アバロンへ帰っても名案は思い浮かばなかった。コッペリアは地上戦艦の対策を考えながらアバロンを回ることにした。代々の皇帝がやっていること、それはアバロンの人々1人1人に声をかけることである。そうして時に民の声を直に聞くことで善政を敷くのである。そうしているうちにコッペリアはアバロン帝国大学の軍師の元に来た。

コッペリア「コウメイ、よろしく頼むわ」
コウメイ「はい、陛下。私、良い薬を持っておりますがお使いになりますか?」
コッペリア「何を言っているのです?私は人形ですよ。病気になるはずがないではありませんか」
コウメイ「いえいえ、これは地上戦艦によく効く薬です。但し、少々高くつきますが……」
コッペリア「何ですって?あの地上戦艦に対して良い策があるのですか!」
コウメイ「はい。私に一任下されば薬の用意を致します」
コッペリア「わかりました。あなたに任せます!」
コウメイ「では私はフォーファーへ行って準備を致します。陛下は後程ゆっくりいらして下さい」

するとコウメイは謎の移動法を使って去って行った。

アウ「陛下、今のは何だったんでしょうか?」
ラト「ピョーン、ピョーンと飛んで行きましたねえ」
スカイア「壁を突き抜けて行ったわよ」
コッペリア「とにかく、私達もフォーファーへ向かいましょう」



フォーファーへ向かうと見慣れない大きな船が港にあった。

アムピトリーテ「陛下、コウメイはどこでしょうか?」

コウメイはフォーファーの城内にいた。

コウメイ「お待ちしておりました。港の船をご覧になりましたか?あれをステップに運んで地上戦艦に対抗する帝国戦艦に作り変えます。早速取りかかりますのでステップまでおいで下さい」

コウメイはまたぴょ〜ん、ぴょ〜んと謎の移動法を使って去って行った。

ステップへ行くと既に帝国戦艦が出来上がっている。

アウ「陛下、すごいですね。これなら地上戦艦も目じゃないっすね」
コッペリア「そうですね。コウメイ、よくやってくれました。これで地上戦艦を撃破しましょう」
コウメイ「陛下、これはオトリです」

帝国戦艦で地上戦艦と戦うのではない。軍師コウメイの立てた作戦は以下の通りである。帝国戦艦を建設する。完成間近という頃にボクオーンがモンスターを使って破壊しようとする。そうすれば地上戦艦に隙ができる。ボクオーンの周りの戦力を減らした上で帝国最強の兵である皇帝をぶつけるのである。帝国戦艦破壊の為に部下のモンスターの多くを攻撃に参加させれば地上戦艦の内部は手薄になる。地上戦艦も一度止めなければならなくなる。コウメイは既にノーマッドを偵察に向かわせていた。その手際の良さと妙策にコッペリアは感心した。

コウメイ「この作戦は失敗すると2度と使えません。ボクオーンも同じ手に何度も引っ掛かるほどバカではないでしょう。陛下、どうか無事にボクオーンを倒して下さい」
コッペリア「全力を尽くします。それにしてもあなたが味方でよかった」

コッペリアはノーマッドの村へ向かい、アルタンと共に地上戦艦へ向かった。地上戦艦からは多くのモンスターが出て行き、コウメイの言った通り内部は手薄になった。残ったモンスターを蹴散らし最奥部のボクオーンの元へ辿り着くコッペリア達。

ボクオーン「す、すまん。私はボクオーンでもなんでもないんだ。七英雄と名乗ってみたかっただけなんだ。麻薬作りもやめる。この戦艦も破壊する。だから頼む、許してくれ!」
コッペリア「2度目は許しませんよ」
ラト「陛下!油断しちゃいけません!こいつはずる賢いことで有名なんですよ!」
ボクオーン「ちっ…」
コッペリア「ボクオーン、私をだまそうとしましたね?許しません!」
ボクオーン「何をっ!人形の癖に。1度破壊してから私のコレクションにしてくれるわ!」

ボクオーンは巨大な人形を操って攻撃してきた。人形は剣技を駆使して戦う。コッペリア達はソードバリアを唱えた。

ボクオーン「互いに傷つき合って死ね!マリオネット!」
コッペリア「無駄です。私達の陣形はラピッドストリームといって敵より早く攻撃ができるフォーメーションなのです!」
ボクオーン「小癪な!」

完全に攻撃を封じられたボクオーンはいきり立った。

アウ「陛下、俺、思ったんですけど」
コッペリア「何ですか?」
アウ「ボクオーンの操っている人形の糸を切っちまえばいいんじゃないですか?」
コッペリア「よく気づきました。それでは私達がボクオーンの注意を引きつけますからその隙にやりなさい」
アウ「はいっ!」

アウは隙をうかがってボクオーンの操り糸を斧で切断した。

ズダーン!

ボクオーン「ああっ!何をする!」

操り糸を失った人形はくるくると回転した後ばたりと倒れた。

アウ「ざまあ見ろ!人形さえなければこっちのもんだ!」
ボクオーン「私の可愛い人形を…許しませんよ!こっちにはまだマリオネットが――」
コッペリア「今です!皆、総攻撃を仕掛けますよ!」

そこにコッペリア達が総攻撃を仕掛ける。

アウ「高速ナブラ!」
ラト「ストーンシャワー!」
スカイア「クリムゾンフレア!」
アムピトリーテ「ダイアモンドダスト!」

そして最後にコッペリアが

コッペリア「千手観音!」

ボクオーン「ほびー!私の作戦が間違っていたのか!?」

ボクオーンは断末魔の叫び声を上げて倒れた。
コッペリアはボクオーンを倒し、地上戦艦を撃破、ステップに平和を取り戻した。
その後もコッペリアは皇帝としてよく働いた。人形であるが故に睡眠を必要としないコッペリアは歴代のどの皇帝よりも激務に耐えた。
ある日、コッペリアは寿命を迎えた。全自動人形である彼女は思うように身体が動かなくなった。ガタがきてしまったのだ。そして彼女は新たに皇帝継承を行い、新皇帝に後を託すことにしたのである。



新皇帝に継承が終わるとコッペリアは帝国の倉庫に安置された。壊れた人形として。
かくして帝国の歴史でも一際異例の人形皇帝の時代は幕を閉じたのであった。





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