聖剣の森は相変わらず立ち入り禁止だったが、ランディのみは行くことを許されていた。外はいい天気である。柔らかい日差しに気持ちの良いそよ風が身体をくすぐる。木の葉の葉擦れの音、動物の鳴き声、普段人が来ないからか、動物達は平和に暮らしている。ランディは最初に聖剣を抜いた時のことを簡単にクリスに話した。

ランディ「……それで、ここから全てが始まったんだ」
クリス「あなたの世界を救う旅ね」

聖剣は元の場所に神秘的な光を湛えて刺さっていた。それを見て2人ともしばらく無言だった。

ランディ「クリス、僕に話したいことって何?」
クリス「ランディ、私と一緒に帝国に来ない?」
ランディ「帝国へ?」
クリス「そう…ヴァンドール帝国は今や完全に崩壊して、復興に忙しいのよ。皇帝も死んでしまったからいっそのことタスマニカみたいに共和国としてみんなで国を治めていこうかなって考えてるのよ。それに、レジスタンスのメンバーである私達と一緒にあなたも来てほしいの」
ランディ「……」

クリス「ダメ…かしら?世界を救った聖剣の勇者であるあなたがいれば貧困に苦しむ人々も希望を見出して活気づくと思うの」
ランディ「悪いけど…」
クリス「!?何故!?勇者として人々に希望を与えて欲しいの!何故ダメなの?」
ランディ「クリス…僕の役目はもう終わったんだ。後は村でひっそりと静かな生活を送っていきたいんだ。勇者としてもてはやされるなんて僕はそんな柄じゃない」

クリス「そんな…そんなこと言わないで。そんな生活もったいないわ!もっと楽しい生活を私と一緒に送りましょうよ!」
ランディ「クリス?」
クリス「ランディ…私、あなたのことが好き。初めて会った時からずっと気になってたの。だから私、あなたに帝国に来てほしいの。私と一緒に…」
ランディ「ごめん、クリス」

クリス「…やっぱりプリムが好きなの?」
ランディ「もちろんプリムは好きだよ。君と同じ大切な仲間だ」
クリス「そうじゃなくて、恋してるの?」
ランディ「ううん、そうでもない。ただ彼女が幸せになるのを願っているんだ」
クリス「自分が幸せにしようとは思わないの?」
ランディ「プリムはきっと他の男と結婚すると思う。僕はそれを影で見守って、ここで静かに暮らして、それで十分だよ」
クリス「それで終わるわけないわ!あなた、とっても素敵になったもの!女の子達がほっとくわけないわ!」
ランディ「……え?」

ランディは驚いた。

クリス「何びっくりしてるのよ!昨日のプリムの顔見た?あなたのこと、異性としてすっごく気にしてたわよ!」
ランディ「別に普通の顔だったけど?」
クリス「もうバカッ!自分が女の子にモテるタイプだってことぐらい自覚しといた方がいいわよ!」
ランディ「僕が…?」

ランディは信じられないといった表情でクリスを見た。

ランディ「それは本気で言ってるの?それともからかってるの?」
クリス「本気に決まってるでしょ!現に私があなたのこと好きなんだから!私だってこれでも年頃の女の子よ!」
ランディ「……………」

ランディはしばらく何を言っていいかわからず黙ったままだった。

ランディ「えーと、その……………悪いけど、やっぱり僕、帝国には行かないよ。それに君の気持にも応えてあげられない…本当に、ごめん」
クリス「……そっか……でも、あなたやっぱりプリムが好きなんじゃない?」
ランディ「もちろん好きだよ」
クリス「恋愛対象として、もっと意識してみたら?」
ランディ「プリムは貴族の息子とお見合いしてるんだよ。そんな困らせることなんてできない」

クリス「じゃあもしプリムがあなたが好きって言ったらどうするのよ!」
ランディ「それはないと思うな…何せ初めての出会いが出会いだし…」
クリス「ランディとプリムの出会い?どんな風だったの?」
ランディ「ごめん。頼むから聞かないでくれるかな…」
クリス「……………わかったわ。とにかく私はあなたにフられたってことで大人しく帝国に帰るわ。残念だけど。でもたまに手紙とか送るから。それじゃあ!」

クリスはランディに顔を近づけてキッと睨みつけた。

クリス「プリムのこと、真剣に考えなさいよ!じゃあね!」

それだけ言うと、クリスは去って行った。





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