お料理


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(平成20年7月21日更新)

(第1回)

一銭 洋食

手軽さが身上、イタリア風も

材料(4人分)

(A)小麦粉 ・・・・・・・・・ 200グラム
   卵 ・・・・・・・・・・・・ 2個
   水 ・・・・・・・・・・・・ 1と2分の1カップ
ごま油 ・・・・・・・・・・・・・ 適宜
青ねぎ ・・・・・・・・・・・・・ たっぷり
サクラエビ、チリメンジャコ、天かす、かつおぶし、ちくわなど



【コ メ ン ト】
 ボウルに小麦粉200グラムを入れたら、卵2個を割り入れる。後は、泡立て器を使って小麦粉の中で卵を溶きながら、少しずつ混ぜていく。途中、ねっとりしてきたら、水1と2分の1カップを少しずつ加えて、更に混ぜる。
 牛乳でなくて水というところが、この料理の特徴。これから作るのは、一銭 洋食。「安い!」「簡単!」「おいしい!」の3拍子そろった庶民の食べ物なのだから。  関西ではおなじみのこの食べ物も、東京で話題にすると、「何、それ?」という顔をされることが多い。確かに、今どき、「一銭」なんて言葉がついている食べ物なんて、時代錯誤もはなはだしい。けれど、やっぱりこの食べ物は、お好み焼きでも、ましてやもんじゃ焼きでもなく、一銭 洋食なのだから仕方ない。
 さて、生地が出来上がったら、いよいよ焼いていこう。ごま油を引いたフライパンに、お玉1杯分くらいの生地を流しいれるのだけれど、ゆるいので、お玉を使ってきれいに流しいれようとするよりは、フライパンの方を傾けて生地を全体に広げる方がうまくいく。薄く広がった生地は、みるみる焼けてくるので、急いで具をのせよう。
 用意した具は青ねぎの小口切りをたっぷりと、サクラエビ、チリメンジャコ、天かす、かつお節、ちくわ。そてぞれ細かく刻んで生地の上にたっぷりのせたら、お好み焼きソースをかけ、生地を二つ折りにする。つまり、ソースのかかった具を中に挟むというわけ。
 たっっぷりの具をのせた生地をひっくり返すのは、かなり大変だけれど、ぺたんと二つ折りにしてしまえば、失敗がない。一銭 洋食なのだから、誰でも簡単に作れないとね。
 さて、焼き上がったら、そのまま一人1枚ずつお皿にのせてもいいのだけれど、ちょっと食べにくいので、フライパンの中でへらを使って半分くらいに切っておく。食べる時は、青のりなんかも合うと思うのだけれど、最近色気づいた娘は「歯にくっついたらみっともない」と言って絶対食べないので、かけないでおく。
 途中、具がなくなってしまったので、残りの生地はオリーブオイルで焼き、ピザ用チーズときざんだハムを散らして、ケチャップをぬってみた。端からくるりと巻けば、ちょっとおしゃれなクレープにみえなくもないのだけれど、二つ折りにしたからやっぱりどこか庶民的。
 とろりと溶け出したチーズとハムのしょっぱさがよく合い、「ピザトーストより簡単でおいしいかも」と一人悦にいる。けれど、この食べ物はいったい何と呼べばいいのだろう。一銭イタリアン!?なんだかねえ ・・・。           (終り)
                 

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(平成20年8月1日更新)

(第2回)

焼き鳥

材料(4人分)

   鶏もも肉 ・・・・ 2枚
   長ねぎ(ながねぎ) ・・・・・ 2本
   塩、こしょう、ごま油 ・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 効率よくまとめ買いをして、あるものだけでいかにおいしいものを作るか、これぞ主婦たるものの腕の見せどころ。一所懸命作っても、「あるもので適当に作った寄せ集めの料理だよね〜」なんて言われたら、がっくりきちゃうから、頭を使って作戦をねらなくちゃ。
 冷蔵庫から鶏もも肉2枚を取り出した。冷蔵庫にあるのは、長ねぎ(ながねぎ)2本とジャガイモ、油揚げ、そして中途半端に残った生野菜。今日は、これで焼き鳥定食といこう。
 冷凍保存してあった鶏肉で焼き鳥を作るのには意味がある。というのも、かろうじて包丁がはいるくらいまでほんの少し解凍した鶏肉は、ざくざくと気持ちよく一口大のサイコロ状に切れるし、竹串に刺すのだって、ヌルヌルせずにスパッと突き刺さる。
 切り終わった鶏肉は、2〜3センチの長さにぶつ切りにしたねぎと交互に竹串に刺す。「ねぎ、鶏、ねぎ、鶏、ねぎ」と刺すとねぎばかり目立って、何だか鶏肉をケチったみたいだから、刺す順番は絶対に「鶏、ねぎ、鶏、ねぎ、鶏」。 全部刺し終わるころには、いい感じに解凍している。
 いよいよ、焼いていこう。焼くなら、フライパン!! グリルやオーブントースターだと、竹串が焦げないようにアルミホイルを巻いたりするので、めんどくさい。かといって、オーブンで焼くのは後始末もいやだし、時間もかかる。フライパンなら、これらの問題をクリアして、しかも失敗なくおいしく焼ける。
 そんなわけで、フライパンにうすーく油を引いて火にかけ、熱くなったら、軽く塩を振って串を入れていく。後は、こんがりおいしそうな焼き色がつくまで、ひたすら待つ。じっくりじっくり触らずに焼くと、鶏皮から油がじわじわと染み出し、その油でさらに香ばしく焼きあがる。
 両面においしそうな焼き色がついたら、最後にふたをして1分ほど蒸し焼きにする。フライパンに直接触れていなかった部分やねぎに火が通り、生焼けの心配がなくなる。最後に塩、こしょうで味を調える。この最後のひとふりが以外に肉のうまみを引き立てるので絶対忘れずに。
 お皿に山盛りの焼き鳥と、あり合わせ野菜のサラダ、ねぎの青い部分を入れた油揚げとジャガイモの味噌汁、炊き立てのご飯。できたて熱々、ボリューム満点の焼き鳥定食の出来上がり。食べる時は、七味(しちみ)や粉山椒(こなざんしょう)、ワサビやからしなど好みのものをつけながらも、楽しい。
 それにしても、ねぎと鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、焼き鳥って何でこんなにわくわくするほど、おいしいんだろう?  長ねぎ(ながねぎ)のほかにきのこやピーマンなどをさしても楽しいですね。最後に醤油と蜂蜜を入れてからめれば、たれ味の焼き鳥になります。   (終り)
                  

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(平成20年8月18日更新)

(第3回)

なすと鶏肉のにんにく照り焼き

コツは「ぬれたまま入れる」

材料(4人分)

    なす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3本
   (A)鶏もも肉 ・・・・・・・・・・・・ 1枚
      塩、こしょう、小麦粉 ・・・ 適宜
   (B)にんにく ・・・・・・・・・・・・ 1かけ
      醤油 ・・・・・・・・・・・・・・ 大さじ2
      蜂蜜 ・・・・・・・・・・・・・・ 大さじ2



【コ メ ン ト】
 なすを食べやすい大きさに切り、塩水に浸ける。なすって、そのままいためるとびっくりするほど油を吸うのでカロリーのことが頭をよぎるけれど、塩水に浸けてからいためると油の吸い方がちょっとましになる。これ、ささやかなコツ。
 浸けておく時間は、せいぜい5分くらいでいいので、其の間に鶏もも肉1枚を一口大に切る。今日は、鶏肉となすをにんにく風味照り焼きにしようというわけ。
 一口大に切った鶏肉は、塩、こしょう、小麦粉とともにポリ袋に入れ、袋の底をトントンとたたいて全体に粉をまぶす。もみもみするのではなく底をたたくと、うまくきれいに粉がつく。これも、ちょっとしたコツ。
 さて、焼いていこう。フライパンにごま油をいれて火にかけ、熱くなったところで、粉のついた鶏肉を入れる。この時、余分な粉をたたいておかないと、これがまたみるみる油を吸ってしまう。それから、焼く時は、皮から。やっぱり、皮がパリッと焼けると食欲をそそられるものね。
 鶏肉が両面おいしそうに焼けたら、ここでなすを入れる。このとき、なすはザルに上げてふいたりせず、表面に水気が残っているくらいでフライパンに入れる。これが、一番大事なコツなんだよね〜。と、心の中でつぶやき、講師として呼ばれた先日の料理教室での、あの1件を思い出した。
 その日も、なすと鶏肉をいためる料理をしていたのだけれど、いざなすを入れる段になって、戸惑った。というのは、なすの水気はきれいにふき取られていたから。アシスタントの方(かた)が気を利かせて、ふいてくださったのだった。私は、そのなすを心なしか上品に鶏肉の横に入れた。ところが、乾いたなすはみるみる油を吸うばかりか、表面ばかりが焦げるし、だいたいジャーッというおいしそうな音も立てず、ちっともうまく焼けない。
 そうか、周りについた水分でなすは余分な油を吸うこともなく、その蒸気でうまく蒸し焼きにされ、短時間でおいしく、しっとりといためあがっていたのだ。塩水に浸けることプラス、しっとりぬれたままなすを入れる。この二つがセットになって、初めて少ない油でも短時間でおいしく仕上がるんだ。
 そんなわけで、今日はいつも通りのやりかたでなすを一気にいため、後は、にんにくのすりおろし一かけ分と、醤油、蜂蜜それぞれ大さじ2杯を全体にからめて出来上がり。鶏肉の油だけでいためたなすは、つやつやとおいしそう。普段、何気なくやっていることの中に、まだまだ気がついていない料理のコツが隠れている。  (終り)
                 

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(平成20年8月29日更新)

(第4回)

そうめんチャンプルー

長ねぎ(ながねぎ)でもうまい

材料(2人分)

   そうめん ・・・・・・・・・・・ 4束
   ごま油 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ1
   塩、こしょう ・・・・・・・・・ 適宜
   かつお節(かつおぶし) ・・・・・・・・・・・ 1袋(約5グラム)
   (A)長ねぎ(ながねぎ) ・・・・・・・・・ 1本
      醤油 ・・・・・・・・・・ 大さじ1
      酢 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ1
      ごま油 ・・・・・・・・・ 大さじ1



【コ メ ン ト】
   1人前のちいさめのお皿にこんもりと上品に盛られたそうめん。ごま油のいい香りと、ところどころにまぶされているかつおぶしがいい感じ。そうめんの上にのっているものはなんだろう。わくわくしながら口に運んで、思わずにんまりと笑いがでた。島ラッキョウ!! はあ〜。まいりました・・・。
 それは先日、沖縄で食べたそうめんチャンプル−。普通はたっぷりの油でいためたそうめんにざく切りのニラ、それが大皿にどーんと盛られて出てくる。そういうものがそうめんチャンプルーだと信じていた私には、見た目の上品さだけでかなり衝撃的だった。ひと口食べてさらにショックを受けたのは、脂っこくないのである。その理由を知りたくてさらにもうひと口。そうか、塩漬けされた島ラッキョウのしゃきしゃきした食感。さらりとかけられた酢醤油。後から口に広がるかつおぶしのうまみが味に深みを与える。
 小さな一皿をあっという間に食べ終わった私は、どうしてもこれを家で作りたくなった。けれど島ラッキョウの塩漬がない。何か変わりになるものはないだろうか。最初に思いついたのはエシャロット。けれど、エシャロットをわざわざ買って来るのでは、食べたい時にすぐにぱぱっと作れない。家にあるものですぐに作れるのが、そうめんチャンプルーの真骨頂のはずなのに。
 行き着いたのがながねぎだった。ながねぎは一人当たり2分の1本ぐらいを粗いみじん切りにして、酢と醤油とごま油 各大さじ2分の1杯くらいをまぶしておく。これで即席のねぎの漬物の完成。粗く刻むことでしゃきしゃきした食感が残るのと、調味料に漬け込むことで生のねぎのちょっとつんとした香りが若干マイルドになり、島ラッキョウっぽい感じになる。
 鍋でそうめんをゆでたら水に取り、さっとぬめりを洗い流す。フライパンにごま油を入れて火にかけ、そうめんをいためる。このとき、そうめんに若干 水が残っているほうがいい。そうでないとフライパンにくっついてぼろぼろになるから。さっといためたら、軽く塩、こしょうする。最後にかつおぶしをまぶしてお皿に出す。
 後は、最初に漬けておいたねぎをかければ出来上がり。しゃきしゃきしたねぎの香りが、限りなく沖縄のあの日の夜を思い出させる。ちょっとラー油(らーゆ)をかけてみてもいける感じ。
 夏の名残のそうめん。さて、どうしたものかともてあましていたところに、思わぬめっけもの。そうめんチャンプルーはこの季節の変わり目にぴったりの、我が家のブームになりそうな予感。 (終り)
               

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(平成20年9月10日更新)

(第5回)

レタスとベーコンのおかかいため

ポン酢醤油で軽くぺろり

材料(4人分)


   ごま油 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ1
   ベーコン ・・・・・・・・・・・ 4枚
   レタス ・・・・・・・・・・・・ 2分の1個
   かつおぶし ・・・・・・・・・・・ 1袋(約5グラム)
   ポン酢醤油 ・・・・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 冷蔵庫を開けると、使いかけのレタスがあった。芯のあたりが茶色くなりかかっていた。使い切ってしまわなければ、やばいことになる。とりあえず取り出した。
 私は、朝ご飯は基本的に和食。パンとコーヒーに野菜サラダなどというおしゃれなブレックファストにあこがれないわけではないのだけれど、私も子供も昼までおなかがもったことがない。
 和食の朝ご飯というと、めんどくさい気がするけれど、慣れればこちらの方が断然、楽だと思っている。とりあえず水と、昆布を細く切って鍋に入れ火にかけたら、後は味噌汁の具になりそうなものを適当に切って入れる。今日は、油揚げとニラ。油揚げもニラも短冊切りにして冷凍してあるので、味噌汁の具がない時は、凍ったまま入れるだけでいい。
 油揚げとニラはあっという間に煮えるので、後は味噌を溶き入れ、最後にかつお節を入れて火を止める。これで、味噌汁の完成。所要時間わずか5分。後は、その日の気分で納豆、のり、からし明太子、あるいは目玉焼き・・・。今日は、使いかけのレタスがあるので、これをおかかいためにしよう。
 フライパンにごま油を入れ、ベーコンを短冊切りにしてさっといためる。ベーコンからいい香りがしてきたら、レタスを手でちぎりながら入れ、しなっとなるまでいためる。最後に、かつおぶしをバサッと混ぜて火を止めたら出来上がり。
 食べる時にポン酢醤油をかける。レタスは、サラダで食べるよりいためたり味噌汁に入れたりすると、かさが減るから、半分くらいなら軽く食べられる。冷蔵庫の中で腐らせてしまう心配もなくなるというもの。
 おかずを作っている間に、冷凍ご飯を電子レンジで温める。朝から炊き立てご飯を食べるのは幸せだけれど、頑張り過ぎないってことも大切。
 朝ご飯の大切さが見直され始め、手早くバランスの取れた食事を食べたい、食べさせたいと思う人が多くなってきているらしい。でも、今日頑張ったから、明日はもう食べなくてもいいよというものではなく、毎日続けていくことが一番大切。冷凍ご飯、冷凍の油揚げやニラ、買い置きの明太子やのり、そして納豆などは、大いに役立つ。
 それにしても、子供が起きてこないのはどうしたことだろう。味噌汁が冷めるじゃないの。せっかくのレタスいためがくたっとなって、水が出始めたじゃないの。も〜っ、いったい何してんだろう。新学期、私の方はやる気も含めてバリバリ準備万端だったのに、まったく。ここが一番大きな問題だったとは・・・。(終り)
               

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(平成20年9月26日更新)

(第6回)

豚キムチ

味覚のツボにハマる口福

材料(4人分)

   (A)豚薄切り肉 ・・・・・・・ 300グラム
      醤油 ・・・・・・・・・・・ 大さじ1
      蜂蜜 ・・・・・・・・・・・ 大さじ1
   白菜キムチ ・・・・・・・・・・ 300グラムくらい
   ニラ ・・・・・・・・・・・・・・・ 1束
   ごま油 ・・・・・・・・・・・・・ 大さじ1



【コ メ ン ト】
 口に入れた瞬間「おおーっ、これこれ、この味を欲していたのだよ」と、思わず叫びたくなるときがある。ジグソーパズルがカチャッと合うように、味覚のツボにぴったりとハマる瞬間。文字どおり口福の極み。ここ数週間の私にとってそれはキムチだった。
 あれはたしか2〜3週間前。熱々のキムチ鍋をはふはふ 言いながらほおばって以来、どっぷりとハマリまくり、再びあの口福を味わいたくて仕方ない。キムチチャーハン、キムチ焼きうどん、たこキムチ。食べれば食べるほど深みにはまっていく。今日は定番豚キムチといこう。
 まず準備するものは豚薄切り肉。部位はバラもおいしいのだけれど、カロリーと健康のことを考えて、今日は肩ロースをタップリ300グラム。(さらにヘルシーにしたければ豚もも肉でも。)一口大に切って、醤油、蜂蜜各大さじ1杯ずつをもみこむ。普通豚キムチというと、豚肉とキムチをいためるだけで、味付けもキムチの味だけで良いようなイメージがあるけれど、最初に豚肉に下味(したあじ)をもみ込んでおくのとおかないのでは、出来上がりのおいしさは雲泥の差。この一手間(ひとてま)は絶対抜いてはいけませぬ。
 さらにそれを強火でじゃっといためる。肉が焦げるくらい強火がいい。醤油と蜂蜜が焦げた香りと味もおいしさアップの大事な要素。
 ここでいよいよ本日の主役、白菜キムチの登場。大きいものは食べやすく切って、こんがり焼けた豚肉の中に投入。この時 漬け汁は入れずに白菜だけを入れるのがコツ。さっといためたらざく切りにしておいたニラを最後に加え、さっといためながら混ぜる。ニラは余熱で火を通すくらいがいい。しゃきしゃきっとして鮮やかに映って、さらなる食欲を刺激する。
 さて豚キムチにはなんといっても炊き立てのご飯。真っ白なご飯と辛くてすっぱくて甘い豚キムチを交互にほおばれば、口福の絶頂へと一気に上がり詰める。豚キムチ、ご飯、豚キムチ、ご飯・・・と交互に口に運んで幸せを堪能したら、最後はやっぱり豚キムチ丼(どんぶり)。ご飯の上に豚キムチをタップリとのせ、取っておいたキムチの漬け汁をたらりと回しかける。息子はここにマヨネーズをかけているけれど、私はキムチの漬け汁で、フレッシュな酸味をプラスする方が好み。後は焼きのりをちぎって塩とごま油を絡めた即席韓国のりをタップリとかけ、全体を混ぜながら食べる。別々にたべるのとは一味違ったおいしさ。にんにくの香りに包まれる至福の夜は更けていくのでありました。(終り)

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(平成20年10月12日更新)

(第7回)

ねぎ餃子(ぎょうざ)

カロチン6倍、スタミナ満点

材料(4人分)

        長ねぎ(ながねぎ)の青いところ ・・・・ 4本くらい
        塩 ・・・・・・・・・・・・・・ 少々
        豚ひき肉 ・・・・・・・・ 200グラム
        醤油 ・・・・・・・・・・・ 大さじ1
        片栗粉 ・・・・・・・・・・ 大さじ1
        ごま油 ・・・・・・・・・・ 大さじ1
        しょうが ・・・・・・・・・ 1かけ
        ごま油(焼く用) ・・・ 大さじ1〜2



【コ メ ン ト】
 「ねぎって、白いところを食べるんじゃないですか?」。
 以前、九州で料理教室をやっていた時のこと。たっぷりのねぎを各テーブルに配ってあったはずなのに、あるテーブルだけ異常にねぎが少ない。配る量を間違ったのかと思ったら、違った。
 西日本では、ねぎといえば青ねぎ。根っこ以外は全部食べる。けれど、関東出身のその女性は、ねぎといえばながねぎだと思っていた。だから、私の用意した青ねぎの白いところだけを残し、残りは全部ごみにしてしまったというわけ。
 さて、東京に引っ越した私は、ねぎといえば当然のようにながねぎをつかうようになった。けれど、やっぱり関西人のDNAが騒ぐのか、青いところを捨てるのには抵抗がある。だから、いため物や味噌汁の薬味などで小口切りにする時は、青いところも全部刻んで入れてしまう。ただ、鍋物の場合は、青いところはあまり家族に評判が良くないので、ついつい入れずに冷蔵庫にためておくことになる。
 とはいえ、そこが関西人。ただ理由もなくためているだけではないのであります。4本分くらいたまったら、おもむろに取り出して刻み始める。もちろん口元に勝利の笑み。へへへ、実は、この青いところだけを使って餃子(ぎょうざ)を作ろうというわけ。
 細かくみじん切りにしたら、ポリ袋に入れ、塩を少々入れて、もみもみする。すると、ながねぎのみじん切りはみるみるネバネバ、トロトロ状態になってくる。そうなったら、後は豚ひき肉と、醤油、片栗粉、しょうがのすりおろしなどを入れて、袋の上からさらにこねこねする。
 実は、ねぎに含まれているこのネバーッとした物質のおかげで、肉がしっとり柔らかく仕上がる。ネバネバは白いところより青いところに多く含まれているから、青い部分を入れれば入れるほどおいしくなるというわけ。
 しかも、この青い部分、白い部分に比べてカロチンは6倍、鉄分、カルシウム、ビタミンB2、ビタミンCなど、どれも倍近く含まれているらしい。そんなことを知ってしまうと、今まで捨てていた青い部分まで惜しくなってくる。
 さて、餃子(ぎょうざ)の方はポリ袋の口を縛って角を切り、広げた餃子(ぎょうざ)の皮の上に絞り出していく。皮のふちに指で水をつけて好みの形に包み、フライパンでこんがり焼けば出来上がり。
 ねぎと豚肉との組み合わせは、疲労回復に役立つビタミンB1の吸収を高めるから、さらに言うことなし。今日からは、ねぎの青いところをせっせと食べて、風邪も疲れも一気に克服!!(終り)

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(平成20年10月25日更新)

(第8回)

鶏とキャベツのにんにく味噌いため

つまみ食いしたくなるいい香り



材料(4人分)

       (A) 鶏もも肉 ・・・・・・・ 2枚
           醤油 ・・・・・・・・・ 大さじ1
           蜂蜜 ・・・・・・・・・ 大さじ1
       (B) キャベツ ・・・・・・ 2分の1個
           塩、こしょう ・・・・ 適宜
       (C) 味噌 ・・・・・・・・・ 大さじ4
           蜂蜜 ・・・・・・・・・ 大さじ2
           みりん ・・・・・・・・ 大さじ2
           にんにく ・・・・・・ 2かけ
         ごま油 ・・・・・・・・・・・ 適宜
         醤油 ・・・・・・・・・・・・・ 適宜




【コ メ ン ト】
 「やっぱキャベツは主婦の味方やわー」
 スーパーのキャベツの棚の前で立ち止まった。このところ野菜がことごとく高くなっているというのに、キャベツだけは相変わらずの安さ。料理も簡単だし、いためても煮込んでもおいしい上に安いとなれば、家計を預かる主婦として、たっぷりおいしく料理せずになんとしよう。
 そんなわけで今日は、キャベツをたっぷり入れた鶏とキャベツのにんにく味噌いためを作ることにした。
 まずは鶏もも肉。一口大に切ったら、醤油と蜂蜜をもみこんで下 味をつける。キャベツは大胆にざく切り。下準備はこれだけ。今日はたっぷりキャベツを料理するために、ホットプレートで豪快に作るとしよう。
 まずはホットプレートを熱くしたところに、ごま油を入れてキャベツからいためる。コツは、早い段階で塩こしょうを振ること。キャベツって、うまくいためようとしてもなかなかしんなりしてくれず、下手をすると端っこのほうがチリチリと焦げてきたりして、おいしそうにいためるのは案外難しいもの。
 ところがいため始めたとき、すぐ塩、こしょうを振ると、キャベツの色がパーッと鮮やかになって、見る見るシナっとなり、うまくきれいにいためられる。他の野菜でこんないため方をしたら、水が出てまずくなってしまうのだけれど、キャベツなら水が出すぎることはない。このコツはフライパンでも同じ。
 おいしそうにいたまったら、いったん端によけて、あいたところにごま油を足し、鶏肉を入れてこんがり焼く。醤油と蜂蜜が焦げるあまからい おいしそうなにおいが部屋中に漂い始めるころには、鶏肉もこんがりいい感じ。そしたらここににんにくをすりおろしながら加える。あまからの香りににんにくの香りがプラスされると、一気に食欲が刺激される。ごくりとつばを飲んで、つまみ食いしたいのをぐっと我慢。味噌大さじ4杯、蜂蜜大さじ2杯、みりん大さじ2杯を絡めながらいため、味を見て醤油を少々入れて味を調える。
 鶏肉にしっかり味を絡めたら、後は端によけてあったキャベツをもどして全体に混ぜたら出来上がり。ちょっと濃いめのにんにく味噌の絡んだ鶏肉と、シャキッといためられたあっさりキャベツ。最後にさっと混ぜて、混ぜすぎないのがコツ。
 鶏肉とキャベツを好みの割合で口に運んだら、これはもうご飯が進む、進む、進みまくる。いやあ、進みすぎて困りますねえ。食欲の秋は始まったばかりだというのに、いきなり絶好調であります。ご飯もう1杯お代わりしようかな。(終り)

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(平成20年11月11日更新)

(第9回)

エリンギのチーズ焼き

豊かに香り立つ蒸し焼き

材料(4人分)

       エリンギ ・・・・・・・・・ 3パック
       にんにく ・・・・・・・・・ 1かけ
       塩、こしょう ・・・・・・・ 適宜
       オリーブオイル ・・・・・・ 大さじ1〜2
       ピザ用チーズ ・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 「1本6800円也」
 いよいよ市場にも出揃いました!国産マツタケ。横に置かれた 中国産やカナダ産のマツタケをものともせず、いやあ、王者の風格ですね。
 けれど私が目指すは我らがエリンギ君。1パック2本入り98円也。今日はタップリ3パック。育ち盛り(そだちざかり)のいるわが家では、安くてたっぷりたっぷり食べられるのが、うれしいわけでありまして。今日はこのたっぷりのエリンギをぺろりと食べられてしまう、わが家では大人気のチーズ焼きを作ろうと思っているのであります。
 まずはエリンギを食べやすいように手で裂く。包丁で切るより、裂け目のギザギザした部分に味がからまるし、裂いたきのこって、なんでかわからないけど、やたらうまそうにみえるから。
 ちなみに、スーパーや市場(いちば)で買ってきたきのこは基本的には洗わない。きのこは洗うと水を含んで味も香りも落ちてしまうんですねえ。だから、もし汚れが気になるようなら、ぬらしたキッチンペーパーでふくのがベスト。でも市場に出回っているきのこたちの多くは菌床栽培という方法で育てられていて、私もかつて見学したことがあるけれど、本当にクリーンな環境で育っている。だから、洗う必要はまずない、と私は思う。
 さて、長いまま縦に裂いたエリンギをボウルにいれたところに、にんにくのすりおろしと塩、こしょう、そしてオリーブオイルを入れて、手でからめる。オリーブオイルはみるみるエリンギの裂け目から中に吸い込まれていくけれど、ここであわててたくさんかけすぎるとあとで油っぽくなってしまうから、大さじ1〜2杯程度で十分。
 これをアルミホイルで包んで蒸し焼きにしようというわけ。大きくどーんと包むのもいいけれど、一人分ずつ小さく焼くほうがおすすめ。その方が早く火が通るし、あつあつを食べられるからね。アルミホイルの上に、エリンギをたっぷりのせたら、さらにその上にピザ用の溶けるチーズをたっぷりのせ、ふんわり包んで口を閉じる。後はオーブントースターに入れて、10〜15分ほど焼けば出来上がり。
 やけどしないように気をつけながらアルミホイルの口を開くと、中からは封じ込められたエリンギの豊かな香りが湯気とともにほわーっと立ち上り、とろりと溶けたチーズがまるで手の込んだソースのようにからみ付いている。そのとろりとしたのがたっぷりからまったあつあつのエリンギ。大きな口でかぶりつけば、予想以上のうまさ。この瞬間、私ゃこの先、まつたけなど食べなくてもエリンギ 様さえあればと、心底思った。明日も買ってこよっと。(終り)

         
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(平成20年11月25日更新)

(第10回)

芋もち

小麦粉でニョッキ風

材料(4人分)

       ジャガイモ ・・・・・・・ 300グラム
       小麦粉 ・・・・・・・・・ 大さじ5〜6
       塩 ・・・・・・・・・・・ 少々
       バター ・・・・・・・・・ 大さじ1
       ピザ用チーズ ・・・・・・ 適宜
       醤油 ・・・・・・・・・・ 適宜
       粒こしょう ・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 その日、私は出張先の北海道で、イタリア料理を食べていた。私の目の前にはポテトニョッキのゴルゴンゾーラソースが運ばれてきたのだった。
 つぶしたジャガイモに小麦粉を混ぜてよく練り、一口大に丸めてお団子にしてゆでたものに、青かびタイプのイタリア産チーズがたっぷりとかかっている。みたらし団子よりもふた回りほど小さく丸めたポテトニョッキは口に入れるとねっとり柔らかく、ジャガイモの味わいとクセのあるチーズの味がよく合って、すごくおいしい。
 けれど、次の瞬間、「これ、家で作っているあれと同じだ」と思ってしまったのは、そこが北海道だったからに違いない。あれというのは、北海道の家庭で古くから作られている芋もち。もうずいぶん前に、古い料理書でその作り方を見つけて以来、わが家では定番になっているお団子なのだ。
 そう思った瞬間に、なんだか笑いがこみ上げてきた。昔からの友達が、ちょっと会わないうちにおしゃれになって、びっくり。でも見かけはおしゃれになっていても、やっぱり中身は昔とオナジで、にんまり、みたいな、そんな感じ。と、いうわけで、出張から戻るとすぐに台所に直行し、さっそく芋もちを作った私。
 作り方はこう。まずジャガイモを皮ごと柔らかくゆでたら、皮をむく。ホクホクとつぶれたら、小麦粉と塩を入れて、さらに練る。小麦粉の量はジャガイモ1個につき大さじ1〜2杯。塩はひとつまみ。ホクホクしたジャガイモなら少し牛乳を足して、しっとりさせてもいい。本当の芋もちは片栗粉を入れて混ぜるのだけれど、今日はニョッキ風ということで、小麦粉にしてみたのだ。
 小さく丸めたら、ゆでないでバターで焼く。ここは芋もち風(ふう)。この方がパリッと香ばしくておいしいと思うから。両面こんがり焼けたら、半分はお皿に取り出し、バターをちょっとのせて醤油をかける。これぞ私がこよなく愛する芋もちのバター醤油。バターがとろりと溶けたところに醤油が混ざって、文句なしのおいしさ。
 残りの半分は、ピザ用チーズをパラリとかけて、ふたをする。ゴルゴンゾーラがなくても、とろりとチーズがかかっていれば、それだけで美味しい。お皿にのせたら、こしょうをガリガリひいて、たっぷりかける。これには、こしょうが合う気がして。
 北海道とイタリア。芋もちとポテトニョッキ。1個のジャガイモを目の前にして、おいしく料理したいと思う人の気持ちは、どうやら国境がないらしい。(終り)


            
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(平成20年12月11日更新)

(第11回)

かぶのそぼろ煮

娘の思い出 ふっくら仕上げて

材料(4人分)

       (A)鶏ひき肉 ・・・・・ 200グラム
          薄口醤油 ・・・・・ 大さじ2
          みりん ・・・・・・ 大さじ2
          しょうが ・・・・・ 2かけ
        水 ・・・・・・・・・・ 2カップ
        昆布 ・・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
        かぶ ・・・・・・・・・ 3〜4個
        塩 ・・・・・・・・・・ 小さじ2分の1
        水溶き片栗粉 ・・・・・ 適宜
    




【コ メ ン ト】
 フライパンに鶏のひき肉200グラムと、薄口醤油とみりんを各大さじ2杯、おろししょうが2かけら分を入れてよくまぜる。火にかける前にこうやって、ひき肉と調味料をよく混ぜておくのが奥園流。一見変な感じがするけれど、ひき肉にしっかり味が入り、ふっくらおいしく仕上がる。
 調味料が混ざったら、全体をかき混ぜながら火を通す。やがて、ひき肉がぽろぽろしてくる。根気よくいり続けると、やがて、ひき肉から出てきた水分が煮詰まり、調味料が少し焦げ始める。こうなれば、OK。
 ひき肉がおいしそうなそぼろになったら、水2カップと昆布の細切り(ほそぎり)と、4つ割りにしたかぶを入れ、後はふたをして、コトコト煮るだけ。最近のかぶは皮ごと煮ても軟らかく煮えるし、むしろ、皮ごと煮た方が煮崩れなくていいから、楽チン。
 おはしを刺してみて、すーっと通るくらい軟らかくなったら、そぼろの味をみる。この時、そぼろの方がちょうどいい味だとかぶと一緒に食べたときに物足りなく感じるので、ちょっと濃い目くらいがよい。味をみながら、塩を小さじ半分ほど入れる。あとは、水溶き片栗粉でとろみをつけたら出来上がり。
 ちなみに、はっぱの方はざく切りにして塩でもみ、青みに散らしてもいいし、ぎゅっと水気を絞ってからチリメンジャコといためて、ご飯に混ぜれば、とびきりおいしい菜飯になる。塩でもんで水気を絞ってからいためるのがおいしく作るコツで、そのままいためてしまうと、どうしても水っぽくなっておいしくない。
 そういえば、娘が幼かったころ、そぼろを食べると、なぜかきまって鼻の中にひき肉が入って、大騒ぎした。そぼろご飯にそぼろずし、そぼろ煮、そぼろと名のつくものはすべてだめ。のどと鼻をつないでいる、どこか中途半端なところに、決まってそぼろの肉だけが引っかかるらしい。いったんそこに入ると、くしゃみでもない限り出せないようで、2〜3日くらいたってから、「お母さん、そぼろがやっと出た」などということが、しばしばあった。
 それにしても、いったいどんな飲み込み方をすれば、ひき肉だけがのどではなく、鼻の方向にいくのか。もっとも、娘も今では中学生になって、そぼろだけを鼻に入れることがもはやできなくなってしまった。まともに成長したということなのだけれど、心の中でちょっと寂しい感じがするのは、どうしてだろう。せめて、くしゃみと一緒に鼻からそぼろをたらした姿を写真に撮っておけばよかったなあ。(終り)


               
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(平成20年12月24日更新)

(第12回)

牡蠣(かき)のポン酢醤油煮

 小麦粉まぶしてふっくら

材料(4人分)

       (A)カキ ・・・・・・ 2パック
          小麦粉 ・・・・・ 適宜
        しめじ ・・・・・・・ 1パック
        ながねぎ ・・・・・・・ 1本
       (B)ポン酢醤油 ・・・ 4分の1カップ
          水 ・・・・・・・ 4分の1カップ
    



【コ メ ン ト】
 働いている女性にとって、魚売り場はもっとも買い物がしにくい場所だと常々思っている。仕事帰りの夕方、売り場をのぞいてみるのだけれど、商品がかなり少なくなっているのに加え、お腹がすいているのと疲れで、手の込んだ料理はしたくないなと思うと、魚は敷居が高くなりがち。
 となると、行き着くところは塩鮭かウナギか冷凍マグロ、殻なしのカキになる。そんなわけで、今日もカキを2パックゲット!!簡単にできて、さっぱりしていておいしいポン酢醤油煮にしようと決めた。
 まずはカキを洗うのだけれど、大根おろしで洗えと書いてある本もある。けれど、大根おろしを使うのはもったいなく、洗った後の大根おろしが流しに詰まるのもわずらわしい。。
 だから、塩水でさっと洗うだけで済ます。これで何か問題が起こったことなど1度もないから、ずーっとこれで通している。一度、広島の友達に「広島の人はどうしてるの」と聞いてみると、やっぱり塩水でさっと洗うだけと言っていた。
 さて、洗ったカキはキッチンペーパーの上にのせ、軽く水気をふいたら、小麦粉をたっぷりとまぶす。たっぷりめにまぶして、べとべとにならないうちに、ごま油を入れたフライパンで焼く。
 実は、この小麦粉がおいしく作るポイント。カキはそのまま油で焼くと、中のおいしいエキスをどんどん外に出して、小さく硬くなってしまうのだけれど、小麦粉をまぶして焼くと、ふっくらぷっくりと焼きあがる。
 カキがこんがり焼けたら、横で小房(こふさ)に分けたしめじと斜め切りにしたながねぎもいためる。ふたをして蒸し焼きにすると早く火がとおる。
 一つのフライパンでいためたり焼いたりするとき、冷蔵庫にある野菜を適当に切って一緒にいためるのは、忙しい時にはお勧めのテク。わざわざ野菜料理を作らなくても栄養バランスがよくなるし、一緒に焼いている肉や魚のうまみが移るので、単独でいためるよりずっとおいしい。
 しめじとねぎがくたっとなったら、ポン酢醤油4分の1カップを同量の水でうすめ、一気に入れてさっと煮る。カキにまぶした小麦粉が一気に調味料を吸ってしまうため、ポン酢醤油を水で薄めたくらいの煮汁の方が、ちょうどいい濃さになるというわけ。ポン酢醤油を吸った衣はまるでいったん揚げて煮たように、とろりとなる。ふふふ、うまそう〜!!
 お皿にたっぷり盛る。カキのほかには、厚揚げ(あつあげ)とチンゲンサイの味噌汁にかぶの即席漬け、そして炊き立てご飯。しめて30分で出来上がり。さあ、さあ、みんな、ご飯ができたよ〜!!(終り)
               



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(平成21年1月11日更新)

(第13回)

かぶとベーコンのいため蒸し

 旬の野菜で胃腸をいたわる

材料(4人分)

        かぶ ・・・・・・・ 3つ
        オリーブオイル ・・ 大さじ1
        ベーコン ・・・・・ 4枚
        塩、こしょう ・・・ 適宜
 



【コ メ ン ト】

 朝起きたら、口が開かない。大きなあくびをしたら、唇の横のところがビリビリ 音を立て(たような感じがして)切れた。痛たたた、と思ったときには遅かった。これって、胃腸が弱っている証拠らしい。忙しさにかまけてのドカ食、早食い(はやぐい)、やけ食い。胃腸へのねぎらいが、このところなかったかもなあ。
 そんなことを思いながら買い物に出たら、丸々と太ったみずみずしいかぶと“目が合った”。かぶは体を温め、消化を助け、胃腸をいたわる体に優しい野菜。今日はかぶを食べて、体をいたわれということらしい。早速、買って家路を急いだ。
 さて、どうやって食べようか。軟らかく煮るのも悪くないけれど、1秒でも早くかぶの恩恵を賜り、胃腸をいたわりたい気分。そんなときは、かぶとベーコンのいため蒸し。
 まず、かぶは葉をスパッと切り落とし、1〜2センチの厚さのいちょう切り。料理屋さんだと、モヒカン刈りみたいに葉を残すところだけれど、葉の付け根を洗うのがまどろっこしい。家庭なら切り落とすに限る。もちろん皮付き。葉も使う。カロチンだってカルシウムだって、葉っぱの方にたくさん含まれているのだから食べない手はない。
 ザクザクと食べやすい長さに切ったら、軽く塩でもんで水気を絞っておく。塩でもんでおくと、すっきりした味になるのと、かさが減ってたっぷりと食べられる。
 後は、ベーコンを1センチ幅くらいの短冊切りにし、オリーブオイルを入れたフライパンで炒める(いためる)。いい香りがしてきたら、かぶを入れてさらにいためる。かぶにさっと油が回ったら、ふたをしてむし焼きにする。火加減は弱火。
 5分くらいたったら、1度ふたを開けて、かぶを食べてみる。しっとりと柔らかく、けれど煮物とは違う歯ざわり。ほのかに移ったベーコンの香りと塩味が、かぶの甘さを引き立てる。
 水気を絞った葉っぱを入れてさっといためたら、最後に塩、こしょうで味を調えて出来上がり。ポン酢醤油をかけ、サラダ感覚でもろもろ食べるのもおいしいのだけれど、今日は、口の端っこにポン酢醤油が染みそうで、あっさりまとめてみた。
 今日の献立は、焼き魚と、豆腐とねぎの味噌汁。あっさり、消化のいいものばかり。案の定、娘が言う。
 「なんか、今日のおかず、地味じゃない?」
 「時にはこのような料理を上品に味わうのも、およろしいかと思って」
 おちょぼ口で、静かに口を動かす母。本当は大きな口でかぶりつくことができないだけなのだけれど・・・。それはこの際、黙っておこう。  (終り)
               

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(平成21年2月1日更新)

(第14回)

奥園流カレー鍋

食欲そそるウスターソース

材料(4人分)

       (A) 水 ・・・・・・・・・・・ 5カップ
          昆布 ・・・・・・・・・ 1×10センチを1枚
          醤油 ・・・・・・・・・ 大さじ3
          みりん ・・・・・・・・ 大さじ3
          ウスターソース・・ 大さじ3
       (B)豚バラ肉・・・・・・・ 300グラム
          塩 ・・・・・・・・・・・ 小さじ1
       (C)片栗粉 ・・・・・・・・ 大さじ1
          カレー粉 ・・・・・・ 大さじ2
          水又は日本酒 ・  大さじ3〜4
        キャベツ、油揚げ、ソーセージ、きのこ、ねぎ、
        チンゲンサイ、トマトなど
       (D)玉葱 ・・・・・・・・・ 2分の1個
          醤油 ・・・・・・・・・ 大さじ2
          酢 ・・・・・・・・・・ 大さじ2
          みりん ・・・・・・・ 大さじ1
          カレー粉 ・・・・・ 小さじ1
        うどん ・・・・・・・ 2玉
        しょうが ・・・・・・ 適宜
         




【コ メ ン ト】
 カレー鍋がはやっている。「へ〜」と思っていたら、某テレビ番組から「奥園流カレー鍋を作ってください」というオファーがきた。それで何回も試作をかさね、できあがったのがこのカレー鍋。
 つくり方は こう。まず、土鍋に水5カップを入れたら、昆布を細く切りながら入れる。これだと昆布を引き上げず全部食べられるのがいい。さらにうまみは断面からたくさん出るので、少しの昆布でもうまみがたっぷり出るのもうれしい。
 味付けは、醤油とみりんとウスターソースが大さじ3ずつ。鍋にウスターソース!?とおもうけれど、子供のころ、カレーライスの時にウスターソースをかけたことを思い出してもらえば、ウスターソースのスパイシーな香りと酸味で、食欲をそそる味になるというのも納得できるはず。
 これを火にかけている間に、豚バラ肉300グラムに塩小さじ1をよくもみこんでおく。鍋の中が沸騰してきたら、これを1度に入れ、少し煮る。片栗粉大さじ1とカレー粉大さじ2を混ぜてから、水か酒を入れてさらに混ぜたものをこの中に入れたら、昆布と豚肉のうまみたっぷりの、少しとろみのついたカレー風味のベースの出来上がり。あとはこのまま食卓にもっていき、好みの具を入れながら食べる。
 入れる具は、まずはキャベツ。あとは油揚げやソーセージも意外に合う、きのこやねぎ、チンゲン菜(さい)などもいい。要はカレーに合うものなら、なんでもいいわけなので、そう考えると合わないものの方が少ないかもしれない。
 途中、味が飽きてきたら、特製玉葱のたれを各自 器にいれるのもいい。つくり方は、玉葱のみじん切り2分の1個分に醤油と酢が大さじ2ずつ、みりんが大さじ1、カレー粉が小さじ1。作ってすぐでも、少し漬け込んだものでもどちらでも。玉葱のしゃきしゃきした食感と甘酸っぱい味が和風ピクルスのようで、ぴりぴりした口の中をリフレッシュさせてくれる。
 しめは なんといってもうどん。おなかいっぱいでも、これはやっぱり食べないわけにはいきませぬ。このうどんには なんといってもおろししょうが。一味(ひとあじ)ちがったおいしさになって、気がつけばもう一杯おかわりしていることまちがいなし。
 それにしてもこのレシピを考えるために、連日カレー鍋をたべさせられた家族は、さすがに、「できればカレーの入っていない鍋を食べたい」とブーイング 家庭料理研究かの家族も、けっこう大変なのであります。(終り)
               

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(平成21年2月16日更新)

(第15回)

すいとん

野菜としょうがで風邪退治

材料(4人分)

       水 ・・・・・・・ 5カップ
       昆布 ・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
       (A)豚薄切り肉 ・・・ 200グラム
          塩 ・・・・・・・ 小さじ1
          大根 ・・・・・・ 10センチ
          にんじん ・・・・ 1本
          玉ねぎ ・・・・・ 1個
          油揚げ ・・・・・ 1枚
       (B)小麦粉 ・・・・・ 200グラム
          塩 ・・・・・・・ 小さじ2分の1
          水 ・・・・・・・ 2カップ
       (C)醤油 ・・・・・・ 大さじ2〜3
          みりん ・・・・・ 大さじ2
       長(なが)ねぎ、しょうがなど
      



【コ メ ン ト】

 大阪へ出張に向かう朝のこと。東京駅行きの電車は通勤ラッシュ。押しつぶされそうになりながら、斜めになった体をどうにか立て直そうと躍起になっていた、まさにその時、突然のどが、いがいがし始めた。
 嫌な予感。いがいがが、どんどん広がっていく。新幹線に乗るころには、風邪ウイルスが入り込んだことを認めざるをえない状態。カテキンで退治しようと、大阪までの間、ひたすら緑茶を飲み続けたけれど、時 遅(おそ)し。敵は私ののどで、この世の春を謳歌し始めていた。
 風邪のときは、体を冷やさないことが一番。体のあちこちに使い捨てカイロを張り、首にはマフラーをぐるぐる巻きにした。後は、温かくて消化のいいものを食べて力をつけ、ウイルスに打ち勝たねば。そんなわけで、出張から帰ってきた私は、迷うことなく野菜としょうがをたっぷりいれた、すいとんを作った。
 作り方はこう。鍋に水5カップを入れ、そこに、昆布を細く切りながら入れる。毎度のことではあるけれど、昆布は細く切れば全部食べられるし、少しの量でも昆布の断面からうまみが出るから、一石二鳥なのだ。
 火にかけている間に、豚肉を一口大に切って、塩小さじ1杯をよくもみ込んでおく。さらに、冷蔵庫を開けて使えそうな野菜を物色する。本日は、大根とにんじんと玉ねぎと油揚げ。適当に食べやすく切って、鍋に投入。煮汁が沸騰してきたところで、豚肉も入れ、ふたをして煮る。
 その間に、すいとんを作ろう。ボウルに小麦粉200グラムと塩小さじ2分の1杯を混ぜたところに、水約2カップを様子を見ながら少しずつ混ぜていく。スプーンですくってドロリとたれるくらいの固さになったらOK。
 鍋の野菜が柔らかくなったら、醤油大さじ2〜3杯、みりん大さじ2杯を入れて味を調え、すいとん生地をスプーンですくいながら入れていく。全部入ったら、ふたをして味がしみ込むまで煮る。最後に、たっぷりのねぎを入れて出来上がり。食べるときに、おろししょうがを好みで入れる。体の中からぽかぽかして、いい感じ、いい感じ。自分の体が風邪のウイルスと戦ってるぞーっ、という気分になる。
 後は、食後にビタミンCたっぷりのキウイを食べ、合間にカテキンが豊富な紅茶におろししょうがを入れて飲み続け、お風呂につかって、いつもよりたっぷりと眠る。眠るときも首にスカーフを巻く。これが、私のいつもの風邪対策。翌日になったら、けろりと元気になっていたりする。(終り)
               

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(平成21年3月3日更新)

(第16回)

菜の花とベーコンのスパゲティ

春の香りいっぱいのおいしさ

材料(4人分)

       オリーブオイル ・・・・・ 大さじ1
       にんにく ・・・・・・・・ 1かけ
       ベーコン・・・・・・・・・ 4枚
       菜の花 ・・・・・・・・・ 1束
       パスタのゆで汁 ・・・・・ お玉1杯くらい
       スパゲティ ・・・・・・・ 160グラム
       塩、こしょう ・・・・・・ 好みで
    


【コ メ ン ト】
 私にとって春を感じる野菜といえば、なんといっても菜の花。ちょっとふくらんだつぼみといい、かすかな苦味といい、見た目も味も、どこをとっても早春な感じですねえ〜。

 今日は、そんな菜の花を使って、春の香りいっぱいのスパゲティを作ろう。

 まず、なべにたっぷりのお湯を沸かす。でも、イタリア料理のシェフが使うような、大きなパスタなべなんてなくても、家にある一番大きい片手なべでOK。ゆで方にちょっとコツがある。

 パスタをおいしくゆでるコツは、まずは塩加減。パスタの麺自体に塩分がないので、ゆで汁にはしっかり塩を入れる必要がある。量は水500CCに対して、塩小さじ1杯。

 パスタは一人当たり80〜100グラム。人数分を片手で握ったら、煮えたぎった塩湯の中央に突き立てるように入れる。湯に浸かっている部分のパスタがみるみる柔らかくなって、へなへなとなってきたら、さらにぎゅっとなべ底に押し当てる。すると、するすると面白いようにパスタが湯の中に入っていく。

 ほらね、このやり方なら、深さのないなべでも、横にはみ出したパスタをガスの火で焦がすことなく、上手にゆでることができるのです。へへへ。

 さて、表示時間通りにタイマーをセットしたら、菜の花の準備。根もとの硬いところをちょっと切り落としたら、後はにんにくをみじん切りにし、ベーコン4枚は1センチ幅に切る。

 フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れたら火をつけて、にんにくからいい香りがしてきたら、ベーコンをいため、菜の花を一気に入れてさっといためる。

 さてここからがポイント。パスタのゆで汁をお玉1杯ほど入れて、ふたをして蒸し煮にする。ゆでないで蒸すことで香りが100%生きるってわけ。しかもゆで汁に塩分があるので、味付けもできてしまうんですね〜。侮るなかれ、パスタのゆで汁。蒸し時間は1〜2分。パスタの時はちょっとくたっと柔らかくなっているほうがおいしい。

 さて、いいタイミングでゆであがったパスタを、フライパンに入れてさっと混ぜれば、これで出来上がり。好みでこしょうを振りかけても。

 ぐずぐずしていると、春はどんどん逃げてしまうから、タイミングをはずさず、春の香りいっぱいのパスタ、さあさあ、早くたべよー。(終り)
               
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(平成21年3月17日更新)

(第17回)

アサリとブロッコリーの酒蒸し

栄養満点、風邪知らず

材料(4人分)

       オリーブオイル ・・・・・ 大さじ1
       にんにく ・・・・・・・・ 1かけ
       アサリ・・・・・・・・・・ 1パック
       ブロッコリー ・・・・・・ 1株
       酒 ・・・・・・・・・・・ 大さじ2〜3
       塩、こしょう ・・・・・・ 適宜
    


【コ メ ン ト】
 不覚にも風邪をひいてしまった。とにかく、軽い症状のままで食い止めるのが一番。こんな時に私が頼るのは、決まってブロッコリー。うん、そうだ。今日はブロッコリーを食べまくろう。

 風邪のひき始めに大量に摂取したいのは、抵抗力や免疫力を高めてくれるビタミンCと、粘膜を丈夫に保ち、感染予防に効果があるビタミンA(カロチン)。ブロッコリーはどちらもかなりたくさん含んでいるので、風邪のひき始めにはかなりお勧めの食材なのである。

 けれど、ビタミンCは熱に弱いし、水に溶け出してしまうため、長時間加熱したり、たっぷりの水でゆでたりすると、せっかくのビタミンCがどんどんなくなってしまう。そこで、一番お勧めなのが蒸しゆで。ゆでるのではなく蒸す。

 フライパンに水を大さじ2〜3杯入れて火にかけ、沸騰したところに小房(こふさ)に分けたブロッコリーを入れたら、後はふたをするだけ。ふたさえぴったり閉まっていれば、少量の水で十分蒸しあがる。このやり方だと、栄養的にいいだけでなく、ブロッコリーも水っぽくならないので、うまみ、香り、歯応え、すべてがワンランク 上になる。マヨネーズなどかけなくても、ほんの少し塩をかけるだけで大量に食べられる。

 応用としては、ベーコンいためもいい。フライパンにオリーブオイルとベーコンを入れて火にかけ、ベーコンからいい香りがしてきたら、生のブロッコリーを入れてさっといため、後は水を大さじ2〜3杯入れて、ふたをするのは同じ。途中、ピザ用チーズをパラリとかけて、チーズが溶けたところを食べるのもまたいい。

 メーンのおかずにしたい時は、アサリを使う。フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて火にかけ、弱火でにんにくの香りを引き出したら、砂を吐かせたアサリを入れる。さっといためたら、生のブロッコリーを要れ、水ではなくお酒を大さじ2〜3杯入れて、ふたをする。アサリの口が開く頃にはブロッコリーにも火が通っているという寸法。

 アサリのうまみを大量に吸ったブロッコリーの花の部分が最高においしく、わが家では決まってあさりよりもブロッコリーの争奪戦になる。ゆでたてのスパゲティを入れれば、ブロッコリーのボンゴレの出来上がり。赤唐辛子の輪切りを入れてもおいしい。

 大量のブロッコリーを食べた後は、たっぷりの睡眠。そうすれば、風邪などどこかに飛んでしまっていること間違いなし。(終り)
               
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(平成21年4月1日更新)

(第18回)

フキと油揚げの煮物

しゃきっと口に春の香り

材料(4人分)

       フキ ・・・・・・・ 1束
       油揚げ ・・・・・・ 2枚
                                                                                                        (A)水・・・・・・ 1カップ
          昆布 ・・・・ 1×10センチのもの1枚
          醤油 ・・・・ 大さじ2
          みりん ・・・ 大さじ2
       かつおぶし ・・・・ 1袋(5グラム)
    


【コ メ ン ト】
 子供の頃は目の前にあっても決して自分から箸をのばそうとは思わなかったのに、大人になると大好物になるものがある。私にとって、フキはそんな食べ物の一つ。けれど、1年中食べたいと思っているわけではなく、この時期、生のフキが出始めた途端、にわかに心がときめき始めるのである。

 さて、フキはそのままでは長すぎるので半分くらいに切って、まな板の上に置き、塩をふって、ごろごろと転がす。いわゆる板ずりという下処理。2〜3分おくと、あくのような黒い汁が出てくる。

 フキの下ゆでをするのは、フライパンにかぎる。鍋でゆでるとなると、パスタじゃないので、くたっと軟らかくならないから、鍋の中であっちやり、こっちやりと大変なことになる。その点、フライパンなら、少しの水でもきれいに横に並んで浸かってくれる。

 ゆで時間は2〜3分。フキ1束をフライパンごと流しに持って行って水を入れ、一気に冷まし、さらに薄皮をむく。この時、切り口の皮を少しずつめくり、一気に下に引っ張るときれいにむける。フキが好物になってからというもの、こういうちまちました作業までが、何か楽しい。

 最近のフキは香りもあくも少ないせいか、さっと水にくぐらせたくらいでも大丈夫。ざくざくと食べやすい長さに切ったら早速、煮始めよう。

 鍋に水1カップと昆布の細切り(ほそぎり)(短冊切りにしておいた昆布をさらにキッチンばさみで細く切る)、それに、醤油とみりん各大さじ1杯入れて火にかける。これは私好みの薄味なので、醤油とみりんを各大さじ2杯くらい入れてもいい。

 この煮汁に、まず油揚げを入れ、1〜2分煮てからフキを入れ、さらに1〜2分煮る。そしたら、かつおぶしをバサッと入れて、ひと混ぜし、後は中まで染み込ませるには、コトコト煮るよりは火を消して冷ますのが一番。

 もう1度温め直して熱々を食べてもよし、冷ましたものをそのまま食べても良し。フキのかぐわしい香りが、鼻腔を通り抜けていく。

 「このフキ、めちゃめちゃうまいなあ」

 息子が言う。えっ!?思わず、フキがのどに詰まりそうになる私。

 「おいしくないよ〜」

 顔をしかめる娘にさらにしたり顔で言う息子。

 「お前も大人になったら、このおいしさが分かるようになるよ」

 それって、ついこの前まで、私があんたに言ってたセリフじゃないの?そう言いそうになって、慌ててフキを飲み込んだ。  (終り)
               
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(平成21年4月16日更新)

(第19回)

春キャベツのにぎやか蒸し

具だくさんにお好みのたれで

材料(4人分)

                                                                                                      (A)春キャベツ・・・ 1個
         昆布 ・・・・・ 1×10センチのもの1枚
         塩 ・・・・・・ 小さじ1
       水 ・・・・・・・・ 1カップ
       えび、アサリなど・・ 適宜
       ポン酢醤油、マヨネーズ、ごま油、ケチャップ、レモンなどお好みで
   


【コ メ ン ト】
 今年もやってきました!!春キャベツの季節。

 いまや1年中食べられるキャベツだけれど、甘くて柔らかい春キャベツは今だけのおいしさ。毎年、この時期になると、青虫のごとく、キャベツを食べまくる。

 春キャベツのいいところは、煮ても、いためても、生でも、漬物にしても、何にしてもおいしいところ。しかも手をかけすぎないほうが断然おいしいというのも、愛される理由。

 そんなわけで、今日はキャベツをいっぱい食べられて、しかもメーンのおかずになる、にぎやか蒸しといこう!

 まずはキャベツはどーんと1個。食べやすく切って土鍋の中にドッカーンと入れたら、昆布もちょきちょき細く切りながら入れ、さらに塩を小さじ1杯ほど入れて、土鍋の中でわっさわっさと混ぜる。それにしてもすごい量だ。

 これ、あまりにも多くねえ?いやいや、ここはあえて大盛りのキャベツをギュッギュと押さえて、とにかく詰め込む。だってね、今からこの上に具をのせて蒸すのですよ。つまり、加熱するわけですよ。野菜を加熱するとどうなる?しゅるしゅるとかさが減る!!そう!!キャベツの量をここで減らしてしまうと、蒸しあがったときに、ありゃりゃというくらい、寂しい気持ちになるのは必定。だから、ここは勇気を持って、いざ進め。

 ぎゅうぎゅう詰めのキャベツの上から1カップの水(半分お酒にしてもいいけど)を入れたら、ふたをして火にかける。

 今日の具は、えび、アサリ。えびは殻と背綿をとり、小さいものならそのまま、大きいものなら横半分に切り、軽く塩をしたもの。アサリは砂をはかせ、殻と殻をこすり合わせながら洗っておく。具はこれ以外にも、ちくわとかベーコンとかソーセージとか厚揚げ(あつあげ)なんかも、子供には人気。

 先ほどの火にかけた鍋の中が沸騰し始めたら、用意した具を上にのせ、再びふたをする。後は具に火が通ったら出来上がり。そのまま食卓にもっていき、食卓の上で、オープン!

 おおー、キャベツのグリーンとえびのピンク、ぷりぷりのアサリがなんとも、うまそうではありませんか。しかも土鍋ならこれ一つで完了し、熱々そのまま食べられる。まさに至れり尽くせりですねえ。

 食べ方は、そのままでももちろんいいのだけれど、各自好きなたれを作りつつ、つけつつ、かけつつ食べる。早い話、決まりなどないのです。ポン酢醤油、ごま油と塩、しょうが醤油、ケチャップとからし。次の日を気にしなければ、おろしにんにくとマヨネーズを混ぜたものなんかもステキ。

 にぎやかに作って、にぎやかに食べる。日に日に暖かくなって、わくわくするこの時期は、こんなはしゃいだ料理がよく合う。(終り)
               
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(平成21年5月4日更新)

(第20回)

大根葉とジャコのいためもの

塩もみで青臭さ抜く


                    材料(4人分)
                   大根の葉・・・・・・・・ 適宜
                   チリメンジャコ ・・・・ 1パック
                   塩 ・・・・・・・・・・ 少々
                   ごま油 ・・・・・・・・ 大さじ1
                   醤油、すりゴマ、七味唐辛子、好みで
   


【コ メ ン ト】
 スーパーに行ったら、見事な葉っぱがついた大根が売られていた。見るなりひと目ぼれ。ウキウキしながらレジに並ぶ。レジの女性がにっこり笑って私に言う。

 「葉っぱのところ、お切りしましょうか?」

 おおーっ、なんてこまやかな心遣い。このままだと持って帰るのに大変だもんね。すると、その女性、さらにこう聞いた。

 「どのへんからお切りしますか?」

 「どのへんからって・・・。いや、その、葉っぱの根元のところから・・・」

 「じゃあ、このへんでよろしいですか?」

 「はあ・・・。だいじょうぶです」。

 その女性、切り落とした葉っぱを持って、さらにさらに私に言った。

 「葉っぱのほう、ご入り用ですか?」

 あ、あのお・・・、葉(は)付き大根を買って、大根の葉っぱがいらない人っているんでしょうか?いらないと言う人がいたら、もらって帰ります!!そう言いそうになった私。その言葉を飲み込んで、葉っぱを奪うようにもぎ取って家路を急いだ。

 さて、葉っぱがみずみずしいうちに、おいしく料理しよう。作るのはジャコとのさっといため。これさえあれば、白いご飯が3杯はおかわりできるという飛びっきりのおかずなのである。

 大根の葉っぱは1センチくらいのみじん切り。塩とまぜてもみもみする。ごわごわしていた葉っぱがしんなりして、全体のかさも半分くらいになったらOK.あとはこれを両手で、ぎゅっと水気を絞る。ここまでできたら、フライパンにごま油を入れて火にかける。いよいよ葉っぱをいためる。どうせいためるなら塩もみしなくても?と思うけれど、塩もみすることで葉っぱの青臭さがうまい具合に抜けるのと、いきなりいためるより歯応えがシャキシャキしておいしく仕上がる。

 全体にさっと油が回るくらいになったら、チリメンジャコを入れる。これもさっといためるだけでOK。味見をして、香り付けの醤油を少々。最後にすりゴマをタップリ混ぜたら出来上がり。好みで七味唐辛子やさんしょうの粉をかけてもいける。

 熱々の白いご飯にたっぷりかけて食べる。シャキシャキした葉っぱの歯応えと適度な塩気、チリメンジャコのうまみ。おいしいー!!ご飯に混ぜて菜飯にしてもいい。焼きのりで巻いて食べるのもいける。ふた付き容器で冷蔵庫に入れておけば2〜3日は大丈夫。明日の朝はおかゆにしてタップリ混ぜて食べよう。楽しみ楽しみ。(終り)
               
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(平成21年5月16日更新)

(第21回)

鶏の照り焼きサラダ

息子の優しさに感涙し・・・

材料(4人分)

   鶏もも肉・・・・・・・・・ 1枚
   塩、こしょう、小麦粉・・・ 適宜
   ごま油 ・・・・・・・・・ 大さじ1
  (A)醤油 ・・・・・・・・ 大さじ2
     蜂蜜 ・・・・・・・・ 大さじ2
     レモン汁 ・・・・・・ 2分の1個
  (B)マヨネーズ ・・・・・ 大さじ2
     牛乳 ・・・・・・・・ 少々
   水菜、きゅうり、トマトなど
   



【コ メ ン ト】
 「普段は私と目も合わせないし、ろくに口もきかない息子がね、たまにすごーく優しい口調で話しかけてくることがあるのよ」
 「はあ・・・」
 「どうしてだか分かる?あのね、その直前まで彼女と話してた、その余韻が残ってるわけ」
 「・・・・・」
 「でもね〜、そうと分っていても、やっぱり幸せな気持ちになるのよね〜、これが」
 その話を聞いたとき、わが息子はまだ小学生。「そんなもんですか」としか、返す言葉がなかったというのに、ここにきて、話が急激に現実のものとなろうとは。

 いつもとは違う優しい口調。それが私に向けられたものでなくても、うれしくて仕方ない。にっこり笑って、「何か食べるものないの」などと言われようものなら、舞い上がる思いで、いそいそと台所に立ち、息子の好物の照り焼きサラダを作ってしまう自分がいたりするわけである。

 作り方は、こう。鶏もも肉を一口大に切ってポリ袋に入れ、塩、こしょうで下味(したあじ)をつけたら、小麦粉もいれ、袋の下をトントンとたたいて、全体に粉をまぶす。フライパンに、ごま油入れて火にかけたら、鶏肉を一度にいれ、両面こんがりと焼く。この時、香ばしい焼き色をつけるのがコツ。パリッと焼けている方が、見た目も味もグーンとアップする。

 鶏肉を焼いている間に、野菜を準備。今日は冷蔵庫に残っていた水菜、カイワレ、きゅうり、プチトマトなどを食べやすく切ってお皿に盛る。

 そうこうしているうちに、鶏肉が香ばしく焼けてきた。フライパンに余分な脂が出ているので、キッチンペーパーにさっと吸わせる。どうでもいいようなことだけれど、このひと手間を省くと、照り焼きのたれがうまく肉にからまなくなるから要注意。

 いったん火を止めてフライパンの中に直接、たれの調味料を入れる。醤油、蜂蜜がそれぞれ大さじ2杯。それからレモン汁を2分の1個分。軽く混ぜたら、再び火をつける。

 たれがつやつやに光り、トロリと鶏肉に絡まったら、たれごと生野菜の上にかけて出来上がり。今日はさらに、その上に、マヨネーズと牛乳を混ぜたものをたっぷりとかける。。

 「おおーっ、うまそうじゃん。やっぱ、照り焼きにはマヨネーズだよな」

 息子がおいしそうに食べる姿を見て、母は一人、勝利と安堵と至福の笑みを浮かべる。息子の彼女のおこぼれの優しさに感涙し、些細な一言で一喜一憂して、母親とはかくもけなげな生き物なのである。(終り)

               
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(平成21年6月1日更新)

(第22回)

キャラメルバナナトースト

食パンで健康的に

材料(4人分)

    砂糖 ・・・・・・・・ 大さじ5
    水 ・・・・・・・・・ 大さじ1
    生クリーム ・・・・・ 2分の1カップ
    食パン ・・・・・・・ 1枚
    バター ・・・・・・・ 適宜
    バナナ ・・・・・・・ 1本
    グラニュー糖 ・・・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 「ホントに気がきかないんだから」。娘はそう言うと、口をとがらせて横を向いた。
 「だってね、たまたま入ったコーヒーショップで、たまたま目についただけなんだよ」
 「でも、おいしかったんでしょ?そのキャラメルバナナタルト」
 「ええ、まあ・・・」
 「なら、どうして、娘にも買って帰ってやろうという優しい親心が働かないわけ?」
 確かに、娘に買って帰らなかったのは悪かったけれど、別に有名なケーキ屋さんでもないわけだし。でも、ここのところ、キャラメル味(あじ)が人気とか。娘がキャラメルという言葉に反応した気持ちも、分からないでもない。

 運良く、冷蔵庫には使いかけの生クリームも残っている。そこで、この心優しい母は、愛する娘のために、いそいそとキャラメルソースを作ることにしたのだった。

 まずは、砂糖大さじ5杯と水大さじ1杯を鍋に入れて火にかける。こんな少しの水でも、砂糖自体に水分があるので、じわじわと溶ける。

 けれど、スプーンなどでかき混ぜるのが一番いけない。かき混ぜた途端、砂糖は結晶化し、ポロポロと塊になってしまうのだ。あくまで鍋の方を動かして混ぜる。ここが最大のポイント。やがて溶けた砂糖が色づいて、かぐわしい香りが漂い始める。

 砂糖の焦がし加減は気分しだい。ほんの少しなら甘くて優しい味になるし、しっかり焦がせば苦み走った大人の味になる。焦げ色がついたら、生クリームを2分の1カップ入れ、鍋を動かして全体を混ぜれば出来上がり。

 さて、できたキャラメルソースを使って早速、キャラメルバナナトーストを作ろう。タルトも良いけど、おうちのおやつならトーストの方が簡単でヘルシーだもんね。

 食パンの上に輪切りにしたバナナをのせ、バターも所々にのせ、好みでグラニュー糖をパラリとかけてオーブントースターで焼く。食パンがおいしそうなきつね色になり、バナナが少しトロリとなったら、OK。上からたっぷりのキャラメルソースをかけて出来上がり。

 「めちゃめちゃ、おいしくない?」

 「そうやろ、そうやろ。こういうものは、家で作って、たっぷりと自分の好きなだけキャラメルソースをかけて食べるっていうのが、最高においしい食べ方なんよ」

 ふふふ、明日は、バニラアイスにたっぷりかけ、砕いたアーモンドなんか散らしてみよう。キャラメル味(あじ)のコーヒーも悪くない。へへへ、これさえあれば、当分は娘の尊敬を独り占めできること間違いなし。(終り)

               
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(平成21年6月17日更新)

(第23回)

豚肉のロベール風

アレンジ加え「我が家の味」

材料(4人分)

    (A)
      とんかつ用豚ロース肉 ・・ 4枚
      塩、こしょう、小麦粉 
    オリーブオイル ・・・・・・・ 大さじ1
    にんにく ・・・・・・・・・・ 2かけ
    玉ねぎ ・・・・・・・・・・・ 2個
    トマト ・・・・・・・・・・・ 2個
    ピーマン ・・・・・・・・・・ 2個
    日本酒 ・・・・・・・・・・・ 2分の1カップ
    醤油 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ1〜2
    みりん ・・・・・・・・・・・ 大さじ1



【コ メ ン ト】
 実(じつ)を言うと、今日は久しぶりにとんかつでも揚げて、ガツンと食べようと思っていた。何だかムシムシしてスカッとしない天気の時は、スタミナが付きそうなメニューが一番。ところが、年頃の娘は例によってダイエット中。「え〜、なんでとんかつなの〜」と口をとがらす。でもさあ、もう 厚切り(あつぎり)豚ロース買っちゃったしさあ、ポークソテーって言うのも、なんか芸が無い気がしない?

 その時突然、なぜだかわからないけれど、頭の中に思い浮かんだ料理がある。「豚肉のロベール風」。もう10年以上前に料理本で見つけて、子どもの小さい時は本当によく作った料理。ロベールさんというフランス人シェフの考えたソースをまねて煮込み料理にしたという。そうだ、今日は久しぶりに作ってみよう。

 まずとんかつ用 厚切り(あつぎり)豚ロースを食べやすい大きさに切る。大きいまま煮込んでもいいのだけれど、切ってから煮込んだほうが、後で食べやすい気がして。これに塩、こしょうをして小麦粉をまぶす。

 フライパンにオリーブオイルを入れて火にかけ、熱くなったら豚肉を入れてこんがり焼き目をつける。途中、つぶしたにんにく2かけも入れて、一緒にいためる。にんにくは、最初に入れて香りを出すと、豚肉を焼いている途中で真っ黒に焦げてくるから、こんな風に途中でいれ、豚肉から出てきた油でいためて、香りを出すのが奥園流。

 さて豚肉がおいしそうに焼けたら、玉ねぎの薄切り2個分を入れてさっといため、それからトマトのざく切り2個分と、ピーマンのざく切り2個分も入れる。後は、日本酒2分の1カップを入れたらふたをして弱火でことこと煮込むだけ。おそらく正式には白ワインを使うところなのだろうけれど、下戸の家にワインなどないし、トマト煮込みのときにワインを加えると、すっぱくなりすぎる気がして。

 20〜30分もすれば豚肉がとろりと軟らかく煮上がるので、そうなったら、醤油大さじ1〜2杯をいれ、味を見てすっぱいようならみりん大さじ1杯を入れて、最後にもう1度、塩、こしょうで味を調えたら出来上がり。

 「なんか、懐かしい味がする〜」
 一口食べるなり娘が言った。「お母さんが仕事で遅くなる時、自分達で温めて食べた味だよね、これ」
 えっ!?そういう風に記憶されているんだ、この料理って?
 「昔はさあ、ご飯にかけて、どんぶりみたいにしてたべたよね」

 そういえば、そうだった。ロベール風なんてかっこうつけたって、お留守番用の料理だったんだね、これ。でも、久しぶりに皆で一緒に食べたら、同じ料理でも何倍もおいしいと思わない?(終り)

   
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(平成21年7月7日更新)

(第24回)

肉味噌冷やしうどん

家族の時間差攻撃にも大丈夫

材料(4人分)

    (A) 豚ひき肉 ・・・・・・・・・ 4枚
     味噌 ・・・・・・・・・・・ 大さじ3
     蜂蜜 ・・・・・・・・・・・ 大さじ3
     にんにく ・・・・・・・・・ 1かけ
     しょうが ・・・・・・・・・ 1かけ
     豆板醤 ・・・・・・・・・・ 好みで
    醤油 ・・・・・・・・・・・・ 少々
    なが葱 ・・・・・・・・・・・・ 1本
    うどん ・・・・・・・・・・・ 適宜
    きゅうり、レタス、貝割れなど ・・ 好みで
    



【コメント】
 休みの日の昼ごはんは悩むことが多い。起きてくる時間がばらばらなので、朝早くから起きて、朝ご飯もしっかり食べ、掃除洗濯ひと通りすませた私と、今まさに起きてきたばかりの子供では、食べたいものが全く違う。かといって、自分ひとりで適当にすませてしまってから、おなかへった〜なんかないの〜とこられると、自分はもう食べないのに、それなりのものを作ることになるので、それもなんだか頭にくる。

 そんなわけで、今日のお昼は肉味噌冷やしうどん。ピリから の肉味噌さえ作っておけば、後は冷凍うどんをさっとゆでて冷やすだけで、いつ何どきなんか食べるものないの〜といわれても大丈夫な、時間差攻撃対応メニューなのである。

 まずはピリから肉味噌作り。豚ひき肉300グラム、味噌、蜂蜜各大さじ3杯、にんにく、しょうがのすりおろし各1かけ分、それから豆板醤を好みで少々。これらの材料をフライパンの中に全部入れ、よーく混ぜる。肉が生のうちに調味料を混ぜることで、中まで味が入り、しっとりとおいしい肉味噌になる。しかも、それをフライパンの中でやってしまえば、余分な洗い物も増えず、楽チン楽チン。

 よーく混ざったところで、火をつけ、木べらでかき混ぜながら加熱する。味噌の焦げるこうばしい香りがしたら、ここで味見をして、醤油を少し足す。ここで醤油を加えると、不思議と味がピッと引き締まっておいしくなるから不思議。

 最後にねぎのみじん切りを加えて、さっと混ぜれば火を止めてできあがり。ねぎにはあまり火を通さず、フレッシュな香りと歯応えが残っているくらいがおいしい。所要時間5分。あっけないほど簡単で、フライパン1個で出来る割に、応用範囲は広く、本当に頼りになるおかず。

 さてここまで作っておけばこちらのもの。あとは冷蔵庫にある生野菜を適当にせん切りにしてふたつき容器に入れていけばスタンバイOK 。おなかをすかせた家族が、ばらばらに起きてきても大丈夫。

 冷凍うどんをささっと取り出し、1分ほどさっとゆでた後、氷水でつめたく冷やし、器に盛り、野菜をたっぷり上にのせたら、その上から肉味噌をかける。後はわっさわっさとかき混ぜて食べれば、半分寝ぼけた顔も、見る見るしゃきっとしてくるから不思議。

 ちなみに、このそぼろ、ご飯にかけてどんぶりにしてもおいしいのだけれど、なすをいためたところに入れて、なすのピリからひき肉いためにするのも捨てがたい。昼に食べたうどんのあれが、夕飯のこれだと家族の誰も気づかないとちょっと得した気分。   (終り)

   
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(平成21年7月16日更新)

(第25回)

ゴーヤの甘(あま)味噌いため

「苦い はウマい」実感!

材料(4人分)

ゴーヤ ・・・・・・・ 1本
(A)
豚薄切り肉 ・・・・ 200グラム
片栗粉 ・・・・・・ 大さじ2分の1
醤油 ・・・・・・・ 大さじ1
ごま油 ・・・・・・ 少々
(B)
味噌 ・・・・・・・ 大さじ1
蜂蜜 ・・・・・・・ 大さじ1
みりん ・・・・・・ 大さじ1
豆板醤 ・・・・・・ 小さじ2分の1
ごま油 ・・・・・・ 大さじ1〜2
    



【コ メ ン ト】
 15年以上前、初めてゴーヤを食べた時、世の中にこんなまずいものがあるのかと思った。それを知ったゴーヤ好きの友達が、私のために特性ゴーヤミルクセーキなるものを作ってくれた。牛乳とゴーヤと砂糖をミキサーにかけて作ったそれは、牛乳のまろやかさと砂糖の甘みでゴーヤの苦味が消える・・・はずだった。ところが甘い牛乳がゴーヤの苦味を際立たせているとしか思えず、もう 一生ゴーヤは口にすまいと心に誓った。

 そんな私を見て、それならば、と教えてもらったのがゴーヤの甘(あま)味噌いため。文字で書けばなんと言うことはない料理なのだけれど、甘い 味噌味(みそあじ)がゴーヤのにがみとうまくからまり、なんとも言えずおいしい。生まれて初めて苦味をうまいと感じた瞬間だった。今日は久しぶりに作ってみよう。

 まずゴーヤは両端のとがったところを落とし、縦半分に切る。それからカレースプーンで中のワタをかき出す。こそげ取るようにして、きれいにかき出したら、端から5ミリくらいの薄さに切っていく。豚肩ロースの薄切り200グラムは一口大に切り、片栗粉大さじ2分の1杯、醤油大さじ1杯、ごま油少々をもみこんでおく。

 ここまで準備ができたら、フライパンにごま油を入れて、まずはゴーヤからいためる。くたっとなるまでしっかりいためるもよし、さっといためてフレッシュな食感を楽しむのもよし。くたっとなるまでいためたほうが、若干苦味が消えるような気もするけれど、完全に消えるわけではないので、要は好みの問題。

 いったんゴーヤを取り出したら、あいたフライパンにごま油を足して豚肉をいためる。火は強火。こんがりおいしそうな焦げ色がつくまでいためるのがコツ。このまま食べてもおいしそうな感じになったら、ここでいったん火を止める。ここが奥園流ポイント。味噌、蜂蜜、みりん各大さじ1杯、豆板醤小さじ2分の1杯を入れて、フライパンの中で肉と混ぜる。

 きれいにお肉と混ざったら、再び火をつけて、今度は味噌がこんがり焦げるくらいまで再度いためる。味噌と蜂蜜が少し焦げるいい香りがしてきたら、取り出しておいたゴーヤを戻しいれ、さっと混ぜれば出来上がり。ゴーヤには味がついていないけれど、しっかり甘辛味(あまからあじ)の付いたお肉と一緒に食べれば、全く問題なし。これにはやっぱりあつあつの白いご飯。ゴーヤが苦手な娘も、これならもりもり食べる。苦い をうまいと感じられたら、味覚が大人になった証拠だよ。(終り)

   
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(平成21年8月2日更新)

(第26回)

もやしカレー

包丁いらずで安くて簡単!

材料(4人分)

     ごま油・・・・・・・ 大さじ1杯
     ぶたひき肉 ・・・・ 200グラム
     にんにく ・・・・・ 1かけ
     しょうが ・・・・・ 1かけ
     カレー粉 ・・・・・ 大さじ1
     もやし ・・・・・・ 1袋
     (A)水 ・・・・・ 2カップ
        昆布 ・・・・ 1×10センチのもの1枚
        オイスターソース ・・・ 大さじ2
        醤油 ・・・・・・・ 大さじ2
     水溶き片栗粉 ・・ 適量
     青ねぎ小口切り ・・ あれば
     ごはん ・・・・・・ 茶碗2杯
  



【コ メ ン ト】
 休日のスーパーにはいろんな人たちがいて、かごの中にその人たちの生活が見え隠れする。すぐ前の熟年カップルは、今日の夕飯を八宝菜に決めた様子。奥さんの「こんなに買ったら高くつくから、生はもやしだけにして、後は4割引きの冷凍野菜にしましょ」の一言で、ご主人が生野菜を棚に返し、冷凍野菜を持って帰ってきた。

 すぐ後の若いカップルは、女性の「何、食べたい?」。の質問に、「あっさりしたもの」と一言。「そうめんにオクラと納豆かけて食べる?」。「そんなまずそうなのやだ」。「でも、あっさりしたものがいいっていったじゃん」。喧嘩になってしまった。

 別の若いカップルはカレーに決めたようで、ニコニコしながらレジに並んでいる。かごの中には、97円のインスタントカレールーとレトルトご飯、2割引きの豚肉とカレー用に切って売られている野菜。これから、一人暮らしの小さなキッチンでままごとみたいな鍋で作るのかな。

 今日のわたしも安くて簡単なものを作りたくなった。買ったものは、豚挽き肉ともやし、しょうが、にんにく。包丁いらずのもやしカレーをつくろう。

 まず、フライパンにごま油を入れて豚挽き肉をいためる。色が変わりかけたら、にんにくとしょうがをすりおろしながら加え、さらにいためる。これだけで、いい香り。色が変わってきたら、カレー粉を大さじ1杯ほど入れて、さらにいためる。

 カレー粉って、なんでこんなに食欲を刺激するんだろう。もやしを入れ、じゃっといためる。もちろん、ひげ根なんて取らずにそのまま。もやしに油が回ったら水2カップをいれ、うまみをプラスするために昆布を細かく切りながら入れる。細かく切ることで、昆布の旨みがたっぷり溶け出し、昆布自体も具としておいしく食べられる。

 後は、ふたをして煮ること2〜3分。もやしがくたっとなったら、オイスターソースと醤油で味を調える。大さじ2杯ずつといったところ。最後に、水溶き片栗粉でとろみをつけ、冷蔵庫にあった青ねぎを切りながら入れて出来上がり。これぞ、マーボカレーもやし!!今日はご飯にかけるけれど、焼きそばにかけたって美味しいんだもんね。

 八宝菜や納豆オクラそうめん、ままごとのようなカレーも、美味しくできたかな?同じようなテレビ番組を見ながら、それぞれ楽しい夕飯になっているのかな?休日の夕飯は家ごとにいつもと違うドラマがあって、それを思うと、チョット切ないような甘いような気持ちになる。(終り)

   
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(平成21年8月18日更新)

(第27回)

わらびもち風(ふう)寒天

きな粉でヘルシー

材料(4人分)

     (A)棒寒天 ・・・・・ 1本
        水 ・・・・・・・ 約3カップ
     きな粉 ・・・・・・・・ 適量
     黒蜜(市販品) ・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 子供の頃、夏のおやつといえば寒天だった。祖母はお中元で贈られてきたミカンの缶詰を大切に取っておいては、シロップごと寒天に混ぜて冷やし固めてくれた。寒天を切り分けるとき少しでもたくさんのミカンの入っているひと切れを自分のものにしたくて、祖母の手元を真剣に見つめる私。

 照りつける太陽と、ジージー鳴くセミの声と、流れる汗と、蚊取り線香の香りと、そして冷たく冷えたミカン入り寒天と。今思えば、子供の頃の私の夏はそんなもので出来上がっていたような気がする。

 そんなわけで、寒天は今でも私の大好物。

 ちなみに、缶詰を使ったフルーツ寒天の作り方は こう。缶詰のフルーツとシロップを分ける。粉寒天1袋4グラムにたいし、水の量が約3カップ(500ccから600cc)なので、シロップの分を引いた水の量と粉寒天を鍋に入れ火にかける。

 基本的に寒天は砂糖が入ると溶けにくくなるので、水だけで溶かしてからシロップを加えるほうが失敗がない。後はフルーツを加え、ふた付き容器に流し入れて冷やし固めれば出来上がり。

 こんなフルーツ寒天もおいしいのだけれど、最近の私は、中にフルーツも砂糖も入れないでそのまま冷やし固めている。味も何もついていない寒天をスプーンで豪快にすくい取って、食べる時にきな粉と黒みつをかける。そうすると、わらびもちみたいな味がするから不思議。

 わらびもちだと作るのに時間がかかるし、冷蔵庫に長く入れておくと食感が悪くなるけれど、寒天なら冷蔵庫で長期保存できるし、何といっても冷たい一切れが口の中を通過する幸せがある。

 寒天には棒寒天と粉寒天があるのだけれど、砂糖を入れずに固める時は、棒寒天と決めている。作り方が面倒くさくて、さっと水にぬらした後、細かく手でちぎってから煮溶かさなければならないし、煮溶けずに残った部分を取り除くために、いったんざるでこさなければならなかったりするけれど、口に含んだときの何ともいえない 磯(いそ)の香りと、こりっと崩れる食感は捨てがたい。

 棒寒天を生産しているのは長野県の茅野。以前、それを見に訪れたことがある。寒い寒い真冬の空の下、棒状に切った寒天を並べて、夜と昼の温度差を利用して、凍らせることと溶かすことを繰り返してつくる。

 「寒い寒い真冬の太陽の力で作られるから、寒天はおひさまの食べ物なのよ」。生産者の女性の言葉が今でも心に残っている。暑い暑い夏に、寒い寒い冬の太陽を慈しみながら食べる。棒寒天はなんともロマンチックな食べ物なのである。(終り)

   
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(平成21年9月1日更新)

(第28回)

なすにゅうめん

移ろう季節感じる濃厚なうまみ

材料(4人分)

     なす ・・・・・・・・・ 6〜8本
     (A)豚バラ肉 ・・・・ 300グラム
        醤油 ・・・・・・ 大さじ1
        蜂蜜 ・・・・・・ 大さじ1
     (B)水 ・・・・・・・ 2カップ
        醤油 ・・・・・・ 2分の1カップ
        みりん ・・・・・ 2分の1カップ
        昆布 ・・・・・・ 1×10センチの物1枚
     ごま油 ・・・・・・・・ 大さじ1
     そうめん ・・・・・・・ 適宜
     しょうが、青ねぎ ・・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 朝夕めっきり涼しくなってきた。ちょっと温かい食べ物もそろそろ悪くない。今日はあと少し残っているそうめんを使って、夏の名残のなすにゅうめんといこう。

 昔、九州に住んでいた頃、アジやサバなどを煮た煮汁にそうめんを入れ、さっと煮たにゅうめんをよく食べた。本当は鯛なんかでやるとごちそうになるのだけれど、ふだんのおかずには、安い青魚で充分。魚のうまみがタップリ染み出たあま辛いアジがそうめんになじんで、熱々をふーふー言いながら食べるのが、とてもおいしかった。

 そのイメージを描きつつ、もっと手軽に豚バラ肉となすでつくるようになったのが、奥園家定番なすにゅうめん。

 作り方は こう。まず、豚バラ肉300グラムを一口大に切り、醤油と蜂蜜を各大さじ1杯ずつもみもみして味をからめる。この下あじが実はとても大事なコツ。普通は豚肉を煮る場合、じっくり時間をかけて ことこと煮ないと中まで味がしみないのだけれど、こんなふうに肉が生の間にしっかり味をもみ込んでおくと、後はさっと煮るだけでしっかり味がつく。

 なすはへたを取って縦半分に切り、ちょっと薄めの半月切りにしたら、あくを抜くために水にさらす。なすは煮るとうんとかさが減るから、ちょっとたっぷり6〜8本入れてしまおう。

 ここまで下準備ができたら、フライパンを火にかけ、ごま油を入れる。熱くなったところで下あじをもみ込んでおいた豚バラを一度に入れる。じゅっという音とともに、醤油と蜂蜜が焦げるあま辛いにおい。ここであわててはいけない。この香ばしい香りもごちそうのうち。焦げるのを心配して弱火でいためるより少し焦げる感じでがんがんいためる方がぐんとコクがでる。

 豚肉が香ばしく焼けたら、水を切ったなすをいれ、さっといためる。なすに油が回ったら、水2カップと醤油、みりんを2分の1カップずついれる。そして忘れていけないのが昆布。キッチンばさみでこま切りにして入れると旨みがアップ。すぐに軟らかくなるので具として食べられるのも良い。

 後はふたをして なすが軟らかくなるまで待つこと10分。なすがくたっと軟らかく煮えたらいよいよ最後の仕上げ。別の鍋でゆでておいたそうめんをこの煮汁の中に入れてさっと煮る。器に盛って、しょうがのすりおろしをのせ、もしあれば彩りに青ねぎの小口切りを散らして出来上がり。

 豚バラの濃厚なうまみとトロリと煮えたなすの食感が熱々のそうめんとよく合う。ぴりりとしたしょうがの香りもいい。

 ふーふーいいながら、醤油いろに染まったそうめんを食べていると、きりりと冷やした真っ白なそうめんを食べていた暑い暑い夏が、ずーっと遥か昔のことのように感じるから不思議。気付かないうちにゆっくりゆっくり季節は移ろっている。(終り)


    
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(平成21年9月16日更新)

(第29回)

ハヤシライス

醤油+味噌=デミグラスソース

材料(4人分)

     (A)牛薄切り肉 ・・・ 200グラム
        塩、こしょう ・・ 適宜
     玉ねぎ ・・・・・・・・ 1個
     トマト ・・・・・・・・ 4個
     シメジ ・・・・・・・・ 1パック
     バター ・・・・・・・・ 大さじ2
     砂糖 ・・・・・・・・・ 大さじ1
     小麦粉 ・・・・・・・・ 大さじ1
     (B)醤油 ・・・・・・ 大さじ1
        味噌 ・・・・・・ 大さじ1
        みりん ・・・・・ 大さじ1〜2
        塩、こしょう ・・ 適宜
     ごはん ・・・・・・・・ 茶碗2杯
     



【コ メ ン ト】
 高校生のための料理教室を開くことになった。ある程度のことは大人と 同じようにできるけれど、一家の台所をしょって立っているわけではないから、毎日食べるお惣菜風のおかず、というよりは、ちょっとご馳走感があって、楽しいものがいい。

 そこで最初に考えたのが、巻き寿司だった。切れ込みを入れたソーセージときゅうりを芯にして巻くと、切ったときに切り口にチューリップの花が現れる。名付けて、お花畑の巻き寿司。ところが、お皿一杯に並べて、一人悦に入っていると、息子が一言。

 「これ、ちょっとやりすぎじゃないの?」。

 さらに追い討ちをかけるように娘が、「近頃の女子高生って、こういうの喜ばないと思うよ」。

 えっ!!こういうカワイイ系はだめですか??。では、どういったものが、今どきの高校生のハートをゲットするのでありましょう。

 「例えばさあ、グラタンとかさあ、ハヤシライスとかさあ、そういうの作れるっていうの、ちょっとかっこいいじゃん」。

 「そうそう彼氏にも自慢できるし」。

 勉強になります、メモ、メモ・・・。そんなわけで、今日はハヤシライスの試作。

 まずは、玉ねぎ1個を薄切り。これをバターできつね色になるまでいためる。途中で砂糖大さじ1杯を入れると、早くきつね色になる。その間に牛の薄切り肉200グラムを一口大に切って塩、こしょうをまぶしておく。玉ねぎが良い感じに色づいてきたら、バターを少し足し、さらに牛肉をいためる。

 こんがりと焼き色がついたら小麦粉大さじ1杯を入れてさっといため、たっぷり4個分のトマトのざく切りを入れ、ふたをして弱火で煮る。旨み成分のグルタミン酸をたっぷり含んだトマトを加えることで、わざわざスープのもとなどを加えなくても、おいしく仕あがるというわけ。

 弱火で10分ほど煮てトマトがくたっとなったら、ひと混ぜして、ここで調味料。味付けは、醤油大さじ2杯と、味噌が大さじ1杯。味噌を入れることで独特な味の深みが出て、まるでデミグラスソースを入れたような味になるのだ。酸っぱいようなら、みりんを大さじ1〜2杯、最後に塩、こしょうで調整したら、小房(こふさ)に分けたしめじを加え、さっと煮たら出来上がり。

 ご飯にたっぷりかけて食べる。味噌の味はまったく分からず、本格的な味わい。われながらウマ〜イ!!どうこれ?女子高生は、こういうの作れると、「かっこいい」って思ってくれそう?(終り)

   
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(平成21年10月3日更新)

(第30回)

柿と大根のサラダ

異なる食感が絶妙

材料(4人分)

     大根 ・・・・・・・・・・・・ 10センチくらい
     塩 ・・・・・・・・・・・・・・ 少々
    (A)オリーブオイル ・・ 大さじ2
       レモン汁 ・・・・・  1個分
       塩 ・・・・・・・・・・・ 小さじ2分の1
       蜂蜜 ・・・・・・・・・ 小さじ1〜2
     柿 ・・・・・・・・・・・・・・ 1個
         



【コ メ ン ト】
 「だからね、漬けるの、ぬかの中に」。電車の中でうとうとしかかっていた私の耳が、聞くでもなしに、隣の席の女性の会話を聞いている。

 「でも、ぬるぬるして、漬けにくくない?」

 「大丈夫だって。切らずに皮のまま漬けるんだもの」

 「じゃあ、皮のままたべるの?」

 「違う、違う。丸のまま、ぬかの中に突っ込んで二日くらいほったらかしにして、食べるときに皮をむいて食べるの」

 「へえ〜」

 「ほんとにおいしいんだから、あんたもやってごらんよ、柿のぬか漬け」

 柿!?その瞬間、私の目がぱちりと開いて、体全体がピクリと反応した。あのお、今の話、柿だったの。それならそうと言ってくれないと、最初の方、聞き逃しちゃったじゃないの。

 こうなれば、仕方がない。とにかく言葉の断片を思い出しながら、やってみるしかない。柿をそのまま、ぬかの中にぐりぐり押し込んで、待つこと二日。どうだ、どうだ。どきどきしながら、取り出した。

 入れる時はまだ固そうだった柿が、今にもぷちんと崩れそうなくらい柔らかくなっている。漬けすぎたのかもしれない。皮をむくのは、手ごわそうだから、そうだ、スプーンですくって食べよう。

 う〜ん、確かに表面についた塩味が柿の甘さを引き立てて、強いて言えば生ハムメロンのような味の組み立て。けれど、甘い柿をわざわざぬか漬けにしたいかと聞かれたら、たぶん、私しないかも・・・と言う味。それならば、柿のサラダの方がずっとおいしい気がして。

 そんなわけで、冷蔵庫に残っていた柿は大根とのサラダになったのだった。作り方はこう。大根は薄いイチョウ切りにして、塩でもむ。しんなりしたら、いったん水気を絞って、オリーブオイル大さじ2杯、レモン汁1個分、塩小さじ半分、蜂蜜小さじ1から2杯であえておく。そこに、大根よりあつめのイチョウ切りにした柿を入れて、全体を混ぜれば出来上がり。

 出来立てもおいしいけれど、冷蔵庫に1から2時間入れて味がなじんだのもいい。大根のシャキシャキ感と、柿のねっとりと柔らかい食感とが絶妙のバランス。レモンの香りが効いたちょっと甘いドレッシングが、またよく合う。

 それにしても、柿のぬか漬け、もしかしたら大切なポイントを聞き逃していた可能性がある。柿のサラダレシピと交換に、その大切なコツを教えてほしいものだと、いまだに思っている私なのだけれど。(終り)

   
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(平成21年10月16日更新)

(第31回)

アップルパイ

焼きたて熱々、秋の味覚

材料(4人分)

     リンゴ ・・・・・・・ 2個
     砂糖 ・・・・・・・・ 大さじ4
     サツマイモ ・・・・・ 1本
     シナモン ・・・・・・ 好みで
     冷凍パイシート ・・・ 適宜
     みりん ・・・・・・・ 少々
     麩 ・・・・・・・・・ 好みで
       



【コ メ ン ト】
 スーパーに入ると一直線に冷凍食品売り場へと向かった。だって今日は冷凍食品オール4割引!今日のお目当ては冷凍パイシート。朝晩寒くなってくると、焼きたて熱々のアップルパイが無性に食べたくなってくる。今日のおやつは冷凍パイシートを使ったアップルパイにしよう!!。

 まずはリンゴを煮る。リンゴ2個は4つに切って芯をとり、皮をむいて、いちょう切りにし、土鍋に入れたら砂糖を大さじ4杯をまぶす。このとき砂糖をまぶしてそのまま5から10分ほど置くのがポイント。リンゴは砂糖をまぶして煮ることで透き通ったきれいな色に煮上がるのだけれど、すぐに火にかけると砂糖が焦げてくる心配がある。5から10分置くことでリンゴから水分が出てくるので、その水分で蒸し煮にしようというわけ。今日はここに皮ごといちょう切りにしたサツマイモも入れて、一緒に蒸し煮にすることにした。

 火加減は中火からやや弱火。ふたをしてじっくり加熱することで、サツマイモの中に含まれるでんぷんを麦芽糖に変えてくれる酵素がうまく働き、サツマイモが石焼きイモのごとく飛び切り甘くおいしくなる。ここはじわじわ加熱してくれる土鍋を使うのがおいしく作るコツでもある。

 20分くらいしてサツマイモに火が通ったら、シナモンをふりかけ、全体を一混ぜして出来上がり。いったん取り出して冷ましておく。

 ここまでできたらいよいよパイ作り。常温に出しておいた冷凍パイシートは食べやすい大きさに切り、先ほどのリンゴとサツマイモの甘煮をのせて二つ折りにし、端をフォークで押さえる。サツマイモを入れたおかげでリンゴの水分をうまい具合に吸っているはず。でも、もしそれでもまだ水分がすごくおおそうだったら、お麩を4から5個くらい砕いて混ぜる。リンゴの水分をサツマイモやお麩で上手に吸わせると、パイを焼いている間に煮汁が出てきてべたべたになる失敗がない。

 さてパイの表面には艶出しのための卵黄を塗りたいところだけれど、この為だけに卵1個を使うのはもったいない気がするので、私はこんなときみりんを使う。そしてさらにグラニュー糖をぱらぱらと振りかけ、220度13から15分焼く。こうするとみりんがいい感じで焼けてこげ色がつき、グラニュー糖が溶けて艶が出るというわけ。

 これはもう焼きたてにかぶりつくのがいい。さっくり焼きあがったパイがはらはらとくだけ落ち、中からとろりとしたリンゴとほっくりしたサツマイモ。はふはふ、あちちち。いやあ、あきでふねえ。いいでふねえ。はふはふ。う〜ん、おいひいねえ〜。(終り)

   
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(平成21年11月3日更新)

(第32回)

ひじきの梅煮

あっさり薄味、サラダ感覚

材料(4人分)

     芽ひじき ・・・・・・ 大さじ4〜5杯
     水 ・・・・・・・・・ 2カップ
     にんじん ・・・・・・ 1本
     油揚げ ・・・・・・・ 1枚
     梅干し ・・・・・・・ 1個
     醤油 ・・・・・・・・ 大さじ1〜2
     かつおぶし ・・・・・・ 1袋(5グラム)
         



【コ メ ン ト】
 乾物棚から芽ひじきを取り出す。ほんのちょっとした空き時間に、ひじきの煮物を作りおきしておくのが、ここのところの私の週間。

 数ヶ月前、テレビの健康番組で鉄分たっぷりの料理を紹介させていただいたのがきっかけで、女性は鉄分が不足しやすいこと、鉄分が不足すると疲れやすく集中力がなくなり、深刻な病気を引き起こす原因にもなりかねないことを再確認した。

 鉄分というのは、吸収が悪い上に食いだめがきかないので、毎日まめに食べないといけない。でも作るのが大変だと長続きしないから、簡単でおいしくて体にいい奥園流ひじきの煮物はお勧め。

 奥園流のひじき料理の特徴は戻し方。フライパンに水2カップくらいと芽ひじき大さじ4〜5杯くらいを入れて、いきなり火にかける。沸騰したら火を止めてそのまま5分放置。水で戻せば30分くらいかかるところが、このやり方なら5分で柔らかく戻るというわけ。そして5分たったらフライパンのふたを少しずらしてそのすき間から余分な水を捨てる。これだと、ザルにあげたひじきがザルの目に詰まるわずらわしさがないでしょ?

 さらにフライパンでここまでやっておくと、そのまま次の料理に移れるのもうれしいところ。戻ったひじきの上に、千切りにした人参と油揚げをのせ、さらに梅干しを丸のまま1〜2個入れたら、水少々を足してふたをし、弱火にかける。ほんの少しの水でも、ふたをして蒸し焼きにすることで5分もすればにんじんは十分柔らかくなる。

 蒸し焼きにしている間に梅干しも柔らかくなるので、軽く混ぜるだけで簡単につぶれ、梅肉が全体にからまる。そうしたら醤油少々で味を調え、最後にかつおぶしを混ぜ、ゴマを散らして出来上がり。

 このとき大事なのが、薄味に仕上げることと、甘くしないこと。この手の乾物の煮物って、ついつい醤油と砂糖で濃いめの甘辛味(あまからあじ)に仕上げてしまいがちだけれど、そうすると量がたくさん食べられないし、味に飽きてくるので冷蔵庫の中でもてあましがち。でも、梅干しの酸味とかつおぶしのうまみを聞かせた薄味だと、サラダ感覚で本当にもりもり食べられる。

 たくさん作って保存すれば、冷蔵庫で2〜3日は大丈夫。混ぜご飯にしてみたり、卵焼きに入れてみたり、あるいは、いり豆腐に入れてみたり、アレンジもいろいろできる。

 毎日の生活の中で、ほんのちょっと健康を意識してみる。ちょっとだけ食生活を改善してみる。そんなほんのちょっとが、後々大きな意味を持つような気がしている。(終り)

   
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(平成21年11月17日更新)

(第33回)

リンゴのホットケーキ

台所に幸せな香り

材料(4人分)

     リンゴ ・・・・・・・・・・・ 1個
     砂糖 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ2から3杯
     バター ・・・・・・・・・・・ 大さじ1
    (A)小麦粉 ・・・・・・・・・ 1カップ
       砂糖 ・・・・・・・・・・ 大さじ3
       ベーキングパウダー ・・・ 小さじ1
       卵 ・・・・・。・・・・・ 1個
       牛乳 ・・・・・・・・・・ 4分の1カップ
       レモン汁 ・・・・・・・・ 2分の1個分



【コ メ ン ト】
 夕方、娘と一緒に買い物に行ったスーパーで真っ赤な紅玉が売られていた。「お母さん、このリンゴ買おうよ。真っ赤っかでチョーおいしそうなんだけど」。リンゴ好きな娘はひと目見るなり、がぶりとかぶりつくまねをした。

 たしかに硬くて酸っぱい紅玉は、丸かじりしてもおいしいのだけれど、このリンゴのおいしさは加熱した時に出ると私は思っている。甘く煮た紅玉のたっぷり入ったアップルパイや、焼きリンゴ、それにパウンドケーキ。さわやかな酸味があってこそ、甘さが生きるというか。ああ、想像するだけでおなかが鳴る。

 そんなわけで、とりあえず真っ赤なのを二つ買った。簡単ですぐに食べられるもの。そう、ホットケーキを焼こう。

 リンゴを8等分して芯を取り、皮ごとざくざくといちょう切りにしていく。そうしたら、フライパンにバターを入れて、リンゴをいためる。バターがリンゴにからまったらふたをして、弱火で蒸し焼きにする。程なくリンゴの甘酸っぱい、いいにおいが台所いっぱいに広がってくる。

 リンゴに火が通るのを待つ間に生地を作ろう。小麦粉1カップ、砂糖大さじ3杯、ベーキングパウダー小さじ1杯をよく混ぜておいたところに、卵1個と牛乳4分の1カップ、レモン汁2分の1個分を入れて、ぐりぐりと混ぜる。先に粉類を混ぜておいてから、卵、牛乳、レモン汁といった、液体ものを混ぜるのがコツ。こうすれば、だま だまにならない。

 リンゴは柔らかくなったら、砂糖を大さじ2から3杯をいれる。砂糖がリンゴにからまったら、その上から、作っておいた生地を一度に全部流しいれる。後はふたをして弱火にし、待つこと10分。

 ホットケーキの表面が全部乾いて、ふっくら膨れていたら出来上がり。そこにお皿をかぶせ、かぱっとひっくり返して取り出す。砂糖が焦げて、いい感じにキャラメルになっている。生地は、ふたをして蒸し焼きにしてから、蒸しパンみたいにふんわりしっとり。

 実は、タルトタタンというお菓子があって、おっちょこちょいのタタン姉妹がリンゴのタルトを焼くのに、下にパイ生地を敷かずにリンゴを入れてしまい、あわてて、リンゴの上からパイ生地をかぶせてオーブンで焼いたところ、下に敷いたリンゴがキャラメル状になって、逸品のタルトが出来たという話。

 ちょっとまゆつばな気がしないでもないのだけれど、このホットケーキは、まさにこのタタン風。パイよりもずっと簡単で、作っている間じゅう、幸せな香りに包まれるのがうれしいところだ。(終り)

   
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(平成21年12月2日更新)

(第34回)

ミカンくず湯

ホッとするトロトロの食感

材料(4人分)

     ミカン ・・・・・・・・・・・ 4〜5個
     (果汁 ・・・・・・・・・・・ 1カップ分)
     本くず粉 ・・・・・・・・・・ 大さじ1



【コ メ ン ト】
 ミカンを皮ごと半分に切って、レモン搾り器にぎゅっぎゅっと押し付ける。ミカン色の断面から鮮やかな果汁が滴り落ちる。オレンジジュースのようなツンと澄ました色ではなく、見ているだけで元気になるような陽気な色だ。搾るほどに楽しくなり、次から次へ、どんどん搾っていく。4から5個も搾ったら、たちまち1カップほどのミカンジュースが出来た。

 これをこのままごくごく飲むのも悪くない。優しい優しい酸味と甘み。とがったところがない、まあるく優しい味だから、のどから体の中に流れ込んでいくと、それだけで体中の細胞が喜び始める気がする。

 けれど、今日はこれをくず湯にしようと思う。実はここ4から5日、娘が少々風邪気味で、いまひとつ元気がない。そんな時はビタミンCたっぷりの熱いミカンくず湯でお腹の中から温めて、ぐっすり眠る、これ、私の子どものころからの風邪撃退法のひとつ。

 まずは本くず粉大さじ1を鍋に入れ、そこに搾りたてのミカンジュース1カップを少しずつ加えながら、よく溶かす。くず粉がなければ片栗粉でもできないことはないけれど、くず粉と言えば風邪薬として有名な葛根湯と同じ、葛の根っこからとったでんぷん。ぞくぞくするとか関節が痛むといった初期の風邪には、効果があるはずだ。

 さて、くず粉がミカンジュースの中でよく溶けたら、後は木ベラで混ぜながら火にかけ、全体がフツフツとなって、とろみがついたら出来上がり。湯飲みに入れて、後は好みで蜂蜜を加えてかき混ぜたら、スプーンですくいながらなめるように食す。とろとろの得体の知れない食感が、なぜか妙にほっとする。

 子供のころ、夜寝る前に母と2人でくず湯を飲んだ。くず湯を作るのはいつも私の係。最初は水で溶いたくず湯を火にかけてとろりとなったところに砂糖を入れただけのものだったのが、そのうち砂糖の代わりに濃縮タイプの乳酸菌飲料を入れてみたり、ジャムやしょうが汁を混ぜてみたりと、いろんなアイデアが浮かんだ。ミカンジュースで作るようになったのは、あるとき大量にもらったミカンをどうにかして、大量に消費したくて搾ることを思いついたから。ちょっとしなしなになってきたミカンだって、酸っぱいミカンだって、ジュースにすれば問題なし。さらにそれがくず湯になれば、ミカンだって喜んでいるはずだ。

 「なんだか、体全体がぽかぽかしてきたみたい」と娘。でしょ〜でしょ〜。体が温まると、なんだか気持ちが明るくなる。病気になって一番大切なのは、元気をなくさないこと。ミカンで、目からも口からも元気注入完了!!。(終り)

   
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(平成21年12月17日更新)

(第35回)

おせちの定番「黒豆」

砂糖だけでシンプルに

材料(4人分)

     黒豆 ・・・・・・・・・・・ 1袋
     水・・・・・・・・・・・・・・ 5から6カップ
     砂糖 ・・・・・・・・・・・ 250グラム



【コ メ ン ト】
 はっと気がつけば12月。掃除や年賀状もさることながら、おせち料理のことも考えておかねば。

 とりあえず、前もってできることは、時間のあるうちにやっておくに限る。せわしないといっても、まだ心に余裕のあるこの時期、黒豆だけでも先に煮ておこう。冷蔵庫で保存すれば、味がしみておいしくなるし、冷凍保存もできるし。

 わが家の黒豆の特徴は、醤油も塩も入れず、ただシンプルに砂糖だけで煮ること。あましょっぱい黒豆も悪くはないと思うけれど、何かと塩分を取りすぎる年末年始、塩分を加えないほうがヘルシーだし、砂糖だけで煮た黒豆は、あっさりしていて、本当においしい。

 作り方は こう。土鍋に水5から6カップと洗った黒豆1袋(250グラム)、砂糖250グラムを入れて火にかける。甘いのが好きな人、あっさりが好きな人と、味の好みはさまざま。でも1度砂糖と黒豆を同じ量入れたものを作ってみると、次に作る時は、これを基準に砂糖を増減させればいいので、自分好みに味が決まるというわけ。こういう料理は1回できればそれでいいというものではなく、毎年毎年繰り返し作りながら、上手になっていくものだと思う。

 さて、土鍋の中が沸騰してきたら、火を弱めて5分煮、あとは火を止めて、完全に冷めるまで置く。このとき土鍋のような保温力のある鍋を使えば、火を止めたあとの余熱でじわじわと豆を加熱でき、これで大体7から8割くらい豆に火が通る。

 完全に冷めたら再び火にかけ、あとは豆が柔らかくなるまで煮る。黒豆は普通の豆より、若干柔らかめに煮たほうがおいしいので、弱火で2時間くらい。2時間というと、すごく時間がかかるように思うけれど、用事があれば火を止めて途切れ途切れで煮てもいいのだし、火にかけておくだけなので、実際はそれほど手間でもない。

 煮汁が半分くらいに煮詰まり(ただし黒豆は煮汁につかっていること、煮詰まりすぎていたら少し水を足す)、1粒食べて十分柔らかくなったら、火を止めて冷ます。ここ、とっても大事なポイント。味は冷めていくときにしみるので、土鍋の中でゆっくり冷ますに限る。完全に冷めたら、ふた付き容器に移し、冷蔵庫に保存。出来立ても良いけれど3日後くらいからがおいしくなる。

 冷凍保存するときは、必ず煮汁ごと。煮汁を切ると確実に味が落ちてしまうので要注意。煮汁は煮汁で、レモン汁を加えて水で割って飲むと、おいしい黒豆ジュースになる。これは醤油を入れずに煮るからこそできる特権。

 せわしない時期に、ゆっくり黒豆を煮る。時間の流れがそこだけ違っているようで、思わずほっと一息。年末にはこんな時間が贅たくかも。(終り)

   
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(平成22年1月1日更新)

(第36回)

運のつくお粥

「ん」のつく食材勢ぞろい

材料(4人分)

     ごはん ・・・・・・・・・・・ 茶碗 1杯
     水 ・・・・・・・・・・・・・ 1〜2カップ
     昆布 ・・・・・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
     ん≠フつく野菜 ・・・・・・ いろいろ
     明太子、チリメンジャコなど



【コ メ ン ト】
 あれは、もう何年も前の1月7日。七草粥を作ろうと思ったら、七草セットを買うのを忘れたことに気がついた。そういえば、「七草粥というのは、七草粥と書く場合もあれば、七種粥と書くこともある」と、ものの本で読んだことがある。七種粥、つまり7種類のものが入っていればいい。

 何を入れようか。そうだ!!せっかくのお正月なので、「ん」のつく食べ物を七つ入れて、「運」のつくお粥というのはどう?

 それがいい、それがいい。早速、子供と一緒に「ん」のつく食べ物を考える。

 「ニンジン」「レンコン」「ダイコン」、結構あるやない?

 「あんこ」ちょっとまってえな。お粥にあんこはないとおもうけど。

 「サンマ」あかん。サンマもまずそうや。

 「サンドイッチ」どうやって、お粥に入れるねん?

 「明太子」「チリメンジャコ」おおー、それいいかも〜。

 「カボチャ」それ、「ん」ついてないやん。

 カボチャは「南京」とも言うから、ほら、「ん」のつく食べ物なんよね〜

 それなら、「ごんぼ(ゴボウ)」もあり?。あり、あり。

 「インゲン」「グリンピース」あと、忘れたらあかんのが「昆布」。それに「ご飯」!!

 「ん」のつく食べ物が出揃ったところで、うちにあるものを七つ選ぶ。野菜は小さくさいの目に切り、昆布はほそ切りにして水から煮る。水の量は、茶碗1杯分のご飯に対して、1カップぐらいが目安。米から炊くお粥もおいしいけど、今日は「ん」のつくお粥なんで、ご飯を使おう

 ふたをしてことこと煮て、野菜が柔らかくなったらご飯をいれ、明太子やチリメンジャコは最後のトッピングとしてのせる。おお〜、ちょっと豪華なお粥の出来上がり。

 冷蔵庫の中や野菜置き場をのぞいてみると、今まで気づかなかったけれど、わが家のあちこちに「ん」が案外たくさん転がっていたりする。そうか、本当は誰でもたくさんの「運」に囲まれて暮らしているのだけれど、見過ごしていることが多いのかもね。

 そんなわけで、わが家では、毎年1月7日は、「運」のつくお粥を食べる日になった。さてさて、今年はどんな「運」を入れようか。「ん」のつく食べ物探しから始めなきゃ。今年もいい年になるよ、きっと。(終り)

   
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(平成22年1月16日更新)

(第37回)

韓国のりうどん

簡単で、心も体もホカホカ

材料(4人分)

     (A)水 ・・・・・・・・・ 1と2分の1カップ
        昆布 ・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
        煮干 ・・・・・・・・ 5尾くらい
     塩、醤油 ・・・・・・・・・ 各少々
     冷凍うどん ・・・・・・・・ 1玉
     韓国のり ・・・・・・・・・ たっぷり
     キムチ,七味唐辛子など ・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 さぶ〜〜・・・。おお〜さぶ〜〜〜。温暖化とかいう言葉についつい、耳も心も慣れていたせいもあって、この寒さが恨めしくもある軟弱な私。しかし!と、この情けない心に鞭を打つ。何年か前に訪れた冬の韓国のことを思い出したなら、これくらいの寒さで、弱音をはいてなんぞ、いらりょうか。

 気温氷点下20度を下回っており、乾いた風が情け容赦なくびゅんびゅん吹き付けてくる。さらに足の下には氷のように冷え切ったアスファルト。あまりの寒さに、足用のカイロも、体に張るカイロも発熱しない。それほどの寒さ。

 ところがそこで見たものは、市場でキムチやナムルや、さまざまなものを売っているおばちゃんたち。足元に小さなストーブはあるものの、ほとんど吹きっさらしの屋台で、ゆったりとニコニコしながら物を売るおばちゃんたちのたくましさときたら。生きることに対する根性と、唐辛子、にんにく、しょうがといった体を温める食べ物の威力を見た思いだった。

 あの 時 屋台で食べた熱々の、のりうどんのおいしかったこと。今日の昼はあれを作ってみよう。

 鍋に1と2分の1カップの水と昆布と煮干を入れる。昆布は買ってきたらすぐに1×10センチくらいの短冊にして保存し、これを使うときにキッチンはさみでさらに細く切って入れるのが奥園流。煮干ははらわただけを取って、頭ごと手で砕いて入れる。こうすれば、煮干も昆布も引き上げないで、すべて具として食べられるし、あらかじめつけておかなくても、これだとすぐに良いだしが出るのもいいところ。

 さて、鍋を火にかけて沸騰してきたら、塩と醤油をほんの少し入れて、ごくごく薄く味をつけ、冷凍うどん1玉を入れてふたをする。うどんがほぐれたら、そこに、大量のねぎの小口切りと大量の韓国のりを手でちぎりながら入れて出来上がり。味付けは韓国のりの塩味と胡麻油の風味だけでOK。日本の焼きのりを使う場合は、塩と胡麻油をプラスすればいい。とにかくのりを大量に入れたほうがおいしい。

 で、さらにキムチがあれば、食べる途中で入れると味が変わっておいしいし、体も温まる。キムチがなければ、七味唐辛子を振りかけてピリカラにするのもいい。簡単にできて、すぐに食べられるあったかメニューを一つ覚えておくと、朝ご飯はもちろん、夕方塾に行く子供のちょっとした食事にもいい。

 おなかがちょっと膨れて、体の中からホカホカ温まってくると、軟弱で後ろ向きだった心が、俄然、強く前向きになってくるから不思議。さてと、私も寒さなんかに負けてないで、もうひとがんばりしなくちゃ。(終り)

   
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(平成22年2月5日更新)

(第38回)

スパゲティナポリタン

ちょっぴり醤油 懐かしの味

材料(4人分)

     スパゲティ ・・・・・・・・ 200グラム
     オリーブオイル ・・・・・・ 大さじ1
     玉ねぎ ・・・・・・・・・・ 小1個
     ソーセージ ・・・・・・・・ 4〜5本
     ピーマン ・・・・・・・・・ 2個
     ケチャップ ・・・・・・・・ 大さじ4〜5
     醤油 ・・・・・・・・・・・ 少々



【コ メ ン ト】
 カレー、ラーメン、ピザ、スパゲティ・・・。
 年末から正月にかけて、どっぷり日本文化に浸りきったせいなのか、妙にカタカナの食べ物に反応してしまう。それも本格的な外国料理ではなくて、半分日本食化しているような外国料理に心がざわめく。そうだ!今日は我らがスパゲティナポリタンを作ろう!!

 まずは、大きな鍋にたっぷりのお湯と塩を入れて火にかける。通常、パスタをゆでる時の塩加減は、お湯500ccに対して塩小さじ1が目安で、これでしっかりパスタに塩味を付けるため、塩分は濃いめ。けれど、ナポリタンの場合、そんな細かいことは、気にせずに作っても大丈夫。

 さらに、太さの違うパスタが数種類、それぞれ人数分に足りないくらいの量ずつ中途半端に残っていたとしても、ナポリタンなら、混ぜてゆでても許される・・・と私は思う。一緒にゆでると当然細いタイプがゆですぎてやわらかくなってしまうのだけれど、ナポリタンの場合、ぴったりとアルデンテで決まっているより、ゆですぎて柔らかくなったのも逆に、変な懐かしさをかもしてくれる気がして。

 スパゲティをゆでている間に野菜を切っていためる。玉ねぎは薄いくし形切り、ソーセージはななめ切り。そして、ピーマンは輪切り。フライパンにオリーブオイルを入れて、玉ねぎをいため、シナっとなったら、ソーセージも入れていためる。

 最後にピーマンを入れてさっといためたら、ここにケチャップを入れる。ここがポイント。

 スパゲティを入れてから味をつけるのではなくて、具のほうにしっかり味をつけてから、スパゲティを混ぜることで、味のメリハリがついて、ワンランクおいしくなる。

 フライパンに入れるケチャップはおおめ。ケチャップがどろりと玉ねぎとソーセージに からまっているくらいがいい。そしてさらに隠し味に醤油少々を入れるのが私流。これで子供の頃から慣れ親しんだ懐かしい味になるはず。

 さてさて、ちょうどいいタイミングでスパゲティがゆで上がったら、フライパンの中に入れて一気にからめる。スパゲティが見る見るケチャップのオレンジ色になるころには、ごくりと生唾。私の求めていたのはこれだったんだよと、内なる声が聞こえるような。お皿に盛ったら、粉チーズをたっぷりかけ、さらに途中でタバスコもかけ、がつがつと食べる。お行儀良く食べないほうが、こういうものはおいしい。

 オレンジ色に染まった口の周りをぺろりと舌でなめたら、お正月モードから日常モードにカチャリとスイッチが切り替わった気がした。  (終り)

   
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(平成22年2月19日更新)

(第39回)

じゃがいものパン粉(ぱんこ)焼き

牛乳で作るマンマの味

材料(4人分)

     ジャガイモ ・・・・・・・・ 4個
     牛乳 ・・・・・・・・・・・ 1カップ
     塩、こしょう ・・・・・・・ 適宜
     バター ・・・・・・・・・・ 1かけ
     (A)ツナ缶 ・・・・・・・ 1缶
       マヨネーズ ・・・・・ 大さじ2〜3
     パンコ、粉チーズ ・・・・・ 適宜
※バターのかわりにオリーブオイルを使うとあっさり仕上がります。



【コ メ ン ト】
 料理本をめくっていたら、ある料理のところで手が止まった。つぶしたジャガイモの上にパンコとバターを振りかけ、オーブンでこんがりと焼いた料理。端から中身をすくって持ち上げたスプーンには、ホクホクのジャガイモとカリカリのパンコ、トロリとしたチーズ。見ているだけで、口の中に食感が伝わってくるようで、思わず生唾を飲んだ。

 これ、ティンパッロというイタリアのかてい料理。私の目がくぎ付けになったのは、こんな一文が添えられていたから。「子供が大好きで、ポテトコロッケを作るよりも簡単なのでお母さんのお気に入りでもあります」

 家族においしいものを食べさせることに命をかけているようなイタリアのマンマたちも、やはり簡単な方がいいんだなあ。何だかほっとした気分で、にやけてしまった私。そうだ、そうだ、手間をかけたらいいってもんじゃないんだ。家族が大好きでおいしければ、それでOK!!今日は、日本のマンマ流ティンパッロを作ろう。

 まずはジャガイモ。本によると、「ゆでたジャガイモをつぶして モッツァレラを練り込む」と書かれている。けれど、一口大に切ったジャガイモをフライパンに入れて、1カップほど牛乳を注ぎ入れ、ふたをして弱火にかけた。

 ジャガイモが牛乳に浸っていなくても、ピッタリふたが閉まっていれば、蒸し焼きになる。ジャガイモが柔らかくなったら、フォークでつぶして塩、こしょうで味を調え、バターを一かけ。ほら、これでクリーミーなマッシュポテトが完成。

 この半量をグラタン皿に移し、ツナにマヨネーズを混ぜたものをのせ、さらにピザ用チーズをパラパラとかけたら、残りのポテトをのせる。本では、ツナではなくハムだったけれど、ツナ缶の買い置きならいつもある。

 最後にパンコと粉チーズをかけ、所々にバターをちぎってのせたら、後はオーブントースターでパンコがきつね色になるまで焼くだけ。熱々をスプーンですくって、はふはふしながら、ほおばる。予想通りのおいしさ。ボーノ!ボーノ!。

 次の日、残ったティンバッロをアルミホイルに包んでオーブントースターで温め直した後、トンカツソースをかけて食べてみた。夜ご飯の残りのコロッケを、こうやって食べるのが大好きなのだ。イタリアのマンマの味は一挙に、ご飯に合う日本の家庭の味になった。

 冷蔵庫の買い置き材料は違っていても、マンマと日本のお母さんの間に国境は無い。(終り)

   
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(平成22年3月2日更新)

(第40回)

ホワイトミートボールシチュー

お麩の力でふっくら肉団子

材料(4人分)

     (A)麩 ・・・・・・・・・ 20グラム
        牛乳 ・・・・・・・・ 4分の1カップ
     (B)合いびき肉 ・・・・・・ 300グラム
        卵 ・・・・・・・・・ 1個
        塩 ・・・・・・・・・ 小さじ1
        片栗粉 ・・・・・・・ 大さじ1
     バター ・・・・・・・・・・ 大さじ3
     玉ねぎ ・・・・・・・・・・ 1個
     小麦粉 ・・・・・・・・・・ 大さじ3
     牛乳 ・・・・・・・・・・・ 3カップ
     にんじん ・・・・・・・・・ 1本
     ジャガイモ ・・・・・・・・ 2個
     塩 ・・・・・・・・・・・・ 小さじ1



【コ メ ン ト】
 フライパンにバター大さじ3杯を入れて火にかけ、くし形切りにした玉ねぎをさっといためる。玉ねぎが透き通ってきたら、小麦粉大さじ3杯を入れ、玉ねぎにからめるようにいためて、粉っぽいところがなくなったら、牛乳3カップを一度に入れる。このやり方なら、だまにならず失敗しない。

 食べやすく切ったにんじんとジャガイモも入れ、塩小さじ1杯で味をつけたら、ふたをして吹きこぼれないくらいのごく弱火にし、時々かき混ぜながら煮る。その間にミートボールを作ろう。今日は仕事で夕飯までに帰ってこれそうにないので、ミートボールの入ったシチューを作りおきしておこうというわけ。

 ポリ袋にお麩20グラムを入れ、袋の上からバリバリと砕く。だいたい粉々になったら、牛乳を4分の1カップほど入れて全体に混ぜる。お麩がみるみる水分を吸って、ひとかたまりになったら、OK。お麩を入れることと、それをポリ袋に入れて砕き、最初に牛乳でしっとり湿らせるところが、おいしく作るポイント。

 あとは、合いびき肉300グラム、卵1個、塩小さじ2分の1杯、片栗粉大さじ1杯を入れて、さらに袋の上からコネコネ。これで、しっとり柔らかくジューシーなミートボール生地の出来上がり。

 そうしたら、袋の口を縛って、袋の底の角をハサミで切って、しぼりだす。後は、ホワイトソースの中にほうり込んでいくだけ。片手で袋をぎゅっとしぼり、出てきた生地を反対側の手で受けて軽く握ってからフライパンにほうり込むと、いい感じの肉団子になる。

 全部入ったら、ふたをして蒸し煮。ミートボールが全部ホワイトソースに浸かっていなくても大丈夫。ふたをすれば中まで火が通る。普通肉団子を生のままホワイトソースにほうり込むと、あくや臭みが出そうな気がするけれど、お麩入りの肉団子なら、お麩が肉汁を全部吸って、中に封じ込めてくれるので、そんな心配は一切なし。むしろ、ふっくら柔らかく仕上がる。

 肉団子に火が通ったら全体を混ぜ、もう1度、塩、こしょうで味をつけて出来上がり。これを電子レンジに入るふた付きの容器に一人分ずつ分ける。量は、きちんと分けないで、多いのや少ないのがあった方がいい。そうすれば、自分のお腹に合わせて選べるし、必要な分だけ温められるのでね。

 子ども達は自分で買ってきて食べることもできないわけではないのだけれど、家に帰って来た時に小分けにされたシチューがあったら、ちょっとうれしいかな。そんな思いで、今日もせっせと作りおきしている。

 これって、仕事に追われている母の言い訳なのだと、心の中ではよく分かっているのだけれど。 (終り)

   
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(平成22年3月19日更新)

(第41回)

もやしラーメン

二つのコツで本格ダブルスープ

材料(4人分)

     (A)水 ・・・・・・・・・ 3カップ
        昆布 ・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
        煮干 ・・・・・・・・ 15尾くらい
     (B)豚バラ肉 ・・・・・・ 200グラム
        塩 ・・・・・・・・・ 小さじ2
     にんにく ・・・・・・・・・ 1かけ
     しょうが ・・・・・・・・・ 1かけ
     醤油 ・・・・・・・・・・・ 大さじ1
     もやし ・・・・・・・・・・ 1玉
     ねぎ ・・・・・・・・・・・ 2分の1本
     ラーメン ・・・・・・・・・ 2玉
     ごま油、こしょう ・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 太(ふと)めんだとか、細めの縮れめんだとか、最近はスーパーでも手軽にお気に入りの生めんが買えるようになった。いや、たしかにインスタントスープとセットになったのは手軽だけれど、自分の味にこだわってみたいときもあるわけで。今日は手軽でおいしい、もやしラーメンを作ろう。

 ラーメンといえばスープ。スープを1から作るのって、大変じゃない?と思われるかもしれないけれど、そんなことはない。奥園流なら、煮干と昆布と豚肉さえあれば、本格的なダブルスープがすぐできる。

 まずは、水3カップを鍋に入れたら、短冊に切って保存してある昆布を1枚取り出し、キッチンばさみでちょきちょき細く切りながら入れる。煮干ははらわただけ取り除き、後は頭もすべて、手で細かく砕きながら入れる。これを弱火にかけて、ゆっくりじわじわと加熱する。

 あっ、ここ、一つ目のポイント。うまみは温度が上がっていくときに外に出るらしいので、ゆっくりじわじわ温度を上げると、うまみがたくさん出るというわけ。

 その間に豚肉の下準備。ばら肉か肩ロース200グラム。少し脂があるほうがいい。一口大に切ったら、塩小さじ2をもみこむ。これ二つ目のポイント。豚肉に味が付き、スープのほうにも豚肉のうまみがいい感じで溶け出す。豚肉を入れるタイミングは、先ほどの鍋が沸騰して、ごくごく弱火で5分くらいふつふつさせてから。この時、この横では めん用のお湯を沸かしておく。

 さてさて、煮干と昆布の入った鍋に豚肉を一度に入れたら、おはしで軽くほぐし、後はにんにくとしょうがのすりおろしと醤油大さじ1で味を調える。1度味見。ほほほ〜い。うまいんじゃないでしょうか。

 ここからはスピード勝負。めん2玉は2分でゆで上がるので、スープにもやしを入れてふたをするのと、めんをゆではじめるのはほぼ同時。ラーメンのどんぶりも用意。いざ、仕上げ!!

 ゆであがったラーメンをザルにあけ、ラーメン屋さんごとく、シャッシャットかっこよくお湯を切ってどんぶりに入れる。スープを張ったところにラーメンをいれると、スープがあふれたり飛び散ったりするから、家庭では先にめんを入れて、あとからスープを注ぎ入れるのがおすすめ。

 最後にスープをひと煮立ちさせたら、たっぷりのねぎのみじん切りを入れ、ひとまぜしたらめんの上にもやしをのせ、熱々のスープをめんの上から注ぎ入れる。後は、香り付けのごま油をたらりとまわし入れ、こしょうをたっぷりかければ出来上がり。いやぁ、ラーメンにはやっぱりこしょうですね。くしゃみの出るやつ。豪快にたっぷりかけるのがいい。でき立て 熱々を ずずっとすすれば、ああ〜、われながら、いい出来だ〜。  (終り)

 
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(平成22年4月7日更新)

(第42回)

春菊の草団子

みんなで共有すれば幸せ

材料(4人分)

     春菊 ・・・・・・・・・ 1束
     白玉粉 ・・・・・・・・ 200グラム
     水 ・・・・・・・・・・ 1カップ弱
     きなこ ・・・・・・・・ 適宜
     砂糖、塩 ・・・・・・・ 適宜
     あんこ ・・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 「この間、教えてもらった春菊の団子。あれ、やっぱりあかんわ」。叔母が開口一番、言った。叔母は大の料理好きで、60歳を超えた今でも、給食センターで老人用の宅配弁当を作る仕事をバリバリとこなしている。

 事の次第はこう。この前、会ったとき、草団子の話題になった。「そろそろヨモギが生え始めたから、今度、お弁当のデザートに草団子をつけてあげようかとおもってるねん」。叔母が楽しそうに話した。

 その後、わが家でよく作る春菊団子の話になった。春菊を団子に入れるっていうのは、聞いたことがないと言うので、作り方を教えてあげた。

 まず、春菊をよく洗ったら、葉っぱの部分だけを摘んで柔かめにゆでる(残った春菊の茎の方は、ごま油でいためて、きんぴらにするとおいしい)。いったん水に取って、ぎゅっと水気を絞ったら、包丁で細かく切る。

 すり鉢があったら、さらにすってピューレにする(みじん切りの状態でも、きれい)。

 春菊と白玉粉をまず混ぜ、それから水を少しずつ足して好みの硬さにする。春菊と白玉粉を混ぜておくというのがポイントで、白玉粉を水でこねてから春菊を混ぜるとベタベタの生地になって、後でもう一度、粉を足すことになるから要注意。目安は、春菊1束に対して白玉粉200グラム、水1カップ弱くらい。

 後は、食べやすい大きさに丸めて、沸騰した湯の中にポンポン放り込んでいく。ちょっと黒みがかったグリーンが、湯の中でパーッと鮮やかな緑になる。ここが最大の見どころ。網じゃくしですくって水に取り、きな粉やあんこをかけて出来上がり。春菊は春菊なりに春の香(かおり)が口に広がる。

 わが家では子供たちが小さいときから、春だけでなく1年中 作っているお団子で、春菊なら栄養的にも良い。食べ残したお団子は、翌日、オーブントースターで焼いて砂糖醤油をかけてもおいしいし、味噌汁の具にしてもいい。

 しかし、叔母はすまなそうに言った。「だってな、ヨモギがそこら辺にいっぱい生えてるんやもん」。叔母はヨモギが一面に生える水も空気もきれいな田舎に住んでいるのだった。「そらそうやなあ。わざわざ春菊を買ってくることはないよな」

 とんだ釈迦に説法。けれど、本当に大切なのは、春になって緑のお団子を作るってこと。それを食べた人が、フフフと幸せになり、作らせてもらった方もフフフと幸せな気持ちになれる。みんなで春を共有すれば、それだけで幸せが何倍にもなる。  (終り)

 
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(平成22年4月16日更新)

(第43回)

鮭のホイル焼き

アルミホイールでお茶目に

材料(2人分)

     甘(あま)塩鮭 ・・・・・・・・・ 2切れ
     玉ねぎ ・・・・・・・・・ 小1個
     キャベツ ・・・・・・・・ 4分の1個
     (A)マヨネーズ ・・・・ 大さじ2
        味噌 ・・・・・・・ 小さじ1
        蜂蜜 ・・・・・・・ 小さじ1
        レモン汁 ・・・・・ 2分の1個
     オリーブオイル ・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 アルミホイルを大きめに切り、サラダ油を全体に塗る。今日は、夕飯に鮭のホイル焼きを作ろうと思っている。安売りの甘(あま)塩鮭で作れば、簡単で経済的。

 玉ねぎを薄切りにして、最初にアルミホイルの上にたっぷりのせる。これがコツで、いきなり鮭をのせて包んでしまうと、焦げ付いて鮭とアルミホイルが離れなくなってしまう可能性がある。下に玉ねぎを敷いてからなら、玉ねぎの水分が出てくるので、心配がなくなるというわけ。

 鮭の上に、きのことレモンという組み合わせもいいのだけれど、今日はざく切りにした春キャベツをたっぷりとのせることにした。甘くて柔らかい春キャベツは蒸して食べると、さらに甘さを増しておいしくなる。

 北海道に、ちゃんちゃん焼きという郷土料理がある。鉄板に丸ごと1匹の鮭をのせ、野菜と一緒にアルミホイルをかぶせて蒸し焼きにして、味噌だれをかけて食べる。そんなイメージにしてみたかったのだ。

 キャベツの上からオリーブオイルをたらりとかけ、アルミホイルでふんわりと包む。家族の人数分を包みながら、一人笑いがこみ上げてくる。この前の娘の話を思い出したのだ。

 「アルミホイールだよ、アルミホイール」

 学校から帰ってくるなり、大笑いしながら娘が言った。この日、娘は、中学校の家庭科の授業で調理実習があり、鮭のホイル焼きを作ったのだ。

 「まるまる君がアルミホイルのことをアルミホイールって言うの。私、超ウケたんだけど」

 「なんか、かわいいね、アルミホイールって」

 「でしょ〜。なんかいい味出してるよね」

 以来、アルミホイルを見る度に、「アルミホイール」という発音が口をつく。別にそれがどうしたといわれれば、たいしたことではないのだけれど、なんだか楽しく愉快な気持ちになってくる。今日の夕飯をホイル焼きにしたのも、たぶんアルミホイールを使いたかったからなのだ。

 さて、包み終わったら、フライパンに並べ、ふたをして弱火で焼くこと10分。その間にソースを作る。もちろんレモン醤油やポン酢でもいいのだけれど、ちゃんちゃん焼きらしく、わが家特製の味噌だれを作ろう。

 味噌だれといっても、子供たちの大好きなマヨネーズベース。マヨネーズに味噌と蜂蜜を少々混ぜて、後はレモン汁をたっぷり混ぜる。ちょっと甘くて酸っぱいソースになる。たかがホイル焼き。けれどアルミホイールのおかげで、わくわく 感いっぱいのお茶目なごちそうに変身した。(終り)

 
 
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(平成22年5月1日更新)

(第44回)

鶏とゆで卵の醤油煮

ほったらかしでもうまい

材料(4人分)

     (A)日本酒 ・・・・・・ 1カップ
        醤油 ・・・・・・・ 2分の1カップ
        みりん・・・・・・・ 2分の1カップ
        酢・・・・・・・・・ 大さじ2
     手羽元 ・・・・・・・・・・ 800グラム
     玉ねぎ ・・・・・・・・・ 4個
     ゆで卵・ ・・・・・・・・ 4個



【コ メ ン ト】
 実は、子供の頃からの出不精で、出歩くよりは家にこもって本を読んだり、音楽を聴いている方が好き。そんな私の血筋なのか、子ども達も揃って出不精気味。休みの日ともなれば、それぞれが自分の部屋にこもり、自分の世界に浸る。

 けれど、いくら出不精といっても、時間がくればおなかは減るもので、朝昼晩と1日3回、ぞろぞろキッチンに集まっては、家族でご飯を食べる。食べ終わると潮が引くように、各自また部屋に戻っていくのだけれど、私は当然、後片付けに追われることになる。

 いくら料理が好きとはいえ、休みの日、1日3回作っては片付け、作っては片づけを繰り返すとなると、結構疲れるのであります。そこで、昼ご飯の後、晩御飯用に、鶏とゆで卵の醤油煮を仕込むことにした。

 土鍋に日本酒1カップ、醤油2分の1カップ、みりん2分の1カップ、酢大さじ2杯を入れて火にかけ、沸騰したところに鶏の手羽元800グラムを入れる。煮ている間に、玉ねぎ4個を薄切りにする。4個は多い気がするけれど、これがおいしさのポイント。

 玉ねぎをまず縦に半分切ったら、先っぽと芯を切り落とし、繊維に対して直角になるように薄切りにする。繊維を断ち切ることで早く煮えるし、とろりと煮溶けて優しい口当たりになる。切りながら、先ほどの土鍋の中にどんどん投入し、全部入ったらふたをして、そのまま煮続ける。

 その間に、今度はゆで卵を作っておき、殻をむいてスタンバイ。土鍋の中が沸騰し、山盛りの玉ねぎが少しずつ煮えてくる。5〜10分ほど煮たら、玉ねぎ全体が醤油色に染まってくるので、ゆで卵を入れる。

 再び沸騰したら火を止めて、準備完了。後は、夜までほったらかしておいてOK。余熱でじわじわと鶏肉が煮えて軟らかくなり、ゆで卵は醤油色に染まる。

 まずは温め直して、そのまま食べるのが一番。残った煮汁でチンゲンサイやキャベツを煮るのもいいけれど、私は次の日、豆腐をさっと煮て卵でとじ、ご飯にかけてどんぶり物にするのが好き。鶏のうまみが溶け出した煮汁と、とろとろの玉ねぎを汁だく気味にご飯にかけると、これだけのために作ってもいいかな、と思うほどおいしい。

 ほったらかしておくだけで、おいしくなる料理。見えない土鍋の中で、鶏も玉ねぎもゆで卵もおいしくなっている間、私も子供もそれぞれの部屋で、自分たちの幸せの時間にどっぷり浸っている。(終り)


 
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(平成22年5月18日更新)

(第45回)

アサリのスパゲティ

トマトと粉チーズで風味アップ

材料(2人分)

     オリーブオイル ・・・・・ 大さじ1
     にんにく ・・・・・・・・ 1かけ
     アサリ ・・・・・・・・・ 1パック
     トマト・・・・・・・・・・ 2個〜
     赤唐辛子(輪切り)・・・・ 好みで
     塩 ・・・・・・・・・・・ 少々
     スパゲティ ・・・・・・・ 160グラム
     青じそ ・・・・・・・・・ 10枚
     粉チーズ ・・・・・・・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 長引いた仕事を終え、夕飯を作ろうという、まさにそのとき、玄関のチャイムがなった。娘の友達だ。何だろうという顔をして出た娘が、あわてて台所に走ってきた。

 「Y子がお母さんとけんかして、家出してきたんだって。行くとこないって言うから、家に入れてあげてもいい?」。

 20年近く母親をやっていると、もうたいていのことでは動じない。

 「ええよ、ええよ、ご飯食べた?」と普通に聞いている私。「まだ食べてないんやったら、一緒に食べよ」。

 タイミングのええ時に来たなあ。ちょうどこれから、スパゲティをゆでるとこやったんや。あと1分遅かったら、一人分のスパゲティが少なくなるとこやったわ。

 鍋にたっぷりの湯が沸いている。そこに塩を入れてスパゲティをゆではじめる。塩の分量は、水500ccに対して小さじ1杯。この割合は結構、大事。スパゲティを入れたらタイマーをかけて、ソースを作る。

 昨日から塩水に浸けて砂をはかせておいたアサリがあるので、ボウルに入れて洗う。殻の溝のところに砂が付いていることがあるから、殻と殻をこすり合わせって洗う。このひと手間は抜いてはいけないところ。

 フライパンにオリーブオイルと粗(あら)みじん切りにしたにんにくを入れて、火にかける。油とにんにくを入れてから火をつけると、にんにくを焦がす失敗がない。いい香りがしてきたら、アサリを入れてさっといため、後はざく切りにしたトマトを入れる。トマトは一人1個。赤唐辛子の輪切りも少し入れてふたをし、弱火で煮る。スパゲティがそろそろ茹で上がるというときに、ふたを開け、軽くトマトをつぶして味見。アサリの塩分だけでいい感じ。

 タイミングよくゆで上がったら、スパゲティはザルに上げてゆで汁を切り、ソースの中に入れて混ぜる。ソースを上からかけるよりは、味がなじんでおいしい。お皿に盛ったら、青じそを散らし、粉チーズをたっぷりかける。粉チーズでうまみがぐっと増す。

 熱々のうちに食べよ、食べよ。トマトと粉チーズで増量する作戦に出たんやけど、成功やったと おもわへん?アサリのスパゲティって、何でこんなにおいしいんやろ。

 で、家出して、今日は泊まっていくの?えっ、やっぱり帰るって!?お母さんからメールが来て、その辺まで迎えにくるて?

 ふふふ、おいしいものを食べながら、いっぱいしゃべって、おなかいっぱいになったら、腹が立ったことも、心にたまっていたことも、どうでもよくなったりするものやね。(終り)



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(平成22年6月4日更新)

(第46回)

豆腐ステーキ

ダイエット&ヘルシー

材料(4人分)

           木綿豆腐 ・・・・・・・ 1丁
     小麦粉 ・・・・・・・・ 適宜
     ごま油 ・・・・・・・・ 大さじ1
     トマト ・・・・・・・・ 2個〜
     (A)梅干 ・・・・・・ 1〜2個
        醤油 ・・・・・・ 大さじ1
        みりん ・・・・・ 大さじ1
        蜂蜜 ・・・・・・ 大さじ1
     青じそ ・・・・・・・・ 10枚



【コ メ ン ト】
 「私、ダイエットを始めるから、ご飯、軽め(かるめ)にしてね」。中学生の娘がティーンエイジ向けのファッション雑誌をめくりながら言った。私の中学時代といえば、お菓子もご飯もモリモリ食べ、顔も足もおなかもパンパンだった。けれど、別にコンプレックスを持つわけでもなく、周りの友達も、だいたい似たり寄ったりだったけどなあ。

 それにしても、雑誌の中でにっこり笑っているモデルの女の子たちのスタイルの良さといったら。すらりと伸びた手足と小さな顔。ウ〜ン、同じ人種とは思えん。そんなわけで、今日の夕飯は豆腐ステーキにしよう。

 まずは、まな板の上にキチンペーパーを広げ、その上に木綿豆腐を置く。そして、1丁を8切れぐらいに切ったら、切り口を上にして並べ、もう1枚キッチンペーパーをのせる。軽く周りの水分を吸い取っておくと、後で小麦粉をまぶすときに、きれいに粉がつくというわけ。

 そうそう、焼く前にたれも作っておかなくちゃ。ポリ袋の中に梅干を種ごと1個入れ、もみもみする。これだと包丁も使わず、簡単に梅干がピューレ状になる。梅干がきれいにつぶれたら、醤油大さじ1杯、本 みりん大さじ1杯、梅干の甘さによって、好みで蜂蜜大さじ1杯を加え、口を縛る。梅干はぽってりとした果肉のやわらかいものを使うとピューレ状ににしやすい。最近は甘い梅干が多いので、甘い梅干をつかう時は蜂蜜の量を減らしてください。

 ここまできたら、後は、仕上げ用の青じそを千切りにして、準備OK.いよいよ焼き始めよう。豆腐の上に小麦粉を振りかけて、キッチンペーパーの上で小麦粉をまぶす。こうすると、まな板も汚れず、楽チン。ごま油を入れて火にかけたフライパンに、次々に入れていく。豆腐ステーキを上手に焼くコツは、あまり触らないこと。こんがりとおいしそうに焼けるまでじっくり待って、ひっくり返し、またじっくり焼く。それだけ。小麦粉がついているので、ぱりっと香ばしく焼ける。

 作っておいた、たれの袋の端をハサミで切って、一気にフライパンに入れ、豆腐にからめる。おいしそうにからんだら、最後に千切りにした青じそをまぶして出来上がり。見た目もさわやかで、おいしそう〜!!

 付け合せは具だくさんの根菜汁と、ノンオイルツナと青菜のからしあえ。野菜たっぷりのヘルシーメニュー。ダイエットはともかくとして、たまにはこういうのも、わるくない。(終り)

   
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(平成22年6月15日更新)

(第47回)

豆腐そうめん

冷!つるり 薬味でさっぱり

材料(4人分)

           木綿豆腐 ・・・・・・・・・・ 1丁
     そうめん ・・・・・・・・・・ 4束
     めんつゆ(ストレート) ・・・ 適宜
     青じそ 、みょうが、きゅうり、ねぎ、しょうがなど



【コ メ ン ト】
 「お昼ごはん、何食べたい?」。娘に聞くと、「チャーハン」という。

 「え〜っ、昼はつるつるっと、そうめんにしようと思ってたのに〜」

 「だったら、何食べたいって聞かなきゃいいじゃん」

 「いや、あくまで参考までに聞いただけ」「・・・」

 というわけで、今日のお昼ご飯は、そうめん。それも、奥園家定番の豪華豆腐そうめん。夏休みなんだし、毎日、お昼ご飯は食べるわけだし、作る人の好みを最優先したって、いいじゃないの。

 まずは、鍋に湯を沸かす。その間に用意するものは薬味。しょうが、ねぎ、青じそ、みょうがなど。とにかく、香りのあるものをひたすらすりおろしたり、刻んだりして、たっぷり準備する。

 そうこうするうちに、お湯が沸いてくるので、そうめんを入れる。自称「スパゲティ方式」でゆでるのが私流。つまり、そうめんを束にして端のほうを握ったら、鍋の真ん中に、そうめんを突き刺すように入れる。このとき、手は離さない。すると、お湯に浸かったそうめんがみるみるうちに、へなへなしてくる。

 そうしたら、握ったそうめんの束をさらにぎゅっと鍋底に押し付ける。そうめんの半分くらいがお湯に浸かって、へなへなになったら、ここで初めて手を離す。家にある普通の雪平鍋でそうめんをゆでると、鍋からはみ出たそうめんが焦げたりするので、この小さい鍋で、いかにうまくそうめんをゆでるかを追求すると、こういうやり方になったというわけ。これで娘から、「焦げたそうめん、発見!!」という鬼の首を取ったかのような指摘はもう受けまい。

 お湯が沸騰したら、コップ1杯の水を入れ、再び沸騰したらゆで上がり。ざるにあげて流水でぬめりを取り、氷水できゅっとしめる。これだけで、十分おいしそう。

 再び、ざるにあげて水気を切り、器に入れる。後は、冷蔵庫でよーく冷やしておいた豆腐を取り出し、崩しながらそうめんの上にのせ、豆腐が隠れるくらいの薬味をのせて、めんつゆを回しかけたら出来上がり。

 食べる時は、豆腐と薬味とそうめんを混ぜながら食べる。シャキシャキした歯応えと香り、そして、ひんやり感。そうめんの白あえのようであり、冷たい豆腐のクリームソースのようでもあり。この一皿で栄養のバランスも良い。

 「これっておいしいんだけど、結局、冷や やっこと、そうめんを一緒の器に盛っただけだよね」

 あのさ、それ言っちゃあ、おしまいよ。暑い夏の昼にさ、ひんやりつるりと、たっぷりの薬味。めちゃめちゃ、ぜいたくと思わない?(終り)

   
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(平成22年7月4日更新)

(第48回)

トマたま丼

5分でおいしく、元気いっぱい

材料(1人分)

           ごま油 ・・・・・・・・・・ 大さじ 1
     にんにく ・・・・・・・・・ 1かけ
     トマト ・・・・・・・・・・ 1個
     卵 ・・・・・・・・・・・・ 1個
     塩、こしょう ・・・・・・・ 適宜
     かつお節 ・・・・・・・・・ 1袋(5グラム)
     醤油 ・・・・・・・・・・・ 適宜
     ご飯 ・・・・・・・・・・・ 茶碗1杯



【コ メ ン ト】
 午後1時半。午前中の仕事が思いがけず長引いて、こんな時間になってしまった。次の打ち合わせは2時。30分で何を食べよう。

 手っ取り早くできて間違いなくおいしくて、満足感のあるものといえば、あれしかない。冷凍庫からご飯を取り出して、電子レンジで温める。それから冷蔵庫を開けてトマトと卵とにんにくを取り出す。大好物のトマたま丼を作ろうというわけだ。

 トマトはヘタを取ってざく切り、にんにくは薄皮をむいて粗みじん。そうこうしているうちに、電子レンジの中でご飯が熱々になった。丼にうつしてその上にかつお節を1袋、豪快にたっぷりかけ、所々に醤油をしみこませ、おかかのご飯を作っておく。

 フライパンににんにくとごま油を入れて、火にかける。にんにくをいためるときは、油とにんにくを入れてから火にかける、これが香りを引き出すコツ。

 徐々にフライパンが熱くなって、にんにくからいい香りが立ち始めたら、ここでトマトを入れる。トマトのいため具合は好みだけれど、私はさっといためて形が残っているくらいの方が好き。

 後は、卵に塩、こしょうを加えてときほぐし、トマトの上から回し入れる。好みの固さになるまで大きく混ぜたら、おかか乗せごはんの上にたっぷりとかけて出来上がり。最後のところで、みじん切りにしたねぎや、ざく切りにした三つ葉などを卵と一緒に混ぜてもおいしい。

 さて、できたての丼。醤油のしみ込んだかつお節、トマたまを少しご飯と混ぜて口に運ぶ。トマトの酸味と、かつお節のうまみ、醤油の香り、とろりとした卵が絡んだご飯は、みっともないくらいガツガツ食べてしまうおいしさ。

 さらに、このトマたま丼にはバリエーションがあって、最初ににんにくをいためるときにごま油でなくオリーブオイルを使い、卵の中に角切りにしたチーズを一緒に入れて同様に作ると、洋風オムレツバージョンのトマたま丼になる。この場合は、かつお節は乗せず、ベーコンなどを一緒にいためるとおいしい。

 5分で作って、5分で食べて、5分で片付けて、ごちそうさま。忙しいと、ついついその辺のクッキーなんかつまんでお昼ご飯代わりにしてしまいそうになるけれど、ちょっとの時間でこんなにおいしくて元気なご飯が作れる。きちんと食べれば午後の仕事も元気いっぱいにこなせるはず。

 ピ〜ン、ポ〜ン。しまった、台所に充満したにんにくの香り。とりあえず換気扇を強にして、バタバタと玄関へいそいだ。(終り)

   
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(平成22年7月16日更新)

(第49回)

ジャコと しし唐のいため煮

ほかほかご飯のお供にピッタリ

材料(4人分)

     しし唐 ・・・・・・・・・・ 2パック
     チリメンジャコ ・・・・・・ 1パック
     ごま油 ・・・・・・・・・・ 大さじ1
     日本酒 ・・・・・・・・・・ 大さじ2〜3
     醤油、みりん ・・・・・・・ 各大さじ1くらい
     七味唐辛子、粉山椒(こなさんしょう)など
      ・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 年々暑さに対する抵抗力が落ちている気がする今日このごろ。子供のころは、祖母の田舎で、セミをとったりカブトムシをとったり、一日中 外で真っ黒になりながら遊んだものだった。涼むといえば、うちわと扇風機くらい。のどが渇いたら、やかんに入った麦茶をごくごく飲んではまた外へ。アイスクリームや冷たいジュースはなくても、冷たいそうめんや井戸で冷やしたスイカは本当においしかった。

 そんなことを懐かしく思い出していると、昔、夏になると祖母がいつも作ってくれたジャコと しし唐のいため煮が急に食べたくなってきた。今日は久しぶりにあれを作ろう。

 フライパンにごま油を引いて火にかけ、まずはチリメンジャコをいためる。この時のジャコは、しらす干しのように柔らかいものよりもからりと乾燥したチリメンジャコの方が味があっていい。量は大体40グラムくらい。

 チリメンジャコからいい香りがしてきたら、ヘタの先っぽだけを切ったしし唐2パック、40本ほどを一度に入れて、さっといためる。

 万願寺や伏見唐辛子といった甘くておいしい京都菜で作れば、また格別のおいしさになるけれど、ふつうの小さいしし唐で作るのもまた、お家のお惣菜ぽくていい。しし唐の代わりにピーマンやなすなどでも同じように作れるけれど、やっぱりしし唐が暑い夏には似合う気がするなあ。

 さて、しし唐を入れてさっといためた後、全体に油が回ったら、日本酒大さじ2〜3杯をサーッと回し入れてすぐにふたをし、後は弱火にして蒸し煮にする。

 2〜3分もしたら、全体にくたっとなってくるので、味をみて、醤油とみりんをそれぞれ少しずついれ、ひと混ぜしたら出来上がり。ゴマをたっぷり混ぜたり、関西風に粉山椒(こなさんしょう)がたっぷり入った七味唐辛子をかけたりもいい。

 でき立てはまず炊き立てのほかほかご飯を食べる。そして、食べ残した分は、次の日の朝、お茶漬けにしよう。それも冷たいお茶をかけた冷茶漬け。冷やご飯をさっと水で洗って茶碗に入れてから、冷たいお茶をかけるだけ。あとはお漬物やら塩昆布やら、あり合せのものを並べればOK。夏の朝、さらさらとのどを通っていくものはうれしくて、おいしい。

 「から〜い

 たまに辛いのに当たると、口の中がひりひりしびれる。けど、その辛いのがおいしいから、私はむしろ辛いのに当たりたいのに、なぜか辛いのは娘の口ばかりに入るから不思議。(終り)

   
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(平成22年8月4日更新)

(第50回)

ヨーグルトババロア

混ぜて冷やして・・・1時間で歓声

材料(4人分)

     (A)粉ゼラチン ・・・・・・・ 1袋(5グラム)
        水 ・・・・・・・・・・・ 大さじ2
     (B)プレーンヨーグルト ・・・ 500CC
        生クリーム ・・・・・・・ 200CC
        砂糖 ・・・・・・・・・・ 大さじ6
     (C)ジャム ・・・・・・・・・ 好みのもの
        水 ・・・・・・・・・・・ 少々



【コ メ ン ト】
 「明日友達が来るから、よろしく」。娘がさらりと言う。

 「そっ」。同じくらいの軽さで返事をする。けれど、心の中はわくわくでいっぱい。息子の友達が家に遊びに来ていたころは、山盛りのおにぎりを作ったり、ホットプレートいっぱいの焼きソバを作ったり、それこそ下宿屋のおばちゃんみたいになっていた。ところが女の子になると、カップケーキやクッキーやドーナツでキャッキャと大喜びしてくれるから、なんだかうれしくなる。

 さてさて、今日のおやつは何にしよう。暑い時なので、冷たくてつるんとしていて、さわやかな味のものがいいな。よし、決めた、ヨーグルトババロアにしよう!!

 まず粉ゼラチン1袋(5グラム)を大さじ2杯の水でふやかす。この時、ゼラチンに水を入れるのではなく、水の中にゼラチンを振り入れて軽く混ぜる、ここ、大事なポイントです。次にボウルを用意して、プレーンヨーグルト1パック(500CC)と生クリーム(200CC)を入れ、泡立て器でぐるぐると混ぜる。どちらもパックの中身全部を入れるだけなので面倒な計量もないし、混ぜるだけなので、難しいことは何もない。

 全体がとろりと滑らかになったら、砂糖大さじ6杯を入れてさらに混ぜる。砂糖大さじ6杯といっても私の場合、ヨーグルトについてくる砂糖が大量に余っているので、それを使うことにする。だって、これ ヨーグルト用の砂糖なんだもの。すごく溶けやすくて味も癖がない。冷たいお菓子を作るにはもってこいなのであります。後はこれにレモン汁2分の1個分を入れてさらに混ぜる。

 そうこうしているうちに、最初にふやかしておいたゼラチンがグミ状になっているので、電子レンジに20秒ほどかけて溶かす。とろりと溶けたら、これをいきなりヨーグルト液に入れるのではなく、ヨーグルト液を大さじ1〜2杯、このゼラチン液の中に入れて混ぜ混ぜしてから、ヨーグルト液に戻し入れると、きれいに混ざる。ふたつき容器に入れて、冷蔵庫に入れて冷やし固めれば出来上がり。ヨーグルトも生クリームも冷蔵庫から出したての冷たいものを使えば1時間くらいでフルフルに固まる。

 後は食べる時、スプーンですくってガラスの容器に盛り付け、水を混ぜてとろりとなるまでゆるめたブルーベリージャムを上からとろりとかける。

 「きゃ〜っ。おいしい〜!!」

 華やかな声が飛び交う。気がつけば、私も中学生のころにタイムスリップして鼻歌など歌っていたりする。(終り)

   
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(平成22年8月15日更新)

(第51回)

豆腐オクラ丼

「熱冷」の妙、目にも涼しく

材料(4人分)

     オクラ ・・・・・・・・・・ 10本
     豆腐 ・・・・・・・・・・・ 1丁
     かつおぶし ・・・・・・・・・ 1袋(焼くグラム)
     しょうが、醤油 ・・・・・・ 適宜
     ご飯 ・・・・・・・・・・・ 適宜
     ごま油 ・・・・・・・・・・ 好みで



【コ メ ン ト】
 熱々のご飯を茶碗に盛り、その上に冷たい豆腐を手で軽くつぶしてのせる、後はその日の気分でかつおぶしやねぎをかけ、最後に醤油を回しかけたら、豆腐とご飯を混ぜつつわっしわっしと食べる。最初に全部グチャグチャに混ぜてしまうと、せっかくの熱々ご飯と冷たい豆腐という「熱冷」のおいしさがなくなるから、食べる分ずつ崩しながら食べるのが私流。これは私がまだほんの小さな子供だったころから大好きな夏の定番メニューだった。

 そういえばあの時、大の仲良しだったひろ子ちゃんに、私の大好きなこのどんぶりを食べさせたくて家に呼んだことがあった。けれど、茶碗に入ったご飯の上に崩れた豆腐が乗っかっただけのこのどんぶりをひと目見て、今にも泣きそうな表情をしていたひろ子ちゃんの顔を今でも覚えている。その後、ひろ子ちゃんがそれを食べたかどうかどうしても思い出せないところをみると、ひろ子ちゃんにはちょっとサバイバル過ぎたのかもしれない。

 さてこの豆腐どん、いまだに私の大好きな夏の定番メニュー。今日はオクラをプラスして、豆腐オクラどんにしてみよう。

 オクラはネットごとさっと洗ったら、ネットの上から塩を振ってこすり合わせる。するとオクラの周りの産毛がきれいにとれる。後はネットから出して、塩のまぶさったまま、沸騰したお湯に投入。簡単に塩ゆでになるという寸法。

 緑がパーッときれいになったら、氷水にとる。元来オクラみたいにアクのない野菜はゆでた後水に取る必要はないけれど、オクラの場合、中が空洞になっているせいか、そこに熱がこもってどうしても色が悪くなる。水にとると、外側の温度は下がっているのだけれど、いざ切ってみると中が熱かったりすることがありがち。だから氷水で一気に冷やすのが一番手っ取り早い。

 2〜3分つけておけば、十分中まで冷たくなるので、後はヘタを落とし小口切りにした後、包丁でたたいて、とろりとした状態になればOK。

 続いて、しょうがをすりおろして醤油と混ぜて、しょうが醤油を作り、茶碗に熱々のご飯を入れたら、一面にかつおぶしを広げ、このしょうが醤油を少しかける。冷たい豆腐を手で軽くつぶしながらこの上にのせ、さらに細かくたたいたオクラをたっぷりその上にかけ、最後にしょうが醤油をかければ出来上がり。

 下に敷いたかつおぶしがいい感じに豆腐の水分を吸うので、ご飯がべちゃべちゃにならず、豆腐の白とオクラの緑色で、目にも涼しげ。

 まずはそのまま半分ほど食べ、途中でごま油をたらりと回しかける。これもまた食欲をそそる。

 日中の暑さはまだまだ衰えないけれど、夕方の風にほんの少し涼しさを感じ始めた今日この頃。残暑もやわらぎ「夏の定番メニュー」は、そろそろカウントダウンかな。(終り)

   
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(平成22年9月2日更新)

(第52回)

キムチ鍋

辛み×うまみ=食欲倍増

材料(4人分)

     (A)水 ・・・・・・・・・ 3カップ
        昆布 ・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
        煮干 ・・・・・・・・ 10尾くらい
        干ししいたけ ・・・・ 2〜3枚
     (B)日本酒 ・・・・・・・ 1カップ
        醤油 ・・・・・・・・ 大さじ2
        みりん ・・・・・・・ 大さじ2
     (C)豚バラ肉 ・・・・・・ 300グラム
        塩 ・・・・・・・・・・ 小さじ2分の1
     白菜キムチ ・・・・・・・・ たっぷり
     コチジャン ・・・・・・・・ 大さじ2〜3
     にんにく ・・・・・・・・・・ 1かけ
     豆腐 ・・・・・・・・・・・・・ 1丁
     しめじ、まいたけなど ・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 「キムチ鍋がたべたーい」

 娘が叫んだ。この前 友達のところで夕飯をごちそうになったのだけれど、その時のメニューがキムチ鍋だったらしい。それがもう、おいしくておいしくて、また食べたくてしかたないという。たしかに汗をかきかき熱くて辛いキムチ鍋をほおばる。うだうだと暑いこの時期、パンチのきいた辛みとうまみは、まさに体が欲しているものに違いない。よしよし、今夜はキムチ鍋だーっ!

 まずは土鍋に水を3カップと昆布と煮干と干ししいたけをいれる。細く切ることで断面が多くなりうまみが出やすくなるのと、具として食べられるところがいい。干ししいたけは軸だけを取り除き、あとは手でちぎって入れてしまう。ちぎることで断面から水が入るので、あらかじめ戻しておかなくても、あっという間にやわらかくなり、もちろんしいたけのうまみもたっぷり出る。煮干は、はらわただけを取って、身は半分に裂く、もちろん頭はそのまま入れる。弱火で徐々に加熱することでたっぷりのうまみが出る。

 韓国のスープは海のもの山のもの、肉、野菜、いろんなうまみを掛け算していくことで複雑な味を作っていく。今日のキムチ鍋は、これに豚肉とキムチのうまみが入るので、かなりおいしいスープになるはずだ。

 沸騰してきたら、煮干の頭だけを端で取り除く。取らなくていいのだけれど、なぜか煮干しの頭は子ども達に不評なので。

 スープに酒1カップと醤油、みりん各大さじ2杯ずつ入れて味を調えたら、一口大に切って、塩小さじ2分の1をもみこんだ豚バラ肉を入れて煮る。

 あとは白菜キムチをたっぷり入れたら味を見て、コチジャンを大さじ2〜3杯溶かし入れ、にんにく1かけをおろしながら入れる。これでまたぐぐっとうまみが増す。

 味が決まったら、豆腐やきのこ、もやし、ニラなどを入れ、さっと煮れば出来上がり。

 いい感じに煮えてきたら、ぐつぐつと湯気を上げている鍋をそのまま食卓にのせる。さあさあ、早く食べよう。

 「から〜い!!」

 「あつ〜い!!」

 「でも、おいひ〜っ!!」

 はふはふ言いながら食べる食べる。ある程度食べ終わったら、うどんを入れる。好みで更にキムチを追加すると、白菜キムチのフレッシュな歯応えがまたおいしい。こうしていっぱい食べて、いっぱい汗をかいたら、あとはさわやかな秋の風が体の中に吹き抜けた。(終り)

 
 
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(平成22年9月17日更新)

(第53回)

お好みいため

小麦粉なしでヘルシーに

材料(4人分)

    (A)豚肩ロース薄切り・・・ 200グラム
        醤油 ・・・・・・・・・大さじ1
     キャベツ ・・・・・・・・・・4分の1個
     長ねぎ ・・・・・・・・・・・1本
     厚揚げ ・・・・・・・・・・・1枚
     ごま油・・ ・・・・・・・・・大さじ2
     お好み焼きソース ・・・・・・適宜
     かつお節 ・・・・・・・・・・ たっぷり
     青のり ・・・・・・・・・・・適宜
     マヨネーズ ・・・・・・・・・好みで



【コ メ ン ト】
 回鍋肉(ホイコーロー)を作るつもりだったのだ。今夜のおかずは何にしようかと冷蔵庫を開けたら、キャベツと豚肉が目に入り、これは回鍋肉(ホイコーロー)しかないだろう、と確かに思った。キャベツと豚肉と厚揚げの味噌いため。口の中には甘辛い味噌の味がよみがえり、いそいそと米を洗って炊き始めた。
 ところが、回鍋肉(ホイコーロー)にねぎも入れようと思ったとたん、関西人の血が騒ぎ始めた。豚肉、キャベツ、ねぎ、とくれば、もうこりゃお好み焼きしかない。甘辛い味噌味は一気にお好み焼きソースの味に取って代わられた。

 しかし、ここで炊飯器のタイマーが鳴った。そうだ、ご飯を炊いたんだ。お好み焼きをおかずにご飯を食べるのか。炭水化物好きの関西人の中には、そういう食べ方をする人もいるけれど、今日の私にはちょっと重い。そこで、苦肉の策。見かけは回鍋肉(ホイコーロー)、味はお好み焼き、そんな炒めものを作ろうじゃないの。名付けて、お好みいため。

 まずは、豚肉200グラムを一口大に切って、ポリ袋に入れ、醤油大さじ1杯も入れて、もみもみする。キャベツはざく切り、ねぎはたっぷり小口切り。厚揚げ1枚も一口大に切る。

 フライパンにごま油を入れて火にかけ、キャベツを入れたら、すぐに塩をふっていためる。キャベツにいい感じで火が通ったら一度取り出す。空いたフライパンにもう一度ごま油を入れて、豚肉をいためる。このとき、少し焦げ色がつくくらいまでいためるのがコツ。厚揚げも入れ、続けてねぎをたっぷりといれよう。

 回鍋肉(ホイコーロー)にする場合は、ここで味噌と蜂蜜とおろししょうがを入れるのだけれど、今日はお好み焼きソースを入れて味をつける。後は、キャベツを戻し入れて出来上がり。お皿に盛ったら、かつお節と青のりをかける。もちろん、マヨネーズを好みでかけながら食べることにする。

 さて、いよいよ夕飯。てんこ盛りになった大皿を見て、一瞬、子供たちがひるんだ。

 「お母さん、これ何?」

 こういうときに、母もつられてひるんではいけない。凛とした態度で言う。

 「お好みいため」

 「お好みいため?」

 「お好み焼き味の炒めものってこと?」

 {・・・}

 「あのさ、粉の入っていないお好み焼きと思ってよ」

 「それって、単なる野菜いためじゃん」

 「でも、ダイエット料理だと思わない?」

 確かにこれ、ご飯に合うわ。ご飯にのっけて、丼風にしてもうまい。いやぁ、なんだかご飯がすすむなぁ。(終り)

   
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(平成22年10月2日更新)

(第54回)

ポーチドエッグ

サラダと相性抜群

材料(4人分)

     卵・・・・・・・・・・・・・ 2個
     レタス、きゅうり、貝割れなど
     醤油、ごま油、酢 ・・・・・・各大さじ1くらい
     かつお節 ・・・・・・・・・・ 1袋



【コ メ ン ト】
 「お母さん、卵が割れちゃって、ゆで卵ができなかったよ〜」
 息子がまだ小学生だった頃の話。家庭科でゆで卵を作るというので、大切に大切に卵を持っていたはずだったのに。

 「どうせ、学校に行く途中でぶんぶん振り回したりしたんでしょ?」

 そう言いそうになったのを危うくこらえた私。

 「で、その割れた卵、どうしたの?」

 「捨てた」

 「どうして!!だって殻が割れてるだけだったらたべられるでしょ?」

 「だってさ、殻の割れ目から白身が出てきてるんだよ」

 「だったら、ゆで卵じゃなくて目玉焼きにすればよかったじゃないの?」

 「あのねえ、お母さんはわかってないなあ。学校だよ、家庭科の授業だよ。自分だけ目玉焼き作れると思う?だいたい、フライパンも油もないし・・・」

 「それなら、ポーチドエッグにすればよかったじゃない?」

 「ポーチドエッグ?」

 「そう、殻のないゆで卵みたいなもんよ」

 早速、息子に作り方を教えた。まず鍋に水を入れて火にかける。卵は殻を割って出しておく。お湯が沸騰したら、卵を静かにお湯の中に入れる。すると、みるみる白身のふちが固まってくるので、スプーンなどで広がらないようにすくいながら内側へかぶせてやる。

 このとき、湯の中にお酢を少し入れておくと白身が広がりすぎずに、いい感じにまとまるのだけれど、入れなくても特に問題はない。

 白身が固まってもまだまだ黄身は生。あわてず触りすぎず、鍋にふたをして待つこと1〜2分。ちょうど目玉焼きの半熟を作るような感じ。黄身の表面がうっすら白くなったら、お玉(穴あきだと最高!!)で静かにすくい上げて、出来上がり。

 たとえばこれを生野菜のサラダの上にのせる。醤油とごま油とお酢とかつお節をかけて、食べる直前にポーチドエッグをつぶしながら混ぜる。ねっとりとした黄身が生野菜に絡んで、濃厚なドレッシングになるというわけ。

 以来、息子はポーチドエッグにはまりまくって毎日のように作ってはもりもりサラダを食べた。ポーチドエッグは彼の自慢料理の一つになった。

 さて、今日の雑誌の撮影は卵料理特集。久しぶりにポーチドエッグサラダを作った。今はもう高校生になった息子の、あの当時の真剣なまなざしや、息をのんだ空気、黄身をつぶすときのわくわく感が、レシピを見ているだけでよみがえる。何気ないレシピの中に、実はたくさんの大切な時間と思い出が詰まっている。(終り)

   
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(平成22年10月19日更新)

(第55回)

とん汁

豚肉はいためず、うまみたっぷり

材料(4人分)

     (A)豚薄切り肉 ・・・・・ 100〜150グラム
        塩 ・・・・・・・・・ 小さじ2分の1
      水 ・・・・・・・・・・・ 2〜3カップ
      昆布 ・・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
      大根、にんじん、油揚げ、ねぎ、きのこ類、
      いも(サトイモ、ジャガイモ、サツマイモなど)
      かぼちゃなど
      味噌 ・・・・・・・・・・ 大さじ3〜4
      三つ葉、青ねぎ
      粉山椒、七味唐辛子



【コ メ ン ト】
 「とん汁を作ったんですけど、なんかいまひとつ味が決まらなかったんですよね」
 髪の毛をカラーしながら、若い美容師の女の子が言った。

 「へーっ、自分でご飯作るなんてえらいね〜」

 こんな若い子が、仕事を持ちつつ自分でご飯を作って食べているということに、いたく感動した私。

 「違うんです、お金なくて、自分でつくるしかないんですよ」

 ちょっと照れながら、そういったけれど、いやいや、それでも、やっぱりえらいよ。いやあ、日本の若者も捨てたもんじゃないなあ〜などと、妙に日本の未来が明るく思えたりしたのだった。

 で、問題のとん汁、絶対おいしくできるコツを教えてあげることにした。

 豚肉は脂のあるばら肉か肩ロース100〜150グラム。一口大に切ったら、塩小さじ2分の1をよくもみこんでおく。鍋に水2〜3カップを入れ、昆布を細く切りながら入れて火にかける。沸騰したら豚肉を入れておはしでほぐす。昆布を入れることと、塩をした豚肉をいためずに加えることで、うまみたっぷりのだし汁が完成する。豚肉はいためた方がコクが出そうな気がするけれど、いためてしまうと肉のタンパク質が固まってしまうため、うまみが出にくくまる。肉をおいしく食べたい煮物などの場合は、いためてから煮るほうが肉自体のうまみが逃げなくていいのだけれど、とん汁の場合はうまみを出したいわけだからいためずに入れた方が、汁は確実においしくなる。更に脂の多い部位を使うことでコクをプラスするというわけ。

 後は野菜を次々に入れる。

 「なんかさらっとしていて、お母さんが作るようにとろっとしてないんですよ」

 それはおそらく、具(ぐ)にサトイモを入れてないから。とろっとしたのが好きな人はサトイモ、甘めのとん汁が好きな人(私です)は、サツマイモとかカボチャを入れるといい。

 そして、最後に味噌を入れるのは火を止めてから。味噌は入れてから煮ると香りが飛ぶからね。そして、最後にねぎでも三つ葉でも香りのある青いものがほしいね。器に盛ったら、粉山椒か七味唐辛子をひとふり。こういう香りのものも、あるとないとでは、おいしさがずいぶんと違うと思う。

 料理は、おそらく美容師の仕事と一緒でね、毎日毎日、同じようなことを淡々とこなしているうちに、ふと気が付いたら、腕が上がってる、そういうもんなんだと思う。そしてそういううまくなり方が一番いい。とん汁が鼻歌交じりで作れるようになったら、きっと美容師としても一人前になってると思うな。がんばれっ!(終り)

   
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(平成22年11月3日更新)

(第56回)

ポテト&マカロニサラダ

一緒にゆでれば楽々

材料(4人分)

      ジャガイモ ・・・・・・・・・・ 4個
      マカロニ(早ゆでタイプ) ・・・ 50グラムくらい
     (A)玉ねぎ ・・・・・・・・・・ 4分の1個
        オリーブオイル ・・・・・・ 大さじ2
        塩 ・・・・・・・・・・・・ 小さじ2分の1
        酢 ・・・・・・・・・・・・ 大さじ1
        こしょう ・・・・・・・・・ 好みで
      きゅうり ・・・・・・・・・・・ 1本
      ハム ・・・・・・・・・・・・・ 好みで
      マヨネーズ ・・・・・・・・・・ 大さじ4〜



【コ メ ン ト】
 目の前に出てきたポテトサラダに、私はしばらく目が釘付けになった。だって、そのポテトサラダには、マカロニが入っていたんだもの。それは、息子がまだ幼稚園ぐらいのこと。たまたま、お昼ご飯でも一緒に食べましょうということになって、お友達のうちに、お邪魔することになった。
 「だってね、ポテトサラダとマカロニサラダと、どっちも好きなのよね。だからね、一緒にしちゃったの」

 確かに、確かに。好きなもの同士がドッキングしたサラダを目の前にして、息子は盆と正月が一緒に来たぐらいの喜びよう。以来、わが家のポテトサラダにも必ずマカロニが入るようになった。

 作り方はこう。ジャガイモの皮をむいて四つくらいに切る。たっぷりの水とともに鍋にいれたら、ふたをして火にかける。途中、ジャガイモが少し柔らかくなってきたら、マカロニを入れる。一緒にゆでてしまうのが奥園流。

 マカロニは4分前後で茹で上がる早や煮タイプがお勧め。以前、ゆでるのに10分近くかかるものを入れたことがあるのだけれど、マカロニが柔らかくなったときには、ジャガイモがすっかり煮崩れてしまった。かなり悲しい・・・。

 さて、ゆでている間に玉ねぎドレッシングを作る。玉ねぎ4分の1個を薄切りにして、オリーブオイル大さじ2杯、塩小さじ2分の1杯、酢、またはレモン汁大さじ1杯を混ぜておくだけ。酸っぱいのが苦手なときは、みりんを少し入れてもいい。

 ジャガイモとマカロニが柔らかくなったら、鍋のふたを少しずらして、そこから水を捨て軽く鍋をゆすりながら、もう1度、火にかける。ジャガイモが粉吹きイモ状態になるので、水っぽくなることはない。

 ジャガイモが熱いうちに、玉ねぎドレッシングを混ぜたら、ふたをして5〜10分。後は、塩もみしたきゅうりやハムを入れてマヨネーズであえる。粒こしょうをひいて、たっぷりかけるのもいい。次の日、残ったサラダにピザ用チーズをかけて、オーブントースターで焼いたのも、お昼ご飯にはもってこい。

 ポテトサラダって、家庭料理としては定番なのに、それぞれの家で違っていておもしろい。別のうちのは、キウイフルーツやリンゴやレーズンや果物がたくさん入っている甘酸っぱい味のポテトサラダだった。また別のうちでは、いためたジャコと青ねぎの小口切りが混ざっていて、それもまたおいしい1品だった。

 よそのうちのポテトサラダって、なんだかちょっとわくわくする。(終り)

   
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(平成22年11月16日更新)

(第57回)

チョコレートケーキ

お菓子作りもアバウトに楽しく

材料(4人分)

      バター ・・・・・・・・・・ 100グラム
      砂糖 ・・・・・・・・・・・ 80グラム
      ココア ・・・・・・・・・・ 20グラム
      卵 ・・・・・・・・・・・・ 2個
      小麦粉 ・・・・・・・・・・ 100グラム
      ベーキングパウダー ・・・・ 小さじ1
      くるみ ・・・・・・・・・・ 40グラム
      板チョコ ・・・・・・・・・ 1枚
      スライスアーモンド ・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 バレンタインデーだ。でも、受験だ。でもやっぱりバレンタインデーだ。でもやっぱりやっぱり受験だ。毎年この時期には、友達と台所にこもり、いったい何人にあげるの?というぐらいのチョコレートを作っていた娘。けれど、今年は高校受験の真っ最中。能天気な彼女でさえ、さすがにここでチョコレートを作っている余裕などない様子。

 ならば、というわけでもないけれど、今年は私が娘にチョコレートケーキを作ってプレゼントしよう。友チョコならぬ母チョコ。

 まずはバター100グラムをボウルに入れる。バター1箱200グラムを買ってきたらすぐに16等分に切って、ふた付き容器に入れておくと、1かけが約大さじ1、4かけが50グラム、8かけが100グラムになるから、バターをカットして保存するのはおススメ。

 バターを電子レンジに30秒ほどかけて、やわらかくしたら(このときどろりとした溶かしバター状になってもぜんぜん大丈夫)、軽く泡立て器で混ぜ、ボウルごとはかりにのせたら、砂糖80グラムとココア20グラムを入れる。砂糖と一緒にココアをバターに混ぜ込むと、ココアが多少だまだまになっていても、混ぜ混ぜしている間にきれいに混ざるので、ココアを入れるタイミングは絶対にここ。

 再び軽く混ぜたら、卵2個を割りいれ、さらに混ぜる。卵は冷蔵庫から取り出して、いきなり割り入れても大丈夫。再びボウルごとはかりにのせ、小麦粉100グラムを量りながら入れる。ベーキングパウダー小さじ1も入れたら泡立て器で一気に混ぜる。

 後は好みでクルミや板チョコ、ドライフルーツなどをいれ、ゴムベラで軽くかき混ぜたら、カップに分け入れる。表面にスライスアーモンドなど散らすのもいい。190度のオーブンで20〜25分焼き、竹串をさして何もついてこなければ焼き上がり。

 お菓子作りというと、きっちり正確に、丁寧にというのが決まりごとかのようになっているけれど、家庭で作るお菓子というのは、もっと気楽にアバウトでいいと私は思っている。むしろアバウトで気楽に作っても、絶対においしくできるレシピこそが家庭のお菓子なのだと思う。理科の実験じゃないんだし、細かいところを正確にするあまり、ぴりぴりしていたら、せっかくの楽しさが半減してもったいない。

 オーブンから漂ってくるおいしそうな香り。そろそろこのにおいに誘われて、娘がやってくるころだ。お菓子を手作りする1番の目的は、混ぜ混ぜしながら出来上がりを想像するうれしさや、焼き上がりを待つわくわくする気持ち。そして何より出来立てを食べながら娘とおしゃべりする時間。

 「ちょっと勉強一休みして、お茶する?」(終り)


   
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(平成22年12月3日更新)

(第58回)

トンカツ

バンバンたたいて下準備

材料(4人分)

      とんかつ用豚ロース肉 ・・・ 4枚
      塩、こしょう、小麦粉
      (A)卵 ・・・・・・・・・ 1個
         小麦粉 ・・・・・・・ 大さじ4
         水 ・・・・・・・・・ 少々
      パン粉 ・・・・・・・・・・ 適宜
      揚げ油 ・・・・・・・・・・ 適宜
      ウスターソース ・・・・・・ 好みで
      レモン・・・・ ・・・・・・ 好みで
      キャベツ(せん切り)・・・・たっぷり



【コ メ ン ト】
 「お母さん、何かいやなことでもあったの?」。
 娘が血相を変えて台所に駆け込んできた。私はというと、右手に麺棒を握り締め、まな板に置いた豚ロースの切り身めがけて、ばんばんとたたきつけていた。

 確かに騒がしい音だ。麺棒を振り落とすたびに、醤油やみりん、ソースの瓶がジャンプして、鍋やトレーの置いてある棚がガタガタ共鳴している。いやいや、ストレスを発散しているわけではないの。とびきりおいしいトンカツを作ろうと思っているだけ。

 ずーっと前に、ものすごく柔らかくておいしいトンカツ屋さんを取材した人から、なぜ柔らかいかを聞いたことがあった。その人によると、肉をたたいて、たたいて、倍くらいの大きさに伸ばし、それをまた手で包み込むようにして元の大きさにまで戻し、トンカツにするのだそうな。いいことを聞いた。以来、わが家では、まねしている。

 バンバンやっているのを見て、娘が「私にもやらせて」と言う。いいよ、いいよ。どんどんやっちゃってちょうだい。

 けれど、これは結構、力が要る。「あかん、腕が疲れてきた。ストレス発散するのも体力が要るんやね」と娘。そうそう、母は家族においしいものを食べさせるために日々、体をはって料理をしているのであります。

 さて、肉の下準備ができたら、軽く塩、こしょうをして、小麦粉をまぶす。ボウルに卵と小麦粉を混ぜて、どろりとしたホットケーキの生地のようなものを作り、これに豚肉をほうり込んで全体にからめる。

 普通は小麦粉、卵、パン粉の順につけるのだけれど、小麦粉と卵を混ぜたものをからめてしまうのが奥園流。ひと手間省けるのと、卵と小麦粉をまんべんなくからめることができるので、ムラなくきれいにパン粉をつけることができる。後は、バットにパン粉をいれておき、豚肉を入れ、ふんわりとパン粉をまぶしたら準備完了。フライパンにサラダ油を2センチくらいの高さまで入れて、両面こんがり揚げ焼きにすれば出来上がり。食べやすいように切って、お皿に盛る。

 トンカツといえば、何と言っても千切りキャベツと白いご飯に味噌汁。トンカツにかけるのは、おしゃれなソースは似合わない。普通のウスターソースとレモン汁だけでシンプルに食べるに限る。

 ちょっと多めに揚げたのは、残ったトンカツを翌日、玉ねぎと一緒に甘辛いだしでさっと煮て、卵でとじてカツ丼にしようと思ったから。けれど、毎回そんな風に思っているのに残ったためしがなく、今回も幻に終わってしまいそうな予感。(終り)

   
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(平成22年12月18日更新)

(第59回)

ささみと梅のお粥

お腹の中からポカポカに

材料(4人分)

      (A)水 ・・・・・・・・・ 3カップ
         昆布 ・・・・・・・・ 1×10センチのもの
                   1枚
         梅干 ・・・・・・・・ 1〜2個
      (B)ささみ ・・・・・・・ 4本
         塩(下味 )・・・・・ 小さじ2分の1
      ごはん ・・・・・・・・・・ 茶碗2杯
      薄口醤油 ・・・・・・・・・ 大さじ1
      卵 ・・・・・・・・・・・・ 1個
      しょうが ・・・・・・・・・ 適宜
      青ねぎ ・・・・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 「熱を測ったら、37度8分もありますから、おうちに帰らせます」

 娘の学校の保健の先生から、電話がかかってきた。ほんの2時間ほど前、「行ってきま〜す」と元気に家を出たのに、子供の風邪は急変するものらしい。

 間もなく、娘が帰ってきた。「寒い、寒い」と言うので、とりあえず、首筋の後ろ側に下着の上から使い捨てカイロを貼って寝かせる。こんな時こそ体が温まって、栄養がつくものを作ろう。

 風邪のとき大切なのは、水分、暖かさ、養生といわれている。汁気があって、温かくて、体に効きそうなもの。そうだ、ささみと梅のお粥にしよう。

 まず、鍋に水3カップと昆布、梅干を入れて火にかける。昆布は細切りにして加える。だしも出て、具として食べてしまえるのがいい。梅干は種つきのまま丸ごと。煮ているうちに柔らかくなるので、だしの中で木べらで簡単につぶれる。

 水にかけている間に、ささみを細切りにする。鶏肉は肉の中でも特に体を温める効果が高く、消化もいいし、第一いいだしが出る。あらかじめ塩少々をもみこんで下味をつけ、沸騰しているところに入れるのが、おいしく作るコツ。

 ささみに火が通ったら、梅干をつぶして混ぜ、ご飯を入れる。雑炊みたいに、さらりと仕上げるのもいいし、お粥みたいに、とろりとなるまで煮るのもいい。味をみて、醤油で味を調える。

 娘の様子をみて、食欲がありそうなので、溶き卵1個を回し入れた。少しでも栄養をつけさせたいと思う親心です。最後に、しょうがのすりおろしと小口切りにしたねぎをたっぷり入れて、出来上がり。最後に入れたしょうがとねぎの効用で、さらにお腹の中から、ポカポカ温まること間違いなし。

 ちょっと体のだるい時は、梅干の酸味もうれしい。熱々をフーフー言いながら口に運ぶと、さっぱりしたうまみと酸味で、いつの間にかぺろりと完食。しっかり食べられたら、治りは早い。

 「この風邪、あさってまでに治るかなあ」と心配そうに娘が言った。

 「あさってなにかあるの?」

 「友達と大事な約束してるの」

 行けなかったとしても病気なんだから、友達は許してくれると思うけれど、そうやね、あさってまでに何がなんでも治ってやるーって思うことが大事かもよ。だって、病は気からっていうから。

 とにかく、たっぷり食べて水分をしっかりとって、後はたっぷり寝ること。目が覚めたら、けろりと治っているかもよ。(終り)

   
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(平成23年1月5日更新)

(第60回)

ドーナツ

魔法℃gえばあっさりヘルシー

材料(4人分)

     (A)小麦粉 ・・・・・・・・ 200グラム
        砂糖 ・・・・・・・・・ 50グラム
        ベーキングパウダー ・・ 小さじ2
     (B)卵 ・・・・・・・・・・ 1個
        牛乳 ・・・・・・・・・ 4分の3カップ
      サラダ油 ・・・・・・・・・ 適宜
      グラニュー糖 ・・・・・・・ 適宜
      シナモン ・・・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 「おなかすいた〜。何か食べるものない?」
 学校から帰ってくるなり、娘が言う。まさしく育ち盛り真っ最中。

 「ドーナツ!!なんかさあ、今日はドーナツって気分なんだよね」

 と、いうわけで、今日のおやつはドーナツを作ろう。

 まず、ボウルに小麦粉200グラム、砂糖50グラム、ベーキングパウダー小さじ2杯を入れて泡立て器で混ぜる。泡立て器でがーっと混ぜると、砂糖のだまだまも小麦粉の塊もきれいに砕けるから、ふるったりしなくても大丈夫。

 粉類が混ざったら、中央に少しくぼみを作って卵1個と牛乳4分の3カップを入れ、泡立て器で混ぜる。卵、牛乳、粉類が全部混ざったら、生地の準備は完了。

 いよいよ、揚げていこう。フライパンに3センチくらいの高さまでサラダ油を入れる。このとき注意しないといけないのは、フライパンの柄の向き。フライパンで揚げ物をするのはとても簡単で楽なのだけれど、柄を手前に向けたままだと万が一、服や腕に当たって、フライパンがひっくり返ると大変なことになるから、必ず柄は向こう側にやっておく。これ、揚げ物をするときのお約束。

 油の温度が上がってきたら、スプーンで生地をすくいながら、油の中に落としていく。油の温度は、やや低め。生地を入れて、すぐきつね色になってくるようだと、ちょっと温度が高すぎだ。

 油の中でドーナツをひっくり返しながら、2分くらいかけてじっくり揚げるのが理想的。これだと、外側がカリッとして中がふんわりのおいしいドーナツになる。そのために、火加減はマメに調整した方が良い。油の量が少ないので、うっかりしていると、すぐに温度が上がりすぎるから。

 大きめのバットにグラニュー糖とシナモンを混ぜて、シナモンシュガーを作り、揚げて熱々のドーナツを入れ、全体にまぶしたら出来上がり。ドーナツが熱いうちにまぶさないと、砂糖がくっつかなくなるから要注意。

 シナモンシュガーをたっぷりまぶすから、ドーナツ自体の甘さはかなり控えめ。甘い甘い市販のドーナツよりも、あっさりしていて、ヘルシー。これぞ、手作りドーナツの良さなのであります。

 ドーナツは手づかみ。口の周りにグラニュー糖が付くのも気にせず、かぶりつく。何だかほっとするおいしさに、次から次へと手が出て止まらない。たらふく食べたら、心もおなかも大満足。そして、娘がいつものあのセリフを言うのである。

 「明日から、ダイエットしよ」(終り)

   
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(平成23年1月17日更新)

(第61回)

大豆の落とし焼き

口に広がる甘みとうまみ

材料(4人分)

     (A)ゆで大豆 ・・・・・・ 200グラムくらい
        小麦粉 ・・・・・・・ 大さじ4
        卵 ・・・・・・・・・ 1個
        ゆで汁、又は水 ・・・0〜大さじ2
     (B)青ねぎ ・・・・・・・ 適宜
        チリメンジャコ ・・・ 適宜
      ごま油 ・・・・・・・・・ 適宜
      



【コ メ ン ト】
 節分に生の大豆ではなく、いり豆をまくのは、掃除し忘れた豆が、畳のすき間から芽を出さないようにするためだと、テレビのクイズ番組でやっていた。床にこぼれ落ちた大豆が、芽をだすことなんてあるのかなあ、とちょっとまゆつばで聞いていたら、回答者の一人が、お金がない時、畳でもやしを作っていたという話をしていて、びっくり。私も自家製もやしをよく作っている一人だけれど、畳でもやしとは、恐れ入った(でも、さすがに畳はぼろぼろになるらしい。そりゃ、そうだ)。

 まず大豆を水煮にする。さっと洗った大豆と水を土鍋に入れ、すぐに火をつけて煮始めるのが奥園流。あらかじめ一晩水に浸けておいたりしなくても大丈夫。水の量は大豆の三倍。大豆が1カップなら水は3カップ。水の量なんて適当でいいような感じもするけれど、煮汁のほうにも大豆のうまみや栄養が流れ出るので、やみくもに大量の水で煮ると、それだけ豆のうまみが溶け出してしまうので、一応目安として覚えておくといい。

 土鍋の中が沸騰してきたら弱火にしてそのまま、5分。後は火を消し、ふたをしたまま半日くらい置いておく。土鍋なら保温力があるので、火を消しても、その余熱だけでほぼ軟らかくなる。後はもう一度火にかけて、好みの軟らかさになるまで煮る。大豆を軟らかく水煮にするというと、すごく大変な気はするけれど、この方法なら火をつけて消すだけの手間なので、驚くほど簡単。しかも火を消して余熱で煮るので、外出もできるし、夜に下準備をしておけば、寝ている間に勝手に豆が軟らかくなってくれるというわけ。

 さて、豆が軟らかくなったら、まずはそのままスプーンですくって食べてみる。こんなふうに自分で煮た豆は、甘くて味があって、何もつけなくても、もりもり食べられるおいしさ。だから、甘辛く濃い味に煮てしまうのはもったいない。大根おろしであえてポン酢をかけたり、きゅうりやツナと一緒にマヨネーズであえてサラダにしたり。そんなシンプルな食べ方の方が絶対においしい。

 一通りシンプルなおいしさを味わったら、次は大好物の落とし焼きを作ろう。ゆでた大豆を適当にボウルに入れ、そこに卵と小麦粉とゆで汁を入れて混ぜる、後は好みで青ねぎ、チリメンジャコ、ごまなどを混ぜ、ごま油を入れたフライパンにスプーンで落としながら並べる。両面こんがり焼けたのを、からし酢醤油などをつけて食べれば、大豆やチリメンジャコ、ごまなどのうまみが噛むほどに口の中に広がる。福は内、鬼も内。豆はおなかの中へ、せっせとまいて。みんな仲良く、お豆パワーで元気元気。(終り)

   
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(平成23年2月3日更新)

(第62回)

鶏の唐揚げ

若者の未来と胃袋に幸あれ

材料(4人分)

     (A)鶏もも肉 ・・・・・・・・・ 2枚
        醤油 ・・・・・・・・・・・ 大さじ2
        しょうが ・・・・・・・・・ 1かけ
        にんにく ・・・・・・・・・ 1かけ
      片栗粉 ・・・・・・・・・・・・ たっぷり
      揚げ油 ・・・・・・・・・・・・ 適宜
      粒こしょう ・・・・・・・・・・ 適宜



【コ メ ン ト】
 中3になる娘が、今年の学園祭でバンドをやる、と言い出した。区の無料貸しスタジオなどを予約して、毎週土曜日は練習に励んでいる。楽譜を見て自分たちで理解できないところは先輩に教えを請い、この1ヶ月ほどでめきめきと腕を上げたのだった。

 今日は、その先輩達との練習日。区のスタジオが使えないというので、わが家での練習となった。ささやかながら何か協力したいと思い、ご飯を作ることにした。人数は男女8人。育ち盛りの子たちが、いったいどれくらい食べるのか分からない。とりあえず、メーンは鶏の唐揚げ。

 鶏の唐揚げは、鶏もも肉を少し大ぶりに切る。切った鶏肉は二つのポリ袋に入れ、片方にはしょうがのすりおろし、もう片方にはにんにくのすりおろしを入れ、鶏もも肉1枚につき大さじ1杯ずつの醤油を入れて、袋の上からもみもみする。鶏肉は調味料に漬け込むより、もみもみする方がしっかり味がつくし、水っぽくならない。後は、まな板の上で袋を切って広げ、片栗粉をたっぷりまぶす。

 フライパンに2センチくらいの高さまで油を注いで熱し、片栗粉をまぶした鶏肉を揚げる。鶏肉が全部油に浸かっていなくても、厚みの半分が浸かっていれば、ひっくり返すことで全体がからりと揚がるという計算。おろししょうがで下味をつけた方はそのまま、にんにくで下味をつけた方は揚げた後に粒こしょうをまぶす。途中、櫛形に切ったジャガイモも入れて、フライドポテトに。

 さて、あらかじめ作りおいたサラダやグラタンなどをテーブルいっぱいに並べて、みんな一緒にいただきま〜す。一斉にワーッと手を伸ばして、食べる、食べる、食べる。私は、まかないのおばちゃんになって、炊き立てご飯で、おにぎりマシーンのごとく、せっせせっせとおにぎりを作る。「熱い」なんて言ってられない。

 ところが、予想以上に食べるスピードが速い。冷蔵庫のソーセージや、豚肉とチンゲン菜も炒めたけれど、瞬く間になくなっていく。鶏肉1キロ、ソーセージ300グラム、豚肉300グラム、ジャガイモ5個、マカロニ200グラム、トマト3個、ツナ缶大1缶、玉ねぎ2個、なす6本、チンゲン菜2株、ピザ用チーズ300グラム、ご飯6合、お茶2リットル、リンゴジュース1リットル・・・。しめて30分足らずで完食。

 若いって、やっぱりすごいなあ。空っぽになったお皿と冷蔵庫を見て、久しぶりにすがすがしい気分。若者の未来と音楽、そして胃袋に幸あれ。(終り)

   
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(平成23年2月16日更新)

(第63回)

鮭寿司

ポン酢醤油でさわやか風味

材料(4人分)

     (A)米 ・・・・・・・・・・・・・ 3カップ
        水 ・・・・・・・・・・・・・ 3カップ
        昆布 ・・・・・・・・・・・ 1×10センチのもの1枚
        甘塩鮭 ・・・・・・・・・ 2〜3切れ
        日本酒 ・・・・・・・・・ 大さじ3
      三つ葉 ・・・・・・・・・・・・ たっぷり
      ポン酢醤油 ・・・・・・・・ 適宜
      いりごま ・・・・・・・・・・・ 適宜
      金糸卵、いくらなどお好みで



【コ メ ン ト】
 ひな祭りが近づくと、心がちくちく痛むのは、せっかく買ってもらったおひなさまを実家に置きっぱなしにしているから。7段飾りのひな人形は、飾れば確かに美しく、うれしくもあるのだかれど、いかんせん、住宅事情もあるわけで。都会のマンション暮らしでは、飾るのもしまうのも限界がある。手のひらサイズのお人形をテレビの横にちょこっと飾り、せめて春らしい彩の鮭寿司でも作ってささやかな宴を開こう。

 まずはお米3カップを普通に洗い、同量の水とともに土鍋に入れる。このとき昆布を細かく切って一緒に炊き込むのが奥園流。普通、おすしのご飯を炊くときは、大きな昆布を入れて、米と一緒に炊くのだけれど、それだと炊き上がったあと、取り出さなければいけない。細かく切って入れてしまえば、昆布のだしも出やすいし、引き上げないで、そのまま食べられるのがいいところ。

 ここに、甘塩の鮭(生のまま)3切れと、日本酒大さじ3杯を入れて強火にかける。沸騰したら、ふたの穴のところから蒸気が出てくるので、そうなったら、弱火にして5分。5分たったら火を止めて、20分間そのまま蒸らせれば炊き上がり。

 生の鮭をそのままごはんに炊き込むのは、一見生臭くなりそうだけれど、土鍋を使って、蒸らして炊き上げるこのやり方なら、5分間しか沸騰させず、後は蒸らして火を通すので魚の臭みはほとんどでない。

 炊き上がったら、鮭だけを取り出して、骨と皮を取り除き、身をほぐしてごはんに戻す。ごはんをさっくり混ぜたら、三つ葉を散らし、ポン酢醤油とゴマをかけたら出来上がり。

 もちろん、寿司酢を混ぜて酢飯にし、ほぐした鮭の身を混ぜてもいいのだけれど、このお寿司には、ポン酢醤油が絶対にあう。普通の合わせ酢よりも甘さが控えめだし、かんきつの果汁の香りがたっているから、手間をかけずに、ワンランクのさわやかな味に仕上がる。

 実は土鍋で炊く利点はまだまだあって、土鍋で炊けばごはんを飯台に移し替えず、そのまま混ぜられるのもいいところ。木で出来た飯台は、ご飯の水分を吸って、パラリとおいしい酢飯に仕上げてくれるけれど、土でできた土鍋も、土がいい感じでご飯の水分を吸ってくれるので、おいしい酢飯になるというわけ。しかも、このまま食卓に出せるので、すべてこれ一つで完成するのもうれしいところ。

 今日はせっかくのお祭りなので、金糸卵やイクラもちらして豪華に行こう。いやがうえにも、ひな祭りの気分が盛り上がる、盛り上がる。

 後は、ハマグリのおつゆと、菜の花のからしあえ。テレビの横の、小さなおひなさまと目が合えば、にっこり笑ってくださったような気がしたり。春はもうすぐそこまで来ています。 (終り)

 
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(平成23年3月2日更新)

(第64回)

手をかけない本格的なだしの話



 「手をかけなくても、間違いなくおいしいものが作れるコツ」が、実はあるんです。そこだけ手を抜かなければ、後はいい加減に作っても、間違いなくおいしいものができるコツ。

 だしのうまみは、そのもっとも大きいコツの一つ。味のベースになるだしのうまみさえ、きちんと押さえておけば、後は、どうやったってまずくなるはずがありません。

 いやいや、こういうことって、本当はちゃんとわかってるんですよね。でも、浸けたりこしたり、引き上げたり、結構めんどくさくて、ついついそこで手を抜いちゃう。わかります、わかります。だしを取ったあとの昆布とか、ざるの目に詰まったかつお節とか、考えただけでもいやになります。それが普通です。

 しかしです。そんなことでひるんでいてはいけません。浸けたりこしたりするのがいやなら、そんなことしなくていい方法を考えようではありませんか。鳴かぬなら、鳴かせてみせようホトトギス。

 まずは昆布。私は昆布を買ってきたら、まず1センチ×10センチくらいの短冊に全部切って(この長さはあくまで目安。とにかく短冊ならOKです)、中が見えるふた付き容器に入れ、いつも見えて、すぐに手の届くところにおいておきます。このとき、中が見える∞いつも見える∞すぐに手の届く≠アの三つが、とても大きなポイントです。人間、いつも中が見えていないと忘れてしまうし、すぐに手が届かないと、まあいいやと、使うのが面倒くさくなるものですから。

 後は、味噌汁でも、煮物でも、和食でも洋食でも中華でも、とにかく水分のある料理を作るときは、入れ物の中から1枚昆布を取り出し、キッチンバサミでチョキチョキ細かく切ってください。鍋の上で切り、直接入れるとラクチンです。昆布のうまみは断面からたくさん出るし、細かく切ることで、すぐに柔らかくなり、そのまま全部食べられるのがうれしいところ。これならもう、引き上げなくていいんです。

 昆布のうまみ成分はグルタミン酸。これはくせがなくて、どんな料理にも合い、ちょっと入れるだけで、ぐっとおいしさがアップしますから、とにかくなんでもどんどん入れちゃってください。

 さて次は、かつお節。煮物でも汁物でも、最後に入れ、こしたりせずにそのまま具として食べてしまうのが奥園流。だって、冷奴やおひたしには、かつお節そのままかけて食べてるじゃないですか。だったら煮物にそのまま入ってたって、何が悪い?と私は思っているのです。

 ただし、花かつおという大きな袋に入っているものは、削りが大きいので、そのままだと味噌汁や煮物の中で団子になって、のどに引っかかったりしますので、私は、小袋パックになっているものを使っています。以前は、大袋に入ったのを、袋の上からもみもみして細かくして使っていたんですが、使い残すと、せっかくの香りが飛んでしまうので、それなら一回つかいきりのほうがいいなあと、最近思っています。

 次に干ししいたけ。これもおいしいうまみがたっぷり。私はいちいち戻したりせず、軸をぽきっと折ったら(ここは使いません)、後は煮物や汁物の上で、かさの部分をポキポキ折りながら直接入れて煮てしまいます。干ししいたけって、戻りにくそうなイメージですが、手で砕いて入れると断面から水分が入るので、あっという間に柔らかくなり、おいしいうまみもたっぷり汁に溶け出します。

 最後に煮干。これはもういきなり手で砕いて入れ、引き上げないで全部食べてしまいます。昆布や干ししいたけと一緒に使うと、うまみがぐんとアップするので、そんなに沢山入れなくても大丈夫。火にかけるときは、やや弱めの火加減で、じわじわ温度を上げていくと、たっぷりのうまみが出ます。煮干は、酸化しやすいので、これだけは冷凍保存しています。  さて、基本となるうまみはこれだけです。とにかく思い立った時が使う時。直接ほうり込むだけで、間違いなくおいしくなり、昆布の佃煮やかつお節のふりかけを作らなきゃあ、なんて思わなくてもいいのです。まずは昆布をチョキチョキ切るところから、始めてみませんか?(終り)

     
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(平成23年3月15日更新)

(第65回)

調理道具の話



 「料理を作った後の洗い物が嫌いなんです」という方、結構います。

 はい、私もその一人。だって、料理を作った後、流しに汚れた鍋やらボウルやら、洗いものが山になっていたら、誰だって料理作るのが億劫になります。

 実は洗い物が嫌いな私が、洗い物を増やさないために実行している方法があるんです。それはずばり、調理道具をたくさん持たないこと。以前は職業柄、それこそいろんなものを沢山持っていたんですが、洗うのもしまうのも大変で、いざ使おうと思っても、よっこらショット何かをのけないと取り出せなかったり。それで、引越しを機に道具をぐっと減らしてみたんです。すると、これがすごく快適なんですね。

 参考までに私が持っている調理道具を書き出してみます。

 ・片手鍋二つ(一つは味噌汁用、一つは麺をゆでる用)

 ・フライパン二つとふた二つ(本当は一つでもいいところですが撮影用に二つあります)

 ・土鍋(ご飯を炊いたり煮物をしたり)

 ・ボール大2個、中2個、小4個

 ・ざる3個

 ・やかん1個。

 この他には木べら、菜ばし、フライ返し、計量スプーン、キッチンはさみ、おろし金など。

 料理撮影があるので、調味料を入れる小さなガラスの器とボウル、トレー類はありますが、普段の料理では、ほとんど使うことはありません。

 ちなみにオーブンレンジはありますが、炊飯器やオーブントースター、電気ポット、スピードカッター、ミキサーなどはありません。ご飯は土鍋で炊くし、パンやお餅は魚焼きグリルでおいしく焼けるし、お湯はやかんで、すりおろしはおろし金で、特別なものがなくても、特に不便はありません。

 それらの道具類は台所の壁際においた金属製のラックに、ひとまとめにして置いています。これだけの道具だと、6段のラックの2段は、なにも置かずに、あけておくことができます。ラックの真ん中2段、何もおかずにあけておくと、料理途中の鍋や、盛り付けようの器とか、使う材料とか、とにかくいろんなものを置くことができます。すると作業台の上がすっきりきれいに片付き、作業がとてもしやすくなるのです。作業台にごちゃごちゃ物がないだけで、料理の作業効率はぐんとアップしますよ。

 それからわが家にないものといえば、洗いおけと三角コーナー、洗い物を入れるラック。つけおきするときは、使った鍋をさっと洗って水を張っておくので、粗い桶の必要を感じたことはありません。三角コーナーは、ゴミを入れたままにしておいたり、それ自身がぬるぬるしてくるのがいやなんです。だから、料理中のゴミは、広告の紙で作った箱やスーパーでもらう袋なんかにいれて、その場でどんどん捨てていきます。

 洗いかごの代用としては、シンクに引っ掛けるタイプのかごがあり、洗ったものはそのままそこにのせていきます。ぽたぽた落ちる水はそのままシンクにたれて、洗ったものは自然に乾くし、場所もとらないので気に入っています。

 さて、物は限りなく少ないのですが、菜ばしと計量スプーンだけは別で、これだけは10組ずつくらいもっています。これらは、いちいち洗いながら使うより、使ったらどんどん流しにためていき、料理が終わったあとでまとめて一気に洗ったほうが断然楽だと思うからです。

 菜ばしも同じで、いちいち洗って使いまわすよりは、汚れたら次、汚れたら次という風にどんどん新しい物に変えていくほうが、わずらわしさがありません。その時私がこだわっているのが菜ばしの長さ。私の持っている菜ばしは、全部同じ長さです。もちろん紐なんか付いていません。菜ばしを同じ長さのものでそろえておくと、闇雲にどれをとってもぴたっとあいます。これが長さとか色の違うものだと、持った時なんか気持ち悪いし、同じものを探すのもわずらわしいと思いませんか?些細な事ですが、こんなことでもずいぶん料理の作業効率ってよくなる気がするんです。

 どうでしょう。すこしくらいは参考になりましたか?(終り)

   
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(平成23年4月5日更新)

(第66回)

私のこだわり



 料理研究家というと、アシスタントの方がたくさんいて、スタジオみたいな広い台所で優雅に料理を作るイメージがありますね。食材にも、かなりのこだわりがあって、日本全国あちこちから、選りすぐったものを集めていたり、ふだんから高級スーパーでお買い物をしていたり。確かに、料理研究家の先生の中には、そういう方もおります。また、そういうことをしているからこそ料理研究家なのだという方もいます。

 けれど、私の場合、料理研究家は料理研究家でも、家庭料理研究家=B普通に生活している人が、普通の家庭で料理できて、失敗なくおいしく作れる方法を研究するのが仕事。なので、私にはアシスタントもいませんし、台所はキッチンなどというしゃれたものではなく、普通の台所。食材は基本的に近所のスーパーに自分で買いにいきます。調味料に関しても、普通のスーパーで手に入るものが基本。これらが私のこだわりです。

 つまり、普通の主婦にはアシスタントがいないのに、アシスタントに手伝ってもらって料理をしていたら、本当に簡単に作れるのかどうか、わからなくなってしまいます。買い物に関しても、自分で買い物に行くと、その季節にどういうものがどれくらいの値段で売られているのかきちんとわかって料理できるし、重たい荷物を持って帰るわずらわしさを知れば、彩りだけの野菜などは省略して、最低限の食材でレシピを考えようと思えるからです。

 一応料理研究家ですから、いろんな珍しいもの、こだわりの高級品を食べたり使ったりしたことが無いわけではありません。さすがにこだわりの1品といわれるだけあって、う〜んとうなるほどのおいしいものがあることも知っています。でも普通に手に入るもので、いかにおいしいものを作るかということを試行錯誤することって、かなり面白いと思っているのです。

 そのほかにこだわっているものというと、にんにくとしょうがでしょうか。これらに関してはチューブ入りのは絶対に使いません。香りがぜんぜん違うから。おろし金にもこだわりがあって、穴が開いていて、すりおろしたものが下に落ちるタイプのものを使っています。これだと、直接料理の上ですりおろしながら入れられるし、洗いやすくて、とても具合がいいのです。

 ちなみに、しょうがは、皮付きのまま、大きい塊のまますりおろします。皮付きのほうが香りがいいし、1かけ分にしてすりおろすより大きいまますりおろした方が、すりおろしやすいからです。おろしたところがぎざぎざしていますが、それはそのままにしておき、次に使う時にそこだけ薄くカットして、またすりおろします。切り口って乾燥してくるので、使う時にカットしたほうがムダがないのです。

 もう1つのこだわりは、蜂蜜。私は料理の甘み付けに砂糖は使わず、蜂蜜かみりんで味をつけます。蜂蜜の方が砂糖よりもあっさりしているのにこくがあり、食べた後さらりと軽い感じがするところが気に入っています。さらに、他の調味料とのなじみもよく、すぐに混ざってつやよく仕上がるのも気に入っています。

 ちなみに、蜂蜜が残り少なくなってきた時、最後まで使い切るのって、ちょっとわずらわしい感じがしませんか?そんな時私は、残っている蜂蜜の容器を横から見て、蜂蜜の高さと同じくらいの高さまで醤油入れ、ふたをしてしゃかしゃか振っておきます。これ、実は照り焼きのたれなんですね。鶏肉や魚の切り身をフライパンで香ばしく焼いたところに、これを入れてからめたら、即、照り焼きの出来上がり。しょうがのすりおろしをプラスすれば、しょうが焼きなんかあっという間ですね。注ぎ口の付いた蜂蜜の容器をそのまま使っているので、使い勝手もよく、お弁当のとき、ほんのちょっと照り焼きのテレがほしい時なんかも、本当に助かります。しかも、残り少なくなった蜂蜜を最後まで無駄なく使えるわけですから、これすごいでしょう?

 こんな風な事を毎日の料理の中で発見して、ふふふと一人悦に入って笑ってみたり、よっしゃーとガッツポーズをしてみたり、家庭料理研究家の日々は、小さなこだわりとささやかな喜びでできているのです。(終り)

   
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(平成23年4月16日更新)

(第67回)

ズボラでもできる在庫管理



 こんなことを書くのもなんですが、私、整理整頓は、決して得意ではなく、むしろ苦手なほう。でも台所にはこまごました食材がたくさんあるし、在庫管理もしないといけないし、整理整頓能力がなくても、きちんと整理しておかないと、あれがない、これがない、と面倒くさいことになるのは必定。

 そこで、マメでなくても、几帳面な性格でなくても(つまり私でもできる)、整理整頓方法を考えました。

 整理整頓の基本は、まずは1箇所に必要なものをまとめること。あっちこっちに分散しておくと、結局はどこに置いたのかわからなくなって、あっちへうろうろ、こっちへうろうろすることになりますからね。

 そこでわが家の場合は、台所に作り付けの棚があるので、そこを食材収納庫と決めました(余談ですが以前、そういう棚がないところに住んでいた時は、バザーで買った本箱を収納棚代わりに使っていました。参考までに。)

 料理に使うもので常温保存できるもの、つまり小麦粉、砂糖、塩、乾物類、昆布、干ししいたけなど、すべてここに収納しようというわけです。

 繰り返しますが、私はどうひいき目に見てもマメな方ではありませんので、定期的に整理しなおしたり、チェックしたりはできそうにありません。なので、食材を中の見えるふた付き容器に入れ、それを棚に並べて収納することにしました。これだとバサッと入れるだけです。

 このとき、私なりにルールを作りました。

 一つ目は絶対に二つのものを一緒に入れないこと。高野豆腐とお麩とか、昆布と干ししいたけとか、二つのものを一緒に入れると取り出しにくいし、結局どんどん一緒くたになってきて、何がどこに入っているのかわからなくなってしまうので、一つの容器に入れるのは必ず1種類と決めています。

 二つ目は、一回に買ってきたものが、必ず全部入る大きさの容器を用意すること。半分だけしか容器に入らないとなると、入りきらなかったものをどこに収納するのか。それって、絶対忘れてしまうような気がするんですよね。

 三つ目は、容器の中のものをすべて使い切るまで、新しいものを入れない。当たり前のことなんですが、自分の中でそう決めておかないと、結構継ぎ足し継ぎ足ししてしまいがちなんです。そうすると、結局底のほうに入っているのは、ぜんぜん入れ替わらないことになりますから。

 四つ目は、容器の置き方。よく使うものは手の届きやすい下の段に、あまり使わないものは、踏み台を使わないと届かない上の段に。これは、まあ、当たり前の事。さらに、私は容器を棚のぎりぎりの手前まで出して並べています。

 実は、この置き方にすると、取り出しやすいということのほかに、大きなメリットがあります。こういう棚って、案外奥行きがあるので、奥のほうにあるものが取り難いですよね。そこでそれを逆手に取り、わざと容器を前面に出して、奥のスペースを作り、そこを買い置きしてあるものの置き場所にするわけです。小麦粉の容器の奥には、買い置きの小麦粉を、ひじきのケースの奥にはひじきの買い置きを置いておけば、すぐに入れ替えができます。しかも、前面には、ずらりと容器が並んでいるので、奥の状態は外からはほとんど見えません。だから適当にポイポイほうりこんでも、見掛けはすっきり片付いているようにみえるのです。まさにズボラにはもってこいの方法!!

 ちなみにこの収納棚の扉の内側には、私はコルクボードを貼り付けています。ゆかりの粉とか、青海苔とか、唐辛子とか、小さな袋で買ってきて、ついついなくしてしまいそうなものは、ここに画鋲で止めてしまうのです。これだと、無造作にとめても、結構さまになります。

 もう一方の扉には、ビデオテープのケースを両面テープで止めていて、そこには、かつお節の小袋をばさっと入れています。1日に何度も使うようなものは、こういう入れ方をしておくほうが、すぐに使えて便利なのです。半分使って中途半端に残ったのは、口を三つ折りにして、ケースの端にクリップで止めておくと、使い忘れがありません。 (終り)

   
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