全に不意打ちであった。ずっと片思いし続けてきた相手から急に告白されたのである。セルフィの頬は真っ赤に染まっている。こ、これは本当に…!!落ち着け。しかし心の中は動揺しまくっている。

アーヴァイン「ホント!ホ、ホントに!」

セルフィは赤くなったまま頷いた。頬を朱色に染めたセルフィはなんとも可愛らしい。アーヴァインは信じられない思いだった。ひたすら片思いを続けて、告白に失敗して早1年。今度はいつ告白に挑戦しようか考えていたところだが、まさかセルフィの方から!?

アーヴァイン「嬉しいよ!僕、実はずっとセフィのこと好きだったんだ!」
セルフィ「えっ?」
アーヴァイン「セフィ…!!」

アーヴァインは感極まってセルフィを抱きしめた。





お互いの想いを確かめ合った後も、セルフィは真っ赤な顔をしたままだった。アーヴァインの方は長年の恋が実ったということで喜びに満ちていた。しかし、ずっと見込みがなさそうだったのに一体いつからセルフィの気持ちが動いたのだろう。それはこれからおいおい聞いていこう。肝心なのはこれからだ。デートもたくさんするし、順調に2人の仲が進んだら頃合いを見てプロポー…いやいや、まだそれは早い。2人の関係は始まったばかりなのだ。
初めて恋というものをしたセルフィは随分と純情だった。顔を真っ赤にして碌に口もきけない状態でいるのがなんとも可愛らしい。アーヴァインはそんなセルフィを愛しげに抱きしめた。

かくしてアーヴァインとセルフィは恋人同士になったのであった。





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