穂高岳山行記

2日目(前編):涸沢〜北穂高岳〜涸沢岳
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 8月15日(火)深夜3時、ごそごそと起き出す。テントの外に出てみると、雲の無い夜空に山のシルエットが浮かんでいる。今日も天気が良さそうだ。涸沢ヒュッテのテラスで、北穂高岳を眺めながら朝食を摂る。
 4:45、空が明るくなってきたので、Nさんに挨拶をして北穂高岳へ向けて登り始める。
涸沢槍〜北穂高岳南峰
【涸沢槍〜北穂高岳南峰】
お花畑みたい  岩がゴロゴロしている急坂の登山道からテント場を振り返ると、まるでお花畑のよう。しばらく眼下を眺めて、視線を目指す山の方へ向ける。さて、北穂高岳はどんな景色が広がっているのかな、楽しみ。 岩ゴロゴロの急登
【お花畑みたい】 【岩ゴロゴロの急登】
モルゲンロート 5:05頃、穂高が赤く染まり始めた。あぁ、モルゲンロートだ…。何度眺めても、穂高のモルゲンロートは美しい…。
オニシモツケ
【モルゲンロート】 【オニシモツケ】           
 前を歩いている男性は、ヘルメットを装備している。私と同じルートを歩くのかしら。誰かが前を歩いているのは心強いわ、と思っていたら、男性は休憩を始めてしまったので仕方なく追い抜く。ところが、追い抜いていて良かったのだ。後から山頂で再会するのだが、ウサギギク男性は南稜を詰める登山道ではなく、東稜のバリエーションルートを登っていた。後を付いて歩いていたら、とんでもないことになっていたと思う。 南稜、東稜と分かれる
            【ウサギギク】 【南稜、東稜と分かれる】
八ヶ岳が見えてきた  だんだんと景色が開けてくる。遠くに八ヶ岳(写真右奥)が見えてきて、逸る気持ちを抑えがたくなってきた。久し振りに高山を歩いている実感が湧いてくる。やっぱり山はいいなぁ…。もうすぐ稜線
【八ヶ岳(写真右奥)が見えてきた】 【もうすぐ稜線】           
 天気は上々。空は青いし、気温も風も適度だし、花は咲いているし、久し振りの登山がこんなに恵まれて幸せだわ。 ハシゴ
タカネヤハズハハコ ヨツバシオガマ
【タカネヤハズハハコ】 【ヨツバシオガマ】 【ハシゴ】
北穂高岳北峰  奥穂高岳への分岐を通過して、北穂高岳北峰が見えてきた。もうすぐで、日本の山岳風景を代表すると言われる山頂…。ミヤマムラサキ
【北穂高岳北峰】 【ミヤマムラサキ】          

7:21、北穂高岳北峰に到着。
あぁ…、言葉もなく、ただただ感動…。なんと素晴らしいことか。

北穂高岳北峰のパノラマ
【北穂高岳北峰のパノラマ】
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やっぱり山はいいなぁ…。
私から山を取ってしまったら、何が残るかなぁ…。

槍ヶ岳
【槍ヶ岳】
 北峰の山頂で1時間20分ほど至福の時を過ごす。ここで長く休憩できるような予定にしておいて、本当に良かった。
 昼食を摂っていると、嘘でしょ…といういでたちの3人(3匹?)がやってきた。サングラスを掛けたサルと、ミッキーマウスと、ショッカー…。なぜここにショッカーがいるのだろう。世界征服の前に、穂高征服か?写真を撮らせてもらいたかったけれど、山頂でアイドルになっているので遠慮した。
 8:40、いよいよ今日の核心部である涸沢岳へと向かう。ちょうど同じ頃、右の写真に写っている男性も歩き始めた。山慣れた感じで、歩き辛い岩場をヒョイヒョイと通過して行く。なんとかこの男性を見失わないように歩きたいな…。この男性は、後に私がお願いをして先導者になってもらう高浜市から来られたSさんである。
涸沢岳へと進む
【涸沢岳へ】
慎重に岩場を通過  しばらく歩くと、岩場で10代くらいの女の子が、泣いて一歩も進めなくなっていた。家族に励まされているが、「怖い、怖い」と泣いて脚がすくんで、立ち上がれなくなっている。先を歩いていたSさんも、女の子が通せんぼしているので、前へ進めなくなっていた。ここはそんなに怖い場所ではないのに…、疲れてしまったのかな。
 やっと女の子が通過したので、先へと進む。稜線では吹き上げる風がやや強く、帽子が何度も飛ばされそうになる。帽子に気をとられて滑落…なんてことにならないように、気を引き締める。
【慎重に岩場を通過】
 最低コルまで進む間に、二人連れを追い抜いた。後に道連れになる岩倉市からお越しのYさんと横浜市からお越しのHさんで、私はてっきりご夫婦かと思っていたが、この道を歩くことに不安を感じていたHさんが、通りがかったYさんと一緒に歩くことになったらしい。
 9:38、最低コルに到着。ここからが、危険マークの道だ。岩場を見上げて不安になった。難しそうだ…、先に進むのが怖い…、どうしよう…、どうしよう…、こんな時は…。
「すみません、先を歩いて下さい。後から付いて行きます」
かなり強引であるが、Sさんに先導をお願いした。お願いしたというより、押し付けた。この時Sさんは、「あーぁ、掴まっちゃった」と、思ったそうである。そんなSさんのお気持ちをよそに私は、「渡りに舟」とはこの事だわ、ラッキー、なんて思っていた。Sさんがここを歩くのは、4回目だそうだ。頼もしい。Sさんはじっと行き先の岩場を眺めていた。風があることが気がかりだと言う。慎重に状況を判断してから先へ進む方のようで、この時点で私は、Sさんに付いていけば安心だと思った。
最低コル
【最低コル】
危険箇所を通過  先導役を手に入れて安堵したのもつかの間、Sさんに付いて登り始めてすぐに泣きそうになった。切れ落ちた岩場では、踏み外したら垂直に滑落だ。怖い、怖すぎる…。Sさんの脚の運びをお手本に進むけれど、恐怖で身がすくむ。大袈裟でなく、生きて帰らなければ、と思った。先程泣いていた女の子はここで恐怖がこびり付いて、疲労困憊になったのかもしれない。昨夜テント場で知り合ったNさんが話していた「たしかに怖いけど、三点確保をしていれば問題ない」という言葉を思い出す。三点確保、三点確保、三点確保…と、呪文のように心の中で繰り返した。
 後に涸沢小屋のテラスで宴会をしていた時にお聞きしたのだが、先導役を押し付けてしまったために、Sさんは緊張されたそうだ。絶対に落石は起こせないし、離れ過ぎてもいけない。
「もう先導は嫌だ」
と、おっしゃっていたが、この時は文句も言わず私を助けてくださった。Sさんと出会わなければ、私は北穂高岳に引き返していたかもしれない。Sさん、心より感謝しております。ありがとうございました。
【危険箇所を通過】
 「ここで最後のはず」とSさんがおっしゃるクサリ場を登りきると、涸沢岳の狭い山頂が見えた。通過した…。安堵して、緊張が緩む。そこからゆっくり涸沢岳へ向かって、10:30に山頂に立った。 涸沢岳山頂
【涸沢岳山頂】
涸沢岳のパノラマ
【涸沢岳のパノラマ】
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涸沢岳山頂からの眺望も素晴らしいなぁ…。
ここから眺める目の前の北穂高岳は、カエルの頭のように見える。
ケロケロ、って鳴き出しそう。
なんてことを思いながら、山頂でゆったりと過ごす。
左:槍ヶ岳、右:北穂高岳
【左:槍ヶ岳 / 右:北穂高岳】
ショッカーさん、ミッキーさん、おサルさん  先へと進むSさんと一旦別れて山頂で寛いでいると、北穂高岳でアイドルとなっていた3人(3匹?)がやってきた。ここで話しかけてみた。
ねぇ、その服って蒸れない?
「超、蒸れます!」
だよねぇ…。何かの罰ゲームなの?
「いや、山を極めようと思って。でも、この格好で滑落して死んだら、親は泣くかも。山をなめるなって」
彼らに、写真をホームページに掲載する承諾を得ると、
「お、ネットデビュー?」
と、喜んでもらえた。“美しい散歩道”と教えたけれど、覚えていてくれたかしら。山を極めてね。楽しい時間をどうもありがとう。
【ショッカーさん、ミッキーさん、おサルさん】


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