ここ一月ほど前から、賽銭泥棒にやられています。以前からちょくちょくやられていました。一度は戸締りも厳重にしてみたのですが、ガラスを割られて結局は入られてしまい、修理代のほうが高くついたりするものですから賽銭を早めに下げることにして、鍵はかけないようにしておりました。そんな状態だったのですが、この一二年は安全だったものですから、こちらも気が緩んだのでしょう、賽銭も夕方まで下げずに置くようになってしまいました。そこへ入られてしまったのです。しかも今回は毎週土曜、日曜日のお賽銭の多かった日を狙ってきていたようです。

仏様のお下がりだから、困っている人に施せば功徳になると思えばいいのですが、そこは凡人。見つけ出して張り倒してやりたいほど腹が立ちました。何しろ毎週だったんですから。しかも敵は、工事の職人さんの前を、参拝者を装って平然と出入りしているようなんです。更に恐ろしい事に、賽銭箱に手をかけた形跡があるのです。幸か不幸かこのとき賽銭箱は、引き出しが堅くて少しくらいひっぱただけでは引き出せないようになっていたのです。このとき外に職人たちがいなかったら、五十万円で寄付してもらった賽銭箱は叩き壊されていたかも・・・。これは何とか対策しなきゃ。

この、土日に入るというところから、生徒の仕業ではないかと目を付けました。しかも夜ではなく真昼間に来るんですから。と思って日曜日の午後の法事の時、ふと本堂の外を見ると、漫画に出てくるノビ太君のような少年が中を覗っていました。入り口の戸に手をかけながら。「ア。こいつだ。」 

そこで、賽銭箱の中へ置手紙。「十月二十日に君が入ろうとするのを見かけた。どこの誰かも分かった。今度はいったら警察に知らせる」大きな紙に黒々と書いておきました。馬鹿でなきゃ読めるじゃろ。

次の土曜日、夕方本堂の整理に行くと、中から血相変えて飛び出してきた例のノビ太君、自転車に飛び乗ってほうほうの体で逃げていった。血相変えて飛び出してきたのは、私の存在に気がつく前だったから、彼は賽銭箱の警告を読んだのでしょう、そして自分の置かれた大変な事体を悟ったのでしょう。どうやら字は読めたらしい。しかも悪い事だと分かっていたらしい。「もう来るなよ。」

結局、賽銭箱は助かったが、その日の位牌檀の賽銭はやられた。被害は2000円ぐらいか。でもまあ、これで来ないようになれば丸く収まったほうか。(10月29日)

またやられた。今度は無性に腹が立つ。昨日あんな文書をかいたばかりだから。やはりこの前捕まえておくべきだったか。今度は張り込みをしてやろう。被害額3000円ぐらい。でも不思議な事に賽銭箱は無事であった。ひょっとすると別人か。(10月30日)

明日は冬至です。この2ヶ月間、賽銭泥棒君は来ていません。結局こまめにお賽銭を下げることにしました。何もないことが分かれば、来る理由がなくなるからです。一度味を占めると、はまってしまうのが人間の弱さなんでしょう。パチンコにはまってしまうのもそうなんでしょうね。何度きても何もないということを実感してもらうことにしたわけです。どうやら分かってくれたみたいです。 ただお賽銭をお昼には下げてしまうことには、幾分か気がひけたのですが、平和がもどれば又もとに戻すことにしました。でも別のサイドロが来るようになったら又同じことを繰り返すことになるんでしょう。人間の世の中、こんなことの繰り返しで終わってしまうんです。

本堂の入り口の大戸に、防犯ブザーをつけました。その代わり鍵はかけていません。心のやましい人はブザーを聞いて帰ってくれることを期待するのみです。 (12月21日)              

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