World > Africa > Democratic Republic of the Congo | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
FRANCO |
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Title | ||||||||||||||||
NAKOMA MBANDA NA NGAI |
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Review |
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フランコのCDは大多数がフランスのレーベル、ソノディスクから配給されている。amazonや日本国内のショップにはあまり入荷していないが、英国のStern'sやフランスのネットショップなどではまだ比較的入手しやすい。しかし、なかには配給元品切れで入手困難になったCDもいくつか出てきている。フランコ盤の、ソノディスクからのリリースは90年代に集中していることから、今後ますます品切れがふえることが予想され、いまのうちにゲットしておくことをおすすめします。 ひさしく品切れ状態になっているCDのなかでも、もっともレア度高く、しかも内容が充実しているのが本盤だろう。そんな事情から当初はリスト・アップしていなかったが、やはりいいものはいいということで新たにエントリー決定。 復刻にあたって万事いいかげんなソノディスクであっても、タイトルにオリジナル音源の発売年が記載されていたのが救いであったが、本盤にかんしてはそれさえない。アルバム・タイトルのもとになったフランコのナンバー'NAKOMA MBANDA NA MAMA YA MOBALI NGAI' は、スチュアートの著書'RUMBA ON THE RIVER' によると、ザイールの音楽誌'Salongo' の読者投票による76年ベスト・ソングに選ばれたとあることから、ここに収められた曲は70年代後半の録音とみてまちがいないと思う。 5曲すべて、CDはおろかLPにさえ収録されたことがなく、現在のところ、本盤でしか聴くことのできないレア音源のオンパレード。シングル発売時にAB面にまたがっていたのをそのまま収録したせいで、曲の半ばでいったんフェイドアウトしてしまうのは残念だけれども、バンドがもっとも勢いづいていた時期の録音だけにいずれの曲も完成度はきわめて高い。 シングルでいうAB面あわせた1曲の演奏時間は9分台から13分台。なかでも出色は、冒頭をかざる前述のナンバー'NAKOMA MBANDA NA MAMA YA MOBALI NGAI' 。知るかぎり、70年代までのO.K.ジャズ史上最長の13分43秒におよぶこの曲は、歌とも語りともとれるフランコの説教が延々とつづく後年、フランコが得意としたスタイルのさきがけといえそう。 語り手であるフランコと、リフレインを受け持つコーラスとが代わる代わる登場しながら音楽は進行していく。ようやくセベンに突入するのは12分近く経ってから。つまりセベン・パートはたったの90秒。ホーン・セクションにいたっては、イントロで数秒とこのときに約20秒入るぐらい。 「姑はライヴァル」の意味を持つこの曲は、食べても食べても満腹にならない女性の物語。彼女は日に日に太っていって、プールにザブンと飛び込むと、中の水がなくなってしまうほど。それでもひたすら食べ続け、ついにはおなかが弾けてしまう。周囲には彼女のはらわたやら血のりがべっとりと飛び散ってなんともいえない悪臭を放っていたというラブレーも真っ青の残酷でグロテスクな描写がある。想像を逞しくすると、姑との確執から過食症になった嫁の悲劇を皮肉とユーモアたっぷりに描いた滑稽譚なのだろうか。フランコが「アフリカのバルザック」といわれるのもよくわかる。 なんでも、この曲を聴いて自分のことが歌われていると思って自殺した女性がいたといううわさが立ったらしい。フランコの視点に女性蔑視の傾向があるとはよくいわれることだが、だとしても、このエピソードは現代の社会や風俗にたいしズバリ物言う民衆心理の代弁者としてフランコが大きな影響力をもっていたことのあらわれといえるだろう。 女性蔑視の視点といい、フランコの語りとコーラスの応酬を基本構成としている点といい、82年発表の'TRES FACHE' を思わせる("TRES FACHE" (SONODISC CDS 6863) 収録)。しかし、'TRES FACHE' がズークのような2拍子系のシンプルなリズムが使われているのに比べると、ハイハット中心のドラムス、うなるベース、軽快なコンガのコンビネーションから生み出されるビートはもっと複雑で切れ味が鋭い。歌(とくにコーラス部分)のあいだも終始フランコのメタリックなギターが奏でられるのも70年代ならではといえよう。反面、リンガラ音楽特有の旋回的なギター・アンサンブルはあまり目立たない。フランコの「語り」が「ぼやき」に達していないのもフランコがまだ若かった証か。 'NAKOMA MBANDA NA MAMA YA MOBALI NGAI' に次ぐ注目曲がシマロ作の'DESESPOIR' だろう。「絶望」とはいかにも「詩人」シマロらしいタイトルだ。ハチロク系の千鳥足のリズムにのせて、愁いを含んだゆったりしたコーラスとソロとで歌はつづられていく。5分なかばを過ぎたころ、音楽は一気に加速化しセベン・パートに突入する。かつてないソウルフルなギター・カッティングと熱いサックスのブロウがひたすらダンスを煽る。意外に思われるかもしれないが、曲の前半と後半でヴォーカル・パートとダンス・パートがこれほどはっきり分かれているのはTPOKジャズにはめずらしい。 そのほか、優雅なリズムにラテン音楽の片鱗がうかがえるフランコの'APPARTEMENT' 、TPOKジャズにファンキーなグルーヴをもたらしたベーシスト、デッカの'MAKAYA' 、74年に復帰したユールーの'BONI NKANA?'、ジョスキー、ダリエンストらとともに後期TPOKジャズの牽引者となるンドムベの'BENA' を収録。これらは前の2曲にくらべると標準的な内容。 述べたように現在品切れとなっている本盤を手に入れるには、中古市場をまめにあたるほかないだろうが、残念ながらそこでも見かけた記憶はない。しかし、熱烈なフランコ・ファンならいざしらず、そうでなければ死にものぐるいになってさがすほど価値のあるアルバムだとは思わない。『思い出の70年代』シリーズ2枚を持っていれば十分でしょう。 |
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(3.20.04) |
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