死闘の果てに、コスモスの戦士達は見事カオスを倒すことができた。そして世界には秩序と平和が戻った。



気がつくと、10人のコスモスの戦士達は森の外れにいた。空は雲ひとつない青。気持ちの良い風が吹き、足元を見れば様々な野の花が咲いている。
美しい自然に囲まれて、戦士達は思わず嘆声を上げる。

WOL「全て終わったのだな」

すると、10人が持っていたクリスタルが光り出した。

ティーダ「とうとうお別れ、か――」
セシル「名残惜しいけど、仕方ないね」
ジタン「オニオン!おまえとはよくいがみあったけど、でも一緒にいて楽しかったぜ!」
オニオンナイト「ジタン………僕も」

ティナ「バッツ!」

ティナはバッツに抱きついた。

ティナ「とうとうお別れなのね…」
バッツ「ティナ…」

バッツもティナを強く抱きしめ、口づけを交わした。

オニオンナイト「ああっ!」
ティーダ「コラ!邪魔しちゃダメッス!」
ジタン「ああ、俺のティナが…」
オニオンナイト「ティナがいつジタンのものになったのさ!」
ジタン「うるせえなあ」



バッツ「ティナ、残念だけど、お別れだ」
ティナ「バッツ…」
バッツ「ティナ、俺のこと好きだって言ってくれてありがとう。俺、君のことは絶対に忘れないよ」
ティナ「私もよ。あなたのことを忘れるわけないわ!」
バッツ「ありがとう」



ティーダ「セシル、おまえとの練習試合、楽しかったぜ」
セシル「僕もだよ、ティーダ」
ティーダ「元の世界に帰ったあとも、たまには俺のこと思い出してくれよな!」
セシル「もちろんだよ!」
ティーダ「みんな!今まで楽しかったぜ!だけどもうお別れだ。これから先はクリスタルが導いてくれる。じゃあな!」

ジタン「ティナ、1度でいいからデートしたかったぜ!」
ティナ「ジタン…」
ジタン「もう2度と会えないとは限らない。だからお別れなんて言わないぜ!じゃあな、みんな!いつかまた会おうぜ!」

スコール「俺には元の世界で待っていてくれる人がいる。だからもう帰らなければならない。今回の戦い、学ぶことは多かったな。またいつか会える時が来たら、共に戦おう、みんな!」

戦士達は一人、また一人と消え、元の世界に帰って行く。

クラウド「ティナ、君ともっと一緒にいたかった…」
ティナ「クラウド…」
クラウド「また会おう」

フリオニール「クラウド…相変わらず愛想のないヤツだなあ」


バッツ「ティナ…」

バッツとティナはお互い見つめ合った。ティナは悲しげな表情で微笑んでみせた。

ティナ「バッツ、私、これからもがんばれるよ。だから、さよなら」

ティナは涙を流しながら微笑んで消えていった。

バッツ「ティナ…」


バッツはしばらく項垂れていたが、やがて歩き出した。

バッツ「楽しい時って、なんであっという間なんだろうな」


セシル「オニオンナイト、元気を出して。僕達も元の世界に帰ろう」
オニオンナイト「…うん…」
セシル「大丈夫。元の世界に君を待っている人がいるよ。君にとって大切な人が」
オニオンナイト「ありがとう。でも、僕、ティナのこと大好きだったよ」
セシル「うん、わかってるよ」
オニオンナイト「ティナ…」
セシル「繋いでみせる。みんなにもらった強さを!」

オニオンナイト「………みんな、ありがとう!」


WOL「…フリオニール、何を見ているんだ?」
フリオニール「野薔薇が咲いている。俺の夢は叶ったんだ!」
WOL「そうだな」
フリオニール「だけどこれで終わりじゃない!これからまた新しい夢が始まるんだ!」


WOLは一人森に佇んでいた。

WOL「…私の身体が消えないということは、ここは私の世界でもあったのだな」

自分の名前すら思い出せないWOL。戦いが終わった今、自分探しの旅へ向かって彼は一歩、また一歩と踏み出していった。





バッツとティナ。これまで恋を知らなかった男女は互いに惹かれ合い、束の間の甘い一時を過ごした。今まで常に束縛されてきたティナは自由奔放なバッツに惹かれ、そのバッツは奥手であったが、徐々に美しく儚げなティナを見ていると放っておけなくなった。
2人は本当は共に生きていきたかった。共に人生を歩み、愛し合いたかった。だが、それは叶わぬ夢。悲しみを心の内に秘め、2人はそれぞれの世界へと戻っていく。ティナはバッツから教えられた自由な生き方、踏み出す勇気を持ち、自分で自由をつかみ取ろうと決意した。バッツはティナという1人の美しい少女への想いに正直身を焦がれる気分だった。元の世界へ帰っても、バッツはティナのことは決して忘れられなかった。一生の間。

2人はそれぞれの世界へ帰った後も、互いを想い合う。時には快晴の青空の下で、時には満天の星空の下で。一生忘れられぬ初めての恋。元の世界で数多の他の男性、女性に会っても、バッツもティナも決して互いの存在を忘れることはない。
異世界での短い旅の間の、限られた時間での2人の逢瀬。決戦前の夜の甘い一時。

それは、バッツとティナにとって生涯忘れられぬ思い出となった。

彼らは今日も生きていく。離れ離れになってしまった愛しい人への想いを胸に秘めながら。





(終)





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