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Artist

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Title

THE KAMPALA SOUND
1960s UGANDAN DANCE MUSIC


wemba et viva
Japanese Title

国内未発売

Date 1964 - 1968
Label ORIGINAL MUSIC OMCD 013(US)
CD Release 1988
Rating ★★★★
Availability


Review

 ジョン・ストーム・ロバーツのオリジナル・ミュージックが復刻した貴重なアフリカ音源のなかでも、きわめつきに珍しいのが60年代ウガンダのポピュラー音楽を紹介した本盤ではなかろうか。
 
 ウガンダのポピュラー音楽と聞いても、音をイメージできるひとはほとんどいないだろう。それもそのはず。ウガンダのポピュラー音楽ははっきりそれとわかる独自のスタイルを持ち合わせていないのである。
 なぜかというと、ウガンダの首都カンパラには録音スタジオがなく、ウガンダの歌手たちはレコーディングのたびごとに東隣ケニアのナイロビに出かけなければならなかったのである。当時、ナイロビのどこのスタジオにも専属のバンドがいて、そのため伴奏はケニアのスタイルによるものであった。
 
 たとえば、'FUMBIRA ABAANA' という64年のナンバーは63、64年にケニアで流行ったアフリカン・ツイストだし、65年の'GWENASOBYA' では、ケニアのポピュラー音楽がコンゴ・スタイルに代わってきたことがそのまま反映されているというようにだ。
 
 本盤収録の全14曲中11曲が65年以降の録音だから、ここで聞かれる音楽はほとんどがコンゴ・スタイルで演奏される。ただし、ルンバ・コンゴレーズ独特の美しいヴォーカル・ハーモニーはない。代わりにコンゴにはない男女のデュエットが何曲かで聞ける(ケニアもこんな感じ)。シンプルで純朴そのもののヴォーカルがかえって新鮮だ。
 
 もちろんコンゴ・スタイルといっても事実上はケニアの音楽なので、アクセントの効いたベースなんかはいかにもケニア的。しかし、同じくオリジナル・ミュージックの発売で、ほぼ同時期と思われるナイロビのポピュラー音楽を集めた"BEFORE BENGA VOL.2 - THE NAIROBI SOUND"(ORIGINAL MUSIC OMCD022)を聴いてみると、かならずしもコンゴ一辺倒ではなくスタイルのヴァリエーションはもっと豊富だし、本盤にはないケニヤ独特のツッコミ気味のビートや土着的な要素が随所で聞き取れる。
 
 これは、同じ60年代でも"BEFORE BENGA"のほうが多少音源が古い可能性もあるだろうが、それ以上に思うのはスタジオ・ミュージシャンたちのプロとしての手並みの見事さだ。わずか2枚を比較しただけで断定するのは危険だけれども、同時期のケニアの標準的なサウンドを洗練度では上まわっている。おそらくかれらのなかに相当数のコンゴ出身のミュージシャンが混じっていたのだろう。有名なところでは、フランコのO.K.ジャズ出身のギタリスト“ファンファン”がそうだった。
 
 ウガンダに独自のポピュラー音楽のスタイルがなかったぶん、かれらスタジオ・ミュージシャンたちは地元ケニアのミュージシャンのバックをつとめるときより規制がゆるやかだったのだと思う。だからケニアより早くコンゴ・スタイルに染まったのではないか。
 
 しかし、なかにはコンゴ音楽の範疇には収まらないナンバーもある。たとえば、66年録音の'AMAZIMA LONA' はカントリー&ウェスタンのようなノンキで気ままな曲調だし、同じく66年の'HAMADI' はマイナーな感じが戦前のカリプソっぽい(間奏部にはいる泣きのサックスはなぜかセネガルのラテン音楽を思わせたりする)。
 そして、きわめつけは68年の'NAWULIRANGA' 。コール・アンド・レスポンスによるハチロク調の民俗音楽っぽい曲調ながら、伴奏はモダンなギターバンド・スタイルでおこなわれる。伝統とモダンが見事にブレンドされた“ワールド・ミュージック”のさきがけのような曲である。
 
 こんなふうに書いていると、ウガンダのポピュラー音楽には主体性のかけらもないようにとらえられるので、最後にひとこと弁護を。
 ウガンダ人の多数派をしめるガンダ人は、国名の由来になったブガンダ王国の末裔たち。かれらは東アフリカでもっとも早く19世紀なかごろにはヨーロッパ文化と接触していた。そのため、英国の統治下で早くから西洋化教育を施されていた。
 コンゴ、ケニヤ、タンザニアの音楽がキューバ音楽に由来するオープン・コードを多用するのにたいし、ウガンダの音楽は讃美歌の影響から4声和音が好まれるという。われわれがケニヤよりウガンダの音楽のほうがとっつきやすいと感じるのはきっとそのせいでもあったのだろう。


(11.30.03)



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by Tatsushi Tsukahara