Sound Tracks > Spaghetti Western

Artist

GIANFRANCO & GIAN PIERO REVERBERI
CARLO RUSTICHELLI

Title

PREPARATI LA BARA!
UN MINUTO PER PREGARE, UN ISTANTE PER MORIRE


preparati la bara
Japanese Title 皆殺しのジャンゴ/(未)
Date 1968 / 1967
Label RCA 74321-63517-2(OST139)(IT)
CD Release 1998
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆◆


Review

 「皆殺しのジャンゴ」は、ニコラ・ディ・バーリの判で押したような“マカロニ的”主題歌(英語)で幕を開けると、以後、この基調で全体が貫かれる。といってもワン・パターンというのではなく、しっかりしたメイン・タイトルがあって、それと他の曲とのあいだに断絶が感じられないという意味での一貫性である。当たり前のようだが、主題歌だけはやたらとかっこいいのに、残りはすべてスカというケースが、デ・マージをはじめ、マカロニ音楽にはよくみられるのである。その意味でマカロニ音楽のお手本といいたくなるようなまとまったスコアであるが、逆にいえば意外性があまり感じられないともいえる。
 
 作曲者のジャンフランコとジャン・ピエーロ・レべルベーリは、おそらく兄弟だろうが、この作品以外に聴いたことがないけれども、思うにかなりまじめな人たちなんじゃないか。スペイン風ギター・ソロでメイン・テーマを綴った6曲目にそんな面がよくあらわれている。とても美しい曲であるが、ギターの響きは硬質で泥臭さがまったく感じられない。このきまじめで端正な面もちは、ストリングスを中心としたオーケストレーションや、パイプ・オルガンを模したハモンド・オルガンの荘重な響きのなかにもあらわれている。ヒーローは全身に砂ぼこりをまとっているが、この砂ぼこりはあらかじめ計算された汚れなのだ。ラスト(11曲目)は、ディ・バーリによるイタリア語ヴァージョン。
 
 レべルベーリとは対照的にルスティケリの"UN MINUTO PER PREGARE, UN ISTANTE PER MORIRE"は、マカロニ的要素がかけらも感じられないドイツ・ロマン派的な交響楽。これで西部の風景が思い浮かんだらおかしい。その荘厳で神々しくさえある音の彼方に広がるのはワーグナーの世界。ローエングリンが白馬にまたがって現れてもおかしくない。唯一、ギターを用いた16曲目は「禁じられた遊び」系のヨーロッパ映画の雰囲気。ここは音楽を論じるコーナーだから、映画自体についてはいっさい言及しないことにしているが、ロバート・ライアンを迎えたこの映画、どんな映像なのかとても興味をそそられる。ちなみに指揮はブルーノ・ニコライ。アメリカの作曲家には絶対書けないスコアだと思う。同じようにマカロニ音楽のにおいのないスコアを書いたピッチョーニのアルバムは1枚も入れなかったのに、わたしがこれを高く評価するのは、そのミス・マッチ感があまりにすさまじいためだ。知られざる名スコアである。


(6.8.03)



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by Tatsushi Tsukahara