※これはクロノオンリーで発行したサイト未掲載だった話です。4話まで公開。



クロノは目を覚ました。
ここは時の最果て。時の迷い子が行き着く場所。そして時空を超えた旅を続けるクロノ達の休息の場所でもある。
クロノは上体を起こし、自分の手を見た。

生きている。

そう、自分は生きているのだ。



海底神殿のラヴォスとの戦いで、クロノは一度、命を落とした。ラヴォスの圧倒的な力に皆やられそうになった時、一人立ち向かったのである。結果、クロノの身体は消え去った。マール達は悲しみにくれていたが、魔王から人を生き返らせる方法があることを知り、死の山へ向かい、無事クロノを生き返らせることに成功したという。
仲間達から一通り話は聞いたが、クロノは今ひとつ実感が湧かなかった。しかし自分は一度死んだのだという事実が彼の心を蝕む。圧倒的なラヴォスの力、死の直前の恐怖。

「…起きたのか」

クロノが振り向くと、そこには魔王の姿があった。

クロノ「魔王…」
魔王「自分が死んだことに実感が湧かないか」
クロノ「ああ…」
魔王「……おまえが死んだのは弱さのせいだ」
クロノ「……………」
魔王「弱きものは死ぬ。ラヴォスに立ち向かうには強さが必要だ」
クロノ「なんでおまえは俺を生き返らせる方法を教えてくれたんだ?」
魔王「フン…私は力が欲しかっただけだ。ヤツさえ倒せればそれでいい」
クロノ「ふーん…マール達から話は聞いたよ。あのジャキって子供がおまえだったんだな」
魔王「……………」
クロノ「そして今は俺達の新しい仲間だ」
魔王「ラヴォスを倒す為、互いに手を組むだけだ。おまえ達となれ合うつもりはない」

クロノは初めてジャキに会った時を思い出した。

エイラ「あのチビ、ヘン。だけど、悪いヤツ、違う」

クロノ「おまえとは敵同士だったけど、ラヴォスとの因縁とかいろんな事情もわかったし、俺はおまえを信じるよ。おまえのおかげでこうして生きてるんだしな!じゃあ魔王、改めてよろしくな!」

クロノは手を差し出した。

魔王「……………」
クロノ「あっ!なんだよ〜握手くらいしろよ〜」



クロノ「さて、それじゃあこれからどうしようか?」
エイラ「ラヴォス、戦う。エイラの村、強い防具あるぞ!行ってみろ!」
クロノ「強い防具?」
エイラ「ルビーベストの強くなったやつ。ルビーアーマー!狩りする、材料揃える。防具できる!」
クロノ「あのラヴォスと戦うんだもんな。少しでも強い武器や防具が必要だろう。よし!原始に行こう!」
エイラ「エイラも行く!」
クロノ「それじゃあエイラと魔王、一緒に来てくれ!」
魔王「…いいだろう…」



クロノ「うっわーシルバードが飛べるようになったって本当なんだー!」
エイラ「クロ、いない時、ダルトンに武器、奪われた。エイラ、武器なくても戦える。そして取られたもの、全部取り返した!」
クロノ「そういえばダルトンって結局どうなったんだ?」
エイラ「エイラ、よくわからない」
クロノ「そう簡単に死ぬようなヤツじゃないからな。またどこかで会うかもしれないな。それより新しくなったシルバード、カッコいいなー!よーし、行っくぞー!!」



原始の狩りの森でひたすら戦い、ルビーアーマーを人数分揃えるクロノ達。それが終わるとエイラのテントで泊まることにした。エイラは大いびきをかいて寝ている。


クロノ「なあ、魔王。俺達仲間なんだからさ、連携攻撃とかやってくれたっていいじゃないか」
魔王「私は大勢の人間とつるむのは嫌いなのだ。ほっといてくれ」
クロノ「でもー」
魔王「そんなことは必要ない。一人ひとりが別々に攻撃した方が最終的なダメージは大きいはずだ」
クロノ「それは、そうだけど…」
エイラ「グガ〜 グゴゴ〜!」
クロノ「…なあ、魔王。おまえ、今までずっとラヴォスへの復讐の為だけに生きてきたのか?」
魔王「…そうだ」
クロノ「楽しいこととかなかったのか?」
魔王「…そんなものなどない」
クロノ「そうか。じゃあこれから俺が楽しいことたくさん教えてやるよ!」



魔王「――で、ここはどこだ?」
クロノ「俺の時代だよ。今は王国千年祭がやってるんだ!」
魔王「そんなところへきてどうするつもりだ」
クロノ「決まってるだろ?みんなで遊ぶんだよ」
魔王「遊んでいる場合か?」
クロノ「俺達ゲートやシルバードを使っていつでもラヴォスに挑戦できるんだぜ?別に焦らなくてもいいじゃないか。おまえ、あまり遊んだことないんだろ?」
魔王「くだらん」
クロノ「そんなこと言わずに来いよ!ゲートを通じてみんな呼ぶから!」



ルッカ「リーネ広場!久しぶりね〜」
マール「クロノ、またエスコートしてよ!」
ロボ「これは楽しそうな場所デスネ」
カエル「ふーん、クロノ達の時代ではこんなお祭りをやっていたのか」
エイラ「みんなで踊る、飲む、食べる、楽しむ!」


クロノは魔王にリーネ広場を案内した。シルバーポイントがもらえる遊び、鐘叩き、賭けレース、ゴンザレス、原始のリズムでダンスを踊る場所、飲み比べ。仲間達は純粋に千年祭を楽しんだ。
飲み比べて大量の酒を飲んでいるクロノとエイラを見て、魔王は呆れた。

クロノ「どうだ?魔王。楽しいだろ?」
魔王「…よくあれだけ飲んで平気でいられるものだな」
クロノ「俺、どれだけ飲んでも酔わないんだ」
魔王「酒というものはじっくり味わいながら飲むものだ」
クロノ「ふーん、じゃあ今度町の宿屋に泊まった時、パブで一緒に飲もうぜ!」
魔王「フン…」
クロノ「次はベッケラーの小屋のゲームしようぜ!賞品ももらえるんだ!俺は全部持ってたんだけど、ドッペル人形はなくなっちゃったからな。また再挑戦だ!」

クロノ達はベッケラーの小屋でそれぞれゲームをクリアし、賞品を手に入れた。マールはガルディア城、クロノ、ルッカ、カエルは自宅、ロボはプロメテドーム、エイラは酋長のテントに賞品を飾った。

クロノ「魔王、おまえの家は?」
魔王「そんなものない」
クロノ「でも、だからってなんでこんな北の岬にベッケラーは賞品を届けたんだろうなあ?」
魔王「他に私にいるべき場所もないからだろう」
クロノ「そんな寂しいこというなよ。俺の家だったらいつでも気軽に遊びに来いよ!」
魔王「……………」



魔王「今度はどこへ行くつもりだ?」
クロノ「未来の32号廃墟だよ。レースライバルのジョニーがいるんだ。時々走らないと腕が落ちるんだ」
ジョニー「ヨオ、ツンツン頭。久シブリダナ。マタ勝負スルカ?」
クロノ「ああ!」
ジョニー「バリバリダゼ!ベイベー!」


ジョニー「負ケタヨ、オメー達ニャ……マタ、イツデモ来イヨ。イッショニ、風ニナローゼ、ベイベー!」
クロノ「やったー!ハイスコアだ!」
魔王「…おまえはいつもこんなにあちこちで遊び回っているのか?」
クロノ「いいじゃねえか。人生楽しく生きた方がいいぜ。楽しく感じられなきゃ、楽しいこと見つければいいんだよ」
魔王「……」
クロノ「魔王、後ろに乗れよ。ハイウェイ跡をバイクでかっ飛ばしてやる。気持ちいいぜ〜」

無理やり魔王を引っ張り出すクロノ。


クロノ「あ〜楽しかった!ほら、魔王、缶ジュースだ。飲めよ!」
魔王「…私はコーヒーが好きなのだがな」
クロノ「コーヒー?やっぱりブラックが好きなのか?」
魔王「やっぱりとは何だ?」
クロノ「なんとなくそんなイメージしたから」
魔王「…クロノ」
クロノ「何だ?」
魔王「……………ありがとう」
クロノ「へへっ!どうだ、楽しかったろ?」

何かを楽しいなどと思ったのは何年ぶり、いや何十年ぶりだろう。あまりにも遠い昔だ。ほとんど生まれて初めてと言った方がいいかもしれない。気の遠くなるほど長い間、ひたすらラヴォスに対する復讐の念だけで生きてきたような気がする。
魔王は自分の荒んだ心に明るい生命力を吹き込んでくれたクロノに心の底で感謝した。



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