リース「ホークアイ!」
ホークアイ「どうしたんだい、リース?」
リース「あ、あの…どうか私の夫になって頂けないでしょうか?」
ホークアイ「へっ!?」
リース「あなたが王制が嫌いなのは知っています。それに盗賊団で重要な地位にあることも。それでも無理を承知でお願いします!私と結婚して下さい!!!!!」

ホークアイは思わず呆然としてしまった。いきなり会いに来たと思ったらリースの方から求婚されたのである。

ホークアイ「…リース…俺がプロポーズするつもりだったのに…」
リース「ホークアイ、私の一生のお願いです。あなたの為なら何でもします」
ホークアイ「リース、そういうことは軽々しく言うもんじゃないぜ」

そう言うとホークアイはリースをしっかりと抱きしめた。

ホークアイ「ずっと奥手だと思ってたのに、先にプロポーズされるなんて、やられたなあ」
リース「だって…あなたに憧れる女の子なんてたくさんいるじゃないですか」
ホークアイ「俺はずっとリース一筋だっていうのに、信じてくれなかったのかい?」
リース「いいえ、でも、あなたは王制が嫌いで…」
ホークアイ「確かに嫌いさ。だけど君のことは好きなんだ」

ホークアイはリースに深く口づけると囁いた。

ホークアイ「愛してるよ、リース。この世の誰よりも。結婚しよう」
リース「ホークアイ…」





ここはローラント城の一室。ホークアイはリースの子守り役だったじいと今後の相談をしていた。

じい「こんな老いぼれが大臣の役目を果たしているなど、本当に我がローラントは人手不足になってしまったものですじゃ」
ホークアイ「あんたも大変だなあ」
じい「さて、このたびはリース様が正式にホークアイ殿との結婚を望まれているということで、貴殿の扱いをどうするかということですな」
ホークアイ「俺は盗賊らしくリースをかっさらうつもりでいたんだけどなあ」
じい「ホークアイ殿!現在ローラントは復興途上にあるのですぞ!エリオット様もまだ幼く、第1王女であるリース様がいなくなってしまわれたら我々には希望がなくなってしまいますじゃ。もちろん通常結婚というものは女が嫁にいくか、または男の方が婿にくるか、そのどちらかになりますが、今リース様はどうしてもこのローラントを離れるわけにはいかないのですじゃ。その点、どうかご理解を」
ホークアイ「じょ、冗談だよ。そんなことくらいちゃんとわかってるって」
じい「本当ですかな?」

じいは疑いの目をホークアイに向けた。リースをさらっていく。それはホークアイとしては半分本気で考えていたことでもあったのだが。

じい「とにかくホークアイ殿の方からこちらに来て頂くということになりますじゃ。リース様の幸せの為、どうか我がローラント王国にお越し下さいませ」
ホークアイ「元盗賊の俺の扱いをどうするつもりだ?」
じい「それについてワシに名案があるのですじゃ。ホークアイ殿はこのローラントの建国神話はご存じですかな?」
ホークアイ「いいや」
じい「かつてこのバストゥーク山に外敵が侵入した時、今は亡きジョスター王が身を呈してこの地を守りました。そして初めて守護神である『翼あるものの父』が民の前に姿を現し、建国の神託を与えたのですじゃ。そしてジョスター様は時のアマゾネス軍団長ミネルバ様と結婚し、この地にローラント王国が築かれたのですじゃ」
ホークアイ「それで?」
じい「再び翼あるものの父に神託を下してもらおうと思いましてな。ホークアイ殿もこの地を美獣イザベラから救った英雄でございます。ジョスター王がミネルバ様と結婚されたようにホークアイ殿もリース様と結婚する資格は十分にございますぞ」
ホークアイ「!?」

じいの提案というのはこれまでの史実を少々脚色し、世間から見てもホークアイとリースの結婚を自然なものに持っていこうというものだった。美獣からローラントを取り戻したホークアイをかつて外敵からローラントを守ったジョスター王になぞらえる。そこに翼あるものの父が同じように神託を下したとなれば人々は反対すまいというのだ。それにホークアイが翼あるものの父フラミーに認められ、世界を自由に飛び回っているのは周知の事実である。

ホークアイ「そ、そんな…そんなやり方ってアリなのか?」
じい「史実というのは得てして多少の脚色が行われるものですじゃ」
ホークアイ「つまりジョスター王の神託うんぬんも脚色されてるって?つまり嘘?」
じい「何を仰る。じいはそのようなこと一言も申しておりませぬぞ」
ホークアイ「いや、しかしだな…そうなると俺の立場はどうなるわけ?」
じい「ジョスター王のようにローラント国王になって頂きたいのですじゃ」
ホークアイ「はあっ!?」

ホークアイは素っ頓狂な声を上げた。

じい「翼あるものの父の神託があったということにすれば皆納得しましょう」
ホークアイ「そんなバカな!第一俺が納得しねえよ、そんなの!」
じい「あなたは我がローラントの守護神である翼あるものの父に認められているのですぞ」
ホークアイ「フラミーがそんな神託なんて下すわけがないじゃないか!」

その時、フラミーが空から舞い降りてきて、部屋の窓から大きな目を覗かせてきた。ホークアイはテラスに出てフラミーを宥める。

ホークアイ「俺が呼んでもいないのにこんなところへ来たらダメじゃないか」
じい「おお!翼あるものの父よ!このホークアイ殿にローラント国王になって頂きたいとは思いませぬか?そうすればいつでも一緒にいられますぞ!」
フラミー「きゅ…?…きゅきゅ〜ん!」

フラミーはホークアイにじゃれついた。

ホークアイ「あ、ちょっと待て、フラミー、俺は王になんかならねえぞ!」
フラミー「きゅーん…」

フラミーは急に悲しそうな目になった。涙を溜めてつぶらな瞳で訴えてくる。

ホークアイ「わー!ちょっと待てフラミー!まさかおまえまでその気になるなよ!このじいさんの策略に乗るなあー!」
じい「ホークアイ殿、お覚悟を。これも全てリース様の為ですじゃ」
フラミー「きゅーんきゅーん」
じい「王女であるリース様のお心を盗んだからにはそれだけの代償を払って頂きますぞ!」
ホークアイ「それは脅しか」
じい「結婚は墓場とも申しますからな」
ホークアイ「あのなあ!だいたいそれならエリオットはどうなるんだよ!」
じい「エリオット様はまだ幼いですからな」
ホークアイ「そういえば普通にいったらリースとエリオット、どっちが次期国王になるんだ?」
じい「先程お話しましたように、ローラントの歴史はまだ浅い。特に男子が王位を継ぐとは決まっていないのですじゃ」
ホークアイ「だったらリースが女王になればいいだろう?」
じい「それがリース様にはその気がないようで…」
ホークアイ「じゃあエリオットだ。摂政をつければいいだろう。いいか?俺は絶対に王になんかならないぞ!絶対に!」
じい「ホークアイ殿!」

その後散々押し問答をした挙句、次期ローラント国王はエリオットに決定した。そしてリースは王姉として、そしてホークアイは摂政として国を治めることになった。ホークアイは王になることは拒み続けたが、なんとか摂政ということで妥協したのである。

ホークアイ「皮肉なもんだな。王女様に本気で惚れちまったせいであれ程嫌っていた王制に関わることになるなんてな。でも俺は貧しい民から平気で金を巻き上げるような王制は絶対に許さない!俺なりにローラントを俺の望むような国にしていくぜ!」





ホークアイとリースの結婚式は華やかに行われた。ローラントは復興途上で資金繰りに困っていたが、世界的な英雄である2人の結婚を祝福して数多くの祝賀金がきたのだ。式にはかつての仲間のデュランとケヴィン、アンジェラとシャルロットが来、ホークアイを兄貴と慕うニキータも祝いの品をたくさん持って現れた。エリオットはおねえさまがお嫁にいってしまうと勘違いしてベソをかいていた。ボン・ボヤジのいとこのメルシーは大砲を使って美しい花火を散らせ、式はいつまでも盛り上がっていた。





その後はホークアイとリース、2人で手を取り合ってローラントを、エリオットを支えていった。ホークアイは盗賊だった頃の癖で城を抜け出すこともあって、時々城の面々を困らせていた。
仇敵同士の関係、盗賊と王女という身分の差、王女としての務めに忠実なリースと王制が嫌いなホークアイは互いを愛する想いでありとあらゆる障害を越えて結ばれた。

2人の愛は年月を重ねるごとに色褪せることなく、より一層深いものとなった。
2人はいつまでも深く愛し合いながらあらゆる苦難を乗り越えて行った。





Happy End





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