この本は、『元禄御畳奉行』で知られる尾張藩士・朝日定右衛門(文左衛門)重章の
『鸚鵡籠中記』(名古屋叢書続編・全4巻)を題材にしています。現代訳とともに原文を併記し、補足として、
原文に対する注釈を詳しく付けたのが特徴です。
表題作「狼、暴れ候」は、江戸前期、愛知県春日井、小牧、犬山市周辺に狼が出て、多くの
人たちを噛み殺した事件の話です。尾張藩では御林奉行、御国奉行らを指揮官に、大掛かりな狼退治をした、と
いう話です。この捕獲劇は、なかなか迫力があります。
ほかには、現代の継親による子殺しに通じる里子殺しという残酷な事件もありました。泥酔した友人同士が
切りあう事件もありました。変な宗教もはやりました。借金の取り立てはいつの時代もたいへんです。官を騙る
事件もありました。
というわけで現代の事件のほとんどは、過去にも兆候があったことが分かります。江戸前期の事件・事故を見て、
なるほど、現代に通じる部分が多々あるということが分かっていただければ幸いです。そこに、歴史を学ぶ意味が
あるわけです。
本はB6判、128頁、定価1260円です。筆者としては、単なる有名人の著作に比べれば、はるかに内容は
濃いと思っています。だからといって、売れるとは限りません。いやみに聞こえるかもしれませんが、よい本が
売れる時代ではないからです。
このほか、検索エンジン(google、yahooなど)で「新家猷佑」と打ち込んで
検索していただくのも一法です。