ここはプリムの家。ちょうど父のエルマンとプリムは朝食をとっているところである。

エルマン「プリム、今度という今度は結婚相手を決めてもらうぞ!」
プリム「またお見合い?誰が相手でも興味ないわ」
エルマン「どうしておまえはそうやってワシを困らせるのだ。ワシはな、おまえに本当に幸せになって欲しいのだぞ。貴族の息子と結婚させて楽をさせてやりたい、この親心がわからんのか!」
プリム「わからないわ。長い旅の間に野宿だってやったし、貧しい状態にも慣れてるわ。大体、貴族なんてふんぞりかえっているだけで何もできないやつばかりじゃない」

エルマン「何ということを言うのだ、おまえは。それならウチは誰が後を継ぐんだ?」
プリム「そんなの知らない。私は自分が好きになった人と結婚するわ」
エルマン「まさかあのランディとかいう少年に気があるのではなかろうな?」

エルマンがそう言った瞬間、プリムは取り乱してナイフとフォークを取り落としてしまった。

エルマン「プリム…!!まさかおまえ本当に…!」
プリム「……そうよ。私はランディが好き。だから何だってのよ!」
エルマン「何ということだ!ディラックの次はランディとかいうあの貧しい村の少年か!どうしておまえはそう平民にばかり惚れるのだ!」
プリム「貴族が情けなさすぎるのよ!それにランディは世界を救った聖剣の勇者よ!貴族なんかよりよっぽど偉いわ!それに彼のお父さんはタスマニカの騎士だったんだから!」

エルマン「タスマニカの騎士?それで出身はどこの出なのだ?平民なら――」
プリム「何よ平民平民ってうるさいわね!そんなことはどうでもいいの!この際だからはっきりと言うわ。パパ、私、ランディと結婚したいわ!」
エルマン「いかん!それに先日彼には釘を刺しておいた。おまえに手は出すなとな」
プリム「ランディ(・・・・)が私を好きなんじゃなくて、わたし(・・・)が彼を好きなのよ。勘違いしないで」
エルマン「なっ何だとっ……許さん…許さんぞ!おまえは貴族の息子と結婚するのだ。いいな!」

プリム「パパ!!どうしてわかってくれないのよ!」
エルマン「おまえこそ現実の厳しさがわかっとらん!貴族の生活がどれだけ豪奢なものか。平民の生活がどんなに苦しいものか。おまえだって贅沢はしたいだろう?貧乏は嫌だろう?」
プリム「別に貧乏でも構わないわ!」
エルマン「だからおまえにはわかっておらんというのだ。ここは大人しく親の言うことを聞け」
プリム「嫌よ!私、一生懸命になってランディに振り向いてもらうよう努力するわ!だから――」
エルマン「そんなことは断じて許さん!今日からおまえには外出を禁じる!そしてワシが選んだ相手と結婚するのだ。結婚するまで勝手な行動は許さんぞ!!」

エルマンはそう言うと、執事を呼んで部屋を出ていった。





プリム「どっ…どうしよう。部屋に閉じ込められちゃったわ。パパはどうしても私を貴族と結婚させるつもりなのね。………こんな…ここまでして…ただ平民だというだけでランディの良さがわからないのかしら。……もういいわ。こうなったら今度こそ本当に家出してやるんだから!」

プリムは自室の中から旅に必要なものを選んで荷づくりした。そして窓から外へ出る。プリムの部屋は2階だったが、格闘技の心得でバランス感覚が取れている彼女は難なく着地した。

プリム「パメラにはお別れを言う暇はないわね…いいわ、後で手紙を出せば。今は一刻も早くランディのところへ行かないと!」

そうつぶやくと、プリムはポトス村へ急いだ。





プリム「ランディ!!」

ポトス村に着き、ランディに会うなりプリムはランディに抱きついた。

ランディ「プリム!?どうしたの?そんなに大きな荷物を持って」
プリム「私、家出してきたの。今度はもう2度と帰らないわ!」
ランディ「ええっ?」
プリム「パパは私の行き先がポトス村だってわかってる。だからお願い!どこかにかくまって!」

ランディは敢えて何も言わなかった。

ランディ「…水の神殿に行こう。あそこならエルマンさんも手荒な真似はできないはずだ」

そう言うと、ランディはプリムと一緒に水の神殿へと向かった。





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