ミカエルから教授が発明したゲートホルダーの話を聞き、ロアーヌに集結しているメンバーはアビスへ向かうことで意気軒昂としていた。特にティベリウスは。
「まずはアビスと決着をつけ、あの宿命の子である二人を助けよう。神王教団をどうするかはそれからだ」
サラを助けに行くことができると知ってユリアンとトーマスも意気込んでいた。
「よし!みんなで戦ってサラを助けるぞ!サラは俺にとって妹みたいなものだからな。トーマスだってそうだろ?」
「あ、ああ」
サラのトーマスに対する慕情のこもった視線。時折感じることがある。それを思い出すとトーマスの中の感情が揺れ動く。トーマスも絶対にサラを助けると決意を新たにした。
皆が準備をしている時、ミカエルはユリアンとモニカに声をかけた。
「そなた達の処遇をどうするかは、この戦いが終わってから決める。今はこの世界をアビスから守るのが最優先だ」
「は、はい!ミカエル様!」
「お兄様……私も共に戦ってよろしいのですか?」
「モニカ、我々は聖王十二将の一人、フェルディナントの子孫。かつてのフェルディナントのように我々もアビスと戦うのだ!」
「……!!わかりました。お兄様、共に戦いましょう。そしてこの世界に平和を!」
「うむ。カタリナも聖剣マスカレイドの持ち主として共に戦ってくれ」
「はい!ミカエル様!」
ミカエル達はまず東方へ向かった。東方への道のりは、以前サラと少年が宿命の子としての力を暴走させた為、ロアーヌからラシュクータ、東方の大草原、玄城まで何も無い平坦な土地になっていた。ロアーヌから玄城まで真っ直ぐ向かうミカエル達。到着して事情を話すと驚くヤンファン達。
「な、なんと!そのような手段で我々もアビスへ向かうことができるのか!」
「じゃあ私達もアビスへ行って戦えるのね!」とツィーリン。
「それでは皆の者、行くぞ!」とバイメイニャン。
玄城でツィーリン、バイメイニャン、ヤンファンと合流したミカエル達は教授の開発したゲートホルダーを使ってアビスへ向かった。
アビスではハリード達が四魔貴族の本体との戦いを終え、傷を癒しているところだった。そこへミカエルをはじめとした残り全てのパーティーメンバー、二十四人がやってきたのだ。ハリード達は目を丸くした。
「おまえ達!一体どうやってここへ?」
ミカエル達が教授の開発したゲートホルダーのことを話すと更に驚くハリード達。
「そうだったのか……四魔貴族の本体は倒したが、ここから先に何が待っているかわからない。皆、覚悟はいいか?なんとしてもサラを助けるぞ!」
「おおーっ!」
皆で鬨の声を上げる。ハリード達は全員でアビスの奥へ真っ直ぐ進んだ。
「サラ!助けに来たぞ!」
「サラ!さあこっちへ来なさい!私達と一緒に帰るのよ!」とエレン。
サラは目を見張った。自分を除く全てのメンバーが勢ぞろいしているのだ。
「ハリード、お姉ちゃん、みんな!……ありがとう。すごく嬉しい……でも……どうして来たの!私がここで静かに死を迎えれば次の死食まで三百年は平和が続いたのに」
「サラ!」
少年が駆け寄るとサラは後ずさった。
「来ちゃダメ!あなたがこなければ次の死食までは世界は生き延びられたのに。宿命の子が二人もいてはいけないのよ。二人の力が合わさったらどうなるか。あなたも知っているでしょう?何もかも破壊されてしまう。私達の力はアビスも世界も全てを破壊してしまう。終わりよ……」
サラは涙を浮かべて泣き出した。
「この宿命の子の力をコントロールできれば、破壊ではなくて創造に使えれば……そう思ったわ。でも力がコントロールできないの……私達の宿星は死。破壊の力が勝つ……どうしてこんな定めなの……みんなゴメンネ。私達全てを破壊して全てを終わりにしてしまうわ」
その時、アビス全体が震撼した。
「始まったわ。もう止められない……やっぱり死の定めは変えられないのね……」
「サラ!全てを破壊する程の力なら世界を変えられるはずだ!こんな宿命なんか無い世界に!」
「……破壊の力が形をとるわ……破壊するものの姿を……」
それは巨大な、鎧兜を身に着けた人のように見えた。だが漂うオーラは人ではないことを如実に物語っていた。
「宿命の子の力を破壊ではなく創造に使えれば、と言ったな?サラ!少年!二人で力を合わせ、もう一度やってみろ!創造する力を産み出せ!こいつは俺達が倒す!!」
「サラ!僕達でもう一度やってみよう!」
少年はサラと手を取り合った。二人共、互いの手をしっかりと握っている。
破壊するものの姿は四魔貴族の本体を取り込んだ
「そんな!奴らの本体は倒したはずなのに!」
「まずは四魔貴族の四つの形態を倒さなければならないようだぞ」
「……クッ……!みんな、戦いの準備だ。陣形・装備を整えるぞ」
ハリードはトーマスを呼んだ。
「トーマス、これをやる。氷銀河でドラゴンルーラーを倒した時に手に入れた竜槍スマウグだ。トーマス、シャール、妖精、槍使いのおまえ達のうち誰かが使うといい」
「ハリード、ありがとう」
サラと少年を除いた全てのパーティーはそれぞれ陣形を組み、破壊するものを取り囲んだ。
「こちらは三十人もいるんだ」
「だが、世界を救うことを考えたらたった三十人だ。俺達の世界とアビス、全世界の命運を賭けた戦い、なんとしても負けるわけにはいかない。みんなでこいつを倒し、全員で元の世界へ帰るぞ!」
宿命の子と世界を巡る戦いがこれから始まろうとしている。
「行くぞ!!」
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