World > Africa > Democratic Republic of the Congo | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
FRANCO & OK JAZZ |
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Title | ||||||||||||||||
MERVEILLES DU PASSE |
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Review |
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60年6月30日、コンゴ共和国(現コンゴ民主共和国)として独立する以前にO.K.ジャズがおこなったレコーディングは、あまり多く復刻されていない。コンゴで最初のEPは、60年1月にブリュッセルでおこなわれた独立のための円卓会議にグラン・カレのアフリカン・ジャズが同行して現地でレコーディングした「独立チャチャ」とされている。だから、独立前のO.K.ジャズの音源はすべて78回転のSP録音なのだ。 ちなみに、数ヶ月後、ふたたびブリュッセルへ向かうグラン・カレの誘いでフランコは初の欧州行を経験しているが、初のシングル・リリースはもうすこし先の62年ごろのようだ。 GRAEME EWENSの著書"CONGO COLOSSUS: THE LIFE AND LEGACY OF FRANCO & OK JAZZ" 巻末の(不完全な)ディスコグラフィによると、O.K.ジャズはデビュー以降、すくなくとも100曲以上をSP盤で発売していることになるが、CD復刻されているのはせいぜいその1/3程度。SP音源はテープによらないため保存がむずかしく、いまとなっては大半は紛失されたと考えるべきだろう。だから、"ORIGINALITE"とほぼ同時期の50年代の音源15曲を収録した本盤は、かなり貴重な復刻である。 "ORIGINALITE"とちがうのは、エッスー (cl, leader) とロシニョール (vo) がグループを脱退したのちの音源のみからなっていること。フランコの作品が9曲と大半をしめ、ついでヴィッキー4曲、エド2曲の構成。このことからもわかるように、エッスーなきあと、名目上のリーダーこそヴィッキーであったが、O.K.ジャズの音楽性を方向づけていたのは、20歳になるかならないかのフランコであった。フランコのエレキ・ギターと、複数のヴォーカル・ラインを中心にすえた初期O.K.ジャズのルンバ・スタイルが完成された、まさにそのときの演奏である。 それにしても、SPレコードの限界から演奏時間はいずれも3分前後とコンパクトながら、聴けば聴くほどに味わいが出てくる佳曲ぞろいである。キューバ音楽、なかでもオルケスタ・アラゴーンあたりのダンソーン系の音楽をテンポアップしたような陽気でエレガント、でもってサラッとした質感が特徴的である。 ライヴァルのアフリカン・ジャズが、ドクトゥール・ニコをはじめとする複数のギターによるつづれ織りのようなアンサンブルを得意としていたのにたいして、この時期の0.K.ジャズは、リズム・ギターにブラッツォがいたものの、実質的には、フランコのひとり舞台であった。ブラッツォは、クラベスやグィロを受け持つケースも多かったみたいで、そのぶん、フランコのギターがメロディもリズムも一手に引き受けている印象を受ける。 フランコのギターとともに、決定的な役割を果たしているのがヴィッキーとエドの繊細でスウィートなハーモニー。そして、イサーク・ムセキワと思しきサックスは、のちのヴェルキスほどにはエモーショナルではないが、適度の湿気と丸みがあって、フランコのドライで鋭角的なギターと見事なまでのコントラストを描く。 そのほか、リズム・セクションは、ブラッツォのほかに、ベースがドゥ・ラ・リュヌ、マラカス兼コーラスがセレスティン、コンガがデスーアンだろうか。楽器編成がシンプルなぶん、ハギレのいいベースとタイトなマラカスが浮き彫りにされて小気味いい。 そういえば、本盤収録のフランコによる陽気なルンバ'BABOMI MBOKA' のリフレインで、「フランコ、ヴィッキー、エド、(セ)レスティン、ドゥ・ラ(・リュヌ)、デスーアン、ブラッツォ、イサーク」とメンバー紹介されている。ついでに、それぞれのガールフレンドの名まえまで歌われているのがほほえましい。同じくフランコ作のロマンティックなナンバー'AYA LA'MODE' でも、ガールフレンドの名まえが歌われているようだ。 'OYANGANI NGAI?' は、フランコが得意としたスローなボレーロ・スタイル。後年にくらべると洗練度はまだまだながら、フランコのギターとグィロ、間奏部のそぼ濡れたサックス・ソロがラテン的哀愁をかきたてる。ヴィッキーとエドのヴォーカルもすばらしい。'KENGE OKEYI ELAKA TE' も同系のボレーロ。こちらでは、サックスの代わりにクラリネットが活躍。 これまたフランコ作の 'MAMI MAJOS' は、めずらしくスペイン語で歌われるミディアム・テンポのダンソーン風ルンバ。間奏部でのソプラノ・サックスのソロもふくめ、全編に愛らしさがあふれていて大好きなナンバー。同じくフランコによるちょっとメキシコ風のボレーロ 'OYE, OYE, OYE' では、フランコは一歩退いて、ヴィッキーとエドの美しいハーモニーとクラリネットがフィーチャーされている。変わったところでは、エドが書いた'TOKEYI KOBINA CALIPSO' という曲。通常のルンバ・コンゴレーズとくらべるとテンポはゆっくりめで、カリプソというより、リズムはむしろタンゴっぽい。 そして、フランコのギタリストとしての実力がいかんなく発揮されているのが、 前述の 'AYA LA'MODE'。エレキ・ギターの特性をフルに生かした、ちょっとブルースっぽく弦をかき鳴らしながら緩急をつけて伸び上がるようなプレイは圧巻。このころから、ニコの「ドクトゥール(博士)」にたいして、「ギターの魔術師」といわれるようになったのがよくうなずける。 なお、本盤は、フランスのソノディスクが、60、70年代を中心にコンゴのポピュラー音楽をCD復刻したおよそ100枚にのぼるシリーズ〈MERVEILLES DU PASSE〉の最初期の1枚としてリリースされた。続編には、"VOLUME II 1958/1962"(AFRICAN/SONODISC CD 36505)と、"VOLUME III 1961/1962"(同 CD 36508 )がある。 これら3枚をまとめて聴いてみると、コンゴの独立という歴史的出来事をあいだにはさんで、O.K.ジャズのサウンドが着実に変貌していったことがわかるが、すべてに共通するのは独立にわきたつ陽気で楽観的なムードである。 また、O.K.ジャズがゆるぎなきオリジナリティを確立する直前の、ラテン・アメリカ音楽にもっとも接近していた時期ともいえ、たとえば"VOLUME II" 収録のブラッツォのナンバー'CANALO' は、なんとソン・モントゥーノにチャレンジ。厚みを持たせたホーン・セクションとパーカッションが醸し出すグルーヴ感は、O.K.ジャズのイメージからは想像もつかないコクの詰まったアフロ・キューバン・サウンド。3分という演奏時間の短さが惜しまれる。 注意すべきは、この時期のO.K.ジャズはたんにラテン一辺倒だったのではなく、おなじく"VOLUME II" 収録の 'SANSI FINGOMANGOMA' のように、ハチロク系のコール・アンド・レスポンスによるアフリカ色が濃いナンバーにも果敢にチャレンジしているということだ。時代の流れとともに多くのライヴァルたちが消えていったなかで、晩年にいたるまで第一線でありつづけることができた秘密は、このようにかなり早い時期から、あらゆる音楽スタイルを実験的に試みてきたフランコの冒険精神があったればこそといえるだろう。 |
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(7.24.03) |
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