盗賊はリュオン街道を必死に駆けていた。一体何が起こったのかわからない。

ラビLv99
バドフラワーLv99
アサシンバグLv99

「こんなん勝てるかああああ!」

一体何が起きたのだろう。あの家に行くまではどのモンスターもせいぜいLv3ぐらいだったのに。どのモンスターも全てLv99になっている。勝てるわけがない。いつもは可愛らしく見えるラビも今は凶悪そのものであった。

「ぐあっ!」

きゅるるるる~ パタン  コンティニュー

「ぐあっ!」

きゅるるるる~ パタン  コンティニュー

「ぐあっ!」

きゅるるるる~ パタン  コンティニュー

こ、これではきりがない。いつまで経っても敵を倒せず先に進めない。帰れない。

(やべえ、俺、マジで死ぬ…!)

誰かに助けてもらうか。しかしそんなことをすれば泥棒稼業は終わりである。



その頃マイホームでは大騒ぎになっていた。高価な副原料をはじめとした様々なものが盗まれているのである。そして泥棒らしき人が忍び込んでいたのをサボテン君がようやくしゃべってくれたのだった。

「サボテン君も草人もトレントも人が好すぎるよ。泥棒だったら捕まえなきゃいけないんだぞ」

トレントは単純にYOUの客人だと思ったらしい。サボテン君は知らん顔。草人は心の作りがYOU達とは違う。そんなわけで侵入者の発見が遅れたのであった。

「師匠!泥棒を捕まえようぜ!」
「そうよ!久しぶりにカボチャ攻撃よ!」
「よし!バド、コロナ、行くぞ!ヴァレリは家で待っていてくれ」
「みんな気をつけてね。私は晩御飯作って待ってるから」
「ペットはどれを連れて行くの?」
「そりゃあもちろん、お気に入りのマミーちゃんさ!」

YOUはバドとコロナとマミーエイプを連れてリュオン街道へ向かった。



盗賊は今にも死にそうであった。Lv99なんて勝てるわけがない。必死に剣で斬りつけても斬りつけてもたいしたダメージを与えることができない。いや、敵の体力が膨大過ぎるのだ。そしてあっさりやられる。こんな死に方は嫌であったがもう生き延びる望みがない。

「ああ…俺様はあんな可愛いラビに殺られるのか…」

今までの人生を振り返り涙する盗賊。そこへYOU達がやってきた。

「いたぞ!きっとあいつだ!」
「ねえ、あの泥棒、今にも死にそうになってるよ」
「助ける?それとも見捨てる?」

盗賊はYOU達の姿を発見した。逃げられるものなら逃げたい。だが敵が強すぎて先へ進めないのだ。相変わらずLv99のモンスター達は猛攻を仕掛けてきた。

「ひっ…ひいいいいいい!助けてくれえええ!」

YOUは腕組をしながら眺めている。

「さ~て、どうしようかな~」

盗賊は必死に逃げ惑う。そしてとうとうモンスターに捕まった。今にもラビの牙に噛み砕かれんとする盗賊はとうとう根を上げた。

「わかった!盗んだものは全て返すから、だから頼む!助けてくれえええ!」

盗賊は必死に懇願した。

「しょうがないなあ。バド、コロナ、行くぞ!」
「おーっ!」

バドとコロナはカボチャ攻撃で敵を倒した。その後、魔法も使う。

「ローズバニッシュ!」
「ノヴァプリズナー!」

双子は魔法を使ったが大ダメージを与えるには至らなかったようだ。

「フッ!俺の出番だな」

YOUは改造した武器でLv99の敵を次々と斬りつけていった。どの敵も全て一撃で葬り去る。不用意に近づいてきたモンスターにはジョルトで強烈な反撃をお見舞いする。

「す、すげえ…」

盗賊は驚きの声を上げる。

「まだまだ驚くのは早いぞ!残りのモンスターまとめて倒してやる」

YOUは気合いを入れるとかけ声と共に必殺技を繰り出した。

「バーサーク!」

盗賊はまるで幻覚を見た気分だった。阿修羅が現れたと思ったら凄まじい音と共にYOUが鬼神のような戦いを繰り広げる。広範囲の敵を全て一掃するその威力はまさに修羅の如く、狂気を感じさせた。敵を全て倒すまで狂乱の舞は終わらなかった。



「お~い、泥棒、大丈夫か?」

気がつくと盗賊はバドとコロナに介抱されていた。あまりにも凄まじい戦いぶりを目の当たりにしたので、しばらく放心状態だったのである。

「あ…」
「さあ、泥棒君、盗んだものは全て返してもらうよ」

すると盗賊は、がばっと身を起こしてYOUに土下座した。

「許して下せえ!旦那!こんなすごいお方とはつゆ知らず、盗みを働こうとしたなんて!あんたは真の英雄だ!豪傑だ!」

盗賊は心底YOUに恐れをなし、またその強さに敬意を示し、助けてもらったことに感謝した。

「師匠~こいつどうするの~?警察に通報する~?」
「警察と言えばボイド警部だな。ん?マミーちゃんどうした?」

YOUのペット、マミーエイプは盗賊にすり寄っていった。

「どうやらマミーちゃんはこの泥棒が気に入ったみたいだな」

盗賊にとってはたまったものではない。

「うぎゃああああああ!やめてくれえええええーーーーー!」



ここはドミナの町。YOUの家に泥棒が入ったという噂はたちまち広がった。そして盗賊はボイド警部に逮捕された。

「チミチミ、泥棒なんぞやったらいかん!ちゃんと汗水流して働くのじゃ。わしの若い頃は…うんちく…うんちく…」

ボイド警部は盗賊にしっかりと手錠をはめながらも延々と説教を続ける。盗賊の方はボイド警部の説教など聞いていなかった。九死に一生を得たのである。それだけで十分だ。もういい、これからは盗賊稼業から足を洗って真面目に働こう。そして仲間達にはYOUの家には絶対に近づかないようにしっかりと忠告しておこう。広大な土地の持ち主だと思って盗みに入ったらとんでもない目に遭った。



その後、盗賊たちの間でもYOUの家は話題になった。そしてあそこだけは絶対に入らないようにと、YOUの家は禁断の土地だと噂された。YOUの方は防犯用にドラゴンを飼ったりバウンドウルフを飼ったりして番犬代わりにした。
YOUがどのような存在なのか、世界にどのような役割を果たすのか、盗賊達は何も知らなかった。ただ悪趣味なペットを飼っており、異常に強い豪傑だということはよくわかった。



YOUは今日もアーティファクトを使い世界を旅する。そして武器を振るい敵を次々と薙ぎ倒していく。



ファ・ディールの世界は今日もマナに満ちていた。





前へ

二次創作TOPへ戻る