2010年春 なごや環境大学共育講座 B-02
「楽しく」「わかりやすく」「面白く」地球環境の将来を語り合う夕べ
第4回 「飛行機用材料のお話」
主催 : (社)日本技術士会中部支部 愛知県技術士会
日時 : 2010年7月21日(水) 18:30〜20:00
場所 : なごやボランティア・NPOセンター 12階集会室
会費 : 500円
講師 : 濱井升平 (技術士(金属部門)、工学博士)
項目 | 内 容 |
木と針金と布 | "ものづくり"の原点である材料に関して、東海地方の主要産業である航空機を例にとって、お話をさせていただきます。 1903年にライト兄弟が初めて動力付きの飛行機で空を飛んだ「フライヤー1号」の機体はどんなものでしたでしょうか? 言うまでもなく上下2枚の羽布張りした主翼と、前方に2枚の昇降舵、後方に2枚の方向舵からなるもので、全重量274Kgの内、1/2が木材、1/3が鋼、残り1/6が羽布であったと言われております。 |
アルミ合金の登場 | その後10年間はこの傾向が続き,1914年の第一次世界大戦で技術的進歩を見、フォッカ―社の20mm径の溶接鋼管パイプの骨組みに羽布張りで、木製桁に合版を張った機体構造が主流となりました。1906年にドイツ人、ウイルムがジュラルミン(Cu 5%、Mg 0.5%、,Bal Al)を開発し、強度や加工性に優れていることが認められ、大戦後の1919年にドイツでモノコック胴体、外皮構造主翼の全金属機が登場し、1930年代の近代的飛行機へと発展しました。 |
チタン合金の登場 | 1933年に初飛行したB247は全ジュラルミン製で近代的飛行機の先駆けと言われ、この傾向が今日まで続きますが、この間チタン材が実用化され、1950年代の初めにB707に初めてステップなどの2次構造部材として使用されます。 次第にチタン材の優れた特性が認められ、また飛行機の高速化、大型化の要求に応える各種チタン合金が開発され、機体はもちろんエンジン部品の主構造材料として利用が拡大されています。 |
複合材料の歩み | 複合材の登場は飛行機の歴史より古く、初期の飛行機で使用された木製合版があります。しかし、その後ジュラルミンによって取って代り、これは今なお主流です。1940年イギリスで60FtのGFRP製翼が試作されたのを契機に、各種飛行機の2次構造部材として使用され、1960年代にはボロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維が開発され、一次構造部材にも使用され始めます。1980年代には耐熱性、耐摩耗性のFRM, FRCが開発され、軽量、高強度の要求される航空・宇宙分野では欠くべからざる材料となり、現在開発中のB787型機では約50%ものCFRPが使用されています。 |