今は2月、外は寒い雪空である。昨日から雪がしんしんと降っており、寒気が入ってきて肌寒い。そんな中、人里離れたところに1つの民家があった。ランディとプリムの新居である。
1年前、ランディとプリムは駆け落ち結婚した。プリムの父エルマンの強制的な婚姻から逃れて、2人だけの幸せを見つける為に。ランディはプリムを幸せにするのと同時に、マナの一族として世界を見守る役目を果たしたいと思っていた。しかし、それは勇者としての名声が広まり人々に歓迎されるのではなくて、人里離れたところでひっそりと暮らすことを選んだ。

勇者としてもてはやされるなどランディの性に合わないし、とにかく彼は戦いを嫌い、静かに、ひっそりと暮らしていきたかった。その上で世界を見守る役目を果たしたかったのである。
プリムはそんなランディの意見に反対はしなかった。元々旅を初めて自分がどれだけ世間知らずか思い知らされたし、何よりランディと一緒に暮らせればそれで十分幸せだった。家は貧しくても清潔感のある簡素な造りでできており、プリムは何も不快感は感じなかった。それと、家を建てるのに当たっても、家事一般をやるにしても、思った以上にランディは何でもできるのに驚いた。

ランディは幼い頃からよそ者として虐げられ、何でもやらされたからだという。しかし、そんな彼も今では気の強い妻を優しく愛し、先導するしっかりした青年に成長した。



ランディ「ただいまプリム」
プリム「あっ!ランディ、もう帰ってきちゃったのね!」
ランディ「うん、凍った湖から魚も取れたし近くの村から食料も分けてもらったし、今日はこれで十分だよ」

プリムは慌てて鍋に蓋をした。

ランディ「?何作ってるの?」
プリム「それはできてからのお楽しみ!しばらく向こうで休んでて!」
ランディ(?僕の誕生日でも、プリムの誕生日でもないのに、何だろう?)

ランディは怪訝に思いながらも食料の整理をして暖炉で暖まった。



プリム「よーし!何度も失敗したけど今度こそ大丈夫ね!これで出来上がりだわ!」



プリム「ランディ、今日は何の日か知ってる?」
ランディ「え?今日?……別に何もないはずだけど?」
プリム「ランディ、バレンタインって知ってる?」
ランディ「何だい?それ」
プリム「バレンタインっていうのはね、2月14日に女の子が好きな男の子にチョコレートをプレゼントする日なのよ!パンドーラにはあったけど、ポトス村にはなかった?」

ランディ「うん、そんなの初めて聞いた」
プリム「そう。それで今日は何日?」
ランディ「14日だ。…それじゃ、君が作っていたのはチョコレート?」
プリム「そうよ!はい!受け取って!」
ランディ「ありがとう!」

ランディもプリムもお互い本当に嬉しそうな顔をした。まだ新婚なのだ。お互いの愛情も深い。

ランディ「プリム」
プリム「なあに?」
ランディ「愛してるよ」
プリム「クスッ、嬉しいわ、ランディ。私もよ」

そう言うと、2人はお互い抱き合って口づけをした。



まだ寒さが残る2月中旬の雪の日のことであった。





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