best2005



はじめに

 新作中心の「ミュージック・マガジン」の低迷と、復刻もの中心の「レコード・コレクターズ」の堅調ぶりが、現在のポピュラー音楽の状況を物語っていると思う。たとえば、サリフ・ケイタの新作『ムベンバ』(ユニバーサル UCCM-1081)。はじめこそおもしろく聴けたが、3、4回くり返すうちにあきてしまったのはわたし個人の問題なのだろうか。ポピュラー音楽とは清濁を併せ呑んだ爽雑物だと思うのだが、『ムベンバ』では混沌はいったん要素へ分解され再構築された印象を受ける。だから、明晰であいまいなところがなく、その分、新たな発見に乏しいためくり返しに耐えられないのではないか。

 今年のベスト・アルバムは昨年、一昨年に比べると、全体に小粒な印象。これらのうち、新録ものは2位の"CONGOTRONICS 2" のみ。これとて“新作”というより“新発見”と呼ぶべきものだろう。「レコード・コレクターズ」のレコード評ですこしふれたように、ワールド・ミュージック、すなわち世界市場向けにエスニックな要素を取り込んで構築されたポップ・ミュージックも、ロックと同様、現代を反映する鏡としての役割を終え、“懐メロ”段階に突入したと書いた。“懐メロ”とは、聴き手が過去においてリアルタイムに体験した音楽であり、聴き手はこれらを通じて時代そのものを追体験する。
 しかし、わたしのなかでワールド・ミュージックはまだ“懐メロ”になりきっていない。いうなれば、ワールドミュージックの可能性をあきらめきれていないのである。サリフにかぎらずワールド・ミュージックの新作がどれももの足りなく聞こえてしまうのはこうしたわけからなのか。

 だから、どうしても復刻ものにかたよってしまう。しかし、これらは“過去”といっても、自分のなかではヴィヴィッドな“現在性”を帯びているので“懐メロ”とはいえない。第1位に映画『鴛鴦歌合戦』を選んだのはあきらかにルール違反だけれども、戦前戦中における日本のジャズの最後の輝きをとどめたものとして貴重であるだけでなく、“現在”もじゅうぶんに鑑賞に耐えうるだけの音楽水準の高さを評価してである。順位はかなり思いつき。昨年に続き、アフリカ中心の選出になったのは、ラテン系音楽にくらべて復刻が立ち後れているためだろう。
 今年は最後の最後まで相当迷ったが、自分としては満足のいくラインナップに落ち着いたと思っている。これらのうち、3枚も持っていればあなたは相当のマニアでしょう。
塚原立志

第1位 日 本
鴛鴦(おしどり)歌合戦 コレクターズ・エディション
日活 DVN-1008 (JP) DVD

oshidori

 昭和14年(1939)、蘆溝橋事件から2年、真珠湾奇襲の2年前という暗い時代に奇跡的に作られた和製オペレッタ映画第1号。はじめて観たのはかれこれ20年近く前だろうか。マニアックな映画ばかりをCM中断なしで放映する「ミッドナイト・アートシアター」というフジテレビの画期的な深夜番組のなかでだったと思う。それからビデオで何度もくり返し観た大好きな映画の待望のDVD化。
 わずか7日間で撮影されたというお手軽な時代劇だが、最初から最後まで陽気でモダンなジャズ・ソングが使われている。監督は時代劇の名匠マキノ正博。片岡千恵蔵(歌は吹き替え)、市川春代(チャーミング!)、志村喬(意外と歌がうまい)ら俳優に交じって、ディック・ミネと、服部良一の実妹、服部富子が出演。すばらしい歌声を披露してくれる。
 今回のDVD化ではじめて知ったのは、オペレッタ構成と作詞は島田磬也(きんや)、音楽指揮と作編曲は大久保徳二郎だったこと。ディック・ミネの名作「或る雨の午後」「上海ブルース」「夜霧のブルース」の作詞作曲コンビである。戦時中とは思えないジャジーなセンスにあふれ、DVDでは音楽のある場面のみを選択できるよう配慮されている。
 なお、このコレクター・エディションには、本篇のほかに特典ディスクとして、戦前にマキノ監督が作ったまぼろしの宣伝映画『泡立つ青春』とマキノ監督晩年のインタビューを収録。しかし、よほどのマニアでないかぎり、本篇のみの通常盤を持っていればじゅうぶんだと思う。


congotronics2 第2位 コンゴ民主共和国
Various Artists
CONGOTRONICS 2
Crammed Discs Craw 29 (Belgium) CD+DVD
congotronics
Konono No.1/ CONGOTRONICS
Crammed Discs Craw 27 (Belgium)

 11月末にエル・スールでの忘年会に出席したときにはじめて聴いた。リケンベ(親指ピアノ)をアンプにつないでくり出されるノイズすれすれの歪んだサウンドは原初的・暴力的なパワーにあふれている。前作"CONGOTRONICS" (Crammed Discs Craw 27) は、これと前後して入荷した"LUBUAKU" (Terp AS-09) ともども、KONONO No.1の単独アルバムだったが、本盤はかれらを含む7グループのコンピレーション。おかげでメリハリが感じられて飽きがこない。しかもDVD付き。
 急きょランクインの理由は、これらを再生しているとかならずといってよいほど、“魂のダンサー”といわれるわが自閉症の娘(8歳)とボンゴ・マニアの息子(2歳半)が乱入してきて踊りまくること。だから、いまだに座ってじっくりと聴いたことがない。ロゴスで聴いてしまうわたしとちがい、自閉症児と未就園児のハートを揺るがすとはかれらはたいしたタマだ。2006年夏には来日公演が予定されているそうなので、家族総出で参加するつもり。



hallelujah 第3位 ジンバブウェ
Hallelujah Chicken Run Band
TAKE ONE
Analog Africa AACD 062 (Zimbabwe)
greeen arrows
The Green Arrows
THE GREEN ARROWS
Analog Africa AACD 061(Zimbabwe)

 トーマス・マプフーモの音楽スタイル“チムレンガ”は、ハレルヤ・チキン・ラン・バンド在籍時の70年代前半に、マングラの鉱山労働者むけにトラディショナルな要素を大幅に取り入れたのが原型とされていた。今回、このまぼろしのバンドのCD初復刻によって、親指ピアノ、ンビーラの旋律を模した小気味よいギターと、細かに刻まれるハイハットが特徴的なサウンドはこのとき、すでにかなり完成されていたこと、そしてその功績はけっしてマプフーモ一人に帰せられものではないことがわかった。
 74年から79年までの18曲のうち、マプフーモはヴォーカルとドラムスで74年の4曲のみに参加(シークレット・トラック'HODI' を含めると5曲)。しかし、マプフーモなしでも(75年脱退)ジンバブウェ(80年独立)・ポップ独特の疾走感とヒリヒリ感は健在で完成度は高い。
 なお、Analog Africa からはハレルヤ・チキン・ラン・バンドと同時代に活動したギター・バンド、グリーン・アロウズの74〜79年までの音源も初復刻。ファズ・ギターを使ったサイケでみずみずしいサウンドは、80年代にブンドゥ・ボーイズがはじめたとされる“ジット・サウンド”のさきがけといえそう。こちらも甲乙つけがたい出来で2点あわせてのランクインとした。


london2 第4位 カリブ/アフリカ/イギリス
Various Artists
LONDON IS THE PLACE FOR ME 2
HonestJons HJR CD16 (UK)

 第二次大戦後に、トリニダード・トバコからロード・ビギナーとともにロンドンへ出稼ぎにやって来たカリプソニアン、ロード・キチナーの実感のこもったナンバーをアルバム・タイトルに冠したコンピレーション第2弾。カリプソのみだった前作に対し、本盤はおなじカリブ海のジャマイカをはじめ、ナイジェリア、ガーナ、南アなどアフリカからの移住者の楽曲も収める。これらの国々はみなイギリスの統治下であったり、またかつてそうだった国ばかりで、帝国主義支配がポピュラー音楽の形成に果たした役割の大きさをまざまざと思い知らされた。
 ビ・バップ・ムーヴメントの衝撃をカリプソに取り込んだヤング・タイガーの'CALYPSO BE' をはじめ、どの曲もレアというだけでなく楽曲の出来そのものがいい。個人的には、ガーナ・ハイライフの巨人E.T.メンサーが3ヶ月間のロンドン滞在中にトランペットで客演したといわれるウェスト・アフリカン・スウィング・スターズの2曲がなんといってもうれしかった。


20nigeria 第5位 ナイジェリア
Various Artists
EVERGREEN HITS OF 20 MUSIC MASTERS OF OUR COUNTRY NIGERIA
Evergreen Musical Company HRS 005 (Nigeria)

 エル・スールにわずかに入荷したきりのレアなナイジェリア盤。発売年不明のため当初は選出を見送っていたが、原田尊志さんが堂々あげていたのを見て「ならば」とランクイン。
 ガーナのE.T. メンサーの影響を受けて60年代に花開いたナイジェリア・ハイライフと、その展開としてのジュジュやアフロ・ビートのマスター20人のナンバーを1曲ずつ収録。ナイジェリア盤にはめずらしく、それぞれのプロフィールを顔写真付きでくわしく紹介したカラー・ブックレットが付いている。ただし、収録曲にかんするデータはなし。音質はお世辞にもよくないが、ボビー・ベンソンやロイ・シカゴなどハイライフのパイオニアから、フェラ・クティサニー・アデの有名どころまでレア音源満載。ボビー・ベンソンの名曲'TAXI DRIVER' にはカリプソとNYルンバの香りがする。


fela_3cd 第6位 ナイジェリア
Fela Ransome-Kuti & His Koola Lobitos
HIGHLIFE-JAZZ AND AFRO-SOUL (1963-1969)
ハイライフ・ジャズ・アンド・アフロ・ソウル (1963-1969)
Pヴァイン PCD-18511/3 (JP) 3CDs

 熱心なフェラのファンとはいえないわたしでも、60年代のまぼろしの初期録音を集めたこの3枚組は待ちに待った復刻だった。2002年にいったんは発売直前までいきながら急きょ延期となってしまったこの日本編集盤は、遠藤斗志也さんらフェラの研究家たちの熱意と努力によってようやく日の目を見ることになった労作。
 ソウルやロックよりもラテンやジャズ系が好みの自分にとって、アフロビートはとっつきやすい音楽ではない。だから、ロンドンでモダン・ジャズに心酔し、帰国後、新たに考案したという“ハイライフ・ジャズ”のほうが、かえっておもしろく聴けたりして。たんにハイライフとジャズをミックスさせたにとどまらず、フェラらしいソウルフルなエッセンスもすでに含まれている。フェラについてはあんまりヘタなこと書くと怒られるのでこのへんで。


cuervo 第7位 キューバ
Caridad Cuervo
YO QUIERO BAILAR
ジョ・キエロ・バイラール〜ラ・グアラチェーラ・デ・クーバ
Tumbao (EP) /アオラ (JP) TCD-709

 カリダ・クエルボは、日本でこそ無名だがキューバ本国では第一線の人気女性歌手だった(98年没)。本盤は、天才少女歌手とうたわれた12〜14歳のときの58年から60年に発売されたパナルト盤とマイペ盤をもとにした初の単独CD復刻である。
 彼女のアイドルがセリア・クルースだったことは聴けば一目瞭然。ソノーラ・マタンセーラばりの陽気なグァラーチャが彼女のキュートでハスキーな歌唱にとてもマッチしている。日本でいうと、ミコちゃんというより「トムとジェリー」の主題歌をうたったロカビリー系少女歌手、梅木マリに感覚が近いかも。
 全24曲中、後半の12曲のバッキングはなんと!エストレージャス・デ・チョコラーテ。トゥンバドーラ(コンガ)のチョコラーテをはじめ、アルセニオ直系にふさわしく黒っぽいアフロやルンバを演奏。かれらの演奏はあまり復刻されていないだけに貴重だが、チョコラーテが強烈すぎて主役であるカリダの個性が霞んでしまっているのはどうかと思った。


homenaje trova 第8位 キューバ
Various Artists
HOMENAJE A LA TROVA TRADICIONAL CUBANA
トローバに捧ぐ
Unicornio (Cuba) /アオラ(JP) UN-CD6002

 これもエル・スールの忘年会で、アオラの高橋さんが紹介してはじめて知ったアルバム。原盤はキューバのレーベルUNICORNIO。トローバは、19世紀末にキューバでさかんになったギターの弾き語りを中心とした歌謡音楽で、1920年ごろのソンの成立にも大きな影響を及ぼした。高橋さんがいうとおり、本盤最大の収穫は'LA TARDE''PERLA MARINA' など数々の名曲を残したトロバドール、シンド・ガラーイの自作自演がはじめて聴けたこと。たんに貴重というだけではなくて、ガラーイ本人の収縮自在なギター・プレイをはじめ内容がすばらしい。
 ほかにもマヌエル・コローナ、エウセビオ・デルフィン、アンヘル・アルメナーレスなどキューバ歌謡成立期の味わい深い名曲を収める。キューバ音楽というと、アフロ・キューバンばかりにとらわれがちだが、こういうシブい歌も大きな魅力だ。難点をいえば、50、60年代の比較的新しい録音も混在していて、キューバらしくコンセプトがはっきりしないこと。


stukas_retro 第9位 コンゴ民主共和国
Gaby Lita Bembo & Orchester Stukas
KITA MATA ABC
RetroAfric RETRO18CD (UK)

 70年代から80年代はじめにかけてキンシャサの若者たちを熱狂させたカリスマ、リタ・ベンボ率いるストゥーカスの(たぶん)未復刻音源集。
 ザイコ・ランガ・ランガとほぼ同世代で、パンクにたとえられることもある自由奔放なサウンドからはソウルやファンクの影響が強く感じられる。しかし、よくよく聴いてみると、根底にあるのは意外にもO.K.ジャズ・マナーの端正なルンバだったりする。じつはかれらは80年ごろにフランコのレーベルVISA80 からレコードを発売しているし、もうひとりのリーダーで歌手のロミンゴ・アリダはフランコ晩年のO.K.ジャズに迎えられている。
 アクの強いリタ・ベンボのショーマンぶりに注目が向かいがちだが、ヴォーカル・ハーモニー、ファンキーなギターワーク、うねるベース、キレのいいハイハットなど、バンドとしてもなかなかだった。


eugenie 第10位 イタリア
Bruno Nicolai
EUGENIE DE SADE '70
悪徳の快楽
Digitmovies CDDM030 (IT) 2CDs

 ブルーノ・ニコライは、作曲家としてよりも、70年代なかばまで盟友エンニオ・モリコーネのほとんどの作品を手がけてきた指揮者として知られている。しかし、ここに来てディジットムービーズの怒濤の7部作“ブルーノ・ニコライ・イン・ジャーロ”を筆頭に、作曲家としてのニコライがにわかにクローズアップされてきた。
 本盤は、69年公開のエロ・カルト・ムービー『悪徳の快楽』のCD初復刻。しかも未発表音源を多数含む2枚組。シャバダバあり、ジャズあり、ボッサあり、サンバあり、サイケあり、実験音楽あり、オラトリオ風ありと、イタリア系ラウンジ音楽のエッセンスがぎっしり詰まったヴァラエティ豊富な内容。なかでも、ハモンド・オルガン、マリンバ、ソプラノ・サックス、マラカスが織りなすムーディなラテン音楽をバックに、エッダ・デッロルソのスキャットがヨガりまくるナンバーがすばらしい。ラテン系音楽とエロはなぜこんなに相性がいいのか、真剣に取り組むべき課題と思った。ナイト・クラブむけ。限定盤。
 なお、Pヴァインが輸入盤に帯を付けて国内配給した『エ・イル・スオ・コンプレッソ』(Pヴァイン PCD-2601)は、本盤にも参加しているコーラス・グループ“イ・カントーリ・モデルニ”のリーダー、アレッサンドロ・アレッサンドローニ名義のライブラリー盤。カラーは近いが、こちらのほうが音は軽くエロ度はゼロ。たんなるクラブむけ。




そのほかのアルバム


doce de coco gonzaga_rice zambush2
golden afrique2
Various Artists
GOLDEN AFRIQUE VOL.2
NETWORK 29.076
Jacob Do Bandolim
DOCE DE COCO
Paris Jazz Corner 982 944-9
ルイス・ゴンザーガ
バイオーンの王様
RICE BSR-566
Various Artists
ZAMBUSH VOL.2
SWP 028
orientation chiaki_sengo shepp_for losers

Thione Seck
ORIENTATION
Stern's Africa STCD 1100

ちあきなおみ
戦後の光と影、瓦礫の中から
コロムビア COCP-33177
アーチー・シェップ
フォー・ルーザーズ
ユニバーサル UCCI-3012

 ここからはベスト10の制約上、やむなく選外としたアルバム。出来という点では上の10枚と比べても遜色はないと思うのでとりあげることにした。
 ブラジルのバンドリン奏者ジャコー・ド・バンドリンの"DOCE DE COCO" (Paris Jazz Corner 982 944-9) は、なによりも音質がすばらしく、しかもRCAへ移籍した49年以降の録音からなる3CDボックスには未収録の、47年の初ソロ'TREME-TREME' を含むコンティネンタル時代の音源を収録していたのがうれしかった。しかし、その後、これらがCD初復刻でないことが判明。よって選外とした。

 おなじくブラジルのルイス・ゴンザーガ作品集『バイオーンの王様』 (RICE BSR-566) は、選曲にあたった田中勝則さんの解説も詳細でわかりやすく、アルバムとしては文句のない出来。しかし、全体の2/3近い14曲が、96年に発売されたゴンザーガ本人の選曲による50周年記念3CDボックス・セットに収録済みだった点がひっかかった。ただし、このCDボックスはすでに廃盤だと思うので、ボックス・セットがいまだ入手可能なバンドリンより先に買うべきアルバムだと思う。

 おなじ理由で、50年代なかばから80年代はじめのルンバ・コンゴレーズを収録した2枚組"GOLDEN AFRIQUE VOL.2" (NETWORK 29.076) も選外とした。選曲や曲の配列に一貫性がないが、曲そのものはかなりマニアック。残念だったのは持っている曲ばかりだったこと。しかし、コンゴのポピュラー音楽は入手が難しくなっているし、ある程度のマニアの鑑賞にもじゅうぶんに耐えうる内容であるのはたしか。

 あなたはアリク(アリキ)・カタ Alick Nkhata という人物を知っていますか? 50年代に音楽研究者のヒュー・トレイシーがアフリカ各地の音楽を採集したさいにガイドを務め、その後はラジオ局のアナウンサー、通訳、そしてミュージシャンとしても活躍した南部アフリカ北方にあるザンビアのポピュラー音楽の父。かれの40年代末〜50年代の初期録音を集めたレトロアフリーク盤がかつてヴァケーションから国内配給されていた。
 当時は聴いた記憶があまりなく、60〜70年代のザンビアのポピュラー音楽を紹介した"ZAMBUSH VOL.2" (SWP 028) にアリクのグループが母体になったビッグ・ゴールド・シックスの歌と演奏がとてもいいので10何年かぶりに聴き返すことになった。美しいヴォーカル・ハーモニーとメタリックなギター中心のサウンドは60年代なかばのルンバ・コンゴレーズに南アの要素を足して素朴にした感じ。当初はストゥーカスではなくこちらを入れるつもりだったが、かれらの単独アルバムでない点を勘案して選外とした。

 そのほか、アフリカ勢ではセネガルのオルケストル・バオバブに在籍していたチョーン・セック Thione Seck の新作"ORIENTATION" (Stern's Africa STCD 1100) が気になった。タイトルのとおり、西アフリカから中近東を経てインドへと連なる音楽的な親近性が違和感なく表現されていたと思う。ただし、これもサリフの『ムベンバ』とおなじく3、4回の鑑賞で弾が尽きてしまった。

 日本では、『戦後の光と影/ちあきなおみ、瓦礫の中から』(コロムビア COCP-33177) の紙ジャケ復刻が印象に残った。昭和22年(1947)から昭和30年(1955)ごろまでのヒット曲のリメイク集でオリジナル盤の発売は昭和50年(1975)。収録曲のオリジナルは大方持っているのでちあきとおなじ曲順に編集して聴き比べてみると、「星の流れに」「カスバの女」のように、ちあきの情念がオリジナルを完全に凌駕してしまっている楽曲もいくつかある。ただし、濃すぎるため、聴きとおすにはそれなりの体力が必要。

 ジャズはわたしのなかでは“懐メロ”として楽しむものになっている。その最たるものが、今回、初復刻されたアーチー・シェップのインパルス盤『フォー・ルーザーズ』(ユニバーサル UCCI-3012) 。70年にオリジナル・リリースされたこのアルバムをもちろんリアルタイムに経験したわけではないけれども、「週刊プレイボーイ」に連載していた中上健次のエッセイ「破壊せよと、アイラーは言った」をむさぼるように読んでいた高校時代、たしかフランス社会党の自主レーベルから出ていたマックス・ローチとの2枚組デュオ・アルバム"FORCE"(湖で顔を出して泳いでいる毛沢東の背後から、バカでかい真っ黒な握りこぶしが突き出しているジャケットがかっこよかった)とともに、シェップのなかではいちばん好きなアルバムだった。およそ25年ぶりに聴いたその音楽はとても刺激的だった。アフロ志向のフリージャズのフレイヴァーはいまだ濃厚で、2年後のR&Bへ傾斜した『アッティカ・ブルース』なんかより、シェップのサックスも含めサウンドが野太くて好きだ。


(12.31.05)



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by Tatsushi Tsukahara