※これはFF7本編終盤、Disc3以降の話です。





メテオが降って来るまであとわずか。クラウド達はマテリアのマスターを始めとして、セフィロスを倒す為、レベルアップを重ねていた。
そんなある日の夜――



シド「よお、ヴィンセント。おまえも起きてたのか」
ヴィンセント「ああ…今夜は少々寝付けなくてな」
シド「せっかくだから1杯飲まねえか?」
ヴィンセント「ああ…」

2人はそれぞれの好きな酒を手にする。

シド「おまえと飲むのは初めてだな」
ヴィンセント「ああ、そうだな」
シド「なんだよ、さっきから『ああ』ばっかりで。ちっとは他のこともしゃべれってんだ!」
ヴィンセント「…メテオがこの星に来るまであとわずかか…」
シド「そうだな。思えばそれまでいろんなことがあったよなあ。おまえらがロケット村に来て俺様に会いに来て、それから俺様の運命は変わったんだ。まさか世界を救う旅をすることになるたぁな」

ヴィンセント「あんたも酔狂な人間なのだな。特に理由もなくクラウドについて行くとは」
シド「そういうおめえは宝条への復讐が目的だっただろう?」
ヴィンセント「ああ。後悔はしていない」
シド「いや、むしろおめえの場合、30年近く眠ってたことを後悔してんじゃねえのか?」
ヴィンセント「…否定はしない」

シド「ったくよお〜っ!おまえってやつぁどうしてそんなに暗ぇんだよ!寝てなんかいねえでとっとと起きて復讐でもなんでもすりゃあよかったじゃねえか!あのルクレツィアって姉ちゃんのこともあるしよお!」
ヴィンセント「悪夢にうなされる長き眠りこそ私に与えられた償いの時間」
シド「いや、うなされてたって償いにはならねえだろ」
ヴィンセント「シド、おまえも私のように身体を改造されてみれば同じような心境になるかもしれないぞ。全身を駆け巡る嫌悪感。そして恐ろしい実験を止められなかった深い悔恨の念」
シド「ぎゃああ!やめろおー!」

ヴィンセント「今、思えばルクレツィアは私のこういうところが嫌いだったのかもしれない」
シド「何?嫌われてたのか、おめえ」
ヴィンセント「彼女は私より宝条を選んだのだ」
シド「…おまえはいいやつなんだけどよお、優柔不断な行動力に欠ける男はダメだぜ。女ってのは行動力のある男に憧れるもんだ」
ヴィンセント「行動力…そうか、私は行動力で宝条に負けたのか…確かにそうかもしれない…確かに宝条は実験に関しては行動力がありすぎた…ルクレツィアは宝条のそんなところに惹かれたのか…?私はそんなところで負けたのか…?」

シド「あ!コラ!うじうじすんな!ったく、しょうがねえ野郎だなあ。そう落ち込むなよ。女なんていくらでもいるじゃねえか」
ヴィンセント「私とってはルクレツィアが全てだ。彼女以上の女性なんて到底考えられない」
シド「一途だなあ」
ヴィンセント「シドにもシエラという女性がいるのではないか」
シド「ん?まあな。あいつとはロケットのことでだいぶつらく当たっちまったからなあ。これからはその償いをしていくつもりだぜ」

ヴィンセント「お幸せにな。私にはもう2度と幸福を感じることはないからな…」
シド「なんだよ。他に誰か女ができるかもしれないぜ。それかいつかあのルクレツィアって姉ちゃんを迎えに行くか?」
ヴィンセント「私に許されているのは悔恨のみだ」
シド「男は行動力がなきゃダメだぜ!がむしゃらでもいい、何でもいいから自分のやりたいように突き進んでいくんだ」

ヴィンセント「そうかもしれないな…行動力と言えば…一時期あんたがリーダーになった時があったな。結果の良し悪しは別として、あんたの行動力には敬意を払うものがあるな」
シド「結果の良し悪しは別たぁ引っかかるじゃねえか。俺様が何か失敗をやらかしたか?」
ヴィンセント「コレルの列車の件、危うく村を破壊するところだった」
シド「俺様がなんとかしたじゃねえか。列車も無事止まったしよお」

ヴィンセント「私にはあんたのそういう適当なところがついていけない。機械の操縦が苦手なら苦手とあらかじめ断っておいて欲しかった。あの時は私のようなものでも寿命が縮んだぞ」
シド「なあに、あの手のもんは気合いだ。まあ結果オーライってことでいいじゃねえか。細かいことは気にするな! そういやあおまえも機械は苦手だとか言ってたな」
ヴィンセント「その通りだ。なにせ昨今の文明の発達は早い。私のように30年も眠りについていたら最新の機械など到底ついていけない」
シド「まあ俺様もPHSの使い方以外はよくわかってねえけどな」
ヴィンセント「PHSか…そのうちもっと高性能なものが出てきて我々にはついていけなくなるかもしれないな」

シド「なあに、心配あるめえ。クラウド達に聞きゃいいんだよ。ほら、ユフィみたいな若いのとも知り合いじゃねえか」
ヴィンセント「時代の流れは早い…神羅の発達ぶりも私の頃と比べると目を見張るものがあった」
シド「そういえばおめえは俺様より年上なんだよな、一応。なんか変な感じだなあ」
ヴィンセント「私がタークスにいた頃はまだ神羅カンパニーは神羅製作所という名前だった」
シド「ただの製作所が魔晄の発見で世界一の大企業に進展か。そしてそのおかげで俺達は星を巡る戦いに巻き込まれたってわけだ」

ヴィンセント「そうだな。そして私は長き眠りから覚め、クラウド達やシド――おまえと出会うことになった」
シド「ああ。最初はどんな根暗兄ちゃんかと思ったぜ」
ヴィンセント「フッ…シド…私はあんたのことが羨ましい。いつも夢を熱く語って希望に満ち溢れている。それに引き換え私の心は長い眠りのうちに溶けてなくなってしまったようだ…」
シド「なんでえ、辛気臭え。もっと前向きに生きろよ」
ヴィンセント「前向き…か…今さらどんな生き方ができるかわからないが…今はとにかく星の命を救ってみせよう」
シド「おう!」





FF7ダージュオブケルベロスにて、ヴィンセントとシドは一緒にお酒を飲んだ仲であるということがわかりました。
それで2人の語らいを書いてみたのですが…こんな出来に(汗)。
きっとあの2人のことですから本当はもっと大人の男の会話してるんでしょうね…



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