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2011年秋 なごや環境大学共育講座  B-70
「楽しく」「わかりやすく」「面白く」地球環境の将来を語り合う夕べ



第4回 「航空エンジン材料のお話」



主催 : (公社)日本技術士会中部本部 愛知県技術士会

日時 : 2012年1月18日(水) 18:30〜20:00

場所 : なごやボランティア・NPOセンター 12階集会室

会費 : 500円

講師 : 濱井升平 (技術士(金属部門))


項目 内  容
はじめに  航空機の歴史は材料の発達である。物作りは材料の開発から始まる。一昨年は航空機材料についてお話ししましたので、今回は飛行機の心臓とも言うべき航空エンジン材料についてお話します。
航空エンジンの性能向上  ライト兄弟が初飛行した当時の機体材料は鉄(針金)、木材および布であった。当初のエンジンは自動車用のものであり、主として鉄が使用されていた。航空機の高性能化には航空エンジンの高性能化が必須であり、回転速度の高速化に続き、燃焼温度の高温化が要求され、鉄よりも更に高温に耐える材料の開発(鉄系耐熱材料)が必要になった。
Ni/Co基耐熱材の開発  航空機の高性能化に伴い、鉄系の耐熱材料でも耐熱性は不足となり、Ni、CrおよびCoを主成分とする耐熱材料が1940年前後から実用化され始める。
 Ni-Co(20%)の合金は1900年代の初めに発熱材(ニクロム線)として開発されていたが、これをベースとした新耐熱材料が実用化されたのは1940年代初めのナイモニック系耐熱材である。この時期は第二次世界大戦の時期であり航空機の発達は目覚ましく航空エンジンはレシプロからジェットに発展し、新合金成分による鋳造・鍛造材が開発された。
耐熱性向上は省エネ、耐環境性の向上  環境問題、省エネ問題は航空機でも同様である。航空エンジンにおいては燃焼温度の高温化がなされ、民間機エンジンでは約1,500℃、軍用エンジンでは約1,700℃の燃焼が実用化されつつある。このような高温に耐えるためには合金成分は勿論であるが方向性凝固や単結晶鋳造技術の開発、酸化物分散粉末冶金法等の鋳・鍛造技術の開発の他、冷却技術、セラミックのコーテイング技術等の組み合わせ技術で対処している。そのため燃費は初期のエンジンに比べて1/2以下であり、騒音1/6〜1/8に低下し、NOx排出量も低下している。将来的にはC/C複合材、セラミック複合材等の新材料・新製造技術の開発が期待されている。