※管理人はSFC版FFYしかプレイしていません。これはエンディング後の話です。
 ロクセリが好きな方は不愉快になる可能性が高いのでご遠慮下さい。





今夜は新月。真っ暗な夜である。
ここはある一軒家。先程から言い争う声が聞こえ、夜の静寂を破る。声の調子から非常に険悪な雰囲気が感じられる。そんな中、


ガシャーン!


その家から陶器の割れる音がした。

セリス「ロック、私もう我慢できない!あなたとはお別れよ!」
ロック「待ってくれセリス!もう一度話し合おう!」
セリス「聞きたくない!さようなら!」

そう言うとセリスはまとめていた荷物を持って出て行った。





ここはモブリズの村。ティナはいつものように子供達の面倒を見ていた。今日は天気がいい。爽やかな風が吹き、やわらかな日差しが降りそそぐ。洗濯物を干していると、背後に人の気配を感じた。振り向くとそれはすっかり憔悴しきった表情のロックであった。 それは、まるでこの世の全ての人から見捨てられたような、生きていることに嫌気がさしたような雰囲気を湛えていた。

ティナ「ロック!?一体どうしたの?」
ロック「ティナ………」
ティナ「なんだかとても傷付いた顔をしてるわ。何があったの?」
ロック「ティナ…何も聞かないで俺をしばらくここへ置いてくれないか…?」

ティナはわけがわからないままだったが、敢えて何も言わずにロックをモブリズの村に迎え入れた。孤児院の中に彼の部屋を用意し、面倒を見た。
それ以来、ロックはティナの元で暮らすようになった。ロックはずっと暗い表情のままで、心配したティナは毎日一生懸命ロックの世話をした。ロックはほとんど一日中部屋にこもりっきりで、初めのうちは、持ち込んできた酒を飲んでいた。何もかもに投げやりな態度。ロックは酒が無くなると新しく買いに行こうとしたが、ティナが強く押しとどめた。それに対しロックは別段抗うこともせず、相変わらず部屋の中で怠惰な生活を送っていた。ティナは必死になってロックの世話をした。三度の食事もロックが好きなものを作り、服を着替えさせ、綺麗に洗濯し、ほつれていたら直し、部屋の掃除も怠らなかった。


ロックは1年前セリスと結婚した。ケフカを倒した後のことである。結婚式にはシャドウを除いた全ての仲間達が集い、皆で祝福した。ティナも2人の結婚を祝福し、これで2人共幸せになったんだと心底喜んでいたのだが――
先日ロックがモブリズへ来て以来、セリスのことは一言も話さない。ティナはロックとセリスの間に何かあったのだということまでは察したが、具体的な内容までは聞き出せずにいた。そうでなくてもロックは暗い雰囲気を湛えたままなのだ。なんとかして元気を出してもらおうと、未だ恋愛感情を知らない乙女は一生懸命だった。


ロックは精神的に荒れていた。あることがきっかけでセリスとは上手くいかなくなった。一度できた歪みは治ることなくますます深まっていく一方で。その後何度も何度も夫婦喧嘩をした。その結果、2人の関係は破局。セリスが家を出て行った後、精神的に拠りどころを失くしたロックの頭に思い浮かんだのはティナだった。そしてティナの元に転がり込み、心を閉ざしたまま、ただただ傷付いていた。傷付いた自分自身の痛みも、セリスを傷つけた痛みも1人で抱え込み、唯一の癒しとなるのはティナの存在のみだった。


ティナに身の回りの世話をしてもらうだけで心が癒される。初めて彼女に会った時から既に2年が経過しており、ティナは20歳になった。成人した彼女は未だ純粋無垢な乙女であり、美しい。絹糸のような艶やかな緑の髪、きめ細かな白い肌。優しく儚げな、それでいて芯は強い整った顔立ち。ガストラ帝国によってつけられた操りの輪を外されてから様々な経験をし、人を愛するという感情を知った今のティナの美しさはまさに絶頂の時にあった。今のティナを男達がみたら十人中十人がこぞってティナに言い寄ってくるだろう。優しく儚げなところが男達の保護欲を駆り立てる。守ってやりたいという気持ちでいっぱいにさせる。それでいて、男達の弱い部分を優しく包み込んでくれるような母性も感じられる。何もしなくても男達を虜にしてしまいそうだ。


そんなティナだが、普段はモブリズの孤児院で暮している。その為か、幸い男達が大勢言い寄ってくるということがない為、ティナは自らの美しさに無頓着のままであった。孤児達にとってはティナはひたすら優しく清らかな、聖母のような存在であった。ティナは孤児達皆から愛され、またティナも全ての子供達を愛していた。そのような場所へ突如転がり込んだロックだったが、セリスとの破局で傷付いたロックはティナの元にいるだけで心に安らぎを感じるようになった。それなら何故自分はセリスと結婚したのだろう?何故彼女と上手くやって行けなかったのだろう?自分は本当にセリスを愛していたのだろうか?ロックの頭の中はぐるぐると周り、いつまで経っても考えがまとまらない。ただ一つはっきりしているのは、今、ティナと共にいるのが非常に心地よいということであった。





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