詩人は大勢の人々の前で歌を歌っていた。

「ついに姿を現わした最終最後の敵 破壊するもの。決然と立ち向かうハリード達。トータルエクリプス、アビスの風、うなりを上げる敵の猛攻。だがしかし、ヒーロー達はくじけない。鍛えに鍛えた技と術。ついに破壊するものの力はついえ創造の力が解き放たれた!!おお、ヒーロー達は今いずこ……」

最後のアビスの戦いの歌である。人々は詩人の歌に聞き入り、最後の戦いについてもっと詳しい話を聞きたがった。詩人は人々の歓声に囲まれながら共に戦った仲間達に思いを馳せた。特にヒーローとなったハリード達は今どこにいるのだろう。ほとんどの仲間達は戦いの後、それぞれの故郷に帰った。新たに旅立ったと聞いているのは宿命の子であるサラと少年、トーマスカンパニーの社長トーマス、そしてハリードとエレンである。彼らはこの再生された世界で新たな旅を始め、新たな人生を歩み始めた。詩人は今まで通り世界各地を放浪する気でいる。そのうち彼らにも会うことがあるだろうと思った。





この世界には三百年に一度、『死食』と呼ばれる現象があった。死の星が太陽を覆い尽くし、全ての新しい生命が失われる。
今から六百年前、一人の赤ん坊が生き残った。その赤ん坊は成長して魔王になり、世界を恐怖に陥れた。
更に三百年後の死食でも、また一人の赤ん坊が生き残った。今度その赤ん坊は成長して聖王となり、魔貴族達をアビスへ追い返し、ゲートを閉じた。
そして更に三百年後、今から十五年前、三度死食は起こり、また一人の赤ん坊が生き残った。果たしてその子は聖王になるのか魔王になるのか。それとも……





三度目の死食、星の位置にズレが生じた為、例外的にもう一人赤ん坊が生き残った。それにより、宿命の子が二人存在することになった。
アビスとの戦いが勃発した時、宿命の子は弱冠十五歳。未だ自らの宿命を知らなかった。
新たな宿命の子が魔王になるのか聖王になるのか未だわからぬ状態でアビスゲートを閉じる使命を受けたのは元ゲッシアの王族ハリード。運命の歯車は周り始める。二人の宿命の子は自らの宿命を知らぬまま、ハリードと共に四魔貴族と戦う旅に加わる。そして旅の途中で自らが宿命の子であることを知る。そしてハリードと仲間達もそのことを知る。

『トルネード』の渾名で知られる勇猛な戦士ハリードはリーダーとして仲間達を率い、四魔貴族との戦いに次々と打ち勝つ。弱冠十五歳の年若い宿命の子二人は、ハリードと共にアビスと戦う。

四つ目のアビスゲートを閉じる時、それは起きた。宿命の子の一人がアビスの向こうへ消えた。宿命の子が二人もいてはいけない。その強大な力は全てを破壊してしまう。宿命の子としての力が二人分合わさったらどうなるか知った二人の少年少女は自らの力に怯える。そこに魔族が、二人のうちどちらかがアビスでその生を終えればまた三百年、次の死食まで世界に平和が訪れると吹き込む。それが本当のことだったのか、それとも宿命の子を手に入れる為の計略だったのかどうか、真偽のほどは定かではない。しかし、二人の宿命の子はそれを信じた。世界に束の間の平和をもたらす為、宿命の子の一人、少女の方がアビスの彼方へ消えた。
その後、まだ一つアビスゲートが存在することが判明する。それは東方にあった。

ハリード達は少女を救う為、そしてアビスとの決着をつける為に東方へ向かう。そしてアビスへ。
ハリード達の後を追って、当時のロアーヌ侯国に集っていた戦士達もアビスへと向かった。
総勢三十人の戦士がアビスへ向かい、最終決戦となった。
熾烈な戦いの末、破壊するものの力は潰え、二人の宿命の子により、創造の力が解き放たれた。
そして、世界は再生された。

死食を司る星は消滅した。
新たに再生された世界で人々は新たな道を歩み始める。

アビスとの戦いに加わった戦士達は歴史に名を残した。特に英雄ハリードは戦士達を率いたリーダーとして、そしてまだ幼い二人の宿命の子を守り世界を平和に導いたとして、歴史上偉人として後世に伝わることになった。ハリードは宿命の子とは別に重大な役割を果たすことになったのである。

死食を司る星は消滅した。この世界で死食が起こることは二度となかった。
数多の戦士がアビスとの戦いに向かい、勝利をおさめ、死と破壊の力に打ち勝ったのである。
宿命の子と世界を巡る戦いはここに集結し、新たな時代の幕開けとなったのだった。






The End






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