World > Africa > Guinea | ||||||||||||||||
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Title | ||||||||||||||||
DISCOTHEQUE 76 |
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Review |
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思えば長い道のりだった。ほとんど情報がなく、おのれの耳だけを頼りに7枚分のレビューを書くのはかなりしんどい作業だった。でも、このすばらしいシリーズが一部の熱心なアフリカ音楽ファンを除いてはあまり知られないというのはいかにも惜しい。そんなことで、このつたない紹介文がきっかけとなって、最盛期のギニア・ポピュラー音楽を聴いてみようというひとがひとりでもいてくれたら、それだけでも苦労の甲斐があったというものです。 さて、シリーズ最終集は‥‥。見てください、この意味不明なジャケットを。中心の建物はシリフォンのレコーディング・スタジオかと思ったが、それにしては道路から奥まっているし、なんか集合住宅のようにもみえる。この建物の左手にある平屋の建物には'INTERNATIONAL'とか 'INDUSTRIAL'の文字がみえる。建物のすぐ先が港であることから推察するに、この平屋建ては国際物産展示場ではないか。 なんでそう思うのかというと、このアルバムがリリースされた1976年は、流通国営化などの社会主義路線を推し進めてきた結果、国内の物資不足がピークに達した時期と重なるからである。翌77年には首都コナクリの市場で暴動が発生、これ以降、国内経済自由化に転じている。つまりだ。セク・トゥーレ大統領の政策の正しさを対外的にアピールするプロパガンダのための媒体として、このアルバムが利用されていると見るべきではないか。それはいまの北朝鮮に似て、失政を偽装するための悪あがきなんだけど。 だが、このことをもって、セク・トゥーレの政策を全否定するのはまちがいである。ある時期においてはかれの政策は有効だった。ただ、「流れない水は腐る」のである。ギニアのポピュラー音楽もまったく同じ。 ディスコテークが名シリーズであるのは、いさぎよく76年をもって完結した(というより終了せざるをえなかった)ことにある。これ以上つづいていたとしても、シリフォン・レーベルのスタンスからもはや新しい流れが生まれることはなかっただろう。今回、初登場のシュペール・リオンの演奏を聴けば、そのことは一目瞭然である。 10分40秒におよぶ 'KITI' は、アフロ・キューバンの影響を受けた50年代のダンスバンド・ハイライフを思わせるまったりした味わいの曲。クラリネットに似たまろやかな音色のアルト・サックス奏法なんかは往時のハイライフそのものだが、ヴォーカルのベチャとした野卑な感じはいかにもギニア的。内容自体はそんなに悪くないものの、こんなに古くさい曲調が76年の時点に録音されたというのは奇跡というほかない。この古さは意図されたものではなく、無意識の結果だから始末が悪い。外部からの刺激が遮断された状況下で、ギニアのポピュラー音楽がこれ以上進化するとはどうしても考えにくい。 残りの5曲はすべてベンベヤ・ジャズ。ただし、75年にカリスマ的リーダー、デンバ・カマラを自動車事故で失い、新たにギタリストのセク・ジャバテをリーダーとして再スタートしたときの演奏を収める。ヴォーカルが弱体化したぶんを“ダイアモンド・フィンガー”と謳われたセク・ジャバテがギターで必死にカヴァーしようと八面六臂の大活躍。だが、どの曲も耳に残るのはセク・ジャバテのギター・プレイばかり。レイドバックするギターのほとばしりはすばらしいものの、曲全体の流れはたれ流し気味で起伏に乏しく、かれのギターをもってしてもデンバ・カマラの穴をじゅうぶんに埋め合わせるにいたっていない。 そんななかで、'PETIT SEKOU' は、デンバ・カマラ在籍時には聞かれなかったタイプの音楽。ブルース調のこのスロー・インスト・ナンバーで、セク・ジャバテはサンタナかロイ・ブキャナンかといいたくなるような泣きのギター・ソロをたっぷりと聞かせてくれている。 7年間にわたってリリースされたディスコテーク・シリーズが、ベンベヤジャズにはじまりベンベヤ・ジャズで幕を閉じるというのは運命的でさえある。ベンベヤ・ジャズの消長は、ギニア・ポピュラー音楽の消長であった。そして、それはセク・トゥーレ大統領の栄光と挫折の歴史でもあった。 |
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(6.7.03) |
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