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2013年9月18日(水)に開催された「2013年度前期第6回 なごや環境大学愛知県技術士会講座」の報告

 下記の要領で、なごや環境大学の愛知県技術士会講座"「楽しく」「わかりやすく」「面白く」地球環境の将来を語り合う夕べ"の2013年度前期第6回目が開催されました。

 ・日時 : 2013年9月18日(水) 18:30〜20:00
 ・場所 : 花車ビル北館6階 会議室
 ・講師 : 木村正彦 (技術士(建設部門)、ケイテック株式会社代表取締役CEO)
 ・題目 : 「日本再生から見た原発論 ― 『再稼働か廃炉か』よりまず『除染』を―」


 受講者は27名でした(アンケート回収21名)。受講された皆様、ご参加ありがとうございます。当日は、まだまだ9月になっても暑い中、19時に冷房が停止する暑い室内にもかかわらず、ご清聴いただいたことに感謝申し上げます。また、スタッフの方々の講座開催に対するご支援・ご協力に対して、厚く御礼申し上げます。

 今回のテーマは原発論でした。電力会社勤務33年3か月の経験を踏まえ、「再稼働か廃炉か」がさけばれる中、福島の住民の方のお立場を考えて、「除染」を中心に、原子力発電所について、お話をさせていただきました。以下に、私が当日取り上げました6つの論点を示します。
 1 現在の福島第一原子力発電所1〜4号機の状況
   ―放射線汚染はかなり進んでいる(陸も海も)ー
 2 福島第一1〜4号機と福島第一5・6号機、福島第二、女川、東海2号機との違い
   ―事故と冷温停止の違い―
 3 再稼働か廃炉か ―原子力発電所の経済性を他の発電形式と比較する―
 4 除染事業の現在と将来 ―まだ先は本当に長い―
 5 日本再生のためにはどのようなエネルギー政策・事業形態を進めたらいいのか
   ―エネルギー資源の見地から考える―
 6 活断層よりテロの方が危ない
   ―リスクマネジメントの観点より原子力発電所の事故発生を考えるー

 以上の論点について、私の現在の福島第一原子力発電所1〜4号機(大熊町)周辺の現状を踏まえ、16種類の配布資料を用いて、ご説明いたしました。福島第一原発のことをお話しするには、福島県について知らなければならないと思います。地元の風土・文化を知らなければ、福島原発を語ることはできません。チェリノブイリとは立地・気象・文化・習慣も違います。チェリノブリ・TMI(スリーマイル)なども参考になりますが、海岸部の福島独自の風土・特徴があります。それらを踏まえて、しっかりと、事故の後処理に取り組んでもらいたいと考えます。オリンピック誘致のための付け焼刃的な対応は、どうかと思います。震災発生後2年半を経過しての現状を見ると、原発事故の処理がほとんど変わっていないのが一技術者として非常に残念です。公益社団法人日本技術士会、特に原子力・放射線部門から、福島県民の皆さん、東北地方の方々、日本国民に対してメッセージやわかりやすい説明が少ないのも遺憾に思います。「月刊 技術士」の2013年10月号に原子力発電所のことが書かれていましたが、現在は事故そのものではなく、除染・汚染水処理の問題にもう移っていると考えます。逆に、東海地方などの東日本大震災や福島第一原子力発電所事故に対する関心が風化しつつあります。




 2013年度後期も、なごや環境大学愛知県技術士会講座を続けます。次回は後期第1回目で、2013年10月9日(水)の18時30分から、花車ビル北館6階会議室での開催です。鈴木千賀先生(環境学博士/技術士補(水産部門))による講演「異常増殖する『藻』への挑戦」です。ご参を加いただきますようお願い申し上げます。

   (文責 木村正彦)