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2013年春 なごや環境大学共育講座  B-29
「楽しく」「わかりやすく」「面白く」地球環境の将来を語り合う夕べ



第3回 「豊かな三河湾へ! 流域を重視した一方策」

 三河湾環境再生プロジェクトの未解決課題「湾奥のデッドゾーン(青潮)」に対する技術施策を提案し、また、土壌のケイ素供給能が海域への森の恵みという仮説を提示します。


主催 : (公社)日本技術士会中部本部 愛知県技術士会

日時 : 2013年6月19日(水) 18:30〜20:00

場所 : 花車ビル北館 6階会議室

会費 : 500円

講師 : 井上祥一郎 (技術士(水産部門ほか))


項目 内  容
三河湾におけるアサリの役割とその衣食住環境 二枚貝の餌の取り方は、餌を濾し取る「ろ過食性」と呼ばれる方法です。だからアサリなど二枚貝がウジャウジャいる海は、透明度が上がりきれいです。人間のために浄化するのではないので悪しからず。気に入らない餌は栄養として取り込まず、ウンチとは別に「擬糞」で出します。アサリの働きを期待するには、「棲み場所は砂っぽく、食べ物のケイ藻が沢山いて、酸素の少々の不足は我慢するけど、硫化水素はヤダネ」の声に応えることです。
アサリの大量死!「苦潮」(硫化水素)と三河湾環境再生プロジェクトの未解決課題「デッドゾーン」 三河湾奥に豊川(とよがわ)があり、その河口に六条潟という日本で一番のアサリの赤ちゃん(稚貝)がいる場所があります。ここから運んで三河湾の各所で育て、漁師さんが採ってお店に並び、潮干狩りも楽しめます。ラグーナ蒲郡や御津の埋め立てで掘られた穴があり、そこは毒ガスの硫化水素が出やすく、六条潟のアサリはそのため度々大量死しました。今はそこは埋められましたが、県の水産試験場は、「三河湾の面積の5%程度の深場が、湾全体の生態系に影響している」と発表しました。多くが貨物船が停泊する「泊地」で、埋めることができないので、県は頭を抱えています(?)。
「デッドゾーン」に挑むのは温故知新の技術 毒ガスの硫化水素は稲の根を腐らせて、枯死させる「秋落ち」の原因でした。お米が取れなくなると大変なので、一生懸命研究して「赤土」を客土することで防げることが分りました。赤土の中の鉄が毒ガスを無害化するのです。山陰地方の中海という汽水湖では、サルボウ貝が硫化水素で度々死ぬので、稲作の知恵を応用して被害を少なくしました。60年も前のことです。この経験に学べば、埋められない所の毒ガスも防ぐことができるのです。
森・里・海−人工林・田んぼ・里海を繋ぐケイ素 毒ガスが無くなって、県が進める干潟・浅場造成が完成すると、アサリは喜んで増えようとします。ちょっと待って!増えたアサリが食べきれないほどの餌が必要ですよね!アサリの餌はケイ藻だと書きました。窒素やリンが増えるだけではケイ藻は増えられません。殻をケイ酸でつくるから水に溶けたケイ素がないと、他の食えない植物プランクトンにとって替わられてしまいます。ケイ素の故郷は陸地です。豊かな土を創って守る森林が必要です。このカラクリを会場で一緒に考えたいと思います。では会場でね!