10人のコスモスの戦士達は死闘の末、カオスを倒した。とうとう長き戦いにも終止符が打たれたのだ。世界には秩序が蘇り、平和が戻った。



10人の戦士達が気づくと、そこは緑豊かな森の外れだった。地平線を見渡せば海が見え、天を仰げば群青色の空が行き渡る。



WOL「全て終わったのだな――」
クラウド「見ろ、フリオニール。野薔薇だ」
フリオニール「野薔薇の咲く世界――」
セシル「フリオニールの夢、実現したんだね!」
ティナ「野薔薇以外にもいろんな花が咲いてるわ」


ティナはそばに咲いていた綺麗な花を一つ摘んだ。花の蜜からは芳しい香りがする。


空気の澄んだ――自然溢れる世界――


WOL「これが――コスモスの望んだ世界か――」




美しく咲き乱れる花々に見とれていると、戦士達の持っているクリスタルが輝きだした。苦楽を共にし旅をしてきた彼らにも別れの時が訪れたのだ。



フリオニール「ここで別れたら、もう二度と会うことはできないのか……」
セシル「僕達はコスモスの召喚を受けてこの世界でカオスの陣営と戦った。カオスを倒した今、もう僕達の役目は終わったんだよ」
クラウド「この世界も秩序と平和を取り戻した。後はそれぞれの世界へと帰るだけだ」
ティーダ「なんだよ…そんなのアリかよ…俺達の仲間としての絆はどうなる?この世界で用がなくなったら、ハイ、終わりってか?」
スコール「ティーダ、元の世界でもおまえを待ってくれている人がいるはずだ。おまえにとって大切な人が――皆そうじゃないのか?」

ジタン「俺達…いつか…また…会えるかな?」
バッツ「俺達はもう元の世界へ帰るしかない。またみんなと会える時がくるかどうかわからないけど、でも俺は信じたいな。いつか再び会う時がくるのを」
ティーダ「みんな――元の世界に返った後も、たまには俺のこと、思い出してくれよ!」
WOL「ああ、もちろんだ。忘れるものか」



傍らではオニオンナイトとティナが見つめ合っていた。

オニオンナイト「ティナ……」
ティナ「……お別れね……」
オニオンナイト「嫌だ!ティナとは別れたくない!ずっと一緒にいたいよ!」
ティナ「私…忘れない!あなたのこと…絶対に忘れない!」
オニオンナイト「ティナ!ぼ、僕も…僕も…」
ティナ「あなたと過ごした思い出、一生大切にするわ」



フリオニール「さあ、もう行こう。いつまでも別れを惜しんでいても仕方がない」
ティーダ「みんな、元気でな!」
ジタン「さよならなんて言わないぜ。いつか会えるその時まで。またな!」
スコール「長い戦いだと思っていたが、いざ終わってみるとあっという間だったな」
クラウド「戦うこと以外にも、得られるものは多かったな」



ティナ「オニオンナイト……あなたがくれた宝石、天上の宝玉……これを見ていつもあなたのこと思い出すことにするわ……………それじゃ…そろそろ私、行くね…」
オニオンナイト「ティナ!」
ティナ「……さよ……なら……」


ティナは涙ぐみながら消え入るような声で呟き、己の世界へ帰っていった。


――それは、少年にとって初恋であった――この上なく清浄無垢で可憐な美しい少女。過酷な旅の道中、彼女を心身共に守り続けた。迷うことなく、ひたすら一途に。それは、異世界において与えられた使命を果たすまでの、ほんの一時の間のうたかたの夢。しかし、少年は一生涯忘れないであろう。まだ幼く未熟ながらも、己の全身全霊を籠めてあの少女を愛したことに。


バッツ「オニオンナイト、元気出せよ。またいつか会えるって」
オニオンナイト「……うん……」
セシル「僕達も帰ろう。元いた世界へ――仲間のところへ!」
オニオンナイト「うん……みんな!ありがとう!」
フリオニール「これからまた、新しい夢へ向って生きて行こう!」




戦士達は一人、ひとりと去ってゆく。皆それぞれの世界へ――各々の大切な仲間達の待つ場所へ――




最後に一人残ったWOLは、森の中で暫し佇む。




WOL「光は我らと共にある」




彼もまた、自らの未来へと一歩を踏み出していった。未知の明日へ向けて――




(終)




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