※これはエンディング後の話です。






プリムは部屋の窓から外を眺めていた。

プリム「ディラック…」

プリムは今は亡き恋人のディラックに想いを馳せていた。思えば長い旅だった。父の薦めるお見合いを断り、魔女討伐に向かったディラックを追って家を飛び出したことから彼女の冒険は始まった。道中、聖剣の勇者であるランディ、妖精の子供であるポポイと出会い、共に旅を始めた。ランディは聖剣を蘇らせ、世界を救う使命を追っていた。ポポイは初め記憶喪失だったが、徐々に記憶を取り戻し故郷の村に戻ったが、その時にはすでに村は崩壊しており、ポポイはマナを守る為にランディに同行することに決めたのだ。

プリムはというと、旅の目的はディラックを助け出すことだった。半ば強引にランディを仲間に引き入れ、魔女の元へ行ったものの、そこでディラックは古代遺跡のタナトスの元へ送られ、タナトスの元へ行けばディラックは生気を抜きとられ帝国へ連れ去られてしまった。
プリムの旅は果てしなかった。ただひたすらディラックを想い、追いかける日々。だけどいつもその手は彼に届かなくて。後一歩というところで彼はまた遠くへ行ってしまって。その繰り返し。いつも一緒にいたランディとポポイがいなければとても耐えられなかっただろう。

プリムはいつも強気に振る舞っていたが、実際彼女にとっては辛い旅だった。ディラックと共に親友のパメラまで意識を操られ…そして、親友から嫉妬という名の負の感情をぶつけられ、思わず手を上げてしまった。今となってはパメラも以前と同じように接してくれるが、その時の心の傷は未だ心に残っている。
その後やっとひたすら追いかけ続けてきたディラックに出会えたと思ったら、操られた彼の手によって危うく殺されそうになり、タナトスがけしかけてきたバンパイアを倒した後にはもうディラックの姿はなかった。

親友の嫉妬、例え操られていてもディラックが恋人である自分を殺そうとした事実。そのことを思い出すと今でも悪夢にうなされる。


それでもプリムはあきらめなかった。
ただひたすら愛しい人を追い求め、追いかけて、追いかけて、追いかけて――


結局、彼は捕まらなかった。
その身を犠牲にしてタナトスの正体を暴き、そして帰らぬ人となった。

その時の彼女には悲しむ暇はなかった。神獣が暴れ出し、世界に危機が訪れたのだ。プリムはポポイと共にマナの魔法を唱えマナの剣を発動させ、ランディを助けながら神獣と戦った。


そして、世界には平和が戻った。


妖精であるポポイは消えてしまったが、世界征服を企んだ帝国は滅び、その黒幕であるタナトスも滅び、世界は徐々に復興しつつある。人間の世界にはこれから皆が力を合わせて世の中を平和にしていかなければならない。

そんな中、プリムは1人感傷に浸っていた。今回の旅は彼女にとってあまりにも喪失感が大きかった。人前では勝ち気に振る舞う彼女も部屋で1人でいる時は何もせずただぼうっとして感傷的になってしまうことが多かった。
プリムはディラックを救う為にずっと長い旅をしてきたのだ。その長い長い旅の果てに、彼は自分を残して逝ってしまった。
そして妖精であるポポイも別れを告げる間もなく消えてしまった。

あの時はランディに頑張って生きていかなければと強気で言ったものの、実際には1人になると、孤独感が襲ってくる。ディラックはもういないのだという喪失感と、必死になって彼を救おうとして、結果、果たせなかったことの虚しさ。心の中が空虚になる。

1人でいるといつも悲嘆にくれるプリムであった。



コンコン


ドアをノックする音が聞こえる。

「お嬢様、旦那様がお呼びでございます」

召使いの声だ。また父が縁談を持ってきたのだろう。父のエルマンはプリムの無事を心から喜んだ。そしてしばらくは長い旅の疲れもあるだろうからと、そっとしておいてくれたが、しばらく経つと、またもやお見合いの話を持ってくるようになった。今度こそ貴族の息子と結婚させようというのである。

「お嬢様?」
プリム「今は1人でいたいの。放っといて」
「しかし、お嬢様――」
プリム「1人にしてって言ってるのがわからないの!
「は……あっ旦那様!」
エルマン「プリム入るぞ」

エルマンは勝手にプリムの部屋に入って来た。

プリム「何よ、パパ。勝手に入って来ないでよ!!」
エルマン「プリム、あのディラックという男はもういないのだろう?辛い気持はわかるがいつまでもふさぎこんでいても仕方がないだろう」
プリム「フン!パパったらディラックがいなくなってさぞかしせいせいしてるんでしょうね!」
エルマン「な、何を言う。こんなに傷ついたおまえを見てそんな薄情なことは思わん。それよりどうだ?そろそろ他の男との縁談を真面目に考えてくれんか?家柄も地位も申し分ない、年齢もつり合う貴族の息子はいくらでもいるぞ。おまえもそろそろ18歳なのだし――」
プリム「何よ!パパったらディラックがいなくなったことをいいことに自分の好きな男と私を結婚させたいだけじゃない!ただ私を自分の思い通りにしたいだけじゃない!パパのバカ!もう知らない!!」
エルマン「これプリム、どこへ行くんだ!」

プリムは家を飛び出していった。





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