ここはYOUのマイホーム。緑豊かな敷地に一人の盗賊が忍び込もうとしていた。この家の主人は一人暮らしだそうだ。大きな一軒家に果樹園に牧場。たった一人でこれだけの土地を持っているのだ。さぞかし大金持ちなんだろう。盗むものはいっぱいあるはずだ。盗賊はそう思った。そして隙を見て忍び込む。

「へっへっ。まずは牧場だ。聞けば珍しいモンスターを飼っているそうじゃねえか。きっと高値で売れるぞ」

まずは品定めをしようとして牧場を覗き込んだ盗賊が見たものは…

マミーエイプ
ゾンビ
スケルトン

「ぎゃああああ!なんじゃこりゃあ!」

なんて悪趣味なのだろう。ゾンビやミイラを飼っているとは。そのうちにゾンビ達と目が合った。興味を示したゾンビ達がこっちにやってくる。

ゾンビは寂しがり屋みたいだ
マミーエイプは寂しがり屋みたいだ
スケルトンは寂しがり屋みたいだ

見た目は恐ろしいアンデット達が人懐っこい目でこちらに寄ってくる。

「ぎゃああああ!こっちくんなあ!」

盗賊は慌てて逃げた。



逃げた先は作成小屋。小屋の外にはYOUの作ったゴーレムがいた。

「おっ!こいつを売っぱらえばいい金になるぞ!」

そう思った瞬間、

核爆弾

ドカーン!

盗賊は真っ黒こげになった。その後ゴーレムは延々とまんまるドロップを出し続けた。轟音に驚いて中からYOUが出てくる。

「何だどうした。故障か?」

盗賊は慌てて隠れる。YOUがゴーレムを修理していると作成小屋からバドとコロナも出てきた。

「YOU~!楽器新しく作ったよ~」

バドとコロナは作成小屋で楽器を作っていたようであった。

「フルートやハープばかりじゃなくてトランペットにも挑戦してみたんだ。早速演奏してみるから聞いてよ~」

プオオオオ~ パオオオオ~

バドはトランペットを演奏し始めたが失敗したようで上手く曲を奏でられない。音だけで殺されそうなひどい音色だった。あんな音を聞いているのは拷問に等しい。

「バド!作り直しなさい!」

コロナにたしなめられ小屋の中へ戻るバド。盗賊は彼らの気配が消えるまで必死に隠れていた。ここで見つかっては一巻の終わりである。

「作成小屋か…あそこにも高価なものがありそうだな」

そう思った盗賊は様子をうかがっていた。この家の主人であるYOUとコロナがしゃべっている。

「YOU、ゴーレムの修理終わった?」
「ああ。武器改造の続きをやらなきゃな。あと少しで属性レベルを9にできそうなんだ。シークレットパワーを使って最強の武器防具を作るんだ」
「YOU、それな~に?」
「改造の副原料だよ。この竜の血を剣や鎧に垂らすんだ」
「えー!なんか気持ち悪いよ~!」

YOUは他にも何やら怪しげなものを持っていた。粉末や小瓶、丸薬など。中には何かの瞳まである。

「この瞳をああして、こうして…」
「いやあああー!YOU!怖いことやらないでー!」
「これも強い武器防具の為なんだ。シークレットパワーは邪神七将がいいな。破壊神に闇の翼。小悪魔のシークレットパワーはどれを選ぼうか」
「YOU、悪趣味~!」
「あとはこの肉をひたすら改造して…能力値ボーナスとステータス異常耐性をつけて………フフッ、フフフフフ」

YOUは怪しげな笑みを浮かべながらハンマーでひたすら武器を鍛え続けた。

カーン!カーン!カーン!カーン!カーン!

「YOU、怖い」

コロナも怯えていたが、陰で見ていた盗賊もひそかに怯えていた。もしかしたら自分はとんでもない人の家に忍び込んでしまったのかもしれない。

「YOU、こんなにいくつも武器作ってどうするの~?」
「ああ、そっちは換金用だ。シークレットパワーを宿らせたものの中には高値で売れるものがある。うまく改造して売ればニキータ顔負けの商売ができるんだ」
「金の亡者?」
「何とでも言えよ」

その時、バドがやってきた。

「師匠~!楽器を作り直したから見てくれよ~」
「わかったわかった。今行くから」

ようやくYOU達は作成小屋の奥へ入って行った。盗賊は一人ほくそ笑む。

「へっへっ。いいこと聞いちまったぜ。高値で売れる武器を作っていただと?片っ端からくすねてやる!」

盗賊は自分の盗みの腕には自信があった。武器防具の改造に使われていると思われる副原料の中でも高価なものだけを盗んでいく。中には宝石もあった。エメラルド、パール、ラピスラズリ。YOUが煌めきの都市で購入したものである。一般の市場で出回っているものとは宝石の輝きが違う。

「いいもの持ってるじゃねえか。これで俺様も一気に大金持ちだ!」

宝石と高価な副原料、高値で売れそうな武器防具を根こそぎ取っていく。盗賊は欲を出してまだ他にもないかマイホームの中を探検し始めた。



果樹園には多くの果実が実っている。盗賊はその中のみずみずしい果物を適当にもいでかじった。

「おや、君はYOUのお客さんかね?」
「はうっ!」

それはトレントであった。トレントは泥棒だとは疑っていないようだ。

「それはまだ食べるのには早い。こちらの果実を取っていきなさい。新鮮で食べ頃だよ」
「ど、どうも」

巨大な木がしゃべるのを見てびっくりした盗賊であった。果樹園を持っている地主はいくらでもいるが、こんなのがいるなんて聞いたことがない。この家の主人は一体何者なのだろうと思った。



今度は家の中に入る。中は無人のようだ。物置をあさっているとサボテンがやってきた。

「・・・・・・・・・・」

サボテンは何もしゃべらない。放っておいてもいいだろう。盗賊は次に書斎へ入った。

「何だこれは。禁断の書?」

ページをめくると謎の声が聞こえる。


退屈な日々を送るか?


「嫌だね。そんなの。俺様は刺激のある日々が好きなんだ。スリル満点の盗みなんか最高さ!」


地獄を見たいか?


「嫌だね。そんなの。俺は楽して生きたいんだ」


未来はあるのか?


「未来なんかねえよ。けっ!」


盗賊はバタンと本を閉じた。すると誰かが家に入ってくる気配がした。盗賊は慌てて別の出口から出て行った。

「あら?誰かいた?音がしたようだったけど…サボテン君、何か見てない?」
「知~らない」

ヴァレリが子供達を連れてドミナバザールから帰ってきたのであった。彼女はいつの間にかマイホームに住み着いていた。

「今日は私の得意なお魚料理にしましょう♪」

サボテン君は何があったのか一部始終を見ていたが、知らんぷりをしていた。



盗賊は今まで盗んだものをきちんとまとめるとマイホームから出て行こうとした。そこで草人に見つかる。

「わっ!こら、おまえ、あっちへ行け!」
「世界はイメージなの」
「は?」
「世界はあなたのイメージ次第で変わるよ」
「何言ってんだこいつは?」

相手は草人である。まともに相手をしていても仕方がないので適当にあしらって逃げる。家の主人に忠告でもされたら厄介である。見つかる前にさっさと姿を消さないと。

そして――





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