破壊するものの四つの形態を倒し、とうとう本体との戦いである。本体は多彩な攻撃を繰り出してくる。イビルウィスパー、グランドクロウズ、ノッキング。その他、数えきれない程の攻撃手段を持っていた。サラと少年は必死に力を使っていたが、弱っていた。

「お姉ちゃん達だけでも元の世界に……」
「何言ってるの!サラ、帰ろう。こんな奴さっさと片づけちゃうから」

弱気のサラを元気づけ、エレンは破壊するものに向かう。

「竜神烈火拳!」

エレンの体術技が炸裂する。続いてハリードもサラを安心させ、元気づける。

「サラ、お前のためにこの命ささげよう!」
(な、何よ、そのお姫様を守るナイトみたいなセリフは!)

エレンはハリードのセリフが引っかかったが、戦いは熾烈を極め、それどころではなかった。

「こいつを倒せば人間に戻るのか、それとも象のままか?」

象はラシュクータの謎を気にしながら戦っていた。ラシュクータの象人間達は初めから象だったのか、それとも魔王の呪いで象にされたのか、はっきりしない。腐海の廃墟で手に入れたホークウィンドを構える。

「オービットボーラ!」



そのうち破壊するものはトータルエクリプスという技を使い、闇の翼形態に移行した。今までとは違った攻撃方法を使ってくる。そのうちの一つがフェイタルミラー。ターゲットにされた象は味方から総攻撃を受けて倒れた。

「ぐあっ!」

続いてハウリングという技がやってくる。倒れた象が起き上がりレオニードに通常攻撃を行う。鍛え上げたパーティーである彼らは攻撃力が高い。今となっては通常攻撃だけでも致命的である。幸いレオニードは盾でガードした。

「破壊されるもまた一興か……」

熱戦の最中、相変わらず落ち着いているレオニード。破壊されるのはどちらになるのか。敵の攻撃力も相当なものである。今度はアビスの風という強力な全体攻撃を仕掛けてきた。ハリードパーティーはピンチになると生命の杖を折り、シャッタースタッフで味方全体を回復した。それでも敵の攻撃は激しい。

「ファイナルレター!」
「黄龍剣!」

ハリード達の苦戦を見たサラはバックパックでハリードパーティーを回復した。そのうち、もはや陣形も意味を成さない混戦になってきた。

「お姉ちゃん達だけでも生きて……」
「サラ、あんたを死なせやしない!」

エレンは必死で戦った。今はこの戦いに勝ち、サラを救うことだけを考えていた。妹への思いを熱い闘志に変え、破壊するものに向かう。

「タイガーブレイク!」



破壊するものの攻撃はどんどん激しくなってきた。ハリード達は皆、深手を負っている。頭から血が出て目に染みる。傷を抑え、ハリードは息をついた。

「俺は死に場所を探していた。なんともいい場所じゃないか!」
「ハリード……?」
「最後にひと暴れするか!」

破壊するものに突っ込んで猛攻を仕掛けるハリード。その捨て身とも思える攻撃の凄まじさにエレンは不安になった。

「じょ、冗談じゃないわ!みんなで帰るのよ!私もサラもハリード、あんたも!」

その時、サラが破壊するものに取り込まれようとしているのに気づいた。宿命の子を体内に取り込む気か。いや、エレンは未だサラを宿命の子だなどと認めたくなかった。

「サラは私の妹、ただそれだけの普通の子よ!」

エレンは何度もタイガーブレイクを放つ。闘志と攻撃力がどんどん増していく。

だが、サラと少年は弱っていた。

「アビスが破壊の力で満たされるわ……」
「もう、僕達には抑えられない!」

その時だった。

「サラ、しっかりしなさい」
「あなたは……?」
「私はかつて聖王と呼ばれていました」
「聖王様?」

サラが見上げると、そこには長い銀髪の美しい女性の姿があった。サラはしばらくぽかんとして聖王と名乗った女性を眺めていた。

「聖王様って……女の人だったのね」

聖王は微笑した。

「サラ、あなたはこの度の死食で例外的に生まれた宿命の子。星の位置にズレが生じ、死食発生と同時に生まれた。本来なら一人しか生き残らないはずの宿命の子が、今回は二人となりました。サラ、あなたは例外的に生まれたので宿命の子の特徴の一つを持っていません。それは関わった人間が全て死んでしまうこと。ですから、あなたがもう一人の宿命の子であることは誰も気がつかなかった。でも死食発生と同時に生まれたあなたが死の宿星を持っていることには変わらないのです。あなたもまた宿命の子の一人。聖王と呼ばれた私やかつての魔王、そこにいる少年と同じ力を持っているのです」
「……………」
「サラ、あなたは特別な子。あなたと出会うことにより、そこにいる少年は死の連鎖から解放されました。共に旅をするようになってから、少年に関わった人間が死ぬことはなくなったでしょう?サラ、例外的に生まれた特殊な宿命の子であるあなたと出会うことにより、少年の運命の星は変わり始めました」

サラと少年は顔を見合わせた。

「宿命の子は創造と破壊、二つの力を持っています。かつての魔王は破壊の力を発揮し、聖王である私は創造の力を発揮しました。サラ、少年、破壊と創造は表裏一体です。全てを破壊するほどの力なら世界を変えることができます。宿命の子であるあなた達二人の力を合わせ、創造する力を生み出すのです」
「そう、世界を変えるのだ。このような宿命など無い世界に」

もう一つ声がしたので見ると、魔王の肖像画にそっくりであった。そう、それはかつての魔王であった。

「サラ、少年、二人で力を合わせるのです。サラには聖王である私が力を貸しましょう」
「少年には魔王である私が力を貸そう」

聖王の姿がサラの背後に立ち、魔王の姿が少年の背後に立つ。少年は魔王に対し怯えた。そんな少年に魔王が囁く。

「……私のような思いをする者はもういなくてよい。私だけで十分だ」そう言った魔王の目は哀しげだった。
「さあ、もう終わらせましょう。宿命の子などという悲しい宿命を。二度と死食など起きない世界に!世界を再生させるのです!」

サラと少年に聖王と魔王の力が合わさった。サラと少年は破壊するものに向かって力を放った。


「ツインビーラッシュ!」


強大なダメージが入り、破壊するものに亀裂が入り始めた。

「今だ!」

ハリードはすかさず分身剣を放ち、破壊するものを切り刻んだ。破壊するものはどんどん崩壊していく。

「止めだ!」

ハリードはカムシーンで破壊するものを一刀両断した。渾身の一撃であった。



破壊するものは消え、世界は――





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