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Artist

WILFRIDO VARGAS

Title

SIEMPRE ... WILFRIDO!


siempre
Japanese Title シエンプレ・ウィルフリード
Date 1990
Label ボンバ BOM2016(JP)
CD Release 1990
Rating ★★★
Availability ◆◆◆◆


Review

 ウィルフリード唯一の国内プレス。発売当初、どんなに探してもついに輸入盤を見かけることがなかったことの背景には、国内発売元のボンバの圧力が働いたためと勘ぐったりもした。

 アルバムは、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」のようなシンセのイントロで幕を開け、いきなりメレンゲになだれこむ。つづく'AGUA'は、出だしがコンゴのルンバ・ロックのような旋律とリズムを持った曲で、シンセを多用した往時のワールド・ミュージックを思わせる。
 ライオンの雄叫びではじまる'LEON SALVAJE'には、ラス・チカス・デル・カンニューヨーク・バンドと並ぶウィルフリードの秘蔵っ子アルタミラ・バンダ・ショウが参加。
このあたりまでは、ウィルフリードの無節操さがまあプラスに作用している。問題はアルバムの後半だ。
 打ちこみ中心につくられた'MARIA'は、ハウスっぽいタテノリのビートをとりいれた意欲作ではあるが、ラテン的グルーヴをまったく欠いた単調なノリ。ひと頃のコムロみたいで退屈このうえない。
 ウィルフリードの悪食ぶりがマイナスに作用した典型例が、バラーダといわれるエロティック歌謡サルサに挑んだ'DI LO QUE QUIERAS'。聴いてて胸クソ悪くなる。そして、とどめはラストのクソおもしろくもないボサノヴァ風のインスト・ナンバー。

 と、まあこんな具合に、前作"ANIMATION"で「ぶっこわし」路線にひとまず終止符を打ち、“まともに”メレンゲに取り組んだ姿勢が一部の“純正”メレンゲ・ファンからは評価されたが、『エル・クク』でウィルフリードを知ったわたしの耳には“フツーのメレンゲ”としか感じられなかった。
 また、前作の1曲目でブッとんだアレンジをやってのけたヒルワルド・クロエスにテクノロジーにかかわるアレンジをすべて任せたことの影響も大きいと思う。"ANIMATION"ではテクノロジーが「破壊」として作用したのにたいし、こちらでは「構築」に向かっている。その結果が、'MARIA'に代表されるようなテクノっぽく単調で薄っぺらい仕上がりであった。

 このアルバムを期に、ウィルフリードは長い低迷期をむかえることになる。
 ちなみに、2000年に再発されたリマスター盤には'MARIA''AGUA'のディスコ・ヴァージョンが追加収録されているが未聴。


(8.25.02)



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by Tatsushi Tsukahara