コスモスの消滅後、クリスタルの力によってかろうじて存在できる戦士達。彼らはカオスの居城を目前として、最後の夜を過ごすことになった。残された時間はあと僅か。

WOL「皆、決戦の時は来た。明日、カオスと対峙する。今日のうちにしっかりと疲れをとっておくのだ。コスモスの意志を継ぎ、この世界に平和を取り戻す。負けは許されないぞ!いいな!」



ジタン「相変わらずWOLは固いよなあ。レディの為ならたとえ火の中水の中。どんな試練だって乗り越えてやらあ。カオスなんかに負けるかって!」
オニオンナイト「散々ティナにちょっかいだしといて今度はコスモス?ジタンって節操がないね」
ジタン「フェミニストって言ってくれよ」
オニオンナイト「全く!それにバッツもバッツだよ。ジタンがティナにちょっかいだしても全然怒らないんだから」
ジタン「俺が思うに、バッツって鈍感なんだと思うぜ。おまえと違って嫉妬深くないのさ」
オニオンナイト「何だよ!…だって、僕には理解できないんだ!ティナに好かれてて、それで仲良くなって、それでも他の男が手を出してもなんとも思わないなんて」

ティーダ「俺が思うに、それがバッツの良いところッス。嫉妬深くない広〜い自由な心にティナは惹かれたんスよ、きっと」
オニオンナイト「ティーダ!」
ティーダ「もう邪魔すんなよ!決戦前夜、2人きりにしてやろうぜ」
オニオンナイト「ふ、2人きり!?そ、そんな…」
ジタン「オニオン、おまえ、何想像してるんだよ」
オニオンナイト「だって、そんな、2人きりにしたら、バッツが何をするかわからないじゃないか!」
ティーダ「そういうことは2人だけの世界。俺達が入っちゃダメッス!」
オニオンナイト「ティナあああーーー!!!!!





一方、バッツとティナは2人で夜空を見上げていた。

ティナ「星が綺麗ね、バッツ」
バッツ「そうだな。明日、俺達がカオスに勝利すれば、この世界は救われるんだな」
ティナ「コスモスの願い、必ず私達で果たしましょう」
バッツ「ああ」

ティナ「バッツ」
バッツ「どうした?」
ティナ「カオスに勝てば、この世界での私達の役割は終わりだわ。きっと、みんな離れ離れになっちゃうわね。そして二度と会うこともない――」
バッツ「そうだな。いい奴らばっかりだから、別れるのは名残惜しいけど、仕方ないな」
ティナ「バッツ」
バッツ「ん?」
ティナ「私、あなたと別れたくない!」

そう言うと、ティナはバッツに抱きついた。

バッツ「ティ、ティナ!」
ティナ「イヤ!バッツと離れ離れになってしまうなんて。ずっと一緒にいたいわ!あなたが好きなの。とっても。大好き」
バッツ「ティナ、俺も君が好きだよ」
ティナ「バッツ…嬉しい。でも、だからこそあなたと別れたくないわ!これからもずっと一緒にいたいの。一緒に世界を旅して回って、自由に生きたいわ。あなたと自由な未来を築きたい」
バッツ「ティナ…」

別れたくないと必死に泣きじゃくるティナを、バッツは優しく抱きしめた。

バッツ「俺も、ティナとは別れたくないよ。君はとても辛い過去を背負っているから、これからもずっと君を守ってやりたい。精神的な支えになってやりたい。だけど、きっとそれは無理なことなんだ俺達はコスモスの召喚を受けてこの世界にやってきた。役目が終わったら元の世界に戻ることになるだろう」
ティナ「私達が同じ世界に行ける手段はないのかしら…」
バッツ「ティナ…」
ティナ「私、バッツの世界に行きたいわ」
バッツ「でも、元の世界で君を待っている人がいるかもしれない」
ティナ「そうかしら…」
バッツ「俺だって、大切な仲間がいるかもしれない。みんなそれぞれ、元の世界に大切な人がいるかもしれないんだよ。セシルは兄のゴルベーザ、ティーダは親父さんのジェクト。他にもいるかもしれない。そして、俺達にも」
ティナ「……………」

バッツ「だから、ティナ、この戦いを無事に終わらせよう。俺達にとってかけがえのない世界に戻る為に」
ティナ「バッツ………」
バッツ「突き放すようなこと言っちまってごめんな」
ティナ「いいの。きっと私の方が心が弱いんだわ。本当は無理だとわかっていることなのに、それでも運命に逆らいたくなるの」
バッツ「俺だってそうさ。本当はティナと別れたくなんかない。初めて俺のことを好きだと言ってくれた女の子なんだからな。一生大事にしたい、側にいたいと思うよ」
ティナ「バッツ…」
バッツ「だけど…きっと、今夜が君とゆっくり話ができる最後の夜になるだろう」

ティナ「バッツ、お願いがあるの」
バッツ「ん?何だ?」
ティナ「朝まで…私の側にいて…行かないで」
バッツ「わかったよ、ティナ」

バッツとティナは、満天の星空を眺めながら、2人きりでとりとめのない話をした。どんな些細なことでも、話す機会はもうないのだ。2人共、愛の語らいの言葉などは知らない。今まで恋を知らずに生きてきた男女は、初めて想う相手と寄り添い合い、語り合う。



どれくらいの時間が経っただろうか。ふと、2人の会話は止まった。そしてお互いを見つめ合う。

バッツ「ティナ…やっぱり俺は君と別れたくない!」

バッツは力強くティナを抱きしめた。

ティナ「バッツ…」
バッツ「離したくない!ずっと俺の側にいて、大切にしたい!俺も、君が好きなんだっ!!!!!」

ティナは大人しくバッツの抱擁に身をゆだねた。

バッツ「ティナ…」

バッツはティナの顔をよせると、そっと口づけをした。初めは優しく、そして、徐々に激しくティナの唇を求めた。
ティナの方も初めは大人しくされるがままにしていたが、徐々に自分からもバッツを求めるようになった。
愛し合う男女がお互いを求めて熱く口づけを重ねる。いつまでも、いつまでも。離れたくないという想いから強く相手の存在を求める。束の間の愛の一時。それは2人に残された最後の夜の出来事であった。





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