セッツァーにとってティナとの出会いのきっかけは、オペラ座の女優マリアを誘拐しようとしたところから始まる。その後、ロック達と出会い、帝国に対抗するリターナーに協力することになった。帝国脱出後、ゾゾに向かい、ティナと出会うことになる。

ティナ。幻獣と人間のハーフ。世界にただ一人の存在。セッツァーが最初にティナを見た時、彼女はトランス状態であった。そんなティナの姿を見て、セッツァーは純粋に美しいと思った。幻獣の神秘的な美しさを感じた。
人間の姿に戻ったティナは、儚げな雰囲気の神秘的な美少女だった。幻獣のハーフだからか、人間的な感情に乏しいところがある。今まで帝国の秘密兵器として使われてきたという過去のせいで、普段からあまり表情は明るくない。それでも操りの輪を外してから徐々に明るい表情もするようになってきたらしい。か弱い美少女かと思いきや、戦士として強く、高い魔力の持ち主であった。

ティナにとってセッツァーという男は、初めは新たに加わった仲間であり、大勢いる仲間の一人に過ぎなかった。ギャンブラーというものについてはよく知らない。ただ、自分の知っている世界とは違う世界で生きてきたのだろうと思う。自分の出生の秘密を知ったティナは、その後仲間達と共にセッツァーの飛空艇ブラックジャック号に乗り込んだ。

ティナはトランス状態でいられる時間を少しでも長くする為に、時々トランス化して一人で空を飛んでいた。最初それを見たセッツァーは内心仰天したものだ。
セッツァーは昔からずっと空が好きだった。飛空艇ブラックジャックで広い大空を翔け回るのは爽快だ。鳥になり飛んでみたいと思ったことはあるが、今はブラックジャックがあるのでそれでいいと思っている。鳥よりも上空を、遥か高速で飛べるのだから。だが、トランス化して空を飛びまわっているティナを見て、急に羨ましくなった。自らの力で飛べるなんて、人間には不可能なことだ。一体どんな気持ちだろう。

「またトランス化して飛んでるのか」
「ええ」
「飛ぶのが好きか?」

そう聞いた時、ティナは思いがけない質問をされたという顔をした。しばらく黙っていた後、

「ええ、好きよ!」

笑顔で答えた。



ここは飛空艇ブラックジャック号の中。ブラックジャックは空飛ぶギャンブル場であり、船内にはカジノがあった。セッツァーはこのカジノのオーナーでもある。今は帝国のおかげで商売あがったりなのだそうだ。
ティナが船内を歩いていると、セッツァーが一人でトランプをやっているのを見つけた。

「セッツァー、何やってるの?」
「ソリティア。一人でやるトランプゲームさ」
「ふうん。見ててもいい?」
「ああ」

ティナは興味深そうにセッツァーがトランプを並べていくのを眺めていた。ずっと帝国の秘密兵器として使われてきたティナにとってトランプは、一応知ってはいるものの、やったことがないものだった。

「ティナもやってみるか?」
「え?」
「ポーカー教えてやるぜ」

セッツァーは慣れた手つきでカードを切り、並べ始めた。ポーカーはトランプを使ったギャンブルの中でも代表的なものである。ティナにルールを教え、何度かやってみた。ティナはなかなか役がそろわなくて眉を顰めていた。

「ごめんなさい。私、あまりポーカーは得意ではないようね」
「じゃあブラックジャックはどうだ?」
「ブラックジャック?この飛空艇と同じ名前ね」
「ああ。トランプゲームの中にもブラックジャックと呼ばれるものがある。今度はそれを教えてやるよ」

セッツァーとティナは今度はブラックジャックをやり始めた。何度かやるうちに、ティナも少しはコツがわかったような気がした。

「私、ポーカーよりブラックジャックの方が得意みたいだわ」

二人は互いに興味を惹かれているのに気づいていなかった。



その後、飛空艇で炭鉱都市ナルシェへ向かい、次の目的地は封魔壁になった。ナルシェの奥では新たにモーグリ族のモグが仲間になった。ティナとモグはたちまち仲良しになった。ティナはよくモグを抱っこしてふかふかしている。モグも気持ちよさそうである。

「ティナ、またモグをふかふかしてるのか」
「セッツァー、私、動物が好きなの」
「ふーん」
「僕、撫でてくれる人大好きだクポ!だからティナ大好きだクポ!尻尾を触る人は嫌いだクポ!だから尻尾は触らないでクポ!」



封魔壁に向かった後、帰りに幻獣と接触して飛空艇が故障してしまった。マランダに不時着した飛空艇から降りてティナ達は帝国首都ベクタに向かう。皇帝との会食後、ティナはロックと共に船でサマサの村に行くことになった。セッツァーとはしばらくお別れだと思うと、ティナはなんだか寂しくなった。

「ねえ、ロック、アルブルグへ向かう前にセッツァーのところへ行きましょうよ。飛空艇がどうなってるかも気になるわ」
「そうだな。船に乗るとしばらくこっちへは戻れないし、寄って行こう」

飛空艇ブラックジャック号のエンジンルームでセッツァーはエンジンの修理をしていた。メカに詳しいシドが手伝おうとしたり、飛空艇をより速くする方法を言ったりしたが、ギャンブル場を潰して改造すればもっと速くなると聞いた瞬間、セッツァーは怒ってしまった。それを見てティナが近寄る。

「本当に好きなのね。この船が」
「気ままなギャンブラー暮らしをしている俺にも、若い頃は必死に打ち込めることがあった……」
「……え?」
「こいつを世界一速い船にして大空を翔ける……そんな夢を追いかけていた」
「今は違うの?」
「その頃は俺を夢に駆り立てる奴がいた。世界最速の船、ファルコン号を操る飛空艇乗りだ。俺と奴は……時にはよきライバル、時には夢を語り合う親友だった。どちらが先に空を突き破り、満天の星空の中を航海できるかと……だが奴がファルコンと共に姿を消した時、俺の青春も終わった。……ダリル……」

セッツァーは飛空艇の修理を続けた。まだまだ時間がかかりそうだ。

「セッツァー、今度あなたのお話、もっと詳しく聞かせて」
「……ああ」

ティナはセッツァーに別れを告げると、アルブルグへ向かった。船に乗り、次の目的地はサマサの村である。





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