グレイとクローディアはメルビルのエロール神殿でささやかな式を挙げた。式はごくごく内密に行われ、皇帝フェルY世と神官のソフィア、ネビルとジャン、その他式を挙げるのに最低限必要な人数だけで行われた。クローディアは心底幸せそうだった。そして父親であるフェルY世も。そしてジャンも親友の幸せを純粋に祝福していた。





式が終わるとグレイとクローディアはとうとう新たな旅立ちに向かって準備を始めた。

フェルY世「クローディアや、年に1度は顔を見せにきておくれ」
クローディア「はい、お父様」
フェルY世「グレイ、我が息子よ。クローディアを頼んだぞ」
グレイ「はい。陛下」
フェルY世「父と呼んでもかまわんのじゃぞ。まあいい。そなたの好きなように呼ぶがよい」
グレイ「…はい」
フェルY世「それではいつでも我が国に来るがよい。私はそなた達2人をいつでも歓迎するぞ」
グレイ「わかりました。それでは誠に名残惜しゅうございますが、これにて失礼致します」
クローディア「お父様、必ず、また会いに来るわ」
フェルY世「待っておるぞ、クローディア」





グレイ「クローディア、正直なところ、冷や冷やしたぞ。君があのまま皇女になって陛下の元に留まるのではないかと気が気ではなかった」
クローディア「大丈夫よ、グレイ。確かに私はお父様を愛しているけれど、1番愛しているのはあなたよ」
グレイ「クローディア、もうこれからは君は俺だけのものだ。決して離さない」
クローディア「私だってグレイからは絶対離れないわ」
グレイ「クローディア…」
クローディア「グレイ…」

2人は暫し互いを見つめ合った。お互い2人きりの時にだけ見せる、他の者には決して見せない、愛情のこもった、優しい目。見つめ合うだけでお互いの愛を確信できる。その後、2人は抱き合い、口づけを交わした。2人共本当の意味で結ばれたという幸福感でいっぱいだった。

グレイはただの冒険者だった。気の赴くままに旅をしていた彼の運命はクローディアとの出会いで変わった。報酬目当てで引き受けた護衛の仕事、その護衛対象であるクローディアはなんと帝国の第1継承者であり、そしてなんと月の神エリスの寵愛をも受けていた。ひたすら心優しく純粋無垢な乙女であるクローディアにグレイは徐々に惹かれていった。彼女の素性がわかった後も、戸惑うクローディアを黙って側にいながら支え続けた。グレイのクローディアを守りたいという気持ちは最早義務などではなく、自然と心の奥底から湧いてくるものになった。それが愛情だと気付いた彼は、クローディアの身分を考え、ギリギリまでひたすらその想いを隠していた。

クローディアもまた、ジャンとの出会いをきっかけに森の外に出て、グレイと出会い、様々な紆余曲折を経て自らの生い立ちと運命を知ることになった。外の世界のことを何も知らない彼女はグレイに依存する部分が多かった。そしてグレイと一緒でないと落ち着かなくなり、いつしかそれが恋だと知るようになった。グレイ。常に冷静な態度を崩さない、金銭や権力に媚びない独特の価値観の持ち主。そして細身だが強靭な肉体を持つ強い戦士。あらゆることに経験豊富な頼りがいのある彼。そんなグレイにクローディアはに惹かれていったのだ。グレイとクローディア、一対の美男美女は数奇な運命を経て、徐々に互いに惹かれあっていったのである。

本来なら決して結ばれるはずのない身分の2人―― 一介の風来坊のグレイと皇女のクローディア。2人は各々の意志を貫いて夫婦となった。神の祝福を得て神聖な誓いの元結ばれたのだ。クローディアは皇女の身分より、父の側にいることより、自由を選んだ。グレイとの愛を選んだ。そんな彼女を、グレイは心から大切にして愛そうと改めて決心した。何よりも自分と共にいることを選んでくれたクローディアの為に。

グレイ「クローディア、これから俺達は本当の意味で一心同体だ。どこか行きたいところがあれば行ってくれ」
クローディア「私はあなたの妻になったのよ。あなたの行くところにはどこへでもついていくわ」
グレイ「そうか。ならば行こう!」

2人は新たな人生を歩み出した。自由と愛の名の元に――





Happy End





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